5.3, 5.4 D2 岡本 和也 5.3 Ramsey Number の下限の改良 The Local Lemma を利用する。 Ramsey Number の復習 R(k, l) n節点の完全グラフKnの枝を2色(赤・青)で 塗り分けるとき、どんな塗り分け方をしたとしても、 赤枝のみを持つ完全部分グラフKkか青枝のみを 持つ完全部分グラフKlが存在するような最小のn。 完全グラフ どの2頂点間にも枝が存在するグラフ。 Ramsey Number の復習 R(k, l) n節点の完全グラフKnの枝を2色(赤・青)で 塗り分けるとき、どんな塗り分け方をしたとしても、 赤枝のみを持つ完全部分グラフKkか青枝のみを 持つ完全部分グラフKlが存在するような最小のn。 R(3, 3) = 6 Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, k) ) ランダムに辺に色を塗る。 S ・・・ 完全グラフ Kn の k 頂点からなる頂点集合 AS ・・・ S の頂点間の枝が単色になる事象 Pr(AS) = 2 2 k C2 1/2 1/2 1/2 AS は他のほとんどの事象 AS’ と互いに独立である。 S と S’ が2頂点以上共有していない場合 ・・・ 互いに独立である。 S と S’ が2頂点以上共有している場合 ・・・ 互いに独立でない。 互いに独立でない S’ は多く見積もっても n頂点(Kn) k頂点(S) k C 2 n C k 2 以下である。 The Local Lemma; Symmetric Case の復習 事象 A1, A2, …, An がある。 任意の事象 Ai に関して Pr(Ai) ≦ p 任意の事象 Ai は最大 d 個以外の事象と互いに独立。 ep(d+1) ≦ 1 ならば Pr ni1 Ai 0 全ての事象が起きない可能性がある。 Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, k) ) ランダムに辺に色を塗る。 S ・・・ 完全グラフ Kn の k 頂点からなる頂点集合 AS ・・・ S の頂点間の枝が単色になるイベント 2 p Pr(AS) = AS は他のほとんどのイベント AS’ と互いに独立である。 2 k C2 S と S’ が2頂点以上共有していない場合 ・・・ 互いに独立である。 S と S’ が2頂点以上共有している場合 ・・・ 互いに独立でない。 互いに独立でない S’ は多く見積もっても n頂点(Kn) k頂点(S) k C 2 n C k 2 以下である。 d Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, k) ) Proposition 5.3.1 ep(d+1) ≦ 1 e 2 2 k C2 k C 2 n C k 2 1 1 ならば R(k, k) > n > 2 1 o1k 2 k / 2 e ヒント en C n k k p. 26 の 3.1.1 より2倍良くなった。 k The Local Lemma 互いに独立でない事象が多いと効果が薄い。 symmetric な場合、k が大きくなるにつれて d が大きくなる。 symmetric でない場合 (k = l) を考える。 さらに、l が小さい場合を考える。 例えば、R(k, 3) Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, 3) ) 辺を確率 p で青色に塗る。(後は赤色に塗る。) T ・・・ 完全グラフ Kn の3頂点からなる頂点集合 AT ・・・ T の頂点間の枝が青色になる事象 S ・・・ 完全グラフ Kn の k 頂点からなる頂点集合 BS ・・・ S の頂点間の枝が赤色になる事象 Pr(AT) = p3 Pr(BS) = 1 p k C2 AT は 3C2(n – 3) < 3n の AT’ と nCk 以下の BS と独立でない。 BS は kC2(n – k) < k2n/2 の AT と nCk 以下の BS’ と独立でない。 The Local Lemma; General Case の復習 事象 A1, A2, …, An がある。 Ai, Aj が独立でない場合、(i, j) ∈ E とする。(必要十分条件) 0 xi 1 (1 ≦ i ≦ n) 任意の事象 Ai に関して、 Pr Ai xi (i , j )E (1 x j ) ならば Pr n i 1 n Ai 1 xi i 1 全ての事象が起きない可能性がある。 Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, 3) ) 辺を確率 p で青色に塗る。(後は赤色に塗る。) T ・・・ 完全グラフ Kn の3頂点からなる頂点集合 AT ・・・ T の頂点間の枝が青色になる事象 S ・・・ 完全グラフ Kn の k 頂点からなる頂点集合 BS ・・・ S の頂点間の枝が赤色になる事象 Pr(AT) = p3 Pr(BS) = 1 p k C2 AT は 3C2(n – 3) < 3n の AT’ と nCk 以下の BS と独立でない。 BS は kC2(n – k) < k2n/2 の AT と nCk 以下の BS’ と独立でない。 Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, 3) ) Pr Ai xi (i , j )E (1 x j ) AT : BS : 1 p Ai = AT ならば xi = x Ai = BS ならば xi = y p x1 x 1 y 3n 3 k C2 y1 x k 2n / 2 n Ck 1 y n Ck ならば R(k, 3) > n > k2 c log 2 k 最も n が大きくなるように p, x, y を定めると・・・ (c は定数) Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, 3) ) R(k, 3) > c k2 / log2k 1961年に Erdös が複雑な確率的手法で 求めたものと一致している。 R(k, 3) > c’ k2 / log k [Kim ‘95] R(k, 4) > k5/2+o(1) The Local Lemma を用いないどんな証明よりも 良い結果である。 5.4 Geometric Result ユークリッド空間 R3 が open unit ball で充満している。 任意の点( x ∈ R3 )が k 個以上の open unit ball に含まれているとき、 R3 の k-fold covering という。 1-fold covering は単に covering ということもある。 k-fold covering F を互いに素な F1 と F2 に分解し、 F1 と F2 がそれぞれ covering となっているとき、 分解可能(decomposable)という。 1 open unit ball (本当は3次元) Mani-Levitska and Pach (1988) 任意の k ( ≧ 1 )に対して、 解不可能な k-fold covering を作成した。 どの点も c 2k/3 個以上の open unit ball でカバーされていない ような k-fold covering は分解可能であると示した。 いささか驚くべき現象であると述べられている。 正確な記述は、Theorem 5.4.1(次ページ)。 (個人的見解) 分解不可能な k-fold covering を作成しようとすると、 多くの open unit ball に覆われるような点が出来てしまう。 分 Theorem 5.4.1 F = {Bi}i∈I を k-fold covering とする。 R3 のどの点も t 個以上の open unit ball に 含まれていない。 e・t 3 218 / 2 k-1 ≦ 1 ならば F は分解可能である。 Theorem 5.2.1 を利用して導く。 Proof of Theorem 5.4.1 ハイパーグラフ H = (V(H), E(H)) V(H) は F = {Bi}i∈I Ex は x (∈ R3) を含んでいる open unit ball の集合 E(H) は Ex の集合 但し、Ex = Ey の場合、どちらか一方しか含まない。 1 V(H) = {1, 2, 3} E(H) = { {1}, {2}, {3}, {1, 2}, {2, 3}, {1, 2, 3}} 2 x 3 y Ex = {2}, Ey = {2} Proof of Theorem 5.4.1 主張 任意の枝 Ex は t 3 218 本未満の枝としか依存関係にない。 Ex に含まれる頂点と同じ頂点を含む枝は t 3 218 本未満である。 半径4の球の体積は 半径1の球の体積の 43 = 26 倍である。 Bj’’’’ Bj’’’ Bj’’ x Bj’ 1以下 3以下 Bi 4以下 どの点も t 個以上の open unit ball で カバーされていないため、 半径4の球に最大 26t 個含まれる。 m 個の球が重なったとき、 最大 m3 個の部分に分かれる。 よって、主張が正しいことがわかる。 Bj m 個の球が重なったとき、 最大 m3 個の部分に分かれる? 2次元 2m 本 m +1個目 m2 + 2m + 1 = (m + 1)2 展開 m 個の円 m 個の円が重なった時、 最大 m2 個の部分に分かれる。 3次元 m 個の球の中に、m +1 個目の球を入れる。 さらに、無理やり展開する。 2次元の議論から、 最大 m2 個の部分に 分かれている。 m3 + m2 + 1 < (m + 1)3 m 個の球が重なった時、 最大 m3 個の部分に分かれる。 Proof of Theorem 5.4.1 主張 任意の枝 Ex は t 3 218 本未満の枝としか依存関係にない。 Ex に含まれる頂点と同じ頂点を含む枝は t 3 218 本未満である。 半径4の球の体積は 半径1の球の体積の 43 = 26 倍である。 Bj’’’’ Bj’’’ Bj’’ x Bj’ 1以下 3以下 Bi 4以下 どの点も t 個以上の open unit ball で カバーされていないため、 半径4の球に最大 26t 個含まれる。 m 個の球が重なったとき、 最大 m3 個の部分に分かれる。 よって、主張が正しいことがわかる。 Bj Proof of Theorem 5.4.1 ハイパーグラフ H の有限のサブハイパーグラフ L を考える。 L の各枝は k 個以上の頂点からなる。(k-fold covering) L の各枝は最大 d < t 3 218 本の L に含まれる枝と依存関係にある。 Theorem 5.2.1 ハイパーグラフ H’ = (V’, E’) 各枝 (∈ E’) は k’ 個以上の頂点からなる。 各枝 (∈ E’) は最大 d’ 本の他の枝と依存関係にある。 2k’-13 218 ≦ 2k’-1 e(d’+1) ≦ e・t ならば H’は2彩色可能である。 単色の枝が無い Theorem 5.4.1 の仮定 (e・t 3 218 / 2 k-1 ≦ 1) より、L は2彩色可能である。 Proof of Theorem 5.4.1 ハイパーグラフ H の有限のサブハイパーグラフ L を考える。 L の各枝は k 個以上の頂点からなる。(k-fold covering) L の各枝は最大 d < t 3 218 本の L に含まれる枝と依存関係にある。 Theorem 5.2.1 ハイパーグラフ H’ = (V’, E’) 各枝 (∈ E’) は k’ 個以上の頂点からなる。 x Ex = {3, 3, 5, 5 8, 9} 9 各枝 (∈ E’) は最大 d’ 本の他の枝と依存関係にある。 2k’-13 218 ≦ 2k’-1 e(d’+1) ≦ e・t ならば H’は2彩色可能である。 単色の枝が無い Theorem 5.4.1 の仮定 (e・t 3 218 / 2 k-1 ≦ 1) より、L は2彩色可能である。 青の頂点を F1 とし、赤の頂点を F2 とすれば、L は分解可能である。 Proof of Theorem 5.4.1 Compactness Argument (Theorem 5.2.2 と同じ) 有限のサブハイパーグラフ L が分解可能である。 位相空間・開被覆・コンパクト・ the axiom of choice (選択公理)で うんたらかんたら・・・ ハイパーグラフ H が分解可能である。
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