社会づくりとガバナンス

「社会づくりとガバナンス」
「市民参加」の思想
システム・ネットワーク論(融合科目)
吉田寛
2009年4月20日
情報学研究科
大学院設計について
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授業前に、情報学研究科大学院の設計につい
て簡単にお話します。
この授業では、IDプログラムの説明を中心に話
します。
高度IT人材のためのマニフェスト式教育
字が多い!!
3プログラムのマニフェスト
目的・目標
履修モデルと主な就職先
コンピテンシーマップ
就職後のコンピテンシー活用例
高度IT専門職業人
PDCA
サイクル
他大学
卒業生
マニフェスト
静岡大学 情報学部
3プログラム制 卒業生
産・社・官連携
アドバイザリー
グループ
産学共同カリキュラム開発実績(学部教育を含む)
・H17「産学協同ソフトウェア工学教育の実践力強化プログラム」
・H18「顧客指向による情報システム開発力強化プログラム」
・H18「OJLによる最先端技術適応能力を持つIT人材育成拠点
の形成」(名古屋大、愛知県立大、南山大、静岡大 共同)
3プログラム制と履修モデル(系)・主な就職先
情報社会デザイン(ID)プログラム
コミュニティ系
情報システム(IS)プログラム
システム構築系
計算機科学(CS)プログラム
ソフトウェア開発系
NPO
メディア系
行政・公共
(企画・管理)
(情報サービス)
一般企業
一般企業
マスコミ・広告
(プランナ)
(ディレクタ)
(プロデューサ)
コンテンツ作成系
情報産業
(SE)
メーカ
(設計開発)
要素技術開発系
メーカ・大学
(研究)
3プログラム制と履修モデル(系)・主な就職先
NPO
一般企業
行政・公共
(企画・管理)
(情報サービス)
コミュニティ系
情報産業
(SE)
システム構築系
ソフトウェア開発系
一般企業
マスコミ・広告
(プランナ)
(ディレクタ)
(プロデューサ)
メディア系
情報社会デザイン(ID)プログラム
コンテンツ作成系
情報システム(IS)プログラム
メーカ
(設計開発)
メーカ・大学
(研究)
要素技術開発系
計算機科学(CS)プログラム
IDプログラム
マニフェスト
【目的・目標】
ガバナンスを基本的なコンセプトとしながら,
新しい価値を創造するために,現実社会の問題を発見・分析し,
解決策を提言できる人材を育てる。
コミュニティ系
メディア系
【主な就職先】
行政、公共サービス、NPO
【主な就職先】
マスコミ、広告、出版
【言論デザイン力】
【実践的ガバナンス力】
社会調査、集団的合意形成、
IT活用(GIS)、社会データ分析、
政策・企画プランニング
IT活用(CMC)、
言論ファシリテーション
公共的情報発信、メディア情報解析、
他文化コミュニケーション
【基盤ガバナンス力】
アカウンタビリティ、コンプライアンス、
相互承認、シチズンシップ
国際コミュニ
ケーション
スキル
IDプログラム
履修モデル
コミュニティ系
メディア系
行政、NPO、
公共サービスなど
マスコミ、
広告など
コミュニティデザイン特論
○
*
地理情報システム特論
○
情報政策特論
○
電子メディア特論
*
科目
メディア・スタディーズ特論
○
○
グローバル・コミュニケーション特論
*
○
IT技術倫理と社会
○
○
インターンシップ
○
○
企業情報システム論
*
実践マネジメント特論
*
情報組織化論
*
認知科学論
*
Professional presentations in English
○
○
English thesis writing
○
○
融合科目群
○
○
*: お勧め科目
IDプログラム
コンピテンシー
科目
社
会
調
査
社
会
デ
ー
タ
分
析
メ
デ
ィ
ア
情
報
解
析
情報解析
コミュニティデザイン特論
地理情報科学特論
情報政策特論
電子メディア特論
メディアスタディーズ特論
グローバルコミュニケーション特論
IT技術倫理と社会
インターンシップ
企業情報システム論
実践マネジメント特論
情報組織化論
認知科学論
Professional presentations in English
English thesis writing
融合科目群
○: 主なテーマ
△: 関係がある
コンピテンシーマップ
○ △
○ ○
公
共
的
情
報
発
信
ア プ ラ
カ レ イ
ウ ゼ テ
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ビ ー グ
リ シ ス
テ ョ キ
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集
団
的
合
意
形
成
情報表出
○
△
○ ○
○ ○
○
△
○
△ △
○
○
○ △
○
○
相
互
承
認
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チ
ズ
ン
シ
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ク文
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△
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ン
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イ
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情報総合
△
○ ○
政
言
他
策
論
文
・
フ
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ここから授業
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お待たせしました。
今日は、「ガバナンス」という概念について、吉
田から、思想史的背景から、ネットワーク型の
社会デザイン思想としての「ガバナンス」という
流れを説明します。主に、ローカルガバナンス
の事例を中心に見ていく。
「ガバナンス」とは?
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討論や協働による合意形成・秩序形成の仕方
決定と実行の当事者(関係行為者)の参加
決定や指示はトップダウン式に限られない
合意や秩序の形成は双方向的な流れで形成
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宮川公男、山本清編著(2002)『パブリック・ガバナンス』日本経
済評論社
小林傳司(2005)「科学技術とガバナンス」(『思想』(2005)岩
波書店、No.973、pp.5-26)
「当事者の主体的な参加・活動による自治のこと」(吉
田)
ガバナンスの類型とトピックス
類型
分野
背景
基本性格
グッド・ガバナンス、グ
ローバル・ガバナンス
国連、開発援助、国
際社会
グローバリゼーション
合法性、効果、実行
ITガバナンス、ネット・
ガバナンス
情報技術
ITの普及
合法、透明性、効果
コーポレート・ガバナ
ンス、会社ガバナンス
経営、市民社会
コンプライアンス、企
業の社会的責任
(CSR)
合法性、説明、透明
性
科学技術ガバナンス、 専門性、研究、教育、
メディア・ガバナンス
ジャーナリズム
専門職社会、資格社
会
説明、透明性、参加
パブリック・ガバナン
ス、ソーシャル・ガバ
ナンス
市民パワー、民主主
義
参加、包含、透明性、
説明、合意
分権、まちづくり
参加、合法性、説明
責任、効果
市民社会、政策、
NGO論
ローカル・ガバナンス、 地域、地方自治、市
コミュニティ・ガバナン 民参加
ス
「ガバナンス」のもとの意味
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ガバナンス(Governance)
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(主に古) 管理、制御(ジーニアス英和:大修館)
支配、政治、統治、統括、管理(統治)法や組織
(リーダーズ英和:研究社)
「ガバナンス」のもとの意味

ガバナンス(Governance)
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The way in which country (or company) is governed
(or managed). Collins COBUILD ED for Al.
The action or manner of governing. Concise Oxford
ED.
Govern
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「船のかじをとる」が原義 治める、統治する、管理する、
決定する、律する、etc.(ジーニアス)
to have responsibility for making laws, managing
economy, and controlling public services. (COBUILD)
Conduct the policy and affairs of a state, organization,
or people. (Oxford)
「ガバナンス」定義
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討論や協働による合意形成・秩序形成の仕方
実行と決定の当事者(関係行為者)の参加
決定や指示はトップダウン式ではない
合意や秩序の形成は双方向的な流れで形成


宮川公男、山本清編著(2002)『パブリック・ガバナンス』
日本経済評論社
小林傳司(2005)「科学技術とガバナンス」(『思想』
(2005)岩波書店、No.973、pp.5-26)
トップダウンから水平的合意形成
へ
統治
(ガバメント)
Governnance
Government of
of
the people, by
the people, for
the people.
トップ(王権、議会、
政府など)が決定・
命令
他律的なシステム
協治
(ガバナンス)
多様かつ包括的な
な参加と協議によ
る自律的な合意形
成。自治
「グッド・ガバナンス」
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国連による定義→ガバナンスが注目される
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http://www.unescap.org/pdd/prs/ProjectActivities/
Ongoing/gg/governance.asp
「グッド・ガバナンス」=次の8つの主要な性格を
持つ意思決定のプロセスと決定が実行される
(あるいは、されない)ためのプロセス

参加、合意、説明、透明性、包含性、
実行、効果、合法性
ガバナンス 8つの基本性格
1.
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8.
決定と実行の当事者(政府もその一つでしかない)の参加
その決定と実行の必要性に関する広く深い合意
アカウンタビリティ(特に影響を受ける者への説明責任)
参加者や決定・実施のプロセスなどが透明であること
すべてのメンバーの包含(誰もが排除されずに考慮される)
一定の期間内に制定・実行されること
効果と効率(結果が社会のニーズ、自然条件などにかなう)
公平なルールを取り決め、そのフレームワークに従って合
法的に決定・実施
ガバナンスは国際援助の条件
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必ずしも西欧型の民主主義でなくともよい
しかし援助が適切に効果を挙げるには?
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受け取った援助を誰かが自分の好きなように使ってし
まうのは×
一部の者の手で勝手に分け方を考えてしまうのも×
いきあたりばったりに分けていてもダメ
いつまでも実際に分けられないのも×
で、グッドガバナンスが必要とされた
用語整理
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「ガバナンス」の語源 舵取り
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近代的政治体制と対比 水平的合意・秩序形成
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「ガバナンス」⇔「ガバメント」
国連 地域の統治状況の評価
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ガバナンス⇔非ガバナンス・ガバナンスがない。
「グッドガバナンス」⇔バッドガバナンス?
⇒ガバナンス論
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「ガバナンス」=「グッドガバナンス」を求める現代情報社
会の潮流を論じる
ガバナンスの試み?
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部活動や学部の運営(トップダウンかも)
(政府)、NPO、NGO、そして市民の知識や意見を
交えた政策決定
国連をキー(トップではない)とする国際秩序形成
インターネットの舵取りやオープンソースの開発
企業(コーポレート・ガバナンス、内部統制、etc)
メディア、言論のガバナンス
掲示板、ブログ、ネットゲーム、IT、科学技術、寄り
合い、談合?
ガバナンスの一つの形
行政への市民参加(浜松市を事例に)
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政令指定都市浜松市(平成18年)
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自立した都市へ
行政への市民の参加、協力
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浜松市市章
「計画」への参加(協議会、パブリックコメント)
「実行」への参加(指定管理者制度、地域NGO支援)
「チェック」への参加(モニター制度)
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浜松市ホームページ「市民参加」
http://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/lifeindex/participation/
「計画」への参加
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協議会
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区協議会・地域協議会は、地域住民の声を行政に反映させる
ため、行政からの諮問事項に対する答申をしたり、地域の課題
について建議・要望をしたりします(浜松市)
パブリック・コメント
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パブリック・コメント制度とは
市が計画や条例などを策定するときに、案の段階で市民の皆
さんに公表し、その案に対するご意見、ご要望などを募集し、寄
せられたご意見、ご要望などを考慮しながら最終案を決定する
とともに、寄せられたご意見、ご要望などに対する市の考え方
もあわせて公表していく一連の手続きをいいます。
「実行」への参加
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指定管理者制度
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浜松市北図
書館
図書館、公民館、体育館の民間管理
自治法の改正により民間事業者等が公の施設の管理者になる
ことも可能になりました。これを指定管理者制度といいます。民
間事業者のノウハウを活用することで、市民サービスの質的向
上やコスト削減等が期待されます。
NGO支援

「市民協働によるまちづくり」を進めている浜松市では、平成13
年度に「浜松市市民活動基本指針」を策定し、市民活動の基本
的な考え方を示しました。
「浜松市市民活動団体補助金」
「チェック」への参加
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浜松市市制モニター制度 H19年~
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市民満足度のモニタリング
政令指定都市移行時には、市民の立場から特定の施策を
チェック、評価する市政モニター制度を導入します。
インターンシップ
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教育、公開
浜松市は、開かれた市政の一環として、大学生等を対象に、自
治体の現場で地方自治について学び、また、進路の選択に向
けた職業体験の機会を提供するために、実施要綱に基づいて
インターンシップを実施します。
「参加」と「協力」のまちづくり

浜松市総合計画(平成19年度-26年度)
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第4章 都市の基本理念民主主義に基づく自治の実
践
市民の思いと行動で、市政が動いていることを実感
できる政治の仕組みは、民主主義の基本として、地
方自治において最も尊重されるべきものです。
地方自治の主権者は、私たち市民です。
「市民協働 たねからみのり」
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「市民、市民活動団体、事業者、浜松市が、お互いの
提案に基づき、地域の解決を図ろうとする事業」
「対話」「公開」「多様な関係者の協働」「支援」
ガバナンス≒自治の精神
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NPO
自治=自分たちで自分たちのことは決める
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政府
自由な主体的活動の連携
ネットワーク型
「民主主義」の精神
「ガバナンス」と呼ばれる
テーマ
専門家
大学
自治体
⇔トップで誰かが決定→下が実行
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
従来の行政
命令→実行
ピラミッド型組織
「ガバメント」
住民
政府
自治体
学校
住民
学生
戦後 民主主義の再生
権利を求める運動
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権利を求める運動 1960年代
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植民地解放運動、公民権運動、学生運動、女性の権
利運動、消費者運動
強力な政府や企業、体制に対して、人種被差別者、
消費者、女性、学生が反抗。
権利を獲得→市民
小さな政府と「ガバナンス」 1990年代
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民営化、産学官共同
成熟した公共性ベース
地域、企業、NPO、市民の協力
テーマ

「ガバナンス」という合意形成、秩序形成の仕方
のメリット・デメリットについて、自分たちのチーム
で立てた「問い」に即して、情報を整理し、「答え」
を求め、レジュメを作成しなさい。