紫外波長撮像観測データに基 づく 金星風速場の解析 中村研D2 神山 徹 イントロダクション:金星大気 高度(km) 100 80 60 40 20 0 乾燥断熱温度勾配 0 100 300 500 700 温度(K) 金星大気に投下されたプローブが観測した 大気温度の高度分布[Seiff, 1983] 全球を覆う厚い硫酸の雲 高度 40 km - 70 km に渡って存在 CO2 を主成分とする厚い大気 → 地表面での大気圧 90 atm 温室効果により 地表面では気温400度以上 金星大気スーパーローテーション 自転速度 : 1.4 m/s 地表面での太陽光加熱 コリオリ力 雲層での太陽光加熱 コリオリ力が弱い 地球と異なるシステムで維持されている大気循環 金星大気へ投下したプローブで観測した 東西風の高度分布[Schubert, 1983] 全球に渡るスーパーローテーション 気象システム 地球 時間スケール 秒 分 時 日 週 金星 月 年 偏西風 貿易風 傾圧不安定 (低気圧・高気圧) 台風 前線 10000km 空 1000km 間 ス 100km ケ ー ル 10km 秒 時間スケール 分 時 1m 月 年 子午面循環? 熱潮汐波 赤道ケルビン波・ロスビー 波 ? 積乱雲 竜巻 週 スーパー ローテーション 1km 100m 日 大気の粘 性 乱流・渦 現象を知りたい → 雲の模様・風速 紫外波長を用いた撮像観測 2006 5/20 20:50 Venus Express / VMC 昼面太陽光反射光観測 365 nm 未知の吸収物質 (SOx ?) はっきりとしたコントラスト (10 % 以上の明るさ変化) 513 nm 935 nm 1010 nm 下層雲の濃淡を反映? [高木ら @ 2009連合大会] 弱いコントラスト (3 % 以下の明るさ変化) 特徴追跡を用いた風速分布の推定 直接観測 2006 5/20 :点の探査 相補的 宇宙空間からの撮像観測:面の探査 惑星規模の気象現象を捉えるのに適してい る Venus Express/VMC 雲の模様を追いかけることで 背景の大気の流れを推測が可能 東 100 Voyager 1979 西 -100 リム観測/雲の高度観測 雲の上にあるヘイズ層を観測 高度方向に大気の特徴的な スケールを知ることができる Venus Express/VMC Galileo/SSI 雲頂の高度変化 鉛直流の向き 背景大気の温度変化 鉛直に大気を眺める 研究目的 撮像観測によって得られた雲画像か ら 惑星規模の大きな金星大気循環を探 る ・雲の特徴追跡→風速分布 ・リム観測 → 上層大気の鉛直構造 熱潮汐波・赤道ケルビン波・ロス ビー波 ケルビン波によるものと考え られる風速分布 Galileo探査機の撮像画像から 求めた平均東西風速からの 変動成分分布 Galileo / Venus Express N N Solid State Imaging system (SSI) 250 km 昼面の太陽光反射光 S Venus Monitoring Camera (VMC) 可視赤外分光撮像器(VIRTIS) 下層大気からの熱放射 S 66,000 km 解析手法/解析結果 解析前処理 - 地理緯度の導出 - カメラ歪み補正の必要性 (未解決) リム観測 - 雲の高さについて 雲の特徴追跡 - 原理 - 金星雲頂高度での風速分布 解析手法:地理座標の導出 軌道情報 姿勢情報 現在考察中 光学歪み補正 Limb フィッティング Sub-pixel 単位でLimb 推定 1 pixel のズレ → 15 km ~ 100 km のズレ → 風速に与える誤差 4 m/s ~25 m/s 0.1 pixel のズレ → 誤差 < 3 m/s フィッティングの様子 2006 5/20 16:36 Ri Ri = 127.4 [pix] 2006 12/5 6:55 Ri = 1648 [pix] リムフィッティング精度評価 太陽光入射角、衛星への出射天頂角を 考慮した模擬惑星画像 100倍の画素数でオーバーサンプリングした 後、画像を1/100に圧縮 計算値 与えた値 Center X: 128.065 128.000 Y: 127.998 128.000 R: 100.174 100.227 0.1 pixel 以下の誤差 見かけの雲の高さとカメラ歪み 光学中心 Venus Express 25軌道 441画像 r d 6170 θ 見 か け の 金 星 半 径 6150 [km] 6070 Height 線形 (Height) 6130 6110 予想される雲高度 y = -0.0009x + 6165.2 R2 = 0.8683 6090 金星半径 (6051.8 km) 6050 0 20000 40000 D2 [pix2] (円弧の光学中心からの距離)2の平均 60000 80000 見かけの雲の高さとカメラ歪み 光学中心 Venus Express 25軌道 441画像 r d 120 110 θ Height 見 100 か け 90 の 雲 80 の 高 70 さ 60 線形 (Height) y = -0.0009x + 113.41 R2 = 0.8683 [km] 50 40 0 20000 40000 D2 [pix2] (円弧の光学中心からの距離)2の平均 60000 80000 解析手法:地理座標の導出 軌道情報 姿勢情報 現在考察中 光学歪み補正 Limb フィッティング Sub-pixel 単位でLimb 推定 1 pixel のズレ → 15 km - 100 km のズレ → 風速に与える誤差 4 m/s ~25 m/s 0.1 pixel のズレ → 誤差 < 3 m/s リムでの見かけの雲の高さ 2006 12/5 6:55 散乱光の明るさ ≒ 雲粒の数に比例 高度が高くなるにつれて exp(-x/H)で減少する H : スケールハイト [km] 散乱光 反射光 (雲のスケールハイト) = 0.85 ×(大気のスケールハイ Schofield andト) Taylor, 1983 Taylor et al., 1983 リムでの見かけの雲の高さ 温度 観測値 カ規 ウ格 ン化 トし 値た 1/e フィッティング スケールハイ ト 大気の平均 分子質量 基準ピクセルからの距離[pix] 平 均 カ ウ ン ト 値 4軌道 (26 画像) 明るさ変化のスケールハイト = 4.2 ± 0.7 [km] → 大気のスケールハイト = 4.6 ± 0.8 [km] リムからの距離[pix] CO2 100% 静水圧平衡を仮定すると 227 ± 37 K リムでの見かけの雲の高さ 高度(km) カ規 100 ウ 格 化 80 ン トし 60 値 た 40 20 0 平 均 カ ウ ン ト 値 観測値 フィッティング リム高度は70 km~80 km程度 300 500 0 100 基準ピクセルからの距離[pix] 700 温度(K) 4軌道 (26 画像) 明るさ変化のスケールハイト = 4.2 ± 0.7 [km] → 大気のスケールハイト = 4.6 ± 0.8 [km] リムからの距離[pix] CO2 100% 静水圧平衡を仮定すると 227 ± 37 K 雲の高さの緯度分布 1990 2/13 5:58 365 nm X 座 標 [pix] Y Galileo / SSI Rf Ri Ri -Rf [pix] カウント値 雲の高さの緯度分布 1990 2/13 5:58 365 nm X 高? 低 高 低 高? 相 対 高 度 差 [km] Y Galileo / SSI 相対的に ・赤道域、40°-60°の雲は低い ・15°-40°の雲は高い 緯度 [deg] 雲の高さの緯度分布 VENERA 15 高? 低 高 低 高? 8.2μm 75 70 65 60 55 27μm -50 0 20 40 緯度 [deg] 60 80 Zasova et al. (2004) 見ている高度が異なる 紫外:ヘイズ層 赤外:雲頂 0 緯度 [deg] 50 紫外波長での結果と異なる 雲頂までの循環と ヘイズ層での循環が異なる ? 雲の高さの緯度分布 1990 2/16 6:28 相 対 高 度 [km] Galileo / SSI 2006 5/20 20:57 相 対 高 度 [km] VenusExpress / VMC 緯度 [deg] 連続画像からの風ベクトル推定 相互相関を用いた特徴追跡 NASA/Galileo(SSI) 相関計算 金星雲画像への適用:問題意識 様々な制限 ・装置・観測機会: - 地球: 静止軌道+高い解像度(1 km/pix) - 金星: 周回軌道+制限のある解像度(15 km/pix) ・(紫外)弱いコントラスト Galileo : S/N ≒ 100 (雲の模様)/N < 5 (ノイズが目立つ →) ・雲の特性 明確な境界に乏しい 変形、生成、消滅のため一定の形を保たない ・比較できる予報データや、 ラジオゾンデなどの同時観測データが無い NASA/Galileo(SSI) より金星に適した工夫が必要 信頼できる誤差評価の必要 連続画像からの風ベクトル推定 Correlation based correlation method [D.P.Hart. 2000] 50%重なりがあるTemplateから 求めた相関曲面を掛け合わせる 解釈:相関空間での平滑化 欠点:空間分解能が落ちる (重ね合わせた領域の平均的な移動量が求ま る) 誤差評価(Moissl 2008) 各点で求めた風 速 ある緯度帯の平均風速 用いる2枚の画像組の 撮影時間差 ΔT = 1 h ± 12 m/s ±0.4°のズレに相当 する風速範囲 連続画像からの風ベクトル推定 太陽天頂角 < 84° 衛星天頂角 < 71° (解像度 ≒ 100 km/pix) 展開 時間差 ΔT = 1 [hour] Template 12°x12° (60 x 60 pixel) Template 6°x6° (30 x 30 pixel) 誤ベクトル修 正 各ベクトルの推定誤差 ± 0.4° [Moissl 2008] ΔT = 1 h ± 12 m/s 連続画像からの風ベクトル推定 2006 5/20 東西風速 5 5 緯 度 [deg] 3° -70 17 Local Time [hour] 20 140 [m/s] 3x3、9つのbinで平滑化 7 -70 17 Local Time [hour] 20 7 140 [m/s] 空間分解能 1/9 → 10x10 deg 誤差 1/3 → ±4 m/s + 位置決定誤差 雲頂高度での平均風速 2006 5/16 – 2007 2/3 23軌道平均 東西風(西向き正) 2006/5月-6月、11月- 2007/1月、 7月-9月 (450 image pairs) 120 緯 度 [deg] Local Time [hour] 120 [m/s] 40 低緯度、Local noonに極小 Local noonから離れるにつれ風速が増大 朝夕対称の風速分布? 17 8 12 40 Local Time [hour] [Moissl, 2008] 熱潮汐波が作る風速に 特徴的な分布 雲頂高度での平均風速 2006 5/16 – 2007 2/3 23軌道平均 東西風(西向き正) 1990 2/13-2/17 Galileo探査機 0 緯 度 [deg] -20 緯 度 [deg] -40 -60 Local Time [hour] 120 [m/s] 40 低緯度、Local noonに極小 Local noonから離れるにつれ風速が増大 朝夕対称の風速分布? 17 12 熱潮汐波が作る風速に 特徴的な分布 7 雲頂高度での平均風速 2006 5/16 – 2007 2/3 23軌道平均 南北風(北向き正) 2006/5月-6月、11月- 2007/1月、 7月-9月 (450 image pairs) 5 緯 度 [deg] -20 Local Time [hour] 17 12 Local Time [hour] -20 40 [m/s] カメラ歪み、 位置あわせ誤差の影響? 8 赤道域の東西風速変動 30 1/25 1/26 1/27 1/28 1/29 1/30 1/31 2/1 2/3 2/2 2/4 平均風速 Local Time [hour] -30 16 13 16 16 13 13 16 16 13 13 16 16 13 13 16 16 13 13 16 16 13 13 まとめ/今後 解析前処理:惑星中心導出を画像処理からサブピ クセルレベルで行った →Planet-Cでの昼面観測(IR1、UVI)へ応用可能 リムの解析方法を考案 東西風、南北風の平均風速を導出 VIRTIS、VMCの解析データを組み合わせることで複 数高度の風速場を導出する 雲追跡アルゴリズムの精度向上 大気波動の抽出 雲頂高度での平均風速 2006/5月-6月、11月- 2007/1月、7月-9月 (450 image pairs) 120 17 12 Local Time [hour] 8 5 40 -20 17 12 8 Local Time [hour] [Moissl 2008] 雲頂高度での平均風速
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