民主党の出す数字 11/23のフジ系「特ダネ」では、民主党の前原国家戦略・経済 財政担当大臣が、 こんなことを言っていました。 • 「数字はウソをつかない」 民主党が政権を引き継いだ当初と現在を比べ、 • 需給ギャップは約30兆円が約15兆円に減った • 完全失業率は5.5%から4.2%へ改善 • 有効求人倍率は0.43から0.83まで上がってきている • GDPは490兆円が514兆円へ改善 そして、こうした数字は、我々が財政についてやるべきことを しっかりやり、金融についても言うべきことをしっかり言ってき た結果だと…。 数字はウソをつかないと言うけれど… 民主党が政権を引き継いだ当初(2009年9月)と、現在(2012年11月)を比べ て、 • 数字が改善している というと、民主党の成果に聞こえますね。 確かに数字は、主観による水掛け論を抑え、定量的な議論に導く客観性が あります。例えば、節電がどれだけできたか、という場合には使用電力を見 れば分かります。しかし、家計のため、電気代を節約したい場合は、使用電 力の数値より、電気料金を見るでしょう。 数字はウソをつかないというのは正しいのでしょうが、数字のもつ位置づけ、 意味合いを、正しく読み取ることが必要だと思うのです。 前原さんは、経済がよくなっているということを言うために数字を出したと思 うのですが、だとすると、2009年9月時点の数字を出すこと、また、このデフ レ下で、名目成長率を出さず、実質成長率だけを出すことには違和感を感じ ます。 ひとまず数字の確認! 再度、民主党が言っていることを挙げます。 • • • • 需給ギャップは約30兆円が約15兆円に減った 完全失業率は5.5%から4.2%へ改善 有効求人倍率は0.43から0.83まで上がってきている GDPは490兆円が514兆円へ改善 これらの数字は何も民主党が好き勝手に捏造したもの でなく、客観的な数字です。 そして、これらの数字について一つ一つ見ていきたいと 思います。 需給ギャップについて 直近十数年の需給ギャップは以下のグラフのように なっています。 需給ギャップ 20 サブプライム関連で 初めて報告された 大規模損失 リーマンショック 麻生政権の大型 補正の効果? 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 0 -10 -20 2001/4-2006/9 小泉政権 2006/9-2007/9 安倍政権 2007/9-2008/9 福田政権 2008/9-2009/9 麻生政権 2009/9-2010/9 鳩山政権 2010/9-2011/9 菅政権 2011/9-2012/12 野田政権 小泉内閣では、財政再建/プライマリバランス改善のため、 10年と言う期間を定め、構造改革・規制緩和を掲げました。 弱肉強食だの、弱者切り捨てだの批判を浴びながらも数字 が良くなっているのは、自民党与党の成果と言えば成果だと 思います。 ・2007年初頭に、サブプライム問題が端緒をつけ、2008年に 日本への影響が顕在化、9月にはアメリカでリーマンショック という形で大事件が起こり、日本も大きな影響を受けました。 時の政権は麻生自民党内閣。「日本は今、瀕死の重病患者 なので、カンフル剤を打たないといけない」永田町内もそん な論調であったと思います。麻生内閣では真水で30兆の資 金注入をやる…とか言っていたような。 -30 -40 ・2002年から2008年初頭までは、ほぼ右肩上がりです。過去 の政権を今一度記すと、 ざっとこんな感じです。 2012 10 需給ギャップ(兆円) _ 外的要因で日本 経済が大不況に 私なりにこの数字を読み解くとこうです。 ・麻生政権下で最悪値として、40兆の需給ギャップが発生し ていますが、麻生政権下で予算を組んだ2009年に24兆くら いのところまで戻っています。 鳩山内閣発足時(2009/9) 需給ギャップは約30兆円 2012年7-9月平均 GDPギャップは約15兆円 -50 出典:内閣府 年 とすると、 ・民主党政権下で真に需給ギャップを立て直した効果は 2010年1-3月の―20兆から現在の―15兆円で、「30兆から 15兆」という言い方は手前味噌な感があります。 完全失業率について 完全失業率・季節調整値 Seasonally adjusted series 2009/9 民主党政権発 足時は5.4% 6.0 完全失業率 _Y 5.0 リーマンショック 鳩山政権 4.0 菅政権 3.0 2.0 麻生政権 サブプライム 問題発生 小泉政権 野田政権 直近の数字は4.2% 安倍政権 福田政権 1.0 0.0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 年 サブプライムローン問題が発生する以前は大体4%程度で推移しているので、大分、失業率は戻ってきていますが、 民主党政権発足時の最悪の数値と比較して「良くなった!」というのは如何なものでしょうか? 労働者側の立場の民主党が雇用の改善をしなければ、いいところは一つもありませんね。 有効求人倍率について 有効求人倍率 2012/7~9月は8.1% 1.20 有効求人倍率 _ 1.00 0.80 麻生さん、悔しいだろうな 0.60 自民党政権 民主党政権 0.40 民主党政権発足時 (2009/7~9 )は4.3% 0.20 年 ここは特にいう事はありません。 Goodです。 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 0.00 GDPについて(実質) GDP(Expenditure Approach) (実質GDP季節調整系列) デフレ経済下で、実質経済成長 率を持ち出すことは、余り適切 だと思えないが、それをどう説 得するか?それが今一曖昧。 540,000 500,000 480,000 460,000 514兆 490兆 440,000 420,000 400,000 年月 2012/ 1- 3. 2011/ 1- 3. 2010/ 1- 3. 2009/ 1- 3. 2008/ 1- 3. 2007/ 1- 3. 2006/ 1- 3. 2005/ 1- 3. 2004/ 1- 3. 2003/ 1- 3. 2002/ 1- 3. 2001/ 1- 3. 2000/ 1- 3. 1999/ 1- 3. 1998/ 1- 3. 1997/ 1- 3. 1996/ 1- 3. 1995/ 1- 3. 380,000 1994/ 1- 3. 金額(10億円) _ 520,000 民主党発足時の490 兆、今の514兆という 数字から考えて、実質 GDPのことを言ってい るのだと思います。 冒頭に書きましたが、 今の経済が良いのか、 悪いのか。そのため に数字を見るのでは ないのでしょうか。上 に書いた通り、デフレ 化で実質GDPだけの 数字を取り上げるの は如何なものかと。 そこで次のページに 名目GDPを載せます。 GDPについて(名目) 名目GDPで見ると、リーマン ショック後、元のレベルの戻れ ていないことが分かる。 GDP(Expenditure Approach) (名目GDP季節調整系列) 530,000 520,000 500,000 490,000 480,000 470,000 460,000 450,000 民主党内閣 440,000 年月 2012/ 1- 3. 2011/ 1- 3. 2010/ 1- 3. 2009/ 1- 3. 2008/ 1- 3. 2007/ 1- 3. 2006/ 1- 3. 2005/ 1- 3. 2004/ 1- 3. 2003/ 1- 3. 2002/ 1- 3. 2001/ 1- 3. 2000/ 1- 3. 1999/ 1- 3. 1998/ 1- 3. 1997/ 1- 3. 1996/ 1- 3. 1995/ 1- 3. 430,000 1994/ 1- 3. 金額(10億円) _ 510,000 リーマンショックを境に明らか に落ち込んだままである状況 が分かります。 とは言え、リーマンショックが あり、そして円高があり、ギリ シャ危機だの、東北大震災だ の、タイの大洪水だの、大き な外的経済阻害要因があり、 なかなか経済の舵取りが難し い局面ではあったのであって、 この名目GDPの落ち込みから、 即座に民主党が駄目だという のは厳しい気が私はしていま した。が、前原さん自らが「政 治は結果責任だ」みたいな威 勢のいいことを言う割に、本 当に日本は大丈夫なの?と 考えれば、当然気にすべきこ うしたデータ・現実を直視する 数字を敢えて避けているよう な発言をするところ、そこが気 に入りません。
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