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第4章 赤道域での波の平均流への作用
<−これまで波は線形で一般風(平均流)を基本の状態とした
重力波の作用(働き)の話しをします。線形の波が、基本の流れを変形する(また
は作用を及ぼす)。そのために大気中で興味ある現象を引き起こしている。
そして運動のエネルギーと
….. 質も形も進度も位置も時間も
みな因縁が…
5−1:Eliassen-Palmの定理(1)
*流体は準−ブシネスク流体
*2次元の長波の内部重力波に対する方程式を使う。
まず上記の名前の定理を述べる。それは波に伴うエネルギー・フラックスと運動量フラックスとの関係について。前章で述
べたように東西方向の線形の運動方程式は、
 u0
(1)
 
 u
 u
t
 u0
x
 w
z

x
p
   
0
ここで
とした。定常な波(一定の位相速度をもち、波の振幅は変化しな
い)を考え、以下の波形のような、きれいな波を仮定する < −
実際はきれいな波は少ないと思うが:
exp(ik(x  ct) )
ここらあたり->
 u0
すると(1)は
 
 u
(u 0  c)
 w

0
x
z
x
(2)
鉛直方向の運動方程式は静力学平衡の近似を用いることにする(ここで温位と密度の関係を使っている)
 

(3)
g

0
0
z
 u
 w
1 d 0

 
w  0
x
z
0 dz
次に連続の式として
(4)
 (g   )  N2 w  0
熱力学の方程式は(3)を用いると
(u 0  c)
 x 0
(5)
以上が定常な波にたいする線形の波動方程式である(散逸などもない)。
次に(2)式を以下のように変形する。
 ( (u  c) u    )  du 0 w  0
0
(6)
dz
x
 これらの式を変形する(波
の2次の量を議論)
ここで u0 は高さのみの関数として偏微分を全微分に置き換えた。この式に左辺の第一項のx の偏微分の中の変数を左
du 0

から掛けると
((u 0  c) u   ) 
((u  c) u   ) 
( (u 0  c) uw    w)  0
(7)
dz
x 0
波の2次の量のうち、これからは東西に平均したモノのみを議論する。それでこの式に、東西方向に一波長( Lx = 2 π /
k 、今1つの波しか考えていない)の平均操作を適用してみる。式で書けば
1
Lx
Lx
0
A dx
そして一波長の平均操作を over bar で表す。
今、波の一次の量の一波長の平均はゼロになるが積の一波長の平均は一般的にはゼロにはならない。例えばcos k x
の一波長平均はゼロだが、cos 2 kx の一波長平均はゼロではない。
一般に
2

A  A   (A ) / 2 0
x x
なので、(7)式に平均操作をすることにより以下の式が導かれる。
 w   (u 0  c)uw
(8)
Lindzen の教科書(1990)によるとこれが Eliassen-Palm の第一定理と呼ばれる(たぶん波に伴うエネルギー・フラックス
(左辺、次節参照)と運動量フラックス(右辺のu とw の相関、uという運動量が鉛直に流れるwとして)の関係を示すものを
第一定理としているようだ、2章に出ていた項)。ただし、非粘性の線形の定常波で位相速度がはっきりした波についての
関係式。
図にGFDLの大気大循環モデルで得られた重力波に伴う運動量フラックスの緯度−高度断面図を示す。成層圏中緯度の
東風のところで運動量フラックスは正、西風のところで負になっている(以下で大事)。赤道の成層圏では正になっている。
ただし、これは全ての擾乱成分であり非定常部分も含む。
u' w'  0
西風
東風
u' w'  0
南半球
図:重力波に伴う運動量フラックスの例。GFDL-GCMの結果で左が平均東西風で右がそのときの運動量フラックス。
p0
Miyahara et al. (1986)より。ただし物理量は  u  H uw
4−2:波のエネルギー方程式について
ここで波のエネルギー方程式を導いておく。前節と同様に定常の波を仮定する。また赤道β平面を仮定し、南北方向も
考慮しておく。普通のエネルギー方程式の導出と同様に東西方向の式にu’ を掛け、南北方向の式にv’をかけて足すと、
(9)
2
2 

 (u0  c)u'
(u  c)v'
u0
u
 '
 '
 0
 u' w' 0  u'
 v'
0

 u'v'
x 
2
2
y
z
x
y

次に熱力学の方程式から

(10)
この式に
 '
を掛けて
z

 '
  2
(u0  c)
 v'
N w0
x
z
y z


  (u0  c) (  ' ) 2  v'  '     ' N 2 w' 0
 2

x 
z 
z y z z
 (u0  c) 1  ' 2   ' 1   
 '
( )  v'
 w'
0

2
2
x  2 N z  z N y z
z
(11)

(9)と(11)を足して
(12)
 (u0  c)u'2 (u0  c)v'2 (u0  c) 1  ' 2 
u0
u0
 '  '  ' 1     '

(
)

u'v'

u'w'

u'
 v'  v'
 w'  0
  

x  2
2
2 N 2 z 
y
z
x
y
z N 2 y z
z
連続の式を使って(13)

(14)
u' v' 1 


w' 0
x y  z
 (u0  c)u'2 (u0  c)v'2 (u0  c) 1  ' 2  

1 
u
u
 ' 1   


( )  u'  ' v'  '
w'  'u'v' 0  u' w' 0  v'
0

2
x  2
2
N z  x
y
 z
y
z
z N 2 y z
2
(14)が波のエネルギー方程式である。 x の偏微分の中の第1、2項と第3項は波の運動エネルギーとPotential エネル
ギーに対応している。第2項は圧力と東西方向の速度の積であるが圧力によってなされる仕事を示している(例えばラン

ダウの流体力学6節参照)。第5、6、7項は基本場から(または基本場へ)のエネルギー変換を表している。第4項は圧力
によってなされる鉛直方向の仕事を示している。
補足:静力学平衡を仮定しているので鉛直方向の運動エネルギーが、また音波を落としているので弾性エネルギーが
(14)にはない。
例えば、重力波に伴うPotential energyとして、
1 1  2 1 1 R 2
1 1 g 2
2
2
) 
) (T' ) 
) (T' )
2 (
2 (
2 (
2N
z
2N H
2N T
の図が以下にのっている(Tsuda et al., 2000, J. G.
R. )。5月から8月の平均で、高度は20-30kmの領域で
の全休分布である。赤いところが重力波のPotential
Energy の高いところである。Global Positioning
System データから得られたもの。
5-8月のOLR図:対流の強さの指標である。大西
洋のPotential Energyの大きいところは強い対流
は起こっていない。
GCMを用いた実験での重力波に伴うPEの図:大西洋
に重力波にともなうPotential Energyの大きなところが
ある(20-30kmの高度)。ただしこれは6月の結果
18-25kmでの
重力波の全エ
ネルギーの時
間的変化、
Vincent and
Alexander,
JGR, 2000, 場
所はCoros
Islands (12S,
97E)で、ラジ
オゾンデ観測
4−3:Eliassen-Palmの定理(2)
補足:一般に
波のエネルギー方程式を導いたので、次にEliassen-Palmの
第二定理を述べよう。2次元の場合の(14)の式に東西に一波
長平均の操作を前と同様施す。するとx の偏微分の項は前
回と同じく消える。残りを書き表すと、
(15)
du0
1 
uw 
(  w)  0
dz
0 z 0
u  Ae
, w  Be
のように表されているとする。ここでAとBは複素数とす
る。このとき積の量の空間についての平均値のみを問
題にするときには、
前の(8)は
-->
w  ( u0  c)uw 
0 w   0 (u0  c)uw 
上式をz微分すると、

u

0 w   0 0 u w (u0  c) 0 u w
z
z
z
で、(15)を用いると、
(u0  c)
i
i
uw  Re (Ar  iAi )(cos   i sin  ) Re (Br  iBi )(cos  isin  )
 (Ar cos  Ai sin  ) (Br cos   Bi sin  )
1
 (Ar Br  Ai Bi )
2
1
i
*  i
 ReAe B e 
2
1
 Reu w* 
2
こめじるしはcomplex conjugateを示す。例えばランダ
ウの電磁気学の45節参照
u0(z)
z

0 uw  0
z
なので、下の条件をみたすときEliassen-Palmの第二定理が導
かれる。
(16)

(  uw )  0
z 0
条件としては、
(1)波が定常であること
(2)Forcing (例えば thermal forcing )または Damping が
ない
(3)critical level ( u0 - c = 0 ) がない
の条件を満たすときである。
*critical level ( u0 - c = 0 ) がないWKB近似解の場合
ここで、WKB近似解の場合が(16)式を満たすことを示し
ておく。もう一度書き下すと(この波は基本流に対して
東に進む波である)、
z
2H
w  Ae1 / 2 exp( ik( x  ct)  i
m
 m dz)
話しの簡単化のためにときどきやったように連続の式としてBoussinesq 近似の連続の式を使い、波は鉛直に平面波的と
z
すれば、
A
1 / 2 2H
iku  imw
u  m e exp(ik(x  ct)  i  m dz)
k
z
最終的に
z
H


2
2
(17)
 0 uw   00 e H e A  00 A  const
2k
2k
ここで ρ00 は地表面での密度である。再びEliassen-Palm の定理が導かれた。
WKB近似解の w' の中の分母に m1/2 の factor があったが、物理的にはある種の保存則(Eliassen-Palm の定理)を満た
すように摂動の変動が基本流の中でおこっているといっていいであろう。
前章において重力波の critical level の議論をした。その結果を用いて運動量フラックスのとびを計算する(上の条件
(3)の破れの場合である)。下式では密度ファクター(擾乱についてはexp(z/2H)で大きくなる項)は落としてある。
z>0で、
w  Az1/ 2 ei ln z
iku  
u  A
z 0
w
  Aiz1/ 2 ei ln z
z

z1/ 2 e i lnz
k
1

1

uw  Re( Az1/ 2 e i ln z   A* z 1/ 2 e i ln z )   A 2
2
k
2
k
であり、
z<0では
w   Ai z 1/ 2 e e i ln z
z 0
w
1/ 2 1
1/ 2
 Aie  z
i  Ae  z

z
z
1
1 2  2 
1/ 2  i ln z
* 
1/ 2
uw  Re( Ai z e e
Ae z
) A
e
2
2
k
iku  
となる(critical levelの上下で差があることに注意)。波が吸収された分の差である。
 0uw
を別の見方でみると
線型近似のとき(プライムはおとして議論します)鉛直変位と鉛直流との関係は
(


u0
) w
t
x
となる.東西に波の形を仮定すれば,

w

x (u0 c)
となる.これに圧力の変動をかけて一波長の平均をとると,
p

pw

x (u0 c)
p
となる.これを式(6)を使って変形すると,
p

  u'w'
x 0
>0の状況

 0 u' w'
x
のように表される. を流体から山の高さのところまで
もってこよう。
図を見てみる。位相速度c>0で山を動かしている状況で
ある。斜の矢羽根は風速をしめしており、u' w'>0の状況で

w

ある。 u' >0 w'>0のところでは
の
x (u0  c)
式から負になっている。
そのshadeの領域を山の所までもっていったところが
u
p
に対応している。

t
 h

x x
x
で exp( ik(x  ct) の形から
でc>0なので、
u>0 のところは p>0 でもあるので、図のよう に 
0

のところは p>0 のようになっている。
x
0
ikcu  ikp
のところで山がおしていて圧力>0の状況となってお
り、ζをhと見なせば山が流体に加えるDragと見做す事が出
来る。
x
そして式のように
u' w'
>0は
ここでは長波の2次元内部重力波について Eliassen-Palm の定理を導いた。この定理は圧縮性の高周波内部重力波に
ついても同様に成り立つ。詳しくは原論文を参照して下さい。またstationary(c=0を議論してあるがcがあっても同様であ
る)の長い波( f も含む) についても議論されている( Eliassen and Palm, 1961) 。
論文の孫引きですが(p-座標で書いてある)
f U( y, p)  
基本状態として、
 1
 

y

p
fUp  ( 1 ) y
温度風は
stationaryな波の式は
Uux  (U y  f )v  U p 
fu  Uvx 

0
x

0
y
U px  fUp v    0

 p

u
v 


0
x
y
p
南北、鉛直energy fluxの例:Kawatani et
al., GRL, 2003
は安定度をあらわす。
 v  U( 1U p v  p  uv)
このとき、右のような式が成り立つ(エネルギーフラックス
と運動量フラックス)-->
  U( 1 ( f  U y ) v p  u )
これは南北成分も含まれている形になっている。
保存的な形として、
がなりたつ。  


 1Up v p  uv 
 1 ( f  Uy )v p  u  0
y
p




の中がEliassen-Palm fluxと呼ばれる(南北成分および熱フラックスを含む)。
4−4:平均東西風(帯状流)の変化について
2次元の回転なしの場合のみを考える(実際は3次元であ
る、赤道の真上ならば近似的にいいであろう?)。東西方向
の運動方程式は密度の東西方向の変化が無視されると仮定
すると以下のように書かれる。(18)
 u  u  u  w  u   
 t
 x
z
x
ここで
p
  
0
で ρ0 は高さの関数とする。上の方程式は非線形の方程式
であるが上記の仮定により密度に伴う非線形性は落として
ある。ここで物理量を以下のように東西平均した量とそれか
らのずれとして以下のように表す。
(19)
u  u  u
w については東西平均の量はゼロとなる。もし3次元の場
合はゼロではない。そしてprimeのついた量についての線
形方程式を議論したのが線形波動の話しであった。ここで、
(18)式を変形しておこう。それは密度の時間変化を落とした
連続の式を用いることである。連続の式として以下を用い
る。


(20)
(  0 u) 
(  w)  0
x
z 0
ここで u , w は線形、非線形を問わない。この式を使うと(18)
は以下のように変形される(非線形項を運動量フラックスの
形に書き直した)。
(21)

u

1 

(uu)  
( 0 uw)  
t
x
x
0  z
この式に(19)を代入してその式に東西平均の操作を施
すと1章のような式を得ることが出来る。
(22)
u
1 
 t
 
(  0 uw )
0  z
この式により、もし右辺がゼロでなければ東西平均流が
変化していくことを示している。はじめ線形の波動方程
式を議論していたときは0次の基本場と仮定して線形の
波動擾乱を議論していたわけであるが、今や線形の波
により基本場がどんどん変化していくことがあり得ること
がわかった。Eliassen-Palmの定理は非常に特別な場合
(定常な波で散逸などがない)に(22)の右辺がゼロにな
ることを示している。
また Eliassen-Palm の定理の一般化(破綻したときはど
のようになる?)は Andrews and McIntyre (1976, J.
Atmos. Sci. ) から:
基本となる擾乱の式として(ブシネスク流体近似、β平
面、静力学平衡)、
Dtu'  Av'  Bw'  p' x   X'
Dtv'  fu'  p' y  Y'
 '  p' z  0
Dt '  y v'   z w'  Q'
u' x  v' y w' z  0


u
A  uy  f B  uz
t
x
ここで、
Dt' 
である。また ' は擾乱に伴う南北変位をあらわし、
で定義される(あとの式で用いられている)。
Dt 
v'
東西平均流の式は以下のように書かれる。
u


 Av  Bw  
u ' v' 
u ' w'  X
t
y
z
v
 2 
 v v y  w v z  fu  p y  
v' 
v' w'  Y
t
y
z
   pz  0





v
w

v ' ' 
w' '  Q
t
y
z
y
z
v w

0
y z
u
u
A
 f B
y
z
Richardson数が大きく、赤道β平面のとき、平均東西流
の式の右辺:



(u' v'  Bv'  ' /  z )  (u' w'  Av' ' /  z )
y
z
の項(Eliassen-Palm flux divergence)の変形から、平
均東西流の加速として近似的に以下の式が導かれて
いる。
左式は以下のように変形される(transformed Eulerian と呼
ばれる、南北熱フラックスが運動量フラックスとからむので、
その項を東西風変化にくりこむ)。
u

v ' '

v ' '
 Av *  Bw *   (u ' v'  B
)  (u ' w'  A
) X
t
y
z
z
z
v *
 2 
 2 v ' '
 fu  p y   v'  v' w' 
 Y  O(a 4 )
t
y
z
tz  z
 
p
0
z
y


  y v *   z w *   ( w' '  v' ' )  Q
t
z
z
v * w *

0
y
z
v  v* 
 v ' '
 v ' '
(
) w  w*  (
)
z  z
y  z
u(y, z,t)

  (' X' )
t
y

1 
 ' Q' 
(u' ' uy )X'  v' Y' 

(c  u) 
s(z) 
1   
1 
 ' 2 
2

 (' u' ) 
(u' ' uy )u'  v' 

2 t 
y
(c

u)
s(z
)




波に対しての外力(1項や2項)、transienceの時(3項)、critical level (2、3項)のところで東西風が加速されることを示し
ている。 Eliassen-Palmの定理がなりたたない状況である。
4—5:Eliassen-Palmの定理の破れの例
ここでは、Eliassen-Palmの定理の破れの簡単な例として波は
定常ではあるが、散逸されつつある場合について述べよう。定
常で散逸されつつあるのだから、常になにかで強制されている。
前に議論したように散逸として同じ係数のRayleigh friction と
Newtonian cooling を考えると話しは簡単になる。またこの散逸
の値は小さいとしよう。小さくないときはきちんと計算すればよい
(例えば赤道波動についての具体的計算として Takahashi and
Uryu ( 1981)参照)。そのときこれまでたびたびおこなってきたブ
シネスク近似及びWKB近似を用いれば、鉛直波数m について
(23)
N
N
Na  m  im
m
r
2
a  cr  u0  i
i
cr  u0  i
k(c r  u 0)
k
のようになり基本流が時間とともに変化していく。ここで
mi (基本風に依存)は波にDamping が働いた為に出て
きた事に注意しておく。またこのとき西風を生成する。
u
 2u
1 


(  u ' w')
2
t
z
 z
を解いた例:ただし成層のある非圧縮性流体である。
1つの東に伝わる波のみを考慮してあり、平均東西風
の時間発展の様子をみたものである。Plumb, 1977, J.
Atmos. Sci. から。この場合鉛直拡散も入っている。図
の左は運動量フラックスの時間変化。
となる。ここでの表式において、重力波は基本流に対して東に
(またははやく)動いているとしている。ここで前と同じくk は波
の波数であり、a はDampingの係数を示す。また mi は正である。
このとき上方に伝播する鉛直流及び東西流の解は近似的に以
下のように表される。
z
w 


e2 H
Re A exp(ik( x  ct )  i  m rdz  exp(   m idz)
mr1/ 2
z


m 1/2
u r e 2H Re Aexp( ik( x  ct)  i  mr dz  exp(  mi dz)
k
この時、運動量フラックスは
(24)

2
 0uw 
00
2k
A exp(   2m i dz)  (  0uw) z  0 exp(   2m i dz)
となり高さの関数である。だからこの場合(22)は以下のよう
にゼロではなくて
(25)
2m
u
i
  (  0 uw ) z  0 exp(   2m i dz)
t
0
鉛直座標や時間は無次元化されている。
基本流に対して西向きの波は運動量フラックスは負で
ある。
 0uw  
このとき
 00 2
A exp(   2m i dz)  (  0uw) z  0 exp(   2m i dz)
2k
u 0
 t
東向きの波と西向きの波を両方合わせるとどうな
る?->西風と東風で振動しそう
赤道域の平均東西風の振動の話し –特に準2年振動について
他の場所も含めての図、中間圏の減速域は前のメカニズムが使えそうである。
赤道域半年振動
中間圏弱風層
突然昇温
準2年振動
と半年振動
の高度分布
赤道準2年振動
概念図(Plumb, 2002, J. M.S.
Japan)
4—6:例としての準2年振動
前節において波が散逸によって潰れつつあるとき東西平
均流が変化することを述べた。その典型的な例が赤道域
の下部成層圏に存在する準2年振動と考えられている。
以前の図にそれをのせたがここで幾分詳しく観測結果を
述べてみよう(cf.Andrews et al. ,1987)。
1:西風と東風の繰り返し、
上から伝播してくる(どのく
らい上からか、40kmくらい
か)。
最近、中間圏QBOが見つかっている。Burrage et al.
(1996, J. G. R.)
周期は22ヶ月から34ヶ月と一定ではない。平均の周
期は28ヶ月くらい。Plumb(1984)より。
これは対流圏の状態とも関係しているであろう。但し
それほど明確ではない。Maruyama and Tsuneoka
( 1988 )は ENSO と QBO の関係を調べている。
ENSO のときケルビン波の活動度が強まり西風の下
降が早まっているようだと述べている。(1987のENS
Oの時,東風の持続が短かったこと)。
中間圏
QBO
ただし、深い対流(OLRを見る)とは関係ないという論文もあ
る?(Collimore et al., 1998, G. R. L. )
2:QBOの南北のスケールは1500km程度である。
赤道域のみあとで説明あり。
w
のようであろうから
は下降流となり、西風shearのとき
移流により、はやくQBOは下降する。下図はPlumb and Bell
の2Dモデルより。
図:準2年振動の振幅(実線)と位相(破線)の緯度−高
度断面図、Wallace(1973)より
3:下方伝播の速さは約1km/月で西風の伝播の方が
幾分速い。これは今の所、子午面循環の違いで説明され
る。
地衡風近似と静力学平衡からくる温度風の関係と熱力学
の式におけるNewton冷却と断熱鉛直運動のバランスの
式:

 RT
fu  
から
f
y

z

4:振幅は40mbから10mbくらいまで20msー1くらい
で、その下では急激に小さくなる。100mbでは 2m
sー1 になってしまう。赤道対流圏にもQBOがある(図参
照)。お互いにどのくらい関係しているのかはよくわか
らない。例えばYasunari (1986 )参照。別の論文による
と統計的には関係がないらしい(Xu, 1992, J. Atmos.
Sci. )?
H
u
 
R T


z
y z
H y
u
R T

z
H y y
u
T
赤道からすこしはずれると、 z が正のとき(西風が高さと
y
ともに大きい時)、北半球で が負だから赤道の方が温度
が高い。このとき、熱力学の式から(T’>0として)
N 2 w  T
図:赤道対流圏の準2年振動。但し振幅は非常に小さい
(1msー1もない)、Yasunari(1986)より。
5:準2年振動は完全に2年ではない。年振動と関係がある
らしいがまだ明確ではない。QBOの西風が下降するとき、季
節的振動である半年周期振動の西風(equinoxのとき)と同期
しているようでもある(図参照)。
QBOのreview-paper,
Baldwin et al., 2001,
Rev. Geophys.
西風-東風で、中緯度
で高圧
QBOはオゾン・ホールとも関係しているらしい?
(図参照、Lait et al. (1989) より)
図:半年振動(約48kmの高さ)と準2年振動。
Wallace(1973)より。半年振動の西風(shade)と準2年振動
の西風がつながっている。
6:QBOは中緯度成層圏に影響を及ぼしている(Holton and
Tan, 1980 )。図はQBOが東風のとき、冬の極夜Jetの西風
が統計的に弱くなっているGCM数値実験の例である。Niwano
and Takahashi, 1998, J. M. S. Japan.
Heavy solid: 10月の30S以南の全オゾン、細い実線
は50mbの東西風、点線はthickness:西風でオゾンが
少ないよう。
これが観測された準2年振動のありようである
ここでは赤道下部成層圏の準2年振動を波と平均流の相互
作用の考え方でモデル化してみる。今赤道上のみを取り扱
う。東西方向に一様な風(平均流)を支配する運動方程式は
(22)を変形した以下の式により表される。
(27)
u
1 
1 
u
 
(  0uw)  
(  0
)
t
z
0 z
0  z
下端(z=17kmの赤道成層圏の下端におく)、上端(z=4
5kmとする)の境界条件は
(28)
u
0
z
とする。さらに下端では、そのままでは風がどんどん変形して
困るので最下層のみ2日のDamping timeのレーリー摩擦を入
れておく。下端は風速ゼロに固定してもよかったのですが。
次に波による運動量フラックスについては東および西に伝
播する2つの波動について(24) , (26)式を用いる。但しここで
mi の評価についてはこれまでのモデル計算(例えば、Holton
and Lindzen, 1972 : Plumb, 1977 )に従いニュートン冷却のみ
(Rayleigh friction は入っていない)で波動は減衰すると仮定
する。このときmi は以下のように表される。
(29)
mi 
1
Na
2 k(c  u ) 2
r
0
ここで a はニュートン冷却の係数である。ニュートン冷却のみ
なので、miの値としてはここで半分になっている。
問題はQBOを生成しているといわれる波動について
である。第3章の赤道下部成層圏Kelvin波の次ページ
図を思い出して欲しい。その図は準2年振動の西風
(上層)が下りてくるときにあたっており、周期15日程
度の擾乱が見える(波数1とすると位相速度として約3
0msー1程度)。これは東向きの波で西風の運動量を
もっており、散逸するとき西風を生成する。WallaceKousky wave(Wallace and Kousky, 1968, J. Atmos.
Sci. )と呼ばれる、対流圏で生成された強制赤道ケル
ビン波といわれるものである。これの生成のメカニズム
は対流と大規模の波動がcoupleして出来たものらしい
が万人が納得する理論はまだない。わかり易い理論と
して波動と第2種の不安定(台風のメカニズムといわれ
ている)を結びつけたWave-CISKを使った
Hayashi(1970)がある。但しこの理論は前に述べたよう
に潜熱放出のパラメーターでどんな周期の波でもだす
ことができ(cf. Takahashi, 1987)、また一般に短波長の
波が成長率が大きいのでどうであろうか? とにかく赤
道下部成層圏にケルビン波があって、波数1で振幅が
最大10msー1くらいはあるらしい(下図)。
次は西向きの波である。図はYanai and
Maruyama(1966, J. M. S. J.)により発見されたRossbygarvity waveの伝播の様子を示したものである。東西
波数4くらいで、位相速度は25msー1程度、振幅は2な
いし3msー1の振幅をもっている。ここで観測されている
Rossby-gravity waveの振幅はそれほど大きくないこと
に注意して欲しい。この波は散逸するとき東風を生成
する。Holton and Lindzen(1972)はこの2つの波を使っ
て準2年振動をモデルで再現したがRG波の振幅を大き
く与えている。
大循環モデルに表れているRossby-重力波。
Hayashi and Golder, 1994, J. Met. Soc. Japan. 波の
振幅はv=0.5m/s程度である。
今日的には上の波では十分でないので(特にRossby-gravity波)、ここでは赤道ということを忘れて2つの東西に伝播する
内部重力波と思って議論しよう。
今、波の波長は40000kmと仮定する(波数1の赤道ケルビン波に対応)。位相速度は30msー1(東向き、及び西向き)を
仮定する(これもWallace-Kousky waveに対応)。問題はたびたび言及している波の振幅であるが、ここでは約6msー1の
東西風の振幅を仮定する。この程度の振幅がないと1次元モデルで準2年振動はできない。それに対応して下部境界で
の運動量フラックスは
(30)
という値を選ぼう。
uw  4 x10
3
m 2 s 2
初期条件として年平均の風を用い(下層で弱い東風、じょじょに東
風が強くなり30kmくらいでー10msー1となり、また東風が弱まり
モデル上端近傍で弱い西風である)、また安定度は高さの関数で
あり(これは年平均温度場から見積もった)、ニュートン冷却の大
きさは下層で20日程度のDamping time、上端で幾分大きい1日く
らいのDamping timeを使った。平均流にたいする粘性係数の大き
さは0.3m2sー1にしてある。
このようにして求めた結果が図に示してある。周期約1000日程
度の準2年振動的な構造になっている。観測された図と比較して
みて、定性的な構造は似ていることがよくおわかりになると思う。
Holton and Lindzen(1972)において、位相速度30msー1のケルビ
ン波及びRossby-gravity波を使った非常にいい点はQBOの南北
のスケールと波の南北スケールが1500km程度と同じくらいであ
るということである。
Kelvin波として、
le  ( gh)1/ 4  1/ 2
gh 
N
 c le  c1/ 4  1/ 2
m
から c=30m/s としてleは1000km程度になる。
図:簡単な1次元モデルで得られた平均東
西風の時間—高度断面図。
位相
の下
降伝
播
Plumbのメカニズム
1
(c  u0 ) 2 k
 damping scale 
 c gz / a
m0
Na
1
2 
補足: Lindzen and Holton(1968)のcritical levelでの波の吸収によるQBO
 u ' w'  
A
2
k
前の議論からcritial level の上で(東西風に対してはやい波)
Critical level の下で  u ' w'  1 A 2  e 2 ここで、kは波の東西波数、   Ri  1 / 4 である。この時、平均流の式は、
2
k
u

1
2 

 u ' w' 
A
(e 2  )) / dz
t
z
2
k
 B (1  exp( 2 Ri  1 / 4 ) / dz

この式は以下のようになるであろう。

加速の概念図
u
u
 f
t
z
f は –Cr<u<Crの範囲で一定の値におかれている。
->いろいろの位相速度の波がすべてあり、波数や運動量フラッ
クスは同じということ?
Holton-Lindzen(1972) モデルでは:基礎方程式はこれま
でと同様に
u
1 
 2u
t
となる.ここで G

 z
FMW K
z 2
G
計算結果(上の方に半年振動
を入れている)
は上層の半年振動の影響を示し,28km以上で,
G 2(z28km)sin( t) ,  2 / 180day
である. FMW   Ai exp(2 mi dz) はKelvin波とRossby-gravity波の運動量フラックスで
1
N
a
Kelvin波について i
m0 
2
2 (cu0 ) k
Rossby-gravity波について分散式から
1
N
 a
k2
の南北平均を使う.
m1 
2 (cu0 )3 k 2 k
注意:Rossby-gravity波の場合,鉛直運動量フラックスは簡単に
u' w'
(1

mi
は
(u0 c))
ではなくて
(u' w'  f 2 v' ' )
N
問題点:
上の運動量フラックスの値をもつためには赤道上のRossby-gravity waveの南北風の振幅は下部境界で6msー1 程度必
要である。また2次元モデル(cf. Takahashi, 1987)によると、もっと大きな振幅(10msー1、この値は観測されている値に
比べものすごく大きい)が必要である。
HLの1次元モデルで再現されないものとして観測での西風の下方伝播が東風より速いことがある。これは前にも述べたよ
うに鉛直と南北の2次元子午面循環を考慮すれは説明可能のようである(cf. Plumb and Bell, 1982 )。
GCMの中のQBO: Takahashi(1999) 現実的なQBOが再現されて
いる。いろいろの重力波でQBOが生成されている。
重力波の1例として:以下のような波が観測で見
られる、 Takayabu et al. (1996, M. W. R.)
n=1西向き重力波の構造:
対流が2日程度で振動しているよう。
補足:3次元のmechanistic model で始めて再現した例:
但し、大振幅のKelvin波とRossby-重力波を下部境界で与え
ないとQBOは再現されない。
QBO-likeな
流れの交
代する実験
の例:
Plumb and
McEwan
(1978)、流
体力学的に
興味深い。
実験装置:下でStanding波を作る。
h  h0 cos t cos kx

h0
Re(exp( i(kx  t ))  exp( i(kx  t )))
2
例えば t=150で左の方への流れ、t=170で右の方
の流れが見える。
T=1800 days でのKelvin波の東 T=1500 days でのRossby-重
西風。振幅が観測に比べて大き 力波の南北風。振幅が観測に
いこと(15m/sくらい)。
比べて非常に大きいこと。
左が実験で得られた振動、右が理論にあてはめた結果
QBOの南北スケールについて:
Haynes(1998, Q. J. R. M. S.)の論文が役にたつであろう。2章を思い出そう。
  2u f 2  p u  f 2  p u f   p
2
 2 1  u



(

)

(
Q)

F

p
t 
y 2 p z N 2 z 

p z N 2 z p z y N 2
y 2 x y2 p z z
のような式であった。この式の一部をつかう。
圧力やNewton冷却の高さ依存を落とすと、

f 2  2u   2u
(  ) 2 2 
G
t
N z
t y 2
のようになる。ここで、準2年の変動に比べて、Newtonian dampingの
項は大きいのでおもな応答は
2
2
2

f  u
  u
G
2
2 
N z
t y2
である。応答の南北のスケールをLとし、時間変動を振動数として
=1/T、forcingの鉛直スケールをDとして、それが左辺1項のz微分とし

て応答するとする。1項と2項が同じように応答するとすれば、スケー
ル的に
f2 1
1 1

N 2 D2

T L2
のようになるであろう。f=βL とすれば、上式は
 N 2 D2
L4 

2
 
L   
 
1/ 4
1/ 2
ND 


  
のように南北スケールが決まる。  =2x3.14/2/3x107=10-7 
 =0.1、Dを10kmとすると
ND


=
1/ 2
2x10-2x104/2x10-11=1013
ND
  
  


 

 
=10-6
1/ 4
3000km
--> L=1500km程度で観測の値に近い値となる。
 0.56
数値実験の例:南北に幅広いforcing(左
図)にも関わらず、生成される東西風は赤
道域のみとなっている(右図)。
赤道域成層圏の半年振動
Dunkerton,1978:
基礎方程式はこれまでと同様に
とする.ここで
G
u 1 
 2u

F K 2 G
t
 z MW
z
は,半年振動の東風成分のみ生成するように細工してある.
G  f (t)r(z)(ue  u(z))
1,every other 90days
f (t)  
0,otherwise
z40 
r
r(z)  0 (1 tanh
)
 7.5 
2
r0  1 / 20day
Kelvin波について位相速度c=50m/s,東西波数は1を選ぶ,
またRossby-gravity波は入っていない(下部成層圏でつぶれてしまうか
ら)
v
u
y
東風加速について:非線型の子午面移流
,中緯度からの惑星
波動の効果,重力波が考えられている.どの程度の割合かは決着がつ
いていない。
西風加速についても,最近重力波が大事であるといわれている. 
NCAR GCMの半年振動:西風はおもにKelvin波と書いてある,西風が弱い,
−>たぶんGravity waveがたりないせいであろう <-対流のパラメータのせい
Sassi, F., R. R. Garcia and B. A. Boville, 1993: The stratopause semiannual
oscillation in the NCAR community climate model. J. Atmos. Sci., 50, 36083624.
GFDL:GCMの中に作られた半年振動。この場合は西風
が比較的強い風の振幅を持って再現されている。<-対流
のパラメータが違う、この場合は対流調節が用いられて
おり、調節が瞬間的におこり、そのため多くの重力波が
生成されているようである。
Hamilton and Mahlman, 1988, J. Atmos. Sci.
CCSR/NIE
S GCMでの
半年振動
中間圏界面の半年振動:成層圏界面の半年振動とは位相
が逆転している。成層圏の半年振動の風をかんじて、逆方
向の重力波が80kmまで伝わっていきそこで、波が壊れて
逆位相に半年振動が生成されていると考えられている。
様々なGCMの半年振動。上:観測だろう、
2:ベルリンモデル、3:フランスモデル、4:UGAMPモデ
ル、5:Unifiedモデル
それぞれ、ことなる結果になっている。西風が出ないモ
デルもある。