Extractor D3 川原 純 Extractor • Extractor : 一様でない確率分布から一様分布 に近い分布を作り出す技法。 例:自然界にある乱数(熱揺らぎ等) 確率分布 サンプリング X 正体不明(のことも多い) x1, x2, ...,xn f (extractor) f(x1), f(x2),..., f(xn) 一様分布に「近い」 Extractor • Extractor : 一様でない確率分布から一様分布 に近い分布を作り出す技法。 例:自然界にある乱数(熱揺らぎ等) 確率分布 X f (extractor) 正体不明(のことも多い) f(X) 一様分布に「近い」分布 弱い乱数発生源 weak random sources • どんな確率分布からでも一様分布が作り出せる訳ではない 例: を考える • 弱い乱数発生源(weak random sources) Pr[X=1] = 1 Pr[X=0] = 0 の分布からはどのようにしても – マルコフ鎖発生源(Markov-chain source) 作れない (k は定数) に従う 確率遷移行列 以下の例はすべて {0,1}n 上の確率分布 – 予測不可能発生源(unpredictable source) {0, 1}n上の確率分布 X – ビット固定発生源(bit fixing source) {0, 1}n上の確率分布 X で n-k ビットを固定したもの 直観的には n ビット中、k ビットがランダム 分布が「近い」とは • 定義 は、 T 上の分布 P と Q が ε-close であると が成り立つこととする。これを分布の統計距離と 呼ぶ。 任意の事象 A ⊆ T に対して が成り立つことと同値。 分布がランダムさをもつとは • 定義 {0, 1}n 上の確率分布 X の min-エント ロピーを以下のように定義する X H∞(X) ≧ k なら 任意の x∈{0,1}n に対して 1 ≧k log Pr[X=x] Pr[X=x] ≦ 2-k 直観的には k ビットのランダムさをもつ Extractor の(理想的な)目標 • を満たす任意の {0,1}n 上の確 率分布 X から1ビットを “extract” する extractor の設計 f: {0,1}n → {0,1} を満たす任意の X に対して、 Pr[x ← X, f(x) = 1] = 1/2 となる f を設計する 理想的なExtractor は構築不可能 定理 を満たす任意の {0,1}n 上の確率分布 X に 対して Pr[x ← X, f(x) = 1] = 1/2 となるような f は存在しない 証明のアイデア n=3 000 1/8 001 1/16 H∞(X) = min f : {0,1}3 → {0,1} X = f f(X) … 111 1/4 0 1/2 1/16 1 1/2 1/8 log pi 1 log 1/4 =2 1/16 1/16 1/4 1 任意の H∞(Y) ≧ n – 1 を満たす Y について、 f(Y) は一様分布か? 理想的なExtractor は構築不可能 定理 を満たす任意の {0,1}n 上の確率分布 X に 対して Pr[x ← X, f(x) = 1] = 1/2 となるような f は存在しない 証明のアイデア n=3 000 1/8 001 1/16 f : {0,1}3 → {0,1} X … 111 f 1/6 f(X) 1/6 1/4 0 1/16 1 1/8 log 1/6 ≧2 Y 1/16 1/16 1/4 H∞(Y) = 1 1/6 0 1/6 1/6 0 1/6 f f(X) 理想的なExtractor は不可能 を満たす任意の {0,1}n 上の確率分布 X に 対して、Pr[x ← X, f(x) = 1] = 1/2 となる f は存在しない 証明 ある X に対して、S = {x | f(x) = b} とする。 |S| ≧ 2n-1 となる b が存在する 確率分布 Y を、 f(y) = b となる y には 1/|S| を、 f(y) = b となる y には 0 を割り当てる。 H∞(Y) ≧ n – 1 を満たし、明らかに Pr[y ←Y, f(y) = 1] = 0 or 1 なので、矛盾 b は 0 or 1 Extractor の定義 • 定義 で、 (k, ε)-extractor とは関数 を満たす任意の {0,1}n 上の確率分布 X に ついて Ext(X, Ud) が一様分布 Um と ε-close になるもの である。 d はシードと考える d を下げる、mを上げるのが目標 BPP アルゴリズムのシミュレート • Extractor があれば BPP アルゴリズムをシミュ レートできる。 f(w) を計算するBPPアルゴリズムを考える。 となる多項式チューリング機械 A(w, z) が存在する(z ∈ {0,1}m)。 得体のしれない確率分布 X と extractor Ext が存在するなら すべての y ∈ {0,1}d について、Ext(x, y) = z を計算して、 A(w, z) を走らせて、得られた答えの多数決をとる。 Disperser の定義 • 定義 で、 (k, ε)-disperser とは関数 を満たす任意の {0,1}n 上の確率分布 X に ついて Dis(X, Ud) の台のサイズが少なくとも (1 - ε)2m である Disperser は RP アルゴリズムをシミュレートできる X ∈ Lk の場合(Lk は次元が k 以上の 上の アフィン部分空間の集合) sum-product theorem を使う前 k ≧ 2 log n のとき、extractor の存在を証明(probabilistic method) k ≧ n / 2 のとき、extractor を構築 sum-product theorem を使った後 k ≧ δn, m = 1 のとき、disperser を構築 [Barakら 05] k ≧ δn のとき、optimal extractor を構築 [Bouら 07] 小さな次元で大きな有限体のとき、extractor を構築 [GR05] X∈ の場合 sum-product theorem を使う前 k ≧ 2 log n のとき、optimal extractor を構築(ラムゼーグラフ) k ≧ n / 2 のとき、optimal extractor を構築 [CG88] [Vaz 87] sum-product theorem を使った後 k ≧ 0.4999n のとき、optimal extractor を構築 [Bou 07] k ≧ δn, m = 1 のとき、disperser を構築 [BW05] A statistical version of the SumProduct Theorem で、 を満たす任意の {0,1}n 上の確率分布 X に ついて Dis(X, Ud) の台のサイズが少なくとも (1 - ε)2m である Sum-Product Theorem は集合のサイズに関する命題なので、 disperser の構築に有用 しかし、extractor は f(X) が一様であることも要求するので、 単に集合の個数を議論するだけでは不十分 H0(A) = |support(A)| Hshannon(A) = ∑-pi log pi H2(A) = • Theorem 3.2.15 (Sum-Product Theorem) F =Fp とする。H0(A) ≦ 0.9 log p を満たすすべ ての A ⊂ F に対して、H0(A + A) ≧ H0(A)1+ε と H0(A × A) ≧ H0(A)1+ε の少なくとも一方を満た す ε ≧ 0 が存在する。 H0(A) = |support(A)| H2(A) = H0 を H2 や H∞に置き換えた定理が成り立ってほしいが、 実際は成り立たない • Theorem 3.2.16 F =Fp とする。H0(A) ≦ 0.9 log p を満たすすべ ての A ⊂ F に対して、 H0(A × A + A) > (1+ε)H0(A) を満たす ε ≧ 0 が存在する。 H0(A) = |support(A)| H2(A) = H0 を H2 に置き換えた定理が成り立つ H2(A × A + A) > (1+ε)H2(A) H2(A) = • A, B, C を FP 上の独立な分布とする。 r(X) = H2(X) / log p , r = min(r(A), r(B), r(C)) とする。 [BW04] は以下の定理を示した。 • r ≦ 0.9 なら r(A,B,C) ≧ (1+ε)r • r >0.9 なら r(A,B,C) = 1 となる定数 ε >0 が存在する。 • 以下のように関数列 f i を構築する H2(A × A + A) > (1+ε)H2(A) この定理を使うことで、H2(A) のエントロピーをもった 3 t 個の発生源から、少なくとも (1+ε)t H2(A) の エントロピーをもった1つの発生源に変換することができる。 この手法で 上の(optimal)extractor を構築した [BW04] k ≧δn, c = poly(1/δ)
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