龍の子太郎の物語

龍の子太郎の物語
■ハイクの設定■
龍の子太郎(たつのこたろう)と山の仲間達の大冒険。
「山の葉の小僧(やまのはのこぞう)」に扮し
た子供達と熊の熊五郎が、太郎を助けながら様々な困難を乗り越えていく。
■ハイクへの導入■
○ 読み聞かせによるハイクへの導入。
熊五郎を頭に山の葉の小僧達が森に集合。読み手の前に座らせる。
○ 読み聞かせ用の内容は、絵本のような装丁にして雰囲気をだす。
既存の絵本に読み聞かせ内容の書かれた用紙を挟んでも良い。
○ 読み聞かせる場所は、静かで、子供達が話しに集中しやすい場所を設定する。
ハイクに関係ない人達が大勢いる場所、落ち葉がガサガサするような場所、子供達の興味をひ
くようなものがある場所などは避ける。読み聞かせの間、目を閉じさせて話に集中させるなど
の工夫をしても良い。
○ 読み聞かせをする場合、なるべくゆっくりと読む。
○ 読み聞かせを頼む場合、漢字の読み方を確認しておく(ルビを振っておくと良い)。
「龍の子太郎」を例にあげると、
「たつのこたろう」なのか、
「りゅうのこたろう」なのか読み
方を確認しておく。これが原因で子供達が混乱することがある。
<読み聞かせ内容>
むかし、むかし、その昔、ここからずっと北の方の山奥に貧しい村がありました。村人は日が昇ると
畑仕事に出掛け、空に星が輝くまで働きましたが、いつもお腹をすかせていました。山の畑はとても小
さくて、とても痩せた土地だったので、どんなに働いてもほんの少しの食べ物しかできなかったのです。
それでも村人は「一粒(ひとつぶ)は千粒(せんつぶ)になれ、二粒(ふたつぶ)は万粒(まんつぶ)
になれ」と祈るように言葉を唱えては小さな畑に種を蒔くのでした。
その村にお婆さんと男の子が 2 人寂しく暮しておりました。男の子は名を太郎と言いました。太郎は
とても怠け者で、年老いて腰の曲がったお婆さんを助けもせず、それどころか、いつもお婆さんにキビ
団子を 30 個作ってもらっては山に遊びに行き、山の動物達と相撲をとって一日遊ぶのでした。そして
太郎の体には龍(りゅう)のウロコのようなアザがあったので、村の子供達は太郎を見ると「龍の子太
郎はなまけもの、龍の子太郎は龍(りゅう)の子だ!」とはやしたてるのでした。でも、太郎はそんな
村の子供達を気にするふうもなく、やはり山に遊びに行くのでした。
そんな太郎にも一人だけ友達がいました。それはアヤと言う女の子でした。アヤはとても優しい女の
子で、とても上手に笛を吹きました。アヤが笛を吹くと、沢山の動物達がアヤの笛の音色に寄ってきて、
アヤの周りでウットリと耳を傾けるのでした。そしてアヤの笛を聴き終わると今度は太郎と相撲を始め
るのでした。
太郎はアヤとふたり、毎日楽しく動物達と遊んでいましたが、ある晩、大変なことが起きました。ア
ヤのお爺さんが「アヤが、アヤが、アヤが鬼にさらわれた!」と太郎の家に飛び込んできたのでした。
「アヤが鬼にさらわれたって!ジイ様、本当か?」太郎はアヤのお爺さんに聞きました。
「本当だとも、
いつも山でウロウロしている赤鬼に連れて行かれちまった。きっと山奥の黒鬼の所に連れて行ったに違
いねぇ。どうすればいいだ・・・。」アヤのお爺さんはそう言うと頭を抱えてその場にしゃがみこんで
しまいました。
笛の上手なアヤ、いつも優しいアヤ、太郎の大好きなアヤ、そんなアヤが鬼にさらわれてしまった。
太郎は真っ暗な夜空を見上げ、両手をぐっと握り締め、アヤの優しい笑顔を思い浮べながら「アヤを助
けるのはオラしかいない!オラが助ける!」と誓い、そしてお婆さんに「オラ、アヤを助けに行く!」
と言ったのでした。そんな太郎を見てお婆さんは、「今まで遊んでばかりいて心配しておったが、今の
太郎は立派な男じゃ。今なら太郎のオッカアのことを話してもいいだろう・・・」と言い、太郎のお母
さんについて話し始めました。
太郎のお父さんは、太郎がお母さんのお腹にいる時に死んでしまい、お腹の大きなお母さんは、お婆
さんと二人で暮していました。お父さんがいないので、お父さんの代わりにお母さんが山仕事に行くの
ですが、お腹に赤ん坊がいるお母さんを村人達は気の毒がって、いつもお母さんに昼ご飯の支度をして
おくように頼むのでした。そんなある日、お母さんは川に水汲みに行き、そこで大きな岩魚(いわな)
を三匹捕まえました。お母さんはみんなの喜ぶ顔を思い浮べながら岩魚を焼いたのですが、お腹に赤ち
ゃんがいるのでお腹がすいてたまりません。それでついつい岩魚を一匹食べ、2 匹食べ、そして 3 匹と
も食べてしまいました。すると、なんてことでしょう。お母さんの姿はみるみる龍に変わったのでした。
太郎の住む貧しい村には、
「岩魚を 3 匹食べると龍になる。」と言う言い伝えがありました。貧しい村の
暮らしの中で岩魚を 3 匹食べてしまうことは、とても重い重い罪だったのです。
龍になったお母さんは、しばらくして太郎を産みました。そして龍の姿で太郎をお婆さんのところに
預けにやってきて、「龍になってしまった私を許してください。この子をよろしくお願いします。もし
泣いたらこの玉を与えてください。
」と言い残し、暗い空にかけあがって行きました。
玉は龍の目でした。太郎はその目をお乳のかわりにして大きく育ちました。そして太郎が 3 歳になっ
た時、突然激しく空が荒れ、稲妻がきらめいたと思うと雲の中から龍になったお母さんの声が聞こえて
きました。
「私はずっと北の湖に行きます。太郎をよろしくお願いします。」龍は悲しそうにそう言うと
北の空に消えていきました。
お婆さんの話しをじっと聞いていた太郎は、「婆さま、オッカアは龍になったんだな。そして北の湖
に行ったんだな。オラ、アヤを助けたら、オッカァに会いに行く!」そう言って旅支度をはじめました。
お婆さんは太郎にキビ団子を沢山作って持たせました。そして太郎は夜が明けるとともに村を旅立った
のでした。
■龍の子太郎登場■
導入部分の読み聞かせが終了したら間髪をいれずに太郎が登場する。太郎は腕組みをして、考え事を
しているような表情で登場し、熊五郎が立ち上がって太郎に声をかけ、スタンツを始める。
<スタンツ>
熊五郎
太郎さん、太郎さん!
太郎
やぁ、熊五郎に山の葉の小僧達じゃないか。
熊五郎
こんにちは、太郎さん。実は風の噂でアヤさんが赤鬼にさらわれたとか・・・。どうしたも
のかと木の葉の小僧さん達と話していたんですよ。
太郎
オラはこれからアヤを助けに鬼の岩屋に向うところだ。ただ、鬼達を退治するにオラ一人の
力では・・・。
熊五郎
太郎さん、オラ達もアヤを助けたい。一緒にお供させてください。
太郎
それはありがたい。一人より大勢の方が心強い。
熊五郎
太郎さん、オラに良い考えがある。まず山の天狗様のところに行って、天狗様に百人力を授
けてもらおうよ。百人力を授けてもらえば鬼なんてひと投げだ。
太郎、
それはいい考えだ!まず天狗様のところに行こう!
(木の葉の小僧に向って)
じゃぁ、みんなアヤを助けに行くぞ!
行くぞ!(こぶしを振り上げる)
小僧
おぉ!(こぶしを振り上げる)
太郎と熊五郎のスタンツの後に子供達を立ち上がらせ、掛け声をかけさせる。声が小さかったら大き
な声が出るまでかけさせて士気をあげる。以後、すべてのポイントにおいて、挨拶、掛け声などを子供
達に徹底させる。
太郎を先頭に次のポイントに向う。
■天狗山■
○ このポイントでは、天狗の百人力修行と称してフィールドアスレチックをさせる。
○ 遊具は、天狗が手本を示し、注意事項を子供達に伝えてから行なわせる。
○ 修行の終了後、子供達に竹のお猪口を渡し、天狗酒(百人力の薬)を飲ませる。
<スタンツ>
天狗は座禅を組んで修行中。修行中の天狗に近寄って声をかける。
太郎
天狗様、こんにちは。
天狗
おぉ、太郎ではないか。また相撲勝負にきたのか?
太郎
天狗様、アヤが鬼にさらわれてしまいました。アヤを助ける為に天狗様に百人力を授けても
らいたい。
天狗
アヤがさらわれたとなると力を貸さぬわけにはならぬな。百人力の修行は厳しいぞ。覚悟し
て修行するのだぞ。では、ついて参れ!
丸太歩き・空中ブランコ・ロープ回り・ターザンロープの遊具に挑戦させる。
<スタンツ>
天狗
修行はこれで終わりだ。よくぞ成し遂げた。では、百人力を授けるとしよう。これは天狗草
と蛇とミミズとゲジゲジを煎じて作った天狗酒じゃ。これを一口飲むと体に力が沸いて来る
はずじゃ。では、太郎、飲め。
まず、太郎が天狗酒を大変不味そうに飲む。
太郎
おぉ、何だか力がムクムクと沸いてくる!
さぁ、みんなも飲め!
続いて木の葉の小僧達にも天狗酒を飲ませる。
太郎
天狗様、力が沸いてきます。
天狗
太郎、それが百人力じゃ。鬼の住む岩屋はこの山の向こうじゃ。見事鬼を退治してアヤを助
け、必ず母に会うのだぞ。
太郎
天狗様、ありがとう。
■ニワトリ長者■
○ このポイントでは水汲みゲームをさせる。
○ 水汲みの礼に、ニワトリ長者は太郎に鬼退治に使うボールの入った宝箱とオヤツを渡す。
若干のオヤツタイムを取る。
<スタンツ>
ニワトリ長者が寂しそうに座っている。
太郎
こんにちは。
長者
旅のお人、何処へ行きなさる?
太郎
鬼の岩屋に鬼退治に。
長者
ほー、鬼退治にと・・・。
ならば、鬼退治に役立つものをあげよう。ただしちょっと仕事をしてもらいたいのだが・・・。
見ての通り、この屋敷にいるのはニワトリ長者と言われたワシだけ。使用人はワシを嫌って
皆出て行ってしまった。
・・・と言うことで、畑に水をやるのも一苦労。その井戸から水を汲みあげてあそこの桶に入
れてくれないだろうか。
水汲みゲームをさせる。
長者
ありがとう。水汲みが出来て助かった。これからは人に優しくするよ。
約束どおり、これをあげよう。鬼退治に使ってくれ。それとこれもあげよう。美味しい菓子
じゃ。
宝箱(鬼退治で使うボール)と菓子袋をもらう。太郎は菓子袋を覗き込んで・・・。
太郎
こんな食べ物みたこともない・・・これは美味しいのか?
長者
ホッペが落ちそうなほど美味しいぞ。
太郎
ちょっと味見・・・。
なんて美味しいんだ!
世の中にはこんなに美味しいものがあるんだなぁ。こんなものがオラの村にあったら、岩魚
3匹の為にオッカアは龍にならずにすんだのに・・・。
さぁ、小僧さん達も食べろ。
オヤツを子供達に渡して栄養補給させる。
太郎
さぁ、アヤを助けなきゃ、みんな行くぞ!
長者
気をつけて行きなされよ。
太郎
ありがとう。絶対にアヤを助け出してくる。さようなら。
<水汲みゲーム>
2本の紐をつけた瓶を用意。2人一組になり、それぞれが紐を持ち協同してバケツから水を汲み、別
のバケツに水を運び入れる。2チームによる競争にし、合図があるまで続ける。終了の合図は、遅い方
のチームが一巡したところでする。
■アヤ探し■
○ このポイントでは、アヤの笛の音を頼りに岩屋の中からアヤを見つけ出す。
<スタンツ>
ポイント手前で立ち止まる。
太郎
どうやら、この向こうに鬼の岩屋があるらしい。ちょっと様子を見てくるからここで待って
いてくれ。鬼に見つかるといけないから絶対にここから動いちゃだめだぞ・・・。
太郎がポイントのメンバーに到着の合図を送り、その合図で岩屋の中から音をさせる。
太郎
みんな、岩屋からアヤの笛の音が聞こえてるぞ。アヤの笛の音を頼りにアヤを探し出してア
ヤを助けよう。
ゲーム開始位置に移動して「アヤ探しゲーム」を開始。
太郎
アヤは、どうやらこの岩屋の中らしい、さぁ、岩屋をあけるぞ。
岩屋からアヤ登場する。
アヤ
太郎、助けてくれてありがとう。
太郎
その綺麗な着物はどうしたんだ?
アヤ
黒鬼にこれを着て笛を吹くように言われたの。
太郎
そうか、世の中にはそんな綺麗な着物があるんだなぁ。
アヤ
それより、黒鬼はあそこの砦よ!(砦の方向を指差す)
太郎
よし、黒鬼を退治するぞ!行くぞ!
山の葉の小僧にトキの声をあげさせる。その声を聞いて黒鬼が登場。黒鬼は砦の上から叫ぶ。
黒鬼
お前は誰だ!
太郎
オラは太郎だ!お前を退治しにきた!
黒鬼
退治だと!できるものならやってみろ!
太郎
行くぞ∼!
太郎を先頭に黒鬼退治のポイントまで走る。
<アヤ探しゲーム>
ダンボールで作った岩屋を3つ準備し、アヤを含む3人がそれぞれの箱に一人ずつ入り、それぞれ違
う楽器の音を鳴らし続ける(アヤは笛)。子供達は目隠しをして、3つの岩屋から聞こえる楽器の音を
頼りにアヤのいる岩屋にたどりつく。低年齢の子供・怖がる子供には、リーダーまたは保護者が付き添
う。子供達がこれと思った岩屋にたどり着いたら、その岩屋の側に子供達を座らせて全員が終了するま
で静かに待たせる。全員が終了したら、どの岩屋にアヤが入っているのか、順番に岩屋を開けていく。
■鬼退治■
○ 階段にペットボトルで作った鬼をおき、踊り場からボールを投げつけて倒して進む(鬼退治ゲーム)。
○ 踊り場から子供達が落ちないように監視する。
<スタンツ>
ペットボトルの鬼の群れの後ろに黒鬼が登場。
黒鬼
わははははは、良くぞここまで来たと褒めておこう。
しかし、わしの子分どもは簡単にはやられないぞ。今のうちにさっさと村に帰るが良い!
太郎
何を!オラがお前を退治してやる!
黒鬼
できるものならやってみるがいい。わははははは。
黒鬼は不敵な笑いをして砦に姿を消す。
太郎
くそぉ!退治してやる。
そうだ!ニワトリ長者にもらった武器でやっつけよう!
鬼退治ゲームをし、終了後、砦の最上階にあがる。
太郎
さぁ、黒鬼を捕まえろ!
子供達につかまえさせる。黒鬼は座り込む。
太郎
参ったか。
黒鬼
参りました。お許しください。
太郎
これからは心を入れ替えて悪さをしないと誓うか?
黒鬼
誓います。その証にこの手鏡と千里の馬を差し上げます。
この手鏡は様々なものを映し出す鏡。そしてこの馬は「天空をかけろ」と唱えると白馬とな
って山をひとっ飛びします。
太郎
では、許そう。
太郎は差し出された二つの宝をしげしげと眺める。
(袋に手鏡と白馬のはりぼてを入れておく。
)
太郎
アヤ、オラはオッカアのところに行かなきゃならねぇ。アヤはこの馬に乗ってジイ様のとこ
ろへ戻れ。
アヤに手鏡と馬を渡す。
アヤ
わかったわ。ジイ様のところに戻ります。太郎は早くカカ様を早く見つけてね。では、先に
村に戻ります。
太郎
気をつけていけよぉ。
アヤは手を振りながら、子供達より先に階下に降りる。
太郎
無事にアヤを助けることができた。次はオッカアに逢いに北の湖に行くぞ!
さて、どちらに向ってよいものやら・・・。とりあえずここを出よう。
階段を下りる。
<鬼退治ゲーム>
ペットボトルの鬼をボールで打ち落とす。3人ずつ横並びになり、順番にボールをぶつけていく。
■不思議な扉■
○ このポイントではキムズゲームを行う。
<スタンツ>
砦の近くに旅人が休憩している。
太郎
さて、北の湖はどっちかな・・・。あっ、あの人に聞いてみよう。
ちょっとお尋ねしますが、北の湖はどっちの方向かしりませんか?
旅人
北の湖はあっちだけど、高い山を五つ越え、さらに雪女の住む恐ろしい場所を通らないと行
けないぞ。お前さん達のように子供では無理だ。
太郎
でも、どうしてもオッカアを探しだしたいんだ。
旅人
そうか、では良いことを教えてあげよう。この近くにからくり屋敷がある。そこの扉をくぐ
ると不思議なことに山を五つ越えてしまうのだ。からくり屋敷までの道に赤い紐がところど
ころ結んである。それを探しながら行けばよい。
太郎
ありがとう。
みんな、赤い紐を捜そう。
<キムズゲーム>
木に結んだ赤い紐を頼りにエンディングポイントまで進む。違う色の紐も仕掛けておく。
■エンディング■
○ エンディングは、からくり屋敷と称したロッジの中で影絵風のペープサートで行なう。
○
ロッジの中に入ったら、子供達を舞台の前に静かに座らせる。
○
読み手と読み手を照らす係りは舞台の向かって右手に立つ。
<龍の子太郎の最後の物語の内容>
★白色でライトアップ
さて、からくり屋敷の扉をくぐった太郎はどうなったでしょう。旅人が言う通り山を5つ越えた太郎
は、恐ろしい雪女が住むという雪野原にたどり着きました。「よし、ここを抜けたら北の湖だ!」太郎
はそう叫ぶと雪を踏みしめながら進みました。
★雪女のペープサート・吹雪の効果音・青色でライトアップ
しかし、しばらく歩くうちに雪がちらつき始め、そのうち激しい吹雪となり、雪女達が現れては消え、
「行けるものなら行ってみるがいい。」と太郎に氷るような冷たい息を吹きかけて声高く笑うのでした。
太郎は、「オッカアに逢うまではこんなところで倒れるわけにはいかねぇ!」と心の中で何度も何度
も繰り返しながら一歩一歩前に進みましたが、やがて雪の中に倒れてしまいました。
どのくらいたったでしょう。太郎は夢の中でアヤの声を聞きました。「オラはあの世とやらにきたの
か?でもアヤの声がする・・・。」太郎はそう思いました。
★アヤのペープサート・白色でライトアップ
「太郎!、太郎!」今度ははっきり自分を呼ぶアヤの声を聞きました。太郎がゆっくり目をあけると
そこには心配そうなアヤの顔がありました。
「太郎、良かった、気がついたのね。」アヤは嬉しそうに言いました。
「村に帰って太郎のことを考え
ながら鏡をみていたら突然太郎の姿が映ったの。太郎が雪女に襲われているのを知って千里の馬に乗っ
て飛んできたのよ。助かってよかった。さぁ、この馬に乗ってカカ様に逢いに行きましょう。」
太郎は起き上がるとアヤと千里の馬に乗り、北の湖にたどり着きました。北の湖は山と山に囲まれた
とても広い湖でした。
★龍を登場させる。青色でライトアップ
湖の岸辺に立った太郎は、「オッカア、太郎がきたぞ!オッカアに逢いに来たぞ!いるのなら姿を現
してくれ!」と湖に向って叫びました。太郎の声は山々にこだまして湖中に響き渡りました。
すると水面がゆれ、恐ろしい龍が姿を現しました。龍は両目とも見えないようでした。龍は静かに太
郎に近づくと「太郎?太郎だね。私の目は何も見ることはできないけれどお前のその声で、お前がどん
なに立派に育ったかわかります。」太郎は龍の首に抱きつきました。龍の見えない目から大粒の涙が流
れました。
しばらく2人で再会を喜びあった後、太郎は意を決したように言いました。「オッカア、オラはここ
に来るまでにいろんな所をみてきた。ニワトリ長者は使用人に逃げられて困っていたが、立派なお屋敷
に住み、広い田や畑があって、今までに一度も食べたことのない甘い食べ物があった。黒鬼を退治した
時は、アヤは見たこともない綺麗な着物を着せられていた。もしオラ達の村が貧しくなければ、オッカ
アは岩魚を三匹食べただけで龍にならなくてすんだんだ。そう思うとオラは悔しくて仕方がねぇ。オラ、
広い田んぼが欲しい。広い田んぼを作って村の人を呼びたい。この広い湖の水を海に流して田んぼにで
きないだろうか?」
太郎の言葉を黙って聞いていた龍は、「太郎、お前は本当に立派になった。この湖が無くなれば私の
住む所は無くなってしまうが、お前の言う通りにしましょう。」と言い、
「さぁ、太郎、私の背中に乗り
なさい。」と太郎を背中に乗せました。太郎を乗せた龍は空高く舞い上がりました。すると青かった空
に黒雲がわき上がり、稲光がきらめきました。
★黄色と赤色を交互にライトアップして稲光の雰囲気を作る。雷の効果音。
雷雲にのって龍は何度も何度も山に体をぶちつけました。龍の体から赤い血が流れても龍は辞めませ
んでした。
★がけ崩れの効果音。
そしてついに山はごう音とともに崩れ、湖の水は海に流れ出し、そこに広い広い土地が生まれました。
★白色でライトアップ・太郎と母のペープサート
するとどうでしょう、龍がみるみる人になり、美しい女の人が立っていました。それはまさしく太郎
の母でした。
「太郎、太郎、お前の姿が見えるよ。」
「オッカア、ずっと会いたかった。
」
太郎と母はしっかり抱き合い喜びあいました。
そして、母と再会し、広い田んぼを手に入れた太郎は、そこに村人を呼び寄せ、アヤと結婚し、母と
ともに幸せに暮したのでした。めでたし、めでたし。
<影絵風ペープサート>
舞台セット
竹を組んで毛布をかけて舞台にする。背景には白の無地のシーツをはる。
ライト
ライトはバックのシーツに光をあてる。
ダンボールに色セロハンをはった板を準備してライトの色を変える。
ペープサート
影絵風になるように、黒色で作り、切り抜いた場所には色セロハンをはる。
龍の人形
黒色で立体的に作る。頭は箱でつくり、胴体は布で作る。