免疫薬理

免疫薬理
血液・免疫系ユニット
2012.6.12
分子薬理学 倉増敦朗
講義概要
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免疫抑制薬
抗アレルギー薬
ワクチン・抗血清
免疫増強薬
免疫抑制薬
• 分類
– 糖質コルチコイド(ステロイド)
– イムノフィリンリガンド
– 細胞毒性薬
– モノクローナル抗体
• 適応
– 臓器移植時の拒絶反応
– 自己免疫疾患
糖質コルチコイドの抗炎症・免疫抑制作用機序
1.細胞内受容体に結合、核内移行、GREを介して遺伝子発現調節
2.リソソーム安定化作用
3.アラキドン酸代謝に関与する酵素系の抑制作用
・PLA2阻害蛋白質(リポコルチン)の誘導
・COX-2の発現抑制
4.サイトカインを介する作用(リンパ球増殖分化抑制など)
・IL-1、IL-2、IL-3、IL-6、IL-8、INFg、GM-CSF、TNFaなどの
合成・分泌の抑制
・IL-4、TGFb、IL-1RAの合成・分泌の増強
・IkBaの生合成の亢進(NF-kBの核内移行を抑制)
5.血管内皮細胞に作用して多形核白血球の接着・浸潤抑制作用
糖質コルチコイド全身投与の適応疾患
(1)
・副腎機能障害(補充療法として絶対適応)
原発性副腎不全(アジソン病、結核)
・リウマチ性疾患
全身性エリテマトーシス、多発性筋炎、皮膚筋炎、リウマチ熱、
慢性関節リウマチ
・腎疾患
原発性ネフローゼ症候群、原発性糸球体腎炎
・アレルギー疾患
気管支喘息、薬剤アレルギー、アナフィラキシー
・神経疾患
脳浮腫、多発性神経炎、多発性硬化症
糖質コルチコイド全身投与の適応疾患
(2)
・皮膚疾患(原則的には外用)
天疱瘡、ホジキン病
・消化器疾患
潰瘍性大腸炎、劇症肝炎、慢性肝炎
・血液疾患
溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、悪性リンパ腫、急性白
血病、 再生不良性貧血
・眼疾患(外用で用いる)
ぶどう膜炎、虹彩毛様体炎
・その他
サルコイドーシス、原発性肺繊維症、種々のガン、ショック、臓器移
植後免疫抑制
ステロイド長期投与の主な副作用
代謝に対する作用
1) 異化作用
2) 血糖上昇作用
3) 脂質合成(インスリンによる)
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抗炎症・免疫抑制作用
• 易感染性
• 創傷治癒遅延
• 消化性潰瘍
電解質コルチコイド作用
• Na+再吸収
• K+分泌
• 高血圧
• 浮腫
• 低カリウム血症
骨格筋萎縮
高血糖
中心性肥満
骨粗しょう症
Cushing症候群
の主な所見
イムノフィリンリガンドの作用点
From Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics 11 th edition
シクロスポリン(Cyclosporine)
• シクロフィリン(Cyclophilin)に結合
• 複合体はカルシニューリン(NF-ATを脱リン酸
化し活性化する)を阻害する
• IL-2を含む多くのサイトカイン遺伝子の転写
が抑えられる
NF-AT = nuclear factor of activated T cells
タクロリムス(Tacrolimus)(FK506)
• FK506結合蛋白質(FK506-binding protein)
に結合
• 複合体はカルシニューリン(NF-ATを脱リン酸
化し活性化する)を阻害する
• IL-2を含む多くのサイトカイン遺伝子の転写
が抑えられる
NF-AT = nuclear factor of activated T cells
シロリムス(Sirolimus)
• FK506結合蛋白質(FK506-binding protein)
に結合
• 複合体はmTOR (mammalian target of
rapamycin)を阻害する
• G1期からS期への移行を遮断する
イムノフィリンリガンドの副作用
• シクロスポリン
– 腎障害
– 高血圧
– 肝障害
• タクロリムス
–
–
–
–
腎障害
神経症状(頭痛、振戦、不眠、疼痛)
消化器症状(下痢、悪心)
高血圧
• シロリムス
– 高脂血症
– 好中球・血小板減少
細胞毒性薬
• アザチオプリン
– プリン代謝拮抗薬のプロドラッグ
• シクロホスファミド
– DNAアルキル化薬
• ミコフェノール酸
– グアニンヌクレオチド合成阻害薬
• レフルノミド
– ピリミジン合成阻害薬のプロドラッグ
細胞毒性薬の副作用
• アザチオプリン
– 骨髄抑制、消化器障害
• シクロホスファミド
– 消化器障害、脱毛、出血性膀胱炎
• ミコフェノール酸
– 骨髄抑制、消化器障害
• レフルノミド
– 肝障害、腎障害
抗体医薬品
 一般名の語尾
 -omab; マウス抗体
 -ximab; マウス-ヒトキメラ抗体
 -zumab; ヒト化抗体
 -umab; ヒト抗体
 -cept; Fc融合蛋白質
ヒト
• マウス部分が多いほど
免疫原性が高い
中和抗体ができて効か
なくなる
マウス
Fab
Fc
マウス抗体
キメラ抗体
ヒト化抗体
ヒト抗体
Fc融合蛋白
抗CD3抗体
•
Muromonab-CD3=マウス抗ヒトCD3抗体
【適応】臓器移植後の拒絶反応
【作用】
 CD3e鎖に結合する(Agonistic Ab)
 最初はT細胞を活性化するが、その後TCRを内在化させ
抗原認識を妨げる
 末梢T細胞の消失
 残存T細胞の機能抑制
【副作用】
 サイトカイン遊離症候群
サイトカイン遊離症候群
• 薬物によって活性化されたT細胞から多量の
サイトカイン(TNF-a, IL-2, IL-6, INF-g)が放
出されることによって生じる急性の重篤な全
身反応
• 発熱、悪寒、嘔吐、血圧低下、呼吸困難、浮
腫、多臓器不全
抗IL-2受容体(CD25)抗体
• Basiliximab
• Daclizumab
【適応】臓器移植後の拒絶反応
【作用】
 IL-2Raサブユニットに結合
 IL-2によるT細胞活性化を遮断
【副作用】
• 消化器症状
• サイトカイン遊離症候群はない
抗TNF-a製剤
• Infliximab --- 抗TNF-a抗体
• Adalimumab --- 抗TNF-a抗体
• Etanercept --- TNF受容体p75-Fc融合蛋白質
【作用】
• IL-1, IL-6などの炎症性サイトカイン産生を抑制
• 接着因子産生を抑制し、白血球の活性化と遊走を抑制
【適応】関節リウマチ、クローン病、乾癬
【副作用】
感染症、注射部位反応
TNF-a
TNFR75
Signals
Infliximab
Adalimumab
Etanercept
抗アレルギー薬
【分類】
• Th2サイトカイン合成阻害薬 スプラタスト
• 抗IgE抗体 オマリズマブ (Omalizumab)
• メディエータ合成阻害薬
– TXA2合成酵素阻害薬 オザグレル
– 5-リポキシゲナーゼ阻害薬 ジレウトン
• メディエータ遊離抑制薬 クロモグリク酸
• 受容体拮抗薬
– 抗ヒスタミン薬 フェキソフェナジンなど
– ロイコトリエン受容体拮抗薬 ザフィルルカスト
– TXA2受容体拮抗薬 セラトロダスト
【適応】
気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、
アトピー性皮膚炎など
I型アレルギーの機序
B細胞
TH2
IL-4,5
マスト細胞
形質細胞
IgE
メディエータ
ヒスタミン
セロトニン
ロイコトリエン
プロスタグランジン
プロテアーゼ
好酸球遊走因子
好中球遊走因子
臨床症状
作用
平滑筋収縮
血管拡張
好酸球、好中球遊走
血管透過性亢進
補体活性化
血小板凝集
粘液分泌
喘息
花粉症
皮膚発疹
局所アナフィラキシー
全身性アナフィラキシー
抗アレルギー薬の作用点
Th2サイトカイン
合成阻害薬
B細胞
TH2
メディエータ合成阻害薬
メディエータ遊離阻害薬
IL-4,5
マスト細胞
形質細胞
IgE
抗IgE抗体
受容体拮抗薬
抗IgE抗体
• Omalizumab
【作用】IgEのFc部分に結合し、IgEとIgE受容体の結合を遮断
【適応】気管支喘息、鼻アレルギー、食物アレルギー
【副作用】注射部位反応
ゾレア®
インタビューフォームより
H1受容体を介するヒスタミンの作用
1.
2.
3.
4.
5.
気管支収縮
血管拡張
血管透過性亢進
知覚神経刺激
覚醒維持
抗ヒスタミン薬=H1受容体拮抗薬
• 第一世代
– ジフェンヒドラミンなど
– 鎮静性(血液脳関門を通過する)
– 抗コリン作用、アルファ遮断作用がある
• 第二世代
– フェキソフェナジンなど
– 非鎮静性(血液脳関門を通過しない)
– 抗コリン作用、アルファ遮断作用が少ない
抗コリン作用:口渇、便秘など、アルファ遮断作用:起立性低血圧
ワクチン・抗血清
• 能動免疫(Active Immunization)
– 抗原を投与することにより、その個体に液性免疫
及び細胞性免疫を惹起する
– 例)予防接種
• 受動免疫(Passive Immunization)
– 既に免疫が確立した個体からその成分(抗体)を
他の個体へ導入する
– 例)抗毒素
能動免疫
と
受動免疫
と
養子免疫
日本で接種可能なワクチン
【定期接種】
生ワクチン
BCG
ポリオ
麻疹風疹混合(MR)
麻 疹(はしか)
風 疹
不活化ワクチン
DPT/DT
日本脳炎
インフルエンザ(65歳以上、一部、60-64歳の対象者)
【任意接種】
生ワクチン
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
水 痘
黄 熱
不活化ワクチン
B型肝炎
インフルエンザ
破傷風トキソイド
ジフテリアトキソイド
A型肝炎
狂犬病
コレラ
肺炎球菌(23価多糖体)
肺炎球菌(7価結合型)
ワイル病秋やみ
b型インフルエンザ菌(Hib)
HPV(ヒトパピローマウイルス)
【国家事業】
不活化ワクチン
A型インフルエンザHAワクチン(H1N1株)
主な受動免疫製剤
適応
製剤
ゴケグモ刺咬傷
ゴケグモ毒抗毒素(ウマ)
毒蛇咬傷
ハブ毒抗毒素(ウマ)
マムシ毒抗毒素(ウマ)
狂犬病
狂犬病免疫グロブリン
サイトメガロウイルス
CMV高力価ガンマグロブリン
水痘
水痘帯状疱疹免疫グロブリン
RSウイルス
抗RSV免疫グロブリン
Palivizumab
B型肝炎
抗HBsヒト免疫グロブリン
破傷風
抗破傷風ヒト免疫グロブリン
Rh同種免疫
抗Dヒト免疫グロブリン
A型肝炎、麻疹
免疫グロブリン(筋注用)
自己免疫疾患
特発性血小板減少性紫斑病
川崎病
免疫グロブリン(静注用)
低又は無ガンマグロブリン血症
免疫グロブリン(静注用)
重症感染症
免疫グロブリン(静注用)
抗Dヒト免疫グロブリン
【適応】
Rh式血液型不適合妊娠
【作用】
D(Rho)抗原陰性の母親に移行した
新生児のD(Rho)抗原陽性赤血球を
破壊し、母親の抗D(Rho)抗体産生を
防ぐ。
 分娩後抗D抗体が産生される前(分
娩後72時間以内)に産婦に投与する
 次回妊娠時の新生児溶血性疾患の
予防
免疫増強薬
• サイトカイン
– インターフェロン
– IL-2
• 非特異的免疫賦活薬
– OK-432(ピシバニール);溶連菌抽出物
– PSK(クレスチン);かわらたけ蛋白多糖体
インターフェロン
【作用】
マクロファージや細胞傷害性T細胞を活性化
【適応】
– インターフェロン-a 腎癌、多発性骨髄腫
– インターフェロン-b 悪性黒色腫
– インターフェロン-g 腎癌
【副作用】
感冒様症状
インターロイキン-2
【作用】
Tリンパ球増殖、抗腫瘍Tリンパ球反応増強
【適応】
悪性黒色腫、腎癌
【副作用】
感冒様症状