Probabilistic Method 第1回 輪講の進め方 1: Basic Method 輪講の進め方 日時: 基本的に金曜日の夕方 進め方: 1回で2人が発表 (1回目と2回目のみ変則) 前期: 5章までを予定 後期: 残り(9章まで) 1.1 THE PROBABILISTIC METHOD Probabilistic Method (確率的手法) 離散数学の多くの問題への取り組みに 対して強力なツールの1つ。 ある性質をもつ構造に対して適切な確率空間 を定義し、その確率空間内でその性質が 正の確率をもつことを示す。 例: Ramsey Number R(k, l) n節点の完全グラフKnの枝を2色(赤・青) で塗り分けるとき、どんな塗りわけ方をしたとしても 赤枝のみを持つ完全部分グラフKkか青枝のみを 持つ完全部分グラフKlが存在するような最小のn ・完全グラフ どの2頂点間にも枝が存在するグラフ Lower Bound for R(k,k) 定理1.1.1 k 1 2 n もし、 2 k 1 であれば、R(k,k) > n. 全ての3以上のkに対して、 R(k,k) > 2 k / 2 が成り立つ。 証明 確率½でグラフの各枝を赤か青で塗り分 ける。 k頂点を固定(集合R)したときに、 そのk頂点から成る完全グラフの全枝が 赤か青で塗られている事象をARとする。 k 1 2 Pr( AR ) 2 証明 n 集合Rの要素数は全部で k 個。 事象ARのうち少なくとも1つの事象が起こ る確率は高々、 k 1 2 n 2 k 1 事象ARが起こらない確率が存在する。 R(k,k) > n 証明 n = 2 k/2 k 1 2 n 2 k とすると、 21 k / 2 n k k 2 / 2 1 (k 3) k! 2 定理1.1.1 n頂点の完全グラフを赤か青の2色で塗 りわけるときに、全枝が赤か青かで塗られ ている2log n節点の完全部分グラフが存 在しないような塗り分け方が存在する。 実際に塗り分けると・・・ 塗り方は有限だから全部調べれば、もち ろん条件を満たす塗りわけ方は見つかる。 ⇒ 現実的な時間でできそうにない。 しかし、実は・・・・ 事象ARのうち少なくとも1つの事象が起こ る確率は高々、 k 1 2 n 2 k 1 k / 2 2 k! n 2 k k2 /2 1 (k 3) ⇒ 適当に塗っても高い確率で成功する!! 1.2 GRAPH THEORY T(V,E) : tournament(有効グラフ) V : 節点集合 E : 枝集合 正し、枝集合の中には(x,y)か(y,x)の どちらかしか含まれない。 (x,y) : xがyを負かすという意味 Tが性質Skを持つ 全てのk人の集合に対して、 k人全てに勝つ人間が存在する。 例: T3={ V, E }, V={1, 2, 3} E={(1,2) , (2,3) , (3,1)} ⇒ 性質S1をもつ。 問題 全ての有限値kに対して、性質Skをもつ tournamentは存在するか?? 定理1.2.1 n k nk ( 1 2 ) 1 であれば、そのとき もし、 k 性質Skをもつn節点のtournamentが存在する。 証明 ランダムなn節点のtournamentを考える。 ランダムなn節点のtournament n個の節点から2個を選び、その2節点を つなぐ有向枝として(x,y)か(y,x)の どちらかを確率1/2で選ぶ。 ⇒ tournamentの数は全部で 2 n 2 個。 証明 節点集合Vからサイズkの部分集合Kを 1つ取り出し、集合Kの人間(節点)全員に 勝利する人間(節点)がいない事象をAkと おく。 k Pr( Ak ) (1 2 ) nk 証明 n 集合Kの選び方は全部で k 個。 事象Akのうち少なくとも1つの事象が起こ る確率は高々、 n Pr( Ak ) Pr( Ak ) (1 2 k ) n k 1 K V K V k |K |k |K |k 事象Akが起こらない確率が存在する。 性質Skをもつtournamentが存在。 支配集合:U 無向グラフGの全ての節点が節点部分集合 Uに含まれているか、U内の節点に隣接して いる。 U 定理1.2.2 n節点のグラフG=(V,E)の最低次数がδ 1 ln( 1) であるとき、高々、サイズ n 1 の支配集合をグラフGはもつ。 証明 確率p∈[0,1]でVの節点を選ぶ。 X : 上で選んだ節点集合 Y : V-Xの中でXに隣接してない節点集合 |x|の期待値はpn X 隣接節点 集合 Y 証明 Vから任意に選んだ節点vがYに入る確率 Pr(v Y ) (1 p) 1 |X|+|Y|の期待値 np n(1 p) ln( 1) p 1 とすると、 1 ln( 1) |X|+|Y|の期待値 n 1 1 決定性アルゴリズム 実際に支配集合になるように節点を1つ 1つ選んでいく。 各ステップでまだカバーされてない節点を 最も多くカバーする節点を選ぶ。 C(v) : 節点vとその隣接節点の集合。 節点を選んでいくときに、まだカバーされ ていない、節点uの数をrと仮定する。 仮定より、集合C(u)の(重複も許した) 要素の和は、r(1+δ)以上。 よって、各集合C(U)に含まれる要素数は 少なくとも、r(δ+1)/n個。 なので、次の要素を選んだ後に カバーされてない変数の個数は 1 r 1 n 1 つまり、各ステップで、 1 n の割合で減少していく。 ln( 1) n ステップ繰り返す。 1 n 個となるので、 1 ⇒ 残りの変数が これを支配集合の中に入れてしまえば、 定理1.2.2の値が達成される。 カット グラフGの頂点集合Vを2つの互いに素な 集合V1とV2に分けること。 カットのサイズ 枝の端点の一方がV1にもう一方がV2に 含まれるような枝の数。グラフGにおける カットサイズの最小値を枝連結度という。 補題1.2.3 G(V,E)を最小次数δのグラフとして、 V=V1∪V2をカットサイズがδ以下となる ものとする。そのとき、どの支配集合Uも V1,V2内の両方に頂点をもつ。 証明 補題が誤りであると仮定する。 ⇒ U ⊆ V1 とする。 V2から任意の節点vを選ぶ。 v1,v2,…,vδをvの隣接節点とする。 証明 各i (1≦i≦δ)について以下のように 枝を張る。 ① vi∈ V1なら、 ei ={v,vi}をはる。 ② vi∈ V2なら、 ei ={u,vi}をはる。 ・・・ Uが支配集合なので必ず隣接 する節点uが少なくとも1つは 存在する。 v1 v V2 V1 u v2 証明 ①、②ではったδ本の枝は全て異なって いて、しかもカットされている。 ⇒ 補題でグラフのカットサイズはδより 小さいことを仮定している。 ⇒ 矛盾 ⇒ 補題を誤りとした仮定が誤り。 1.3 COMBINATORICS Hypergraph (超グラフ) V : 頂点集合 E : 頂点集合の部分集合族 例 V : { 1, 2, 3, 4, 5} E : { ( 1, 2, 4), ( 2, 3, 4, 5), ( 1, 3), ( 1, 4, 5)} n-uniform E内の各集合がちょうどn頂点を含む。 超グラフHが性質Bをもつ。 頂点集合Vの要素を2色に塗り分けたときに、 E内に同色の頂点のみを要素とする集合が 存在しない。 Hypergraph (超グラフ) V : 頂点集合 E : 頂点集合の部分集合族 例 V : { 1, 2, 3, 4, 5} E : { ( 1, 2, 4), ( 2, 3, 4), ( 1, 3, 4), ( 1, 4, 5)} m(n) : 性質Bをもたないようなn-uniformな 超グラフの枝の最小可能数。 定理1.3.1 n-1 全ての枝の数が2 よりも少ないn-uniform な超グラフは性質Bをもつ。 n-1 つまり、m(n)≧2 証明 n-1 H(V,E) : n-uniform かつ枝数が2 よりも 少ない超グラフ。 Vの要素をランダムに2色で塗り分ける。 証明 各枝において、Aeを枝が単色となる事象 とおく。 1 n Pr( Ae ) 2 よって、 Pr( Ae ) Pr( Ae ) 1 eE eE 事象Aeが起こらない確率が存在する。 n-1 m(n) ≧ 2 Upper Bound for m(n) 定理1.3.2 e ln 2 2 n m(n) (1 o(1)) n 2 4 Upper bound for m(n) V : v個の要素(頂点) χ : v個のうちa個を1つの色で塗り、 b (= v-a)個をもう1つの色で塗る。 S : Vの部分集合でn個の要素をもつ。(枝) Cχ : χの塗り方をしたときに、Sの要素が全 て同一色になる事象 a b n n Pr(C ) v n 証明 a b n n Pr(C ) v n y n Vを偶数とする。 が凸関数なので、 上式はa=b=v/2のときに最小 v / 2 v / 2 n n Pr(C ) v n 2 v / 2 n p v n 証明 S1,S2,…,Sm : Vの部分集合でn個の要素を もつ。(枝集合) Aχ : χの塗り方をしたときに、 S1,S2,…,Sm の どの集合も要素全てが同一色で塗られて いない事象。 Pr( A ) (1 p) m 証明 v 色の塗り方は全部で2 通り Pr( A ) 2 (1 p) v m 上式の値を1より小さくすれば、 S1,S2,…,Sm の集合(枝集合)のどれかは 同一色で塗られた要素のみが存在している。 ⇒ m(n) ≦ m 証明 v ln 2 前スライド式で、m とすると、 p 2 (1 p) 2 e v m v pm 1 次にv/pを最小化することを考える。 証明 2 v / 2 n 1 n v 2i 1 n 1 n n 2 / 2 v p 2 ~2 e v i 0 v i n v n 3/ 2 の条件の間は、 v 2i i i 1 O( 2 ) e v i v v 2 あとは v n 2 / 2 をとる。 i i2 O ( 2 ) v v (k,l)-system F {( Ai , Bi )} h i 1 を任意の集合の部分 集合の対の族とする。 F が (k, l)-system | Ai | k , | Bi | l Ai Bi (all i 1 i h) Ai B j (all distinct i, j 1 i, j h) 定理1.3.3 F {( Ai , Bi )} h i 1 k l h k が (k,l)-systemのとき、 (3,2)-system { { { { { {1,2}, {1,4}, {2,3}, {2,5}, {3,5}, {3,4,5} {2,3,5} {1,4,5} {1,3,4} {1,2,4} }, }, }, }, }, { { { { { {1,3}, {1,5}, {2,4}, {3,4}, {4,5}, {2,4,5} } {2,3,4} } {1,3,5} } {1,2,5} } {1,2,3} } 証明 h X ( Ai Bi ) とおき、ランダムなXの i 1 順序πを考える Xiを順序π上でAiの要素がすべてBiの要 素の前にくる事象とする。 k l Pr( X i ) 1 l 事象Xiは同時におこりえない。 もし、そうでないと仮定して、 πをAiの全ての要素がBiの前に、 Ajの全ての要素がBjの前に現れるような 順序を与えるものとする。 Aiの最後の要素がAjの最後の要素よりも 後に現れることはないとしても一般性を 失わない。 Ai Aj Bi Bj よって、 k l 1 Pr( X i ) Pr( X i ) h 1 l i 1 i 0 h h 1.4 CONBINATORIAL NUMBER THEORY アーベル群の集合の部分集合をAとする。 Aがsum-freeとは、(A+A)∩A=φ (*) a1+a2=a3となるような、 a1,a2,a3∈Aが存在しない。 定理1.4.1 0でないn個の整数を要素としてもつ 全ての集合B={b1,…,bn}はサイズ |A| > n/3 を満たすsum-freeな部分集合A を含む。 証明 pをp>2max|bi|を満たすp=3k+2の素数と する。 C={k+1,k+2,…,2k+1}のk+1個の要素を もつ集合とする。 ⇒ Cは巡回群Zp(pの剰余環)のsum-freeな 部分集合 |C | k 1 1 p 1 3k 1 3 証明 一様分布{1,2,…,p-1}から整数x をランダムに選ぶ。 d1,d2,…,dn を di≡xbi (mod p) と定義。 (*) xが1,2,…,p-1の全ての値をとりうるので、 diはZpに含まれる全ての値をとりうる。 |C | 1 Pr( d i C ) p 1 3 (*) xとdiが1対1に対応してないと仮定する。 xbi ≡ x’bi (mod p) となる x, x’が存在。 つまり、 (x-x’)bi = pk とおける。 biはpと互いに素なので、x-x’がpの倍数になる。 よって、x ≡ x’ (mod p) 今だと、x = x’ となるので矛盾。 よって、xとdiは1対1に対応している。 証明 一様分布{1,2,…,p-1}から整数x をランダムに選ぶ。 d1,d2,…,dn を di≡xbi (mod p) と定義。 (*) xが1,2,…,p-1の全ての値をとりうるので、 diはZpに含まれる全ての値をとりうる。 |C | 1 Pr( d i C ) p 1 3 証明 前スライドより、diが集合Cに含まれるよ うな要素biの個数はn/3より大きい。 よって、定理をみたす部分集合|A|が 存在する。 1.5 DISJOINT PAIRS F : X={1,2,…,n}のm個の異なる部分集合 d(F) : Fの中でdisjointな対の数。 d (F ) | {( F , F ' ) : F , F 'F , F F ' } | 定理1.5.1 (1/2+δ) FをX={1,2,…,n}のm=2 個(δ>0)の 異なる部分集合の族とするとき、 d (F ) m 2 2 / 2 証明 定理の式が誤ってると仮定する。 Fからt個の集合をランダムに取り出す。 tは十分に大きな正の数とする。 証明の概要 ① |A1∪A2∪…∪At| > n/2 となる確率が 正であることを示す。 n/2 ② 上の集合がXの2 個より多くの異なる 補集合とdisjointであることを示す。 ①、②の矛盾より定理を証明。 証明 Pr(| A1 A2 ... At | n / 2) S X ,|S |n / 2 Pr( Ai S , i 1,..., t ) 2 (2 n n/2 /2 ((1 / 2 ) ) n t ) 2 n (1t ) v(B)=|{A∈F : B∩A=φ| と定義すると、 v( B) 2d (F) 2m 2 2 / 2 BF V(B)はAとdisjointな集合の数で、 d(F)はdisjointとなっている対の数に なっているので、v(B)はd(F)の2倍に なる。 Yを全てのAiの要素とdisjointである集合 B∈Fの数の値をとるランダムな変数とする。 t v ( B ) 1 t E (Y ) (v( B ) / m) t m m m BF t 1 2d (F) 1 t 2 / 2 t m 2m m m Y≦mより、 1t 2 / 2 Pr(Y m )m t 2 / 2 あとは、 t 1 1 / , m 1t 2 / 2 とすれば、証明終了。 2 n/2
© Copyright 2024 ExpyDoc