YSO食連星の探査

2011/8/5 第4回ANIRサイエンスWS
YSO食連星の探査
中島 亜紗美(東大/NAOJ), 山下 卓也(NAOJ)
食連星 = 連星系を(ほぼ)真横から見た天体
a
c
b
d
視線速度
等級変化
Marales et al. (2009)
b
c
d
phase
a
b
c
d
phase
a
食連星の観測
• 複数bandのライトカーブと視線速度を測定、合わせて解析
⇒ 2つの星の質量、半径、表面重力、温度、光度を
食連星までの距離によらずに、直接かつ正確に測定可能
• 星年齢の決定に用いられる理論進化モデルを検証できる
:主星と伴星の年齢、金属量は同じ(はず)
• 測定した物理量からモデルを介して予想される主星と伴星の
年齢の差:Δτ ← ゼロになるのが理想
• Δτの大きさから、進化モデルのエラーをテストできる
NIRによる食連星観測
• これまでの食連星探査は、可視光によるものがほとんど
• <1Msunの前主系列星では、既知の食連星は僅か6つ
(Irwin et al. 2007)
• 赤外線で観測
→ これまでより赤い(=若いor低質量)食連星
• PMSの質量、半径、温度を直接測定することで、進化曲線に
制限を加えたい
ANIRによるM17の観測 (S11A)
• RA,Dec:
•
•
•
•
(18:20:25,-16:10:40)
< 0.5 Myr
2.1±0.2kpc
10’x10’を4視野でカバー
天体数(<16mag)
>18000天体
(Hoffmeister+2008)
ANIR Ks-band
ANIRによるM17の観測 (S11A)
• M17の中心領域10’x10’
• Ks-band
• 2011/5/12 4時間45分間連続で観測
• 4.2 s x 18 frame x 4 field x 18 cycle
= 75.6 s x 4 field x 18 cycle
= 1360 s x 4 field
• 短時間積分を繰り返し、明るい天体もサチらせずに測光
ダークフレーム取得
• M17観測の前後に
4.2s x 30枚ずつ
• Dark currentは
0.01e-/sec(Wikiより)
• 見えているのは、
• 傾斜パターン
• <7countの時間変動あり
• 直前に撮っていたスカイの
• 最大で~13枚目まで確認
600
400
200
0
残像
• (M17観測後の場合、)星の
残像
count
ダークフレームに見られた“残像”
y=501-1000での統計値
100
100
count
count
フレーム全域での統計値
10
10
0
10
frame 20
30
f(x)
=206*exp(-x/0.50)+25*exp(-x/7.1)+55
=206*(exp(-x/0.50)+0.12*exp(-x/7.1))+55
0
10
frame 20
f(x)=262*exp(-x/0.47)
+24*exp(-x/7.0)+6.8
2つのタイムスケールで減衰
30
(参考)星の残像減衰のタイムスケール
Flux[count]
4.2s積分で連続撮像
Apeture半径=6pix
視野固定後の撮像回数
オフセットをゼロにし、スケーリングのみをした結果、
f(x)=3.83*10^4*(*exp(-x/0.50)+0.12*exp(-x/7.1))
検出器のリニアリティ検証
• 2011/5/9取得
• ドーム内壁
• 4.2s x 11, 40s x 10, 100s x 10
• ミラーカバー
• 250s x 5, 350s x 5, 420s x 5
• 4.2s ダークフレームを引き算
後、評価
• 次のランでは、各積分時間のダー
クフレーム取得をお願いします。
• 傾斜パターンの引き残りがある
• 傾斜パターンは積分時間に依存
• グローバルな感度ムラ
• 最大で3-40%
• → 100pix x 100pixの小さな領域
ごとに評価
検出器のリニアリティ
上:ドーム内壁 下:ミラーカバー
この範囲では、~1%の精度
M17の測光対象天体数
• Sextractorで検出できた天体のうち、Δmag<0.01のもの
のみを数え上げた
• M17A
M17B
M17C
M17D
計
121天体
162天体
57天体
135天体
475天体
(ただし、視野が重複している分を含む)
YSO食連星サーベイの戦略
• 明るい天体までサチらせずに測光するために、
• 最短積分時間(4.2s)で。
• 測光サンプルを多く確保するために、
• 天体密度の大きい領域で。ただし、PSFが重なり合うほど多すぎるのは
NG
• 星とダークの残像の影響を避けるために、
• ディザリングはしない。
• 同じ視野で連続して撮像する。
(残像がスカイに埋もれるのは~5枚目以降)
• バイアスの傾斜パターンの変動が気になる(が、globalだから問題なさ
そう)
• サイエンスとしてより面白いのは、
• より若い星形成領域
• より近い星形成領域 ← 軽い天体まで受かる
• より深い観測
観測提案:ONCにおける食連星サーベイ
• オリオン大星雲の
中心領域10分角四方を
測光モニター
10 arcmin
• ~1Myr、 ~450pc
• 大質量星形成領域
• 測光対象≲1000天体
• 測光周期~15分
• Ks-band
• 相対測光
• かなた望遠鏡と同時(連
続)観測したい!
• ~10日連続で観測
2MASS K-band
半径[Rsun]
食連星による星進化モデル検証の例
主星
伴星
質量[Msun]
Keivan G. et al. 2009
ONCにおける近赤外線食連星サーベイ
• 従来より赤い食連星を
=若い、低質量
10 arcmin
見つけたい!
• オリオン大星雲の
中心領域10分角四方を
測光モニター
• ~1Myr、 ~450pc
• 大質量星形成領域
• 測光対象≲1000天体
• 測光周期~15分
• Ks-band
• 相対測光
2MASS K-band
ANIRによる観測 〜S10B期〜
• このときは、測光精度の検証が目的
• Ks-band
• 2010/10/16 4.2s x 18frame x 4field x 3 cycle x 2pattern
• 2010/10/21 4.2s x 18frame x 4field x 2 cycle x 2pattern
4.2s x 4dither x 3cycle x 4field x 2cycle
• 課題
• 明るいnebulaの背景光
• 明るい天体のサチュレーション、残像
• 相対測光の参照星選び
• オフセットの時間変化(リセットアノマリー)
• 1枚目はダークが明るい?
• ダークフレームのパターンが時間変動する?
• 感度の時間変化?
• 精度の良いフラットの作成
• リニアリティのチェック
→ S11A観測で露出時間を変化させたドームフラットの取得を
お願い致します。
明るい天体の残像
直前のフレーム
残像フレーム1枚目
明るい天体の残像
直前のフレーム
残像フレーム2枚目
明るい天体の残像
直前のフレーム
残像フレーム3枚目
残像減衰のタイムスケール
Flux[count]
4.2s積分で連続撮像
Apeture半径=6pix
Flux = b*10^(-a*x)
でフィッティング
視野固定後の撮像回数
残像減衰のタイムスケール
aの値
Flux = b*10^(-a*x)
= b*exp(-α*x)
a = 0.24
α = 0.55
残像サンプル
YSO食連星サーベイの戦略
• 明るい天体までサチらせずに測光するために、
• 最短積分時間(4.2s)で。
• 測光サンプルを多く確保するために、
• 天体密度の大きい領域で。ただし、PSFが重なり合うほど多すぎるのは
NG
• (星とダークの)残像の影響を避けるために、
• ディザリングはしない。
• 同じ視野で連続して撮像する。
(残像を気にせず使えるのは~5枚目以降)
• 「1枚目」で作ったフラットフレームは使えない!?
• サイエンスとしてより面白いのは、
• より若い星形成領域
• より近い星形成領域 ← 軽い天体まで受かる
• より深い観測
S11A期 観測提案
•
•
•
•
Ks-band, 4.2s積分, ディザリング無し, 測光標準星不要
4視野で10’x10’をカバー、15分間で1サイクル
6時間連続観測 x 2晩(2領域、ρ OphとM17)
1%精度の測光観測が行える、晴天かつ仰角が高い時間帯を希望
観測領域 ρ Oph
M17
M16
座標
16:28:58, 18:20:25, 18:18:36,
-24:28:05 -16:10:40 -13:47:24
年齢
45x10Myr
距離
125±25pc 2.1±0.2kpc
10’x10’ ~250
の天体数
(<16mag)
< 0.5 Myr
>18000
Orion
数 Myr
1 Myr
1750pc
300pc
>900
~1000
ρ Oph
Vincent et al. 2011 ApJ 726, 23G
ρ Oph
Barsony+ 1997 ApJ 112, 109
Completeness limit 14.0mag
242天体
M16
Guarcello+2010
Kmag < 16.1mag
K mag<16.1は921天体
L30
M17
FOV 330′′
with about
sources
V. ×342′′
H. Hoffmeister
et al.:18.000
CO from
young
limiting magnitude of K = 19.0 mag
Hoffmeister et al.2006 A&A 457, L29–L3