耐震化の目標設定と今後のスピードアップの考え方①

大阪府住宅・建築物耐震10ヵ年戦略プラン
中間検証
中間とりまとめ(案)
H22.8.26
大阪府住宅まちづくり部
建築指導室建築企画課
【住宅の耐震化】
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
耐震化の目標と現在の取組み -----------------------------------------------------------耐震化率の状況と目標に向けた取組みの考え方
----------------------------------取組みの評価と問題・課題
---------------------------------------------------------------耐震化のスピードアップのための今後の取組み方針(案) -----------------------------今後の具体的な取組みイメージ(素案) --------------------------------------------------
P1
P2
P6
P9
P10
【民間特定建築物の耐震化】
Ⅰ 耐震化の状況
-------------------------------------------------------------------------------- P14
Ⅱ 今後の取組みの基本的な考え方
--------------------------------------------------------- P15
Ⅰ 耐震化の目標と現在の取組み
1 住宅・建築物の耐震化率の目標
大規模地震による死者数・経済被害を半減するため、住宅・建築物の耐震化率をH27年に90%とする。
Ⅰ 耐震化の目標と現在の取組み
(耐促法の国基本方針での目標と同じ)
2 現在の主な取組み
■ 地域に重点を置いた草の根PRによる府民への啓発
(1)地域支援課と市町村の連携によるPR
・土木事務所の地域支援課と市町村が連携し、地域における防災訓練や自治会活動などの機会を捉えて、
草の根的なPRを実施。 (H21実績:自治会・自主防災組織等での説明会の実施 168回実施)
(2)アドバイザー(建築士)の派遣
・自主防災組織や自治会活動の場、希望する府民の自宅に、アドバイザー(建築士)を無料で派遣し、
耐震改修の必要性の説明・補助制度のPRや個別相談を行う。 (H21実績:153回派遣実施)
■ 民間住宅の耐震診断・改修補助による府民負担の軽減
事業主体である市町村と連携し、国の補助制度を活用して費用の一部を補助
(1)木造住宅診断補助(H19年度に拡充)
・府民負担を2万5千円⇒5千円程度に軽減するよう補助率(50%⇒90%)を拡充。(補助限度額:4.5万円)
・負担割合:国45%、府27.5%、市町村27.5%
(2)木造住宅改修補助(H19年度創設)
・改修工事費の15.2%、60万円を限度に補助(H20年度~:収入分位40%以下の世帯は23%に引き上げ)
・対象工事:①上部構造評点を1.0以上にする改修工事
②(生命を守る耐震改修)上部構造評点を0.7以上にする改修工事、耐震シェルター設置工事
・負担割合:国45%、府27.5%、市町村27.5%
※市町村による補助拡充:大阪市 補助率1/2、堺市・富田林市 補助率1/3
(3)補助活用実績
H19
H20
H21
H22(予算)
診断補助
実施市町村数
改修補助
実施市町村数
946戸
1,266戸
1,461戸
2,500戸
39
18戸
7
43
156戸
20
43
303戸
30
43
416戸
35(8/1時点)
1
Ⅱ 耐震化率の状況と目標に向けた取組みの考え方
1 住宅の耐震化の現状と目標
4,000,000
H18年
総戸数 約352万戸
耐震性あり 約258万戸
耐震性なし 約94万戸
耐震化率 約73%
H22年
総戸数 約370万戸
耐震性あり 約289万戸
耐震性なし 約81万戸
耐震化率 約78%
H27年(トレンド)
総戸数 約374万戸
耐震性あり 約316万戸
耐震性なし 約58万戸
耐震化率 約85%
住宅総数
3,516,000戸
住宅総数
3,703,463
戸
住宅総数
3,737,530
戸
2,581,000
2,886,024
3,160,381
3,160,381
耐震化率
耐震化率
耐震化率
耐震化率
住宅総数
(約374万戸)
3,500,000
3,000,000
90.0%
84.6%
居
住 2,500,000
の
あ
る
2,000,000
住
宅
数
1,500,000
(戸)
77.9%
73.4%
耐震性を
満たす住宅
90%以上目標
(約336万戸)
82%
⑱時点の
トレンド
耐震性を
満たす
耐震性を
満たす
耐震性を
満たす
耐震性を
満たす
耐震改修及び建替
促進で耐震化を図
る必要がある住宅
(約20万戸)
1,000,000
耐震性
不十分
500,000
25.6%
H27年(目標)
総戸数 約374万戸
耐震性あり 約336万戸
耐震性なし 約38万戸
耐震化率 約90%
住宅総数
3,737,530
戸
0
203,396
22.1%
16.4%
935,000
817,439
577,149
10%
373,753
平成18年度
(2006年度)
当 初
平成22年度
(2010年度)
現 状
平成27年度
(2015年度)
トレンド
平成27年度
(2015年度)
目 標
耐震性が
不十分な住宅
10%以下目標
(約38万戸)
目標達成のためには、さらに20万戸の建替え・改修等のスピードアップが必要
2
Ⅱ 耐震化率の状況と目標に向けた取組みの考え方
当 初
(平成18年)
在
目標年次
目標年次
(平成27年・トレンド)
(平成27年・目標)
( 単位: 万戸)
《参考》
耐震化の状況
(区分別)
現
(平成22年)
総数
住
宅
全
体
352
総数
(100%)
耐震性を満たす
258 (73.2%)
耐震性が不十分
94 (26.8%)
総数
民
間
住
宅
307
227 (73.9%)
耐震性が不十分
80 (26.1%)
総数
木
造
戸
建
68 (58.6%)
耐震性が不十分
48 (41.4%)
総数
共
同
住
宅
159 (83.2%)
耐震性が不十分
32 (16.8%)
総数
公
共
賃
貸
289 (77.9%)
耐震性が不十分
81 (22.1%)
326
耐震性を満たす
258 (79.0%)
耐震性が不十分
68 (21.0%)
126
85 (67.5%)
耐震性が不十分
41 (32.5%)
耐震性を満たす
173 (86.2%)
耐震性が不十分
27 (13.8%)
耐震性を満たす
31 (68.8%)
耐震性が不十分
14 (31.2%)
44
耐震性を満たす
316 (84.6%)
耐震性が不十分
58 (15.4%)
(100%)
耐震性を満たす
282 (85.3%)
耐震性が不十分
49 (14.7%)
耐震性を満たす
31 (70.3%)
耐震性が不十分
13 (29.7%)
(100%)
耐震性を満たす
336 (90.0%)
耐震性が不十分
38 (10.0%)
331
(100%)
耐震性を満たす
297 (90.0%)
耐震性が不十分
34 (10.0%)
総数
125
(100%)
耐震性を満たす
98 (78.3%)
耐震性が不十分
27 (21.7%)
125
(100%)
耐震性を満たす
112 (90.0%)
耐震性が不十分
13 (10.0%)
総数
206
(100%)
耐震性を満たす
184 (89.6%)
耐震性が不十分
22 (10.4%)
総数
(100%)
374
総数
331
総数
(100%)
総数
(100%)
(100%)
総数
(100%)
耐震性を満たす
200
総数
374
総数
(100%)
総数
(100%)
耐震性を満たす
45
耐震性を満たす
総数
(100%)
耐震性を満たす
191
総数
(100%)
総数
(100%)
耐震性を満たす
116
370
206
(100%)
耐震性を満たす
185 (90.0%)
耐震性が不十分
21 (10.0%)
総数
43
(100%)
耐震性を満たす
34 (78.8%)
耐震性が不十分
9 (21.2%)
43
(100%)
耐震性を満たす
39 (90.0%)
耐震性が不十分
4 (10.0%)
3
Ⅱ 耐震化率の状況と目標に向けた取組みの考え方
2 目標達成に必要となるスピードアップ分20万戸
公共賃貸住宅(行政等)のスピードアップ分 約5万戸(H27トレンド:79%)
住宅全体
20万戸
民間住宅のスピードアップ分
約15万戸(H27トレンド:85%)
3 民間住宅 15万戸の内訳(共同住宅等と木造戸建て)
15万戸の大部分(14万戸)が
木造戸建て住宅での対応が必
要。
世帯数の伸びに応じて、民間住宅の総数は伸びていくと予測。
共同住宅等は、年間約4万戸の新規・建替が進み、H27トレンド
で約89.6%の耐震化率となりほぼ目標達成の見込み。
【民間住宅の耐震化の状況・推計】
350
300
耐
震
性
N
G
307万戸
150
H22年度現
在の耐震化
率は86%
耐
震
性
O
K
173
200
0
H27年度に
目標をほぼ
達成
(89.6%)
184
48
当初(H18)
H22年度現
在の耐震化
率は67%
85
H27年度の
耐震化率は
78%止まり
41
125
共同住宅の
総数は増加
↓
主に分譲マン
ションが増加
206
331万戸
21
共
同
住
宅
等
185
木造戸建の
総数はほぼ
横ばい
206
191
68
耐
震
性
N
G
新規・建替分21
159
100
50
27
32
250
200
331万戸
22
326万戸
98
約14万戸
のスピード
アップが
必要
木
造
戸
建
112
125
116
126
現状(H22)
(14)
27
13
トレンド(H27)
目標(H27)
4
Ⅱ 耐震化率の状況と目標に向けた取組みの考え方
4 目標に向けた取組みの考え方(目標と現実)
木造戸建住宅のスピードアップ分14万戸については、
今後5年間で
(1)建替え等 約1万戸 2万戸/年の建替え等が毎年2.1%UP(日本政策投資銀行推計)⇒5年間で約0.7万戸増
(2)耐震改修 約13万戸 補助活用1.3万戸/5年(13万戸×10%)⇒2.6千戸もの追加(現在の10倍ペース)
の対応が必要となる。
【補助活用の耐震改修】
【減災の観点】
【自主改修の促進】
先進県トップ3の補助活用件数の平均レベル(H21年度)である
府民の生命を守る
“減災”のための
取組みの検討
普及啓発の強化や補助
活用件数の大幅増加に
よる波及効果
現実的には、
年間約1千戸(現在の3倍ペース)の改修補助の活用を
目標。(①静岡:1,582戸、②愛知:772戸、③兵庫:490戸)
実現可能性と目標の考え方
○現時点では、H27年90%の目標達成は困難な状況であるが、少しでも早く耐震化が進むよう、積極的な取組み
を行う。
○このため、減災の観点を踏まえ、施策の見直し・充実、民間連携による取り組みの強化等を実施し、補助活用
件数1千戸/年ペースの確保を目指すとともに、府民による自主的な改修を促進していく。
【参考】補助活用1千戸/年確保した場合の木造戸建住宅の耐震化率の推計
H22年
総戸数 約126万戸
耐震性あり 約85万戸
耐震性なし 約41万戸
耐震化率 約67%
H27年
総戸数 約125万戸
耐震性あり 約102万戸
耐震性なし 約23万戸
耐震化率 約81%
H30年
総戸数 約125万戸
耐震性あり 約112万戸
耐震性なし 約13万戸
耐震化率 約90%
5
Ⅲ 取組みの評価と問題・課題
1 現在の取組みの評価と問題・課題
① 府民意識の向上(危険を知る) ~耐震化へのきっかけ~
(1)補助制度の認知度はまだまだ低い。(H21PRイベント時の府民アンケートより:N=4,115人)
診断補助がある事を知っている 約54%(良く知っている 14%、なんとなく知っている 40%)
(2)イベント型PRでは、耐震化へのきっかけには不十分だが、府・市の広報誌・パンフレットによる啓発は一定の効果がある。
「診断に興味を持ったきっかけ」 (H21補助金受給者アンケートより)
①テレビ・ラジオ等での地震情報 71%、②府・市の広報誌・パンフ・防災マップ等 48%、③地震の体験 36%、
④知人等から地震の怖さを聞いた 30%、⑤知人等から改修の情報を聞いた 24%、⑧市町村の防災イベント 7%
(3)地域での説明会・申請受付会(河内長野方式)は効果が現れている。
河内長野市での地域での説明会・申請受付会での効果(説明者総数317人⇒耐震診断申請者数90人)
(4)地元への個別訪問(ローラー作戦)は効果が高い。(静岡県・愛知県での実績)
「診断のきっかけ」(H19静岡県診断実施者へのアンケートより)
①県・市の広報誌 25% ②個別訪問、DM 21% ③ちらし 8%
② 安心して耐震化ができる環境整備(事業者・工法・価格等の信頼性)
(1)耐震改修を検討する際の問題点(H21補助金受給者アンケート)
①お金がかかる。 90%、②施工業者の選定 60%、③工事内容や価格が適正か判断できない 38%、
④施工業者に良いイメージがない 20%
(2)事業者の選定方法(H21補助金受給者アンケートより)
診断:①行政の紹介 65%、②行政の相談窓口・アドバイザーの紹介 26%、③知人等の紹介 13%、
④行政のセミナーの説明業者 12%
改修:①診断実施者 60%、②診断実施者の紹介 21%、③行政の紹介 ③展示会やパンフ等 共に14%
(3)事業者の技術力向上・業界の信頼性の向上が必要(H22事業者アンケートより)
「どのような状況であれば耐震化を進めやすいか」
①内容・費用の標準化 26%、②事業者の技術力向上 18%、③業界の信頼性向上 15%、⑤事業者の評価・認定 10%
(4)診断⇒設計⇒改修にスムーズに流れるように手続きの簡素化・迅速化が必要(H22事業者ヒアリングより)
申請手続きの簡素化・迅速化。診断後の設計補助の創設。(診断と設計のパッケージ化)
6
Ⅲ 取組みの評価と問題・課題
③ 経済的負担の軽減(補助制度・工事価格等)
【診断補助】
(1)補助申請による煩わしさの解消が必要。(診断士派遣事業の導入)
全国的に他府県では診断士派遣事業を実施。申請者の手続き負担を軽減。(派遣事業では簡単な申込で可)
【設計補助】
(2)設計補助による改修への誘導効果は大きい。(府民は、改修工事の価格・内容を知ることができる。)
大阪市:H21設計補助216件中、改修補助を活用した件数 100件(H21:57件、H22:43件)
静岡と愛知では、設計補助がある静岡の方が改修実績は多い。
H21:改修 静岡1,582戸、愛知 772戸
診断 静岡3,516戸、愛知6,538戸
【改修補助】
(3)補助率・補助額が十分とは言えず、補助金額がいくらか伝わりにくい。 (先進県の静岡や愛知と比べると補助額は低い。)
静岡県
愛知県
大阪府
30万円~60万円の定額補助(県30万円+市町村上乗せ(0~30万円)、高齢者には20万円加算)
補助率1/2 限度額60万円(市町村による高齢者への上乗せ補助あり)
補助率15.2% 限度額60万円
(4)実際にかかっている工事費が高く、また補助金による負担軽減効果が低い。
静岡県
愛知県
大阪府
平均工事費
約185万円(屋根改修少ない)
約230万円
約245万円(屋根改修多い)
補助金額
平均45万円(高齢者は65万円)
60万円(高齢者加算は別途)
37万円(低所得者は56万円)
県民実質負担
140万円(高齢者は120万円)
170万円(高齢者はこれより低い負担額)
218万円(低所得者は189万円)
(5)大阪市・堺市の上乗せ補助の効果が現れている。
大阪市 実績H20:39件⇒H21:109件(2.8倍) 堺市 実績H20:13件⇒H21:38件(2.9倍)
(6)改修が必要な木造住宅の居住世帯(高齢者)にマッチした制度となっていない。
S56年以前の木造戸建てに居住する世帯は高齢者がほとんど(参考資料H参照)
(7)一部屋だけの改修など手軽で安価な改修への対応も求められている。
(H22事業者アンケート、ヒアリングでの声)
(8)制度未実施の市町村があること、補助要件や必要となる申請書類等
も府内で統一化されておらず、事業者にとって使いにくい。
(9)申請手続きに時間がかかり、改修の熱が冷めてしまう施主もいる。
(H22事業者ヒアリングでの声)
事業者から見た「補助制度の改善点」
(H22事業者アンケートより)
①申請手続きの簡素化 49%
②補助限度額を上げる 38%
③補助要件の府内統一 26%
④補助率を上げる
22%
⑤給付時期を早くする 17%
⑥補助対象を拡充
15%
⑦事業者へ補助する
11%
7
Ⅲ 取組みの評価と問題・課題
2 新たな視点からの問題・課題
① リフォームからの誘導
(1)耐震改修を実施している府民はリフォームと同時に実施しているケースが多い。
「貴事業所で施主が改修を行った経緯」(H22事業者アンケート)
①リフォームと一緒に実施 46%、②施主からの依頼 33%、③行政の紹介 13%
「耐震改修を実施したきっかけ(上位3つまで複数選択)」(H21受給者アンケート)
①地震による倒壊の恐怖(耐震性が低いと分かって)54%、②補助金・税金控除のお得感35%
③家屋の老朽化等の改修にあわせて 29%、④住宅耐震技術への興味 14%、
⑤間取り変更・水周りなどの改修にあわせて 10%、⑥バリアフーや省エネ改修に併せて 7%、
⑥外観の改修にあわあせて 7%
(2)府内で、過去5年間(H16~H20)に増改築した件数は約18万件(年3.6万件)あり、耐震化に繋がる潜在的
ボリュームは多く存在。
② 木造密集市街地での減災対策
(1)大阪府には、密集市街地が未だ多く存在し、地震等による被害の軽減が急務。(東京2,339ha、大阪2,295ha)
・住宅の不燃化と併せた耐震化(建替え・除却・改修)の推進
・緊急時の避難ルートとなる生活道路の閉塞確率の低下
③ 民間レベルの取組み ~静岡・愛知の事例~
(1)耐震化が盛んな地域は、事業者の取組みによる支えがある。
①民間で組織する協議会での普及啓発や技術力向上等の各種
事業を展開。
・技術者向け耐震補強マニュアルの作成や研修会の実施
・出前講座の実施
・「耐震改修済み」表示シール、「耐震補強工事中」表示シートの作成や配布
・行政と連携した県民への個別訪問(ローラー作戦)の実施(ボランティア)
②地域レベルでの協議会も自主的に発足し、地域に密着した
普及活動を独自に実施。
④ 市町村による取組みが不可欠
(1)耐震化の促進は、府・市町村が連携した取
組みが必要。
(2)特に、住民に最も近い市町村の積極的な
取組みが不可欠であるが、財源不足、人員
不足、施策の優先順位の低さ等により、消
極的な市町村が多いのが実情。
(3)結果、府が取り組みを強化しても、実際の
耐震化には結びつき難い状況が発生。
8
Ⅳ 耐震化のスピードアップのための今後の取り組み方針(案)
1.耐震化の普及啓発の取組み・補助制度等の耐震化支援メニューの見直し・強化・充実
次の方針により、府民の耐震化の意欲のさらなる向上を目指す。
(1)府民の耐震化へのきっかけづくりの強化
(2)府民・事業者が使いやすい補助制度へ
(3)府民にとってお得感のある補助制度へ
(4)診断から改修まで切れ目のない支援
2.行政(府・市)と民間が連携した取組み体制の構築
耐震化をより加速させるためには民間による取組み促進が不可欠。
(1)連携のベースとなる民間団体の組織化を促進
(2)各施策に応じた民間連携の実施による耐震化の加速
(3)意欲のある市町村・民間団体への支援強化
3.施策対象者や地域の特性に応じた施策の展開
効果的な施策を実施するため、対象となる特性に対応した取組みを実施。
(1)耐震化の対象住戸が多い地域等でのきっかけづくりの強化等
(2)地域の特性に応じた施策の推進
9
Ⅴ 今後の具体的な取り組みイメージ(素案)
1.耐震化の普及啓発の取組み・補助制度等の耐震化支援メニューの見直し・強化・充実
(1)府民の耐震化へのきっかけづくりの強化
①市町村と連携した地域に根ざした「草の根」啓発活動の強化
・自治会活動等でのPRを継続。(家具の固定化とセットでのPR)
・河内長野方式(自治会での説明会+申請受付会)を広げる。
・対象住宅が多い地域でのローラー作戦による個別訪問の
実施促進。等
②市町村広報誌等の広報媒体によるPRの強化
③民間と連携したPRの実施促進
・住宅展示場やリフォーム相談会等でのPR
④学校教育を通じた防災・耐震化の意識啓発
⑤耐震改修奨励金制度の検討
・従来の補助制度と異なった手法による
耐震化のきっかけインセンティブに。
・住宅版エコポイントの耐震版のイメージ
・工事完了後の申請(工事内容は建築士
等が証明)
(2)府民・事業者が使いやすく、診断から改修まで切れ目のない支援・お得感のある補助制度へ
①【診断】 「診断士派遣事業の導入」
・府民による診断技術者の選定手間・補助申請手間を軽減(簡易な申込みのみで診断を実施)
・診断結果の報告とあわせて改修補助制度のPRを実施。
②【設計】 「耐震設計補助の創設」による改修への誘導
・府民が最も知りたい「工事価格・内容」を提示、診断後すぐに設計が行えるように手続きを簡素化。
③【改修】 「定額補助化の導入」 「高齢者加算の導入」
・従来の補助制度を一新し、限られた財源でお得感を。
・工事費を下げる効果も期待(安価な工事には手厚い)。
・対象住戸の居住世帯の大半を占める高齢者への優遇措置。
「申請手続きの簡素化・迅速化・統一化」
・手続きの長期化・複雑化による、診断を行った府民の改修への意欲低下を防ぐ。
・可能な限り申請書類を簡素化し府民・事業者の手間を軽減。行政審査を可能な限り迅速に対応。
「補助要件の緩和・対象の拡充」
・評点0.7~1.0にする工事、シェルター設置を全市町村で補助の対象に。
・1階のみ評点1.0以上にする工事の補助対象化。
・少しでも改修が進むように、簡易改修の補助対象化の検討《期間限定等の扱い》
10
2.行政(府・市)と民間が連携した取組み体制の構築
(1)連携のベースとなる民間団体の組織化
①民間団体による耐震化普及のための協議会の設立
・府内で活動するNPO等の事業者団体で組織。(リフォームマイスター制度推進協議会、府震災対策推進協議会の発展等)
・行政と連携した各種活動を実施。(行政によるバックアップが必要)
例)技術者のレベル向上の取り組み(現場での補強方法の講習会等)、行政と連携した府民への啓発活動(自治会説明会、地域
でのローラー作戦への参加等)、啓発活動のための各ツール作成(耐震表示シール、補強中工事シート) 等
(2)各施策に応じた民間連携の実施
①リフォームから耐震改修への誘導
・事業者は、リフォームを実施する府民に、耐震診断・改修の必要性
等のPRを実施。(バリアフリーリフォーム、省エネリフォームに併せたPR等)
・行政は、リフォームの流れを止めずにスムーズに診断・改修へ進め
るよう、補助申請等の手続きを簡素化。
②技術者のレベル向上
・耐震診断法講習会の内容充実。補強方法講習会の開催。(実務に
繋がるレビュー方式や現場講習の導入)(再掲)
・耐震診断士登録制度の創設の検討。(講習の受講・資格・実務経験等
を求める。更新制の導入等。)
③特に改修工事が難しい長屋住宅における耐震化の促進 等
・長屋特有の問題(複数の権利者・入居者の存在、適切な改修工法の
選定等)を調整する診断・改修アドバイザーのプロフェッショナルの育成。
(3)意欲のある市町村・
民間団体への支援強化
①モデル地区での民間主導による啓発
から耐震化までの取組み
・意欲のある市町村による対象地区の
選定(対象住戸が多く立地する地区等)
・対象地区での耐震化の啓発等の手法
を、民間団体を対象に提案公募し、選定
団体が啓発から耐震化までを実施
・行政による地区住民への事前周知、
予算等(診断・設計・改修補助等)の
バックアップ
・地域単位での耐震化が進むような取組
みも検討
3.施策対象者や地域の特性に応じた施策の展開
(1)対象住戸が多い地域等でのきっかけづくりの強化
①市町村と連携した「草の根」啓発活動の強化(再掲)
(2)地域の特性に応じた施策の推進
②モデル地区での民間主導による耐震化の取組み(再掲)
③木造密集市街地での減災対策の推進 ・不燃化と併せた耐震化(建替え・除却等)、避難路の閉塞確立の低下
(密集市街地整備のあり方検討会を設置し、今後の取組みの方向性を議論し、今年度中にとりまとめる予定。)
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《参考①:施策対象別の取組みメージ》
補助活用による改修 《目標:年間1千戸》
高齢者世帯
自主改修・建替え
一般世帯
市町村広報誌や啓発チラシ等による紙媒体によるP R の強化
【民間連携】市町村・民間と連携した地域に根ざした「草の根」啓発活動の強化(河内
長野方式、ロー ラー 作戦による個別訪問等。)
【民間連携】リフォームからの誘導(バリ
アフリーリフォームに併せたP R 等)
【民間連携】リフォームからの誘導
耐震改修奨励金制度の検討(住宅版エコポイントの耐震版)
木
造
戸
建
【民間連携】住宅展示場やリフォーム相談
会等でのP R
【民間連携】学校教育を通じた防災・耐震
化の意識啓発
【支援充実】 (診断)耐震診断士派遣事業の導入(府民による補助申請や技術者選定の手間を軽減)
【支援充実】 (設計)耐震設計費補助の創設(府民が工事内容・価格を詳細に知ることが出来、診断後すぐに耐震化へ誘導が可)
【支援充実】 (改修)
・定額補助の導入(限られた財源で府民にお得感を)
・高齢者加算の導入(より支援の必要な世帯へ手厚く)
・補助要件緩和(耐震化困難世帯 ⇒「命を守る」ための選択肢設定)
上部構造評点0.7にする工事、シェルター工法の全市町村での補助対象化、
1階のみ評点1.0にする工事、一部屋だけの部分改修の補助対象化
・補助申請等の手続きの簡素化・迅速化・統一化
民間による取組みの支え
民間との連携強化(民間
団体による耐震化普及の
ための協議会の設立等)
【民間連携】民間の企画提案による「まちまるごと耐震化」事業(モデル地区による耐震化促進)
長
屋
住
宅
【民間連携】長屋特有の問題を調整する耐震ア ドハ ゙イサ ゙ー のプロフェッショナルの育成
密集市街地での減災対策の推進
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《参考②:施策の展開イメージ》
平成2 0 年度
平成2 1 ~2 2 年度
平成2 3 年度
平成2 4 年~2 7 年
(全市町村)
(堺市)診断士派遣事業の導入
耐震診断9割補助
耐震診断
(府)アドバイザー派遣
(府)アドバイザー派遣
(個別型)事業開始
事業創設
耐震診断士派遣事業の導入
耐震設計
(大阪市・堺市)設計補助の創設
耐震設計補助の創設
(大阪市)1/2
(堺市)1/3
補助上限100万円
定額補助の導入
(大阪市)
建築年撤廃、非木造対象
1階のみの評点1.0対象
補助要件緩和(上部構造評点0.7)全市町村での補助対象化
(大阪市)
業者代行申請可
申請手続きの簡素化・迅速化
(府)府政だより
(府)読売新聞広告
(府・大阪市)電車等吊り広告
(協議会)ポスター(駅、浴場、金庫等)
(市町村)広報誌等によるPRの強化
(行政)市町村広報誌や啓発ちらし等による紙媒体によるPRの強化
(全市町村)
補助制度 耐震改修 耐震改修補助
の見直し (補助手法) 15.2%(23%)
補助上限60万円
(府補助要綱)
(補助要件) 耐震シェルター
評点0.7以上
手続き
普及啓発
(広報媒体)
高齢者加算の導入
補助要件緩和(1階のみ評点1.0)工事の補助対象化
住宅展示場での紙媒体を活用したPR
学校教育を通じた防災・耐震化の意識啓発
リフォームからの誘導(福祉分野連携:バリアフリーリフォーム)
民間連携
普及啓発
(広報体制)
新組織
設立
協議会
(府)大阪震災対策
推進協議会
(大阪市)支援機構
(府・土木事務所)
市町村と連携した地域に根ざした
「草の根」啓発活動
(大阪市)全戸訪問開始
(堺市他)全戸ちらし配布
モデル地区による「まちまるごと耐震化」事業
全市町村
○実施主体(民間団体:提案公募)
で展開
○啓発等手法(行政職員と専門家による
全戸訪問(ローラー作戦)
○耐震化(診断~設計~改修)まで
耐震改修奨励金制度の検討
同一民間団体が実施
(住宅版エコポイントの耐震版)
(府)リフォームマイスター協議会設立
大阪震災対策推進協議会の
見直し
民間団体による耐震化普及の
ための協議会の設立
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民間特定建築物の耐震化状況と今後の取組みの基本的な考え方(1)
民間特定建築物の耐震化状況
策定時
(平成18年)
現 在
(平成22年)
目標年次
(平成27年・目標)
(単位:棟)
総 数 ※1
44,465
総 数 ※2
(100%)
昭和57年以降の建築物
30,979
(70%)
昭和56年以前の建築物
13,486
(30%)
※1 昭和57年以降の
特定建築物数は
推計値
44,400
総 数 ※2
(100%)
耐震性を満たす※3
38,200
(86%)
44,400
(100%)
耐震性を満たす
39,960
(90%)
耐震性が不十分
耐震性が不十分
6,200
4,440
(14%)
※2 耐震化状況が把握で
きている36市町のデ
ータによる数値
(トレンドが出ないため
平成27年の総数は、
平成22年と同数で推計)
合計
年間
平成27年度に
目標をほぼ
達成見込み
(平成22年
1,760
350
現在86%)
(10%)
※3 耐震性を満たす特定建築物数は、各市町村における
昭和57年以降の建築物数と昭和56年以前の建築物
数のうち耐震性が満たされると推察される建築物数
(耐震診断した結果耐震性が満たすと出たものや補強
されたもの)を合算したもの。
なお、推察は、平成21年度に大阪府と府内特定行政庁
が所有者に対して実施したアンケート結果から算出し
た建築物用途毎の耐震化率を乗じて推計した。
※法第6条第2号(危険物等貯蔵等施設)および法第6条第3号(緊急交通路沿道建築物)に該当する建築物を含まない。
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民間特定建築物の耐震化状況と今後の取組みの基本的な考え方(2)
今後の取組みの基本的な考え方
民間特定建築物の耐震化の取組み
■危険を知る仕組みづくり
講習会開催等・・・特定建築物所有者向け講習会の開催(大阪震災対策推進協議会事業)
パンフレット等の活用・・・パンフレットの作成。講習会等で配布
機関紙の発行。大阪震災対策推進協議会の建築物所有者の加盟(管理)団体に配布
(大阪震災対策推進協議会事業)
■安心できる仕組みづくり
相談体制の整備・情報提供の充実・・・(財)大阪建築防災センターで、電話、メール、面談等、相談事業を実施
(大阪震災対策推進協議会事業)
■経済的な負担を軽減する仕組みづくり
耐震化を促進する支援・・・耐震診断費用(上限200万円)の3分の2補助(133.3万円)
民間特定建築物の耐震化を促進する上での課題
耐震改修促進法上の特定建築物の実態把握が、
制度的にシステム化されていない。
≪現 状≫
○進行管理(耐震化状況)の把握
特定建築物の耐震化の状況把握は、所有者に対してのアン
ケート調査のみ。回答してこない建築物の実態が掴めない。
アンケート調査を実施していない市町村がある。
○建築物の把握の課題
アンケート調査を実施していない市町村の主な理由は、建
築物を把握するための手段である固定資産課税台帳が、
目的外使用が理由で縦覧できないことにある。
今後の取組みの基本的な考え方
★建築物の実態把握及び進行管理
手法の検討(あらためて国へ働き
かけを行う等)
★所有者が加盟する民間団体等と
連携した耐震化意識の普及啓発
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