景気問題講演資料

不況は人災です!
松尾 匡
(立命館大学経済学部)
宣伝

拙著『不況は人災で
す!──みんなで元
気になる経済学・入
門』
筑摩書房, 1600円+
税
親の道徳観が崩
壊してきている!
景気は大事
性道徳が崩
壊している!
犯罪が増えた!
少年犯罪
が増えた!
戦後憲法のせいだ!
戦後教育のせいだ!
家族の崩壊が
進んでいる!
男女平等のせいだ!
外国人増加のせいだ!
ちがいます!
おおかたのところは不況が原因です。
景気は大事

失業が増えると犯罪が増える要因
失業率が減ると同
平成不況期は、失
業率が増えると間
間をおいて犯 もなく犯罪率も増
え
罪率が下がる
間をおいて犯
罪率も上がる
失業率が
下がると
失業率が
上がると
時に犯罪率も減る
景気は大事

殺人は大きく見て減っているが…
殺人認知件数は年平均30件減少している!
景気は大事

トレンドを除くと、失業が増えると増える
景気は大事

求人が多いと少年犯罪は減る
ちなみに

少年凶悪犯罪は長期的に激減している
1960年がピーク
(少年人口は90年より62
万人少なかった)
『反社会学講座』第2回「キレ
やすいのは誰だ」より
http://pmazzarino.web.fc2.com/l
esson2.html
景気は大事

景気が悪くなると女は身体を売る人が増える
リーマンショック後の
失業率急増にはつ
いていっていない
景気は大事

景気が悪くなると男は自殺する人が増える
景気は大事

特に中高年男性は失業率にも倒産数にも合う
2012年版『自殺
対策白書』より
景気は大事

近年は学生の自殺が増加していた
2012年版『自殺対
策白書』より
景気は大事

中でも「就活自殺」が急増していた
景気は大事

近年の大学卒業生の四割は就職できなかった
景気は大事

← 景気拡大時06年11
月5日の日経記事
景気のせいだった!
ニート・フリーターがバッシングされたが・・・
ここにフリーターの推移
のグラフ
前回就職氷河期卒業のフリー
ターの高年齢化が深刻な問題
景気は大事


エネルギー、タンパク質の平均摂取量は低下し
続けている。
現在のエネルギー摂取量は敗戦後すぐの値以
下。タンパク質は1950年代初頭のレベル。
景気は大事


20代を見るとやはり失業率に連動
今世紀に入って以来、厚生労働省基準の摂取
量に満たない。
景気は大事

20代を見るとやはり失業率に連動
景気は大事

エネルギー節約率(実質GDP当たりのエネル
ギー消費量の年減少率)は、1年前の民間企業
の設備投資の増加率に連動する。
景気は大事

景気が悪いと、エネルギー節約技術導入のため
の設備投資が興らない。
景気は大事


近年まで全国の完全失業者は約300万人いました。
(この3月は280万人)
約300万人というのは、
横浜市の人口:
約370万人
茨城県の人口:
約295万人
広島県の人口:
約284万人
画像はウィキペディアより
景気は大事

景気が悪くなると労働運動は停滞する
明らかな逆相関
自由度修正済R2=0.7473
係数のp値9×10-17
1953-2004(52年分)
(ただし、ダービンワトソン値
が低い問題あり。労働者の
戦闘性には慣性がある?)
景気は大事

景気が悪くなると政治は右傾化する
参議院全国区(比例区)の左派政党得票率と失業率の相関
1953-2010(20回分) ただし2010年の失業率は1月から11月までの月次速報値の平均
1989年「土井
ブーム」異常値
なのでダミー
「左派政党」=社会党(右社、
左社)、共産党、労農党、社会
市民連合、革新自由連合、社
民連、平和・市民。(他は詳細
データなし)
明らかな逆相関
自由度修正済R2=0.6827
失業率係数のp値0.00079
(ダービンワトソン値は良好)
景気は大事

景気が悪くなると政治は右傾化する
俺達を犠牲にしていい目
を見ているヤツらがいる。
在日外国
人だ。
公務員だ
正社員組
合だ。
生活保護
受給者だ
ここに新大久保反韓デモの写真
外国だ
景気は大事

景気が悪くなると
犯罪が増える
少年犯罪が増える
給食費未納が増える
身売りが増える
親父の自殺が増える
離婚が増える
労働運動が停滞する
政治は右傾化する
ここにナチスドイツ軍と大日本
帝国軍の写真
なぜ景気が悪くなったのか
人災です!
明らかに意図的なケースも・・・
小泉改革不況とその後の「回復」

2001年ジェノバサミットでの記者会見発言
「景気が回復したら、
改革する意欲がなくな
ってしまう。……ある
程度の低成長は覚悟
して、『改革なくして成
長なし』という方針通り
選挙後もやっていこう
と思っている。」
ここに小泉首
相の写真
その結果・・・

大失業時代の到来
2002年
完全失業率5.4%
完全失業者数359万人
第一部
不況の犯人はだれだ?
「長期」の成長と「短期」の成長

両者の成長政策は違う
天井の成長
※ このグラフはイメージです。
現実の成長
時間
短期の成長
商品を買う側(需要側)で
決まる。
需要が少なければ、人手
や設備が余る。
→ 不況、失業
→ 需要を拡大する政策
「長期」の成長と「短期」の成長

両者の成長政策は違う
天井の成長
※ このグラフはイメージです。
現実の成長
時間
長期の成長
商品を売る側(供給側)で
決まる。
人手を雇いつくした、経済
の「天井」の成長
小泉改革の目指した
のは、こちらの成長の
引き上げ
「短期」の成長を高めるのがケイン
ズ政策──総需要を拡大しよう

ジョン・メイナード・ケインズ
(英)
『一般理論』(1936年)
資本主義経済では放置する
と大量失業が出たままになっ
て、市場の自動調整では解
ケインズの写真
消されない。
 不況の時には、政府が財政
支出を行って景気を回復させ、
失業を解消しなければならな
い。
→ ニューディール政策(米ルーズベルト政権)で採用

これを批判したのが
「新しい古典派」
「天井」の成長率を上げる政策
──「供給力を高めよう」

「新しい古典派」経済学の見立てによれば
•自由な市場経済はいつも「天井」付近にいる。
∴ 失業者は、ワザと働かない人かミスマッチ。
•1990年代の日本経済の停滞は生産性が上昇し
なかったのが原因。

ここから導きだされる政策は
供給能力を高める政策!
「天井」の成長率を上げる政策
──「供給力を高めよう」

小泉「構造改革」



規制緩和(雇用規制
の自由化など)
財政削減(「三位一
体改革」など)
民営化(郵政事業、
道路公団)
「小さな政府」へ
小泉首相の写真
この結果、需要側で起こること

もともと不況だった

これらの政策はさしあたり需要を冷え込ませる

その上労働生産性が上がると…
失業の増大
就職氷河期がやってきた
フリーター急増
大卒内定率と大卒求人率の
推移グラフの画像
フリーターの推移グラフの
画像
でも、そのあと、景気回復したよね
戦後最長の景気拡大だったって。
小泉改革の成果じゃん。
ちがいます!
前回の景気回復をもたらしたのは

2003年3月日本銀行福井俊彦総裁就任
→「量的緩和」(金融緩和のすごいやつ)本格化
日銀が出したお
カネの伸び率
オイルショック頃以
来の高い伸び率
量的緩和の効果はあったか?


世の中に出回るおカネの量はあまり増えなかった。
実際の物価もデフレのままだった。
しかし

人々の予想に影響した。
じゃあ、効
果なかった
んじゃん
デフレが平成不況の元凶

物価が下がり続けた。=「デフレ」
デフレ
デフレが平成不況の元凶

支出に影響する利子率は、実質利子率。
実質利子率=名目利子率 − 予想インフレ率
デフレが予想されているときは
実質利子率=名目利子率+ 予想デフレ率
なぜなら、インフレが予想されると
きには、
利子率が下がった
のと同じ効果
でも、ぼやぼやして
ると値上りで工場建
設費が高くなるわ
今ならまだ鋼
材の値段も
高くない。
よし、今設備投資しよう!
何年かしたら我が
社の製品も値上り
するから借金返す
のは楽になるわ。
住宅や耐久消費財なども同様
デフレが予想されるときには、
利子率が上がっ
たのと同じ効果
もう少し待ったらいろ
いろ値下がりして工
場建設費は安くなる。
今借金したら、将
来我が社の製品
も値下がりするか
ら借金返すのは
大変になるわ。
設備投資は先送りしよう。
住宅や耐久消費財なども同様
平成不況で起こったことはこれ
貨幣価値がど
んどん上がる
もっともっと
貨幣で持とう
実質利子率
高止まり
デフレ予想
支出先送り
予想通りデフレ
総需要不足
札束の写真
貨幣のバブルだ!
好景気になるには、こうなればよい
実質利子率
下落
マイルドなイ
ンフレ予想
支出前倒し
予想通りマイルドなインフレ
総需要増大
日銀の「約束」


消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比
上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続す
る。(2001年)
“安定的にゼロ%以上”という意味。(2003年)



数ヶ月平均してデフレになっていないこと
政策委員の多くが先行きデフレにならないと予想する
こと
経済・物価情勢によっては、量的緩和政策を継続す
ることが適当であると判断する場合も考えられる
人々のインフレ予想プラスに
04年夏
1%に迫る
04年3月
でプラス
で開始
0.8〜
0.9%で推
移
それで設備投資が増加した
03年頃から設備投資需要の
拡大によって景気回復
では、なぜそれがまた不況に陥っ
たのか?
日本経済は健全だったのに、アメリ
カがサブプライム問題でコケたのの
とばっちりを食らったせいでしょ。
ちがいます!
もともと脆弱な景気「拡大」だった
スタート年を100にそろえた実質GDPの推移
設備投資と輸出に支えられた回復
消費は盛り上がらないままだった
歴代自民党政権と財界の反労働者
的政策  リストラ・首切り推進


「成果主義」の名の人件費削減
非正社員化の進展・・・等々
歴代自民党政権と財界の反労働者
的政策  リストラ・首切り推進


「成果主義」の名の人件費削減
非正社員化の進展・・・等々
その結果、景気「拡大」期なのに、

一人当たり雇用者報酬ほぼ減り続ける。
(ちなみに…)

経常利益と配当金は上昇し続けていた。
その結果、景気「拡大」期なのに、

一人当たり雇用者報酬ほぼ減り続ける。
その結果、景気「拡大」期なのに、

小売販売額伸びず。
01年水準に戻らず
01年水準に戻らず
設備投資と輸出だけが頼りだったのに・・・
日銀の金融緩和打ち止め策




06年3月:量的緩和解除(打ち止め)
06年7月:ゼロ金利解除(打ち止め)
07年2月:再利上げ
その後も追加利上げするぞと強く示唆し続け
る。
日銀が出したおカネ大幅縮小
金融緩和打ち止めは適切だったか

デフレ脱却したとはとても言えない!
量的緩和
打ち止め
再利上げ
ゼロ金利
打ち止め
人々の予想インフレ率低下
量的緩和
打ち止め
再利上げ
ゼロ金利
打ち止め
08年春マ
イナスに
その結果…
設備投資の伸び鈍化
その結果…
経常利益の伸びも鈍化
やはり08年1-3月期には
もう下落。
そして…
06年から
企業倒産増加に転じる
08年春は石油・穀物価格上昇で騒
がれていたが…

限られたおカネが石油・穀物製品に取られて、
他の財への支出が減り、かえって値下がりした。
実態はデフレ
すなわち、
07年秋にははっきり景気後退していた。
 リーマン破綻恐慌(08年9月)はダメ押し
にすぎない。
 景気後退の原因は大きく二つ



歴代自民党政権・財界の反労働者的政策
日銀の一連の金融緩和打ち止め策
+ リーマン恐慌後の政府・日銀の対応
リーマン恐慌直前の日本経済を支
えていたのは?
円高で
壊滅!
輸出が独力で引っ
張っている
リーマン破綻後の円高急進行

ひと月足らずで100円台後半から90円台へ
麻生総理
「円高は健全さの証拠でプラス
の面もある。」10月27日秋葉原
「日本経済は悪くなっていない、
円高で株が下がるのは昔の話」
11月22日
麻生首相の写真
リーマン破綻後の円高急進行

ひと月足らずで100円台後半から90円台へ
与謝野大臣(経済関係三閣僚
兼任)
「日本にももちろん影響は
あるが、ハチが刺した程
度。これで日本の金融機
関が傷むことは絶対にな
い。」9月18日
円売り介入全くなされず
与謝野大臣の写真
金融緩和が遅れた日銀



10月世界10カ国・地域
の中央銀行の同時利下
げ参加せず。白川総裁
「次第に緩やかな成長
経路に復していく」
→円高進行
月末0.2%だけ利下げ
12月アメリカゼロ金利へ
→また円高進行
→0.1%に再利下げ
しぶしぶ
白川総裁の写真
アメリカ・イギリ
スは積極的
リーマンショック後
の主要国中央銀
行が出しているお
カネの額
日本は一番消極的
鉱工業生産指数
米英は落ち込み小
リーマンショッ
ク時点を100と
している
日本が一番落ち込
みが激しい
人々のインフレ予想大幅マイナスへ
一時は3%も超える
デフレ予想!
日本経済奈落の底へ

非正規労働者の雇い止め
08年10月〜09年9月の一年間で23万2338人

「年越し派遣村」の写真

完全失業率
09年7月に過
去最悪記録
5.7%
新卒就職率
前回氷河期
より悪化
第二部
不況と立ち向かう経済学
──「反ケインズ派」を超えて
こんなことをもたらした経済観



財政削減志向(「小さな政府」へ)
金融引締め志向(インフレ抑制)
規制緩和で雇用流動化
反ケインズ派の経済学の主張
なぜこんな経済学が
出てきたのか
ケインズの写真
戦後ケインズ主義全盛の時代
第2次大戦後「大きな政府」が世界に広がる
■ ケインズ型の、国家による介入体制



アメリカ:軍事中心の財政支出拡大
ヨーロッパ:福祉中心の財政支出拡大
日本:産業基盤整備中心の財政支出拡大
産業基盤=インフラストラクチャー(道路,港湾,コンビナート等)
田中首相の写
真
田中角栄首相
「日本列島改造論」
「大きな政府」の行き詰まり
1970年代に世界中で困難に直面する
 先進諸国の「スタグフレーション」
=不況下のインフレ(物価上昇)
「大きな政府」の行き詰まり
1970年代に世界中で困難に直面する
 先進諸国の「スタグフレーション」
=不況下のインフレ(物価上昇)
↓
財政支出拡大してもインフレ悪化するだけ
→「新しい古典派」経済学によるケインズ批判。
日本のスタグフレーションの様子
物価は激しく
上昇
(インフレ)
20
15
0
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1960
1961
1962
1963
1964
1965
1966
1967
1968
1969
1970
1971
1972
1973
1974
1975
1976
1977
1978
1979
1980
1981
1982
1983
1984
実質GDP
は低迷
(不況)
-5
é¿éøGDPê¨í•
ó ¶(%)
è¡îÔé“ï®âøè„è•
ó ¶(%)
25
10
5
反ケインズ派の猛進撃
フリードマン
フリードマンの写真
裁量的財政政策が
経済を歪める
ルーカス
ルーカスの写真
ケインズ政策は
予想に織り込ま
れると無効になる
「小さな政府」路線
への移行
そうか! おカネ
もうけの競争で
ビシビシだな
1980年代初めから
レーガン大統
領の写真
サッチャー
首相の写真
中曽根首相の写
真
民営化、規制緩和、財政削減のスローガン
いわゆる「新自由主義」政策へ
それが近年に至る
白川日銀総裁の写
真
茶会党の人々
茶会党の集会の写真
総需要拡大政策では
ダメダメ!
反ケインズ派経済学
は本当にこんなことを
言っていたのか
反ケインズ派が言った革新点
フリードマ
ンの写真
フリードマン
ルーカス
ルーカス
の写真
1930年代大不況は、中央銀行がおカネの
供給を増やして景気を好くするべきところ、
減らしてしまったから起こった。
ハイエク
世の中に出回っているおカネの
量が一定率で増えるようにルー
ルで決めておこう。
ハイエク
の写真
国家は不確実なことに手を出さ
ず、民間人のリスクを低めるため
の取引ルールに徹するべきだ。
「工場法」(労働時間制限などの労働基準規制)
もそのルールのひとつ。
人々の将来予想が自己実現されることを考慮
した経済学を作ろう。
要するに「予想」が大事ということ




「よくない」と言っていたのは、民間人が予想でき
ない政府介入。
景気対策も労働保護政策も否定されていない。
要求されていたのは、民間人の予想を確定させ
る政策。(取引ルール、おカネの発行ルール等)
予想が自己実現されることを重視。
丸呑みしてケインズ理論が復活
新しいケインズ理論の特徴


人々のデフレ予想が自己実現してデフレ不況が
続く仕組みの解明
→総需要不足による失業の存在を説明
不況脱却策としての「インフレ目標政策」
•
•
人々の予想に働きかける政策(デフレ予想→マイルド
なインフレ予想)
人々の予想を確定させる(ex. 2%インフレの維持)
→予想が自己実現。好況に。
日本の「リフレ派」の経済政策論
新しいケインズ理論の論者たち

ポール・クルーグマン
クルーグマンの写真
日本銀行は、インフレ
目標を掲げてそれを
実現するまで金融緩
和する約束をすべきだ
本の画像はアマゾンより
新しいケインズ理論の論者たち

ジョセフ・スティグリッツ
スティグリッチの写真
日本は3%程度のイン
フレを目標にすべきだ。
中央銀行の独立なん
か要らない。
本の画像はアマゾンより
「左派ほど金融緩和志向・インフレ嫌
いほどブルジョワ派」は欧米の常識

欧州社会党の主張
質の高い完全雇用は実現可
能である。欧州中央銀行は成
長促進に軸足を移せ。

欧州左翼党の主張
欧州中央銀行を、雇用の増
加目的にそわせるために、民
主的コントロール下におけ。
イラストは両党の各サイトより
低金利政策は誰の負担になるか

4000万円以上持っ
金融緩和で利子率が下がると損するか?
ているおカネ持ち世
持っている金融資産の額で家計を階層分けすると
帯(全体の9%)が
預貯金総額の35%を
持っている。
低金利政策は誰の負担になるか

金融緩和で利子率が下がると損するか?
金融資産保有額上
位4分の1の世帯が
持っている金融資産の額で家計を階層分けすると
預貯金総額の3分の
2を持っている。
低金利政策は誰の負担になるか

金融緩和で利子率が下がると損するか?
金融資産保有額の
下位6割弱の世帯は
持っている金融資産の額で家計を階層分けすると
預貯金総額の18%
しか持っていない。
つまり・・・
低金利のせいで家計が取り損ねた利子のうち、



3分の2は、金融資産上位4分の1世帯の負
担
うち半分強は、上位9%弱の世帯の負担
下位6割弱の世帯の負担分は18%弱にすぎ
ない。
しかも、
この下位6割弱の世帯を、150万円刻みで7分
割すると、そのすべての階層で、借金の方が資
産よりも多い。
つまり、利払いの方が利子の受け取りより多い
ので、利子率は下がった方がトクになる。
しかも…

このデータには中小零細企業や個人商店の
借金は含まれていない。
↑
銀行から個人保証が求められるから個人の
借金と事実上同じ

∴ 多くの庶民にとっては、利子率が下がった
方がトク。
金融緩和でかえって利子率が上が
る場合もあるが…

将来の物価上昇を織り込めば、名目利子率
はその分は上がる。(元本が将来目減りするので、貸
し手にそれが埋め合わされるまで金利が上がる。)
→ 人々がインフレ予想を抱いた証拠

その上に金融緩和の金利引き下げ効果が加
わるので、実質利子率は必ず下がる。
インフレは庶民にとって損か

金融資産保有額150万円刻みで分けた、750
万円までの下位5階層(全体の四割)では、
インフレで価値が
目減りする資産
<
借金
金融資産全体−(株・株の投資信
託+外貨預金+外債)
インフレの方が、借金が目減りしてトク。
インフレは庶民にとって損か

インフレ時代の消費者物価と一人当たり雇用
者所得の推移
労働者は豊かに
なっていった
インフレは庶民にとって損か

デフレ時代の消費者物価と一人当たり雇用
者所得の推移
労働者は貧しく
なっていった
民意を問うべきことがらだ!
中央銀行の独立は必要か?

日銀の政策で景気が変わる
予想インフレ率は上げられるか


中央銀行が「〜%のインフレを実現するまで、あ
らゆる手段で金融緩和を続けます」と約束し、お
カネを出し続ける。
おカネをたくさん出せばインフレ予想は上がる。
リーマンショック時
のアメリカ
予想インフレ率急落。
マイナスへ。
おカネの出し方を
急増すると
予想インフレ率も
上昇した
インフレ目標政策で予想は上がる



2001年の「安定的にゼロ%になるまで量的緩
和」の約束、03年の「ゼロ%の意味」確定は、事
実上のゼロ%インフレ目標。
予想インフレ率上昇→実際に景気回復へ
目標実現前にやめて景気挫折。
これで物価が上がらないなら、こん
ないいことはない。ただちに高度福
祉国家建設を!
物価上昇を確実にするには




日銀による国債の引受→政府支出
震災復興、給付金、福祉財源その他何でも!
既存国債を永久債に転換して日銀が引受
事実上チャラに
日銀が作ったおカネで円売り介入
円安へ→デフレ圧力軽減
十分な金融
緩和が前提
最低賃金引き上げスケジュール
(電気料金引き上げスケジュールでもいい)
悪性インフレにならない



悪性インフレになるのは、財の需要に供給が追
いつかない時
失業のある間(生産資源が確保できる間)は、需
要が拡大して物価が上がっても、供給が追いつ
いてマイルドなものにとどまる。
政府が調子に乗って歯止めがなくならないように
するためにこそ、インフレ目標。
(金融引締めで上からインフレを抑えるのは簡単)
最初はなかなかデフレが止まらない
デフレ
総生産・雇用
中央銀行
のおカネ
の発行
炎のイラスト素材画像集 http://matome.naver.jp/odai/2129064885075224501
マイルドなインフレで雇用増加
マイルド
なインフ
レ
総生産・雇用
中央銀行
のおカネ
の発行
炎のイラスト素材画像集 http://matome.naver.jp/odai/2129064885075224501
完全雇用に至っても続けると
悪性イ
ンフレ
完全雇用
中央銀行
のおカネ
の発行
炎のイラスト素材画像集 http://matome.naver.jp/odai/2129064885075224501
戦前の大不況時のアメリカの例
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中央銀行の出したおカネは13年で5倍近く
2年で2倍を
実現したら
戦前の大不況時のアメリカの例
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悪性インフレになどなっていない
新しいケインズ理論から思いつくそ
の他の方法
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現在の消費税減税(ex. 無税)+将来の消費税
増税
期首時価のx%の資産税を期末に課税
新札発行。旧札を無効にして、交換手数料を取
る。
必ずしも財政赤字を増やすものではない。
第二部のまとめ
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インフレ目標つき金融緩和政策(リフレ政策)は、
反新自由主義の側の経済学の政策。
欧米では、左派・リベラル派が唱えている。
リフレ策は、労働者側の利益になり、欧米ではブ
ルジョワ側が反対する。
リフレ政策の狙いは人々のインフレ予想をつける
ことで、それは金融緩和によって可能。
悪性インフレにはならない。
インフレ予想がつけば名目金利は上がる場合が
あるが、実質金利は必ず下がる(それが目標)。
第三部
アベノミクスをどう見るか
安倍首相の写真
この二つは総需要拡大政策
私の評価
アベノミクスの「三本の矢」
=ケインジアンの政策
 「第一の矢」:大胆な金融緩和
◎
大賛成
 「第二の矢」:機動的な財政出動
△
賛成だが内容に反対
「第三の矢」:民間投資を呼び込む成
×長戦略 これは「天井」を上げる政策
基本的に反対
=新しい古典派の政策
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「第一の矢」:大胆な金融政策
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2%のインフレ目標の導入
それを実現するまで金融緩和
それを遂行する日銀正副総裁人事
←態度がはっきりしないなら日銀法改正し、政府
に解任権
新しいケインズ派のリフレ
論者が主張してきたこと
黒田東彦日銀総裁
首相はいい人を任命し
た。彼はアジア開発銀
行で貧困や格差の問
題を重視して真剣に取
り組んでいた。
異次元緩和
2年で2倍で
2%!
黒田総裁の写真
スティグリッツの写真
スティグリッツ
岩田規久男日銀副総裁
現在の世代が残した放射性廃棄物の場合には、これを拒否する選択
肢は将来の世代に残されてはいないのである。…将来世代のことは
どうでもよい、というのは将来世代の人権を無視することである。そし
て、将来世代の人権を無視する人が、現在世代の他人の人権を尊重
する、などということは、あり得ない。なぜならば、人権とは普遍的な人
間の権利だからである。
1981年発表の反原発論文
(今でも脱原発を主張)
岩田氏の写真
長年にわたるリフレ論の
論客
予想インフレ率上昇
2月14日白川
日銀 1%の「物
価安定の目
処」導入
設備投資・住宅
投資拡大へ?
12月23日日銀、
12月16日総 政府圧力で2%
選挙自民党 のインフレ目標
導入
圧勝
3月20日 黒田
新総裁就任
現在
1.2~3%
ブレーク・イー
ブン・インフレ
率の推移
http://www.pictet.co.jp/archives/25265
住宅着工戸数は増加へ
120
(万戸)
110
103
100
90
80
70
60
2008
2009
2010
2011
2012
2013
片岡剛士「日本経済チャート集」http://yahoo.jp/box/jZLclV
2013/7/24日経
朝刊
設備投資は金融緩和から半年のラグ
で興ってくる。秋には増加か?
円安進行
とうとう100円に
約1年のラグをおいて純輸出拡大へ
円相場で一年後の貿易収支はか
なり決まる
1年前の円相場と貿易収支
円相場は金利差で決まる
つまり…
金融緩和→金利低下→資金の海外流
出→円売り外貨買い→円安→純輸出拡
大→景気拡大
 誤解してはならないこと
「資金の海外流出→景気拡大」
経済学の標準教科書理論!
(マンデル・フレミング理論)

ただし、
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賃金が自然に上がりだすのは、景気拡大が
十分進んで失業者が少なくなってから。
→ それまでは、物価上昇が先行してしまうお
それ。
生活保護給付も
2%で上げてこそつ
じつまがあう
∴ 必要なこと
 最低賃金の年2%引き上げ
安倍政権は逆行!!
 労働運動
特に、非正規労働の賃金・労働条件の引き上げ
→ 企業にとっての雇用の非正規化のメリットを減らす
「第二の矢」:機動的な財政政策
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財政支出で直接に総需要拡大。
インフレ予想を確実なものにさせる。
∴ 大規模な財政支出は景気拡大に役立つ。
旧来型公共事業中心では、完全雇用達成後、
高齢化に対応する労働配分ができない。
医療、福祉、教育、子育て支援などの分野で、
大規模な支出拡大をすべきである。
長期金利高騰(国債暴落)はない
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新規国債発行分は、十分な金融緩和があれば、
「政府の国債供給=日銀の国債需要」
であり、国債市場への影響はない。(数兆円のコインを発
行して日銀に両替させて政府の口座に資金を振り込ませて使うのと同じ)

民間の既存国債が景気拡大後売られて金利が上
がる危険はある。(「だからダメ」なら景気回復するなということ)
→ 今のうちに、日銀が買取って、「塩漬け」にしてし
まう必要がある。(満期が来ても「借り換え」するの
でこの世からなくなるのといっしょ。)
∴ 今は一層の金融緩和が必要。
一時「長期金利上昇」が騒がれたが
現在落ち着いており、直近では低下
http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/marketdata01.html
一時「長期金利上昇」が騒がれたが
長期的には歴史的低水準の内
インフレ予想の上昇を反映した
だけと推測される。
http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/marketdata01.html
一時「長期金利上昇」が騒がれたが
物価連動国債の利回り(実質金利)は低下
直近での
上昇(予
想インフ
レ率の低
下)は心
配!
http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/marketdata05.html
民主党政権こそすべきだった
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子ども手当、高校無償化などの目玉事業
→財源問題で尻すぼみに。
震災復興→財源問題で不十分なものに
国債を事実上日銀が買取る緩和マネーを財源
にすればよかった。(無から作った資金)
→公約実現・復興実現・景気回復。一石三鳥!
ところが現実は財政「健全化」にこだわる
→公約実現せず・復興長引き・不況持続。
→選挙敗北。安倍内閣が公共事業で実現。
→景気回復の手柄は自民党に。
ラインハート・ロゴフ事件
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ラインハートとロゴフの2010年の論文
「政府債務がGDPの9割を超えると成長がガク
ンと落ちる。」→欧州債務危機などで、財政緊縮
論の論拠に。
大学院生が指摘。「結論はエクセルの集計ミス」
→本人認める。
IMFなども、従来の緊縮押しつけ策は失敗だっ
たと反省してきた矢先だった。
「第三の矢」:「天井」の成長率を上
げるための規制緩和策など
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規制緩和策は、当面景気拡大の足をひっぱる。
労働生産性は、何もしなくても、年2%弱は上昇し
ていくもの。
政府が成長分野を特定することは不可能。
完全雇用の「天井」では、純投資財生産のための
労働配分は、医療や介護などにまわした方がこ
れからはよい。(「天井」の成長はあまり不要)
子育て支援や教育の充実には賛成。
アベノミクスの見通し
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株価上昇はバブルか?
→あらゆる景気回復は、実体を超えた株価上昇か
ら始まる。「バブル」との決めつけは早計。
2010年代の半ばにはかなりの好景気になる。
その頃には賃金は上昇し、失業解消により、統計
上格差は縮まる。
やがて通常の景気循環どおり後退するが、金利政
策が効くので、対処は比較的容易。
最大の懸念材料は消費税増税。(やめるべきだ。)
株価上昇は手段でも目標でもない
日経平均の動き:このところ落ち着いている。
ニューディール時の株価の動きと似て
いる。
矢野浩一「終わりの始まりか、始まりの終わりか ―― アベノミクスの今後」
http://synodos.jp/economy/4220
アベノミクスの本当の「危険」
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「第1の矢」+「第2の矢」の景気拡大効果
> 「第3の矢」の景気引き下げ効果
→ 景気拡大。その影で、格差拡大等の負の側
面の印象は数年はかすむ。
→ 「第3の矢」も含めて、「景気拡大には必要な
ことだった」との認識。負の側面の「必要悪」視。
「アベノミクス」という、ひとまとめにした
言い方はやめるべきだ!
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安倍総理は「救国のカリスマ」視。
完全雇用実現時のヒトラーを思い出せ!
金利高騰・ハイパーインフレ等とあ
り得ない批判をしていると…
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2010年代半ばの景気絶好調の時に総選挙
みなさん、三年
前までの、あの
惨めな不況を思
い出して下さい。
もう一度、あ
の不況に戻り
たいですか!
安倍首相の写
真
日の丸を打ち振る
自民党支持大衆
の写真
あんなことを
言っていた人た
ちに政権を任し
たらどうなります
か
ウォー!!
自民党圧勝
民主議席一桁
社共議席喪失
改憲!
戦闘服で戦車に乗っ
た安倍首相の写真
復古教育
国防軍
天皇元首化
今度の参議院選挙でも…
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2月の世論調査:民主党支持者の40.5%、共産
党支持者の40.2%が安倍内閣支持。
自民党圧勝は、どんなに多くの人が、このかん
の不況に苦しみ、今ようやく光明をみいだしてい
るかの現われ。
投票率の低さは、安倍内閣の右傾化に違和感
を持ちながら、景気の後退は避けたいという層
が多いことの現われ。
「改憲反対・右傾化阻止。緩和マネーを福祉に
使って景気拡大」と言えば、保守側の圧勝は阻
止できたのでは?