日語文法研究 (大学院) 6月4日(木)~ 担当 神作晋一 第15章 単文から複文へ ――従属節のいろいろ ねらい: 述語が表す出来事が一つだけの単 文に対して、述語が二つ以上認めら れる複文について考えます。 第15章 単文から複文へ ――従属節のいろいろ キーワード: 単文、複文、主節、従属節、従属度、テ形 接続、連用形接続、ナガラ形接続、条件 節、連体修飾節、時間節、引用節、逆接、 並列接続、因果関係 第15章 単文から複文へ ――従属節のいろいろ §1 単文と複文 §2 ナガラ形接続 §3 テ形 §1 単文と複文 §1 単文と複文 述語が二つ以上の文:学習者の誤用 「*文法が難しくて、説明してください」 「*買い物に行ったら、リストをもって行きます」 「文法が難しいので、説明してください」 「買い物に行くときはリストlistをもって行きます」 「*昨日勉強した前にテレビを見ました」 昨日勉強する前にテレビを見ました。 §1 単文と複文 述語が二つ以上の文:学習者の誤用 「*文法が難しくて、説明してください」 「文法が難しいので、説明してください」※「から」も可 「*買い物に行ったら、リストをもって行きます」 「買い物に行くとき(は)、リストlistをもって行きます」 「*昨日勉強した前にテレビを見ました」 昨日勉強する前にテレビを見ました。 →述語のつなぎ方(接続) §1 単文と複文 単文と複文:定義しておく 単文:述語が1つ 複文:述語が2つ以上 節:主語と述語 があるもの 複文の構成要素 主節:主要な出来事をあらわす 従属節:それ(主要)以外をあらわす 例:風邪を引いたので、学校を休みます。 2つ以上の出来事 従属節 と 主節 §1 単文と複文 従属節の従属度: テンスやアスペクトを持つか 主節と従属節が同じ主語か別々か 節としての独立度の判断 テ形接続、連用形接続、ナガラ形接続 条件節、連体修飾節、時間節、引用節 接続助詞 ※(主節と従属節)主語の一致or不一致 独 立 度 が 高 い §1 単文と複文 (1)太郎は学校へ行ってサッカーをした。 (2)太郎は本を読み、次郎はテレビを見た。 テ形接続、従属節にテンス(ル・タ)がない。主節 にある。 連用形(マス形)接続、従属節にテンス(ル・タ)が ない。主節にある。 (3)次郎はテレビを見ながら食事をした。 ナガラ形接続、従属節にテンス(ル・タ)がない。主 節にある。 §1 単文と複文 (4)雨が降ると、運動会はできません。 (5)時間があれば来てください。 (6)太郎が来たら、相談しましょう。 →条件節 ト バ タラ ナラ 18課 §1 単文と複文 独立度が高まり、従属節もテンスを持つ (7)太郎が[花子からもらった]本を読んだ。 (8)大阪へ行ったとき、大阪城を見物した。 連体修飾節 16課 従属節→[主節の補語の修飾部分] 時間節 17課 「太郎は[来ない]と言った。」 引用節 Taro said that he will not come here. §1 単文と複文 さらに節としての独立度が高いもの (9)太郎は病気だから、今日、学校を休む。 (10)山田は忙しいけれど、田中は暇だ。 (11)太郎は成績がいいし、態度もよい。 接続助詞でつなぐ 19課 §1 単文と複文 主語の一致と不一致 主節と従属節の主語が異なる場合 従属節の主語はガで、スコープは従属節内 主節の主語はハで、スコープは文の終わりまで 「太郎は[次郎が買った]雑誌を読んだ」 「太郎は[荷物が届いた]とき家にいなかった」 主節と従属節の主語が一致する場合 「太郎は[(太郎が)きのう買った]雑誌を読んだ」 (↑省略) §2 ナガラ形接続 §2 ナガラ形接続 ナガラ節 動詞の語幹、形容詞の辞書形、判定詞の「であ り」にナガラがついたもの 主節と従属節の主語が一致する。 (12)次郎はテレビを見ながら食事をした。 (13)*次郎は、太郎がテレビを見ながら食事をした。 「テレビを見る」「食事をする」→次郎 「テレビを見る」 →太郎、「食事をする」→次郎 (14)*太郎がテレビを見ながら次郎が食事をした。 「テレビを見る」 →太郎、「食事をする」→次郎 §2 ナガラ形接続 2つの意味:述語の性質による ①ナガラ節の述語が動態述語 付帯状況 ②ナガラ節の述語が状態述語 逆接 §2 ナガラ形接続 ①ナガラ節の述語が動態述語 付帯状況 「花子は泣きながら歩いた」 「太郎は音楽を聴きながら食事をした」 主たる活動「歩く」、付帯状況「泣く」 cf「花子は歩きながら泣いた」→「泣く」が主 主たる活動「食事をする」、付帯状況「聴く」 cf「太郎は食事をしながら音楽を聴いた」 →「聴く」 が主 →話し手は重要度の高い情報を主節にできる §2 ナガラ形接続 ②ナガラ節の述語が状態述語 逆接けれども 「貧しいながら、楽しく暮らした」 「不満がありながら、そのことを言えずにいる」 「ある」状態動詞 「彼は若いながら、しっかりとした考え方をする」 イ形容詞「貧しい」 イ形容詞「若い」 「事実を知っていながら、知らないそぶりをした」 「~テイル」状態述語 §3 テ形 §3 テ形 日本語教育でも早い段 階で導入 テ形の前後は主語が変 わらない(15)~(21) (15)太郎は親切で賢い。 並列表現 (16)太郎は、体育が得意で音楽が苦手だ。 (17)太郎は、ピアノが弾けて歌も歌える。 (18)太郎は、ピアノが弾けて人気がある。 (19)太郎は、学校へ行って勉強した。 (20)太郎は、働きすぎて病気になった。 (21)太郎は、大学入試に受かって上京した。 (22)太郎は一年生で、次郎は三年生だ。 §3 テ形 (15)太郎は親切で賢い。 (16)太郎は、体育が得意で音楽が苦手だ。 A「太郎は親切だ」B「太郎は賢い」 →「太郎は賢くて親切だ」も可 A「太郎は体育が得意だ」B「太郎は音楽が苦手だ」 →「太郎は音楽が苦手で体育が得意だ」も可 [A+B]の並列表現 等価[B+A]も可 §3 テ形 (17)太郎は、ピアノが弾けて歌も歌える。 (18)太郎は、ピアノが弾けて人気がある。 [A+B](B+A)の解釈 (15)(16)と同様 ① [A+B](B+A)の解釈 →(15)(16)と同様 ②「人気がある」ことの秘密が「ピアノが弾ける」こと にある。 →原因や理由(ピアノ)[従属]と結果(人気)[主] →テ形の解釈が文脈に依存 §3 テ形 (19)太郎は、学校へ行って勉強した。 1.「学校へ行く」 2.「勉強をする」 →「時間的な前後関係」 「太郎は勉強して学校へ行った」。 →1. 「勉強をする」 2. 「学校へ行く」 §3 テ形 (20)太郎は、働きすぎて病気になった。 「働きすぎる」→「病気になる」 →「働きすぎたら病気になる」 →「因果関係」 「*太郎は、病気になって働きすぎた」 §3 テ形 (21)太郎は、大学入試に受かって上京した。 ①時間的前後関係 → 1.「大学入試に受かった」 2.「上京した」 ②原因と結果 → 「大学入試に受かった」 → 「上京した」 →(正確に解釈するには)文脈の支えが必要 §3 テ形 (22)太郎は一年生で、次郎は三年生だ。 状態述語で主語二つ 「太郎が一年生だ」「次郎が三年生だ」 →並列関係 「次郎は三年生で、太郎は一年生」 §3 テ形 テ形接続の主節に制約 Aテ形従属節の主語が状態述語の場合 B依頼や命令など、話し手から聞き手への働 きかけを表す述語 「*Aパソコンが必要で、B買ってください」 「*Aエアコンが古くて、 B取り替えてください」 「*A文法が難しくて、 B説明してください」 §3 テ形 テ形接続:述語の性質や意味によって変わる 並列接続 時間的前後関係、因果関係 順序変更が可能 順序変更が不可能 「語形と文の構造」(形式)は 単純 意味解釈の文脈依存度が高い 複雑
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