船の低温排熱を活用して発電 ~港湾内の環境保全を目指した 内航船舶用排熱回収システムの開発~ 講演内容 1.研究プロジェクトの概要 2.排熱利用スターリングエンジンの開発 3.排熱回収システムの性能特性 4.実海域におけるフィールド試験 5.排熱回収システムの実用化検討 6.まとめ (独)海上技術安全研究所 平田 宏一 (株)eスター 赤澤 輝行,坂口 諭 東 海運(株) 井上 敏彦,飯田 光利 1.研究プロジェクトの概要 開発コンセプト ●必要最小限の電力を貯蔵する。 ●設置スペースが小さい。 ●既存船への設置が可能である。 ★2 kWで2日間の蓄電 ★10 kW×10時間の利用 ●研究実施体制(平成17~19年度) (独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構 基礎的研究推進制度 「港湾内の環境保全を目指した内航船舶用排熱回収システムの開発」 (独)海上技術安全研究所 課題名:「排熱回収システムの基本設計と総合評価」 ・排熱回収システムの基本設計と性能評価 (株)eスター(松下電器社内ベンチャー) •課題名:「排熱回収用スターリングエンジンの開発」 •スターリングエンジンの開発と排熱回収用熱交換器に関する研究 東 海運(株) •課題名:「運航実態の評価並びに実海域における実証実験」 •運航実態の調査並びに評価 2.排熱利用スターリングエンジンの開発 スターリングエンジン 加熱と冷却を繰り返す外燃機関 2つのピストンと熱交換 器で連続的な運転をさ せている。 実用的な性能を得るた めに,高圧ヘリウムま たは水素を使用する。 ●多段式スターリングエンジンの開発経緯 H17年度 システム設計 実験用エンジン 1号機開発 H18年度 実験用エンジン 2号機開発 H19年度 実験用エンジン 3号機開発 制御システム開発 実海域フィールド試験 多段式スターリングエンジンのイメージ ●実験用スターリングエンジン1号機 仕様および目標性能 実験用スターリングエンジン(1号機) ピストン径 100 mm ストローク(DP) 36 mm ストローク(PP) 28 mm 作動ガス ヘリウム 定格ガス圧力 3~4 MPa 定格ガス温度 280~300℃ 定格回転数 1000 rpm 目標出力 500 W ヒータ管材質 銅合金 再生器 SUS製積層金網 クーラ管材質 SUS304 発電機 誘導式 ●高性能化のためのエンジン構造 ●低温な熱源で作動させるために銅製ヒータ を採用。(ただし,腐食対策が必要) ●無潤滑ピストンシールを保護するための直 動機構。 銅製ヒータ(φ6×t1.0×64本) スコッチ・ヨーク機構 ●実験用スターリングエンジン2号機 ●1号機の運転結果を踏まえて熱損失の低減を図った形状とした(基本構造に変更なし)。 ●熱損失低減のためのエンジン構造 ●再生器内の圧力損失を50%低減(200W→100W)。 ●再生器ハウジングの薄肉化による熱伝導損失低減。 再生器ハウジングの強度解析結果 ●実験用スターリングエンジン3号機 基本設計指針 ●作動空間の主要寸法は2 号機と同じとし,ヒータ形状 は変更しない。 ●低コスト化のために,機 構部の基準面を変更(クラ ンクケースの簡略化)。 ●フランジ部のボルト寸法・ 本数の見直し(メンテナンス 性向上)。 ●低コスト化のためのエンジン構造 ベースフランジ クランクブロック スコッチ・ヨーク機構 溶接式クランクケース ●クランクブロックは将来的に鋳物(ア ルミダイキャスト)をイメージした形状。 ●溶接構造とし,精度(垂直度,位置 精度)が必要なのは2箇所。 ●排熱利用スターリングエンジン ●制御システムの開発 ●排ガスの流量・温 度の変動。 ●バッテリ充電終了 時等の負荷変動。 ●バッテリ充電ライ ンとは別に制御回 路(抵抗)を取り付け る。 排熱利用スターリングエンジンの制御システム【概念 図】 ●制御システム ●スターリングエン ジンの回転数を自 動制御して,安全に 充電するシステムを 開発。 3.排熱回収システムの性能特性 ディーゼルエンジン仕様 型式 MU323DGSC 立型4サイクル シリンダ数 3 シリンダ径 230 mm ストローク 380 mm 定格出力 350 PS (257 kW) 定格回転数 420 rpm ディーゼルエンジン 実験条件 ●ディーゼルエンジンの回転数を420 rpm一定 として,負荷を変化させて,排ガス温度を調整。 ●スターリングエンジンは上流から1100,1000, 950 rpmで運転。 ●発電出力 ●排ガス温度400℃ において,2号機の発 電出力は560W。 ●排ガス温度400℃ において,全発電出 力は1.3kW。 ●熱効率 ●エンジン効率(取り 入れた熱量に対する 発電出力の割合)は 6~8%。 ●排熱回収率(全排 ガス熱量に対する発 電出力の割合)は 1.5%程度。 4.実海域におけるフィールド試験 セメント専用船『パシフィックシーガル』 ●実海域におけるフィールド試験 ●船舶への搭載 ディーゼルエンジン仕様 型式 S165L-UN X400kVA 立型4サイクル シリンダ数 6 シリンダ径 230 mm ストローク 380 mm 定格出力 353kW (480PS) 定格回転数 1200 rpm ●フィールド試験(東京-函館航路) ●排ガス温度は 330~370℃。 ●最高発電出力 は700W程度。 ●充電量は530W 程度。 ●約36時間の連 続運転。 ●田子の浦ー大船 渡航路にて,制御 システムの動作確 認。 ●大船渡-東京航 路にて,最高発電 出力900W。 5.排熱回収システムの実用化検討 実験用スターリングエンジンの運転時間(H20.5.24現在) 高温空気 運転 ディーゼル ディーゼル 排ガス運転 排ガス運転 (陸上) (船上) 合計 1号機 780 101 91 972 2号機 830 63 83 976 3号機 1500 27 50 1577 ●3号機 陸上にて耐久試験中 単位:時間 ●実用化のための技術課題 ●熱交換器の腐食対策,長寿命化 フィールド試験終了後のヒータ ●エンジンの耐久性能 振動による配管の破損 ●多段式エンジンの最適化 ●安全性を踏まえたシステム開発 ●長期に安定したシールの開発 ●船舶の電力需要とのマッチング ●実用化のための開発フローチャート ●適切な目標設定, 出力・コスト・寸法の バランスが取れたエ ンジン開発が重要で ある。 ●普及させるために は,導入コストと経済 性のバランスを考え る必要がある。 ●排熱回収電力を有 効に利用できる電気 推進船に適用。 ●量産による低コス トかが期待できる陸 上施設への適用。 6.まとめ (1) 内航船舶の運航実態や蓄電池技術について調査結果に 基づき,排熱回収システムの基本設計を行った。 (2) 高性能化や低コスト化を考慮し,低温排熱で作動する3台 の排熱利用スターリングエンジンを完成させた。 (3) 3台のスターリングエンジンを多段に配置し,400℃のディー ゼルエンジン排ガスにより加熱することで,最大発電出力 1.3kWを回収した。 (4) フィールド試験により36時間の連続発電運転を行うとともに, 発電・充電から船内電力供給にまでの実証を行った。 (5) スターリングエンジン1号機~3号機は延べ3500時間程度 の運転を行っており,エンジンの信頼性を高めるとともに, 多くの知見が得られた。
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