デジタルアーカイブにおける権利問題 -デザインの観点より- 040930 Presentator:木本 優 ◆ デジタルアーカイブの周りに存在する『権利問題』 Point (http://www.jdaa.gr.jp/public/kenri/kani.pdf より抜粋) デジタルアーカイブにおける最大の目的は、「知的協創空間の形成」であり、 そのプロセスを生み出すためには、利用者とデジタルアーカイブ(設計者、コ ンテンツ)とのコミュニケーションを豊かにする必要がある。 ◆ 注目すべき『権利問題』は… FROM デジタルアーカイブ(コンテンツ) → TO ユーザー ↓ という関連性の中に『知的協創』というプロセスを埋め込む必要がある。 ↓ その為には、コンテンツに含まれる『権利問題』をクリアーする必要がある。 ↓ ただ単なる規制を行うのではなく、保護されるべき著作物と、誰もが利用可能な著作物とのバ ランスを整え、ある価値に基づいた「設計」の「設計」を行うことが重要 ↓ その為には デジタルアーカイブ上における『権利問題』を解決するための4つの視座 ◆ 4つの視座 デジタルアーカイブとはサイバースペース上での博物館である ↓ サイバースペース上でのコントロール(権利問題に対する)を効果的に行うには… ↓ 4つの視座 (ex.喫煙のコントロール) 「規範」 (喫煙マナーを周知する) 「法」 (法律で規制する) 「市場」 (たばこの価格をあげる) 「アーキテクチャー」 (フィルターやニコチンの量を規制する) (『CODE』-Lawrence Lessig- P153~178より抜粋) ↓ 4つの関係は相互補完的 例えば、「法」を作るだけではなく、その「法」を認知させ「規範」を植えつける 「法」によってタバコ税の導入を行うと、「市場」におけるコントロールが働く…etc ◆ 4つの視座の関連性 先ほど紹介した4つの視座、「規範」、「法」、「市場」、「アーキテクチャー」を組み替え、最適な コントロール方法を探し出すことは出来る。が、デジタルアーカイブを構築する主な主体が地 方などの自治体にある(未来的には)ということを考えなくてはならない。 ↓ つまりは、「コスト(金銭的、時間的)」を中心に考える必要があるということだ。 ↓ Ex.シートベルト 「規範」…シートベルトをしないことが格好悪い 「法」…シートベルトにおける罰則を強める 「市場」…シートベルトを付けている人には保険料を下げる 「アーキテクチャー」…自動シートベルトシステムを全車に導入する (『CODE』-Lawrence Lessig- P153~178より抜粋) ◆ デジタルアーカイブにおける権利問題の視座 法 アーキテクチャー 規範 ・現行の法のまま ・「利用許諾までの時間」 ・法に対するイメージの変化 ・「権利に対する知識」 ・法に対する認識度向上 ◆ 「法」① ・デジタルアーカイブにおけるコンテンツ(デジタルデータ)の権利 →「著作権」、「所有権」 ・デジタルデータの元の素材の権利 →「著作権」、「所有権」 ・その他 →「肖像権」 ↓ 著作権法とは… 第1条:著作物等の「公正な利用」に留意し、もって文化の発展に寄与することを目的とするもの ◆ 「法」② ・著作権 著作財産権(著作物の経済的利益を守るもの) 21条 22条 22条の2 23条 24条 25条 26条 26条の2 26条の3 27条 28条 :複製権 :上映権及び演奏権 :上映権 :公衆送信権および受信伝達権 :口述権 :展示権 :頒布権 :譲渡権 :貸与権 :翻訳・翻案権 :二次的著作物利用権 著作人格権(著作者の人格的利益を守るもの) 18条 19条 20条 :公表権 :氏名表示権 :同一性保持権 (『知的財産権』 P230~249) ◆ アーキテクチャー① 「利用許諾までの時間」 ユーザーがデジタルアーカイブ上のコンテンツを、ある目的の元で使用したいと考た 際の、その思いに対する返答の時間の問題 ↓ 山田奨治(2002)の『日本文化の模倣と創造』という本の中でも、日本の文化の一つであ る「連歌」という具体的事例をあげ、時間の重要性をといている。 「いやまことに、世に連歌ほど面白いものは…発句をいたせば面白し、脇をいたせば面 白し、頭を営めばまたひとしおの楽しみである」 「ある句にたいして、人々が30あまりの句を次々と出詠する…」 (『日本文化の模倣と創造』-山田奨治- P154~175より抜粋) ↓ つまりは、1つのコミュニティの中での知的協創を効果的に行うには、何らかの思いを 発し、即時にその思いへの返事があることが重要である。 ↓ これは現在のデザインの領域における「インタラクション」の裏側に存在する問題と 共通点を持つ。 ◆ 「アーキテクチャー」② 権利に対する知識 ユーザの「著作権」に対する知識のなさの問題 ↓ 本質的には知識を獲得する「場」、「環境」、「デザイン」が構築されていない ↓ 「デザイナーは、起こり得るエラーが実際に起こることを想定した上で、そのエラーが 起こる確率と、エラーが起こった時の影響が最小になるようにデザインしなければら ない」 (『誰のためのデザイン』-D・A・ノーマン- P14~52) ↓ つまりは、著作権のデザイナーは、上記で示したようなエラーが起きる確立を最小にデ ザインする必要があるということである。その時に着目するポイントが「対応づけ」、 「可視化」であると考えている。著作権を「対応づけ」、「可視化」を元にデザインす ることがこれからのデジタルアーカイブにおいては重要であるということである。 ↓ またこの点においてはローレンス・レッシングの『クリエイティブ・コモンズ』、文化 庁の「自由利用マーク」、林紘一郎氏の「dマーク」は大いに参考になるであろう。 ◆ 「アーキテクチャー」② 権利に対する知識 「場」「環境」「デザイン」のコスト分析 ↓ 「場」 :別途で知的財産法に関するwebサイトを構築する 「環境」 :中等、高等教育におけるプログラムに組み込む 「デザイン」:ある権利をあらわすアイコンを作成し、そのアイコンの形状により感覚 的に権利の情報をアフォードする ↓ 「デザイン」における「アーキテクチャー」を行う ◆ アーキテクチャー③ 「利用許諾までの時間」 :インタラクション ↓ デザインによるアーキテクチャーの構築 ↑ 「権利に対する知識」 :アフォーダンス、対応付け、可視化 ◆ コンテンツ これまでの話は理論的な部分にあたり、この理論をどれだけ具体化レベルに落とせるかがこ れから重要になってくる ↓ そのための第1歩として、「コンテンツ」の決定を急がなくてはならない ↓ なぜなら、著作権などの知的財産法はすべてのコンテンツに一貫した法規制を行っているの ではなく、様々なコンテンツの種類(言論、小説、映画、音楽、芸術作品…etc)に応じて、様々 な種類の規制を準備している ↓ 今回の研究におけるコンテンツは…http://www.allanwest.jp/ ◆ 現状として問題となっている部分 ・現行の知的財産法の適用範囲が主に、現実的な空間において有効なものが多く、この法を どのようにサイバースペース上に置き換えればいいのか? →サイバースペースの存在論(なんのために存在しているのか?) →その上でサイバースペース上での法はどのようにあるべきか? ・
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