信頼から見た 科学的なリスクの考察

信頼から見た
科学的なリスクの考察
加藤 源太郎
(プール学院大学)
今日の報告
問題の所在
(システム信頼とリスク社会について)
「信頼」の現代的意義
信頼とリスクコミュニケーション
今後の課題
昨年の報告より
科学と政治の境界設定
システムに特有な複雑性の縮減
システム信頼を維持できなくなった科学シス
テム
政治システムのシステム信頼を援用
→科学と政治が接触する場
信頼という行為の主体性や能動性が問題
システム信頼
人格的信頼/システム信頼
機能分化した社会においては非人格的な
信頼が現れる
「個人は、他者が自分と同じやり方で第三者
を信頼していることを信頼する」
Luhmann(1973)
ex.貨幣、医療、エンジニア
システム信頼 -2
Giddens(1990など)
「専門家システムへの信頼」
= 複雑な社会の全貌を一個人が見渡さなく
てもよい
= 諸システムに対する信頼が必要
= 近代を特徴づける社会的分業の成立与
件
リスク社会
科学システムへの信頼が成立しづらい状況
 複合的で重層的な問題
 (科学の)専門家の対立
倫理や政治という他のシステムに問題解決
の糸口を探る
「信頼」の現代的意義
システムから見た意義
 リスクの問題を「解決」できることを積極的
に表現し、システムへの信頼を維持する必
要がある
 システムが機能するための必要条件
「信頼」の現代的意義 -2
 信頼する側から見た意義
 Barber(1983)の定義
1. 自然的および道徳的秩序の永続性
2. 役割における行為者の技術的能力(competence)
3. 行為者の信託された(fiduciary)義務と責任
cf. ニクソンとカーターの不信
 不信は信頼と等価
正当な民主主義的基準と期待に照らし合
わせた現実的な評価
「信頼」の意義 -3
 信頼する側から見た意義
 制度に対する信頼の投入(Giddens)
=「能動的信頼」
 不信
理解していない:エリートモデル ×
→信頼できる領域に退潮 (Barber)
科学者は反科学ととらえることがある
 規制→政府の介入→職業の自律性の問題

信頼とリスクコミュニケーション
 リスク解決を期待されるシステム
 情報の公開・共有
 決定過程の開示・公開(=参加)
 手続き公正主義をシステム信頼の機軸に
ハバーマス的公共性論とも合致
それ自体は評価されるべき
信頼とリスクコミュニケーション -2
 リスクの帰責を分配するシステム
 創り出した危険をリスクにすりかえる危険
性(Lash, 1994)
 信頼と不信の能動的な選択が可能である
市民像
 「賢明な」選択を繰り返す市民
 責任を積極的に引き受ける生き方
信頼とリスクコミュニケーション -3
 すべてを諸個人のモラルや生き方に還元す
ることができるのか
 恒常的失業者は「選択」の結果か
 参加しない者/できない者は
cf. ダンサーインザダーク
 決定者/被影響者の溝
=リスク/危険 →被影響者の隠蔽?
今後の課題
 「参加ゼマンティク」について
 信頼/不信の境界と権威の関係
 運命論的な帰責ではなく、人為的な帰責の
論理に移行した社会的背景