知財と社会 デジタル時代の著作権とオープン化 野口祐子 渡辺智暁 第4回 クラスディスカッション 「ライセンスI コモンズ形成の力学?」 2014.5.15 担当:渡辺 (*本資料のライセンスについては、最後のページをご覧下さい。) 本日の献立 ・ライセンスの世界を垣間見る。特にオープンラ イセンス。 ・取引費用を手がかりに整理 ・社会全体にとって最適なライセンスの選択肢 の設計の難しさに直面してみる 講義編(1)ライセンス、著作権、取引 費用 ライセンスとは? 利用許諾 利用:複製、翻案、上演、公衆送信、・・・ 内容:対象となる著作物、許諾される利用行為 (著作権の支分権など)、許諾を得る者、許諾 の期間、対価、そのほか利用条件、そのほか 契約の諸要素。 ※典型的には、個別の交渉によって締結する 契約 CCライセンスの特徴 ・著作者などの権利者が、使うもの。 ・自分の作品に適用する = 自分の作品を、そのライセン スで提供する ・ライセンスは、基本6種類ある。 ・「著作者へのクレジット表示などをすれば、かなり自由 に利用してよい」というライセンスから、 「改変と商業利用は禁止だが、複製やそのままの上演な どは、著作者へのクレジット表示などをすれば利用し てよい」というライセンスまでいろいろ。 ・「自分の作品の利用条件を設定したいが、法律的な細 かい部分は考えるのが大変」という人には便利なツー ル CCライセンスとの大きな違い 許諾対象者 内容の決め方 作成者 対価 CCライセンス 公衆(誰でも) 予め決まって いる クリエイティブ・ コモンズ 求めない 通常のライセ ンス 契約当事者 (特定少数) 個別交渉で決 める 契約当事者や その法務・顧 問弁護士など 求める ※許諾対象を公衆にする、予めライセンス内容を 決める→個別交渉不要に ※自由な利用を認め、あまり制約を課さないもの にする→個別交渉不要に なぜCCのようなライセンス? 著作物の流通・利用は技術的にかなり容易に ・流通・利用してもらっていいと思っているクリエ イターもいる ・流通・利用したい利用者もいる 著作物の許諾を得る手間はまだ大きい ※無許諾で利用すると原則著作権侵害 オープンライセンス ・複製可能 ・改変も可能 ・誰でも利用可能 ・クレジット表示義務はついているかも知れない ・改変したものを公表する際には、原作と同じよ うなライセンスで、他人が改変や複製できる ように提供する義務もついているかも知れな い。 何故オープンライセンスなのか? ・ソフトウェアやコンテンツを自由に利用できる 環境(PC、ネット)があるし、喜んで提供するク リエイターもいる。 ・自分たちに都合のより法制度は、権利保護が もっと緩く、許諾を求めずに使えるような制度 ・改正をしようと思うと、コンテンツ事業者などの ロビー活動と正面衝突することに →法制度はそのままに、自由な環境を立ち上 げるために、オープンライセンスを使う。 何故オープンライセンスなのか? ・アマチュア・クリエイターの立場から 創造のインセンティブにマッチ ・公共政策の立場から 知識や作品の普及に大きなメリット(外部性) OpenGov等 ・公益事業者の立場から 使命に合致:OpenAccess等 ・コンテンツ事業者の立場から 流通・広告コストを圧縮:Magnatune等 CCライセンス以外にも類似のライセン スはある・・・ GNU GPL(General Public License):フリーソフトウェ ア分野のメジャーライセンス by Free Software Foundation GFDL: 文書用ライセンス by FSF Open Data Commons ライセンス:データベース権 (欧州)に対応したデータベース向けライセンス など。 ※GPLはCCのモデルになった、CCはODCのモデル になった。 取引コストとライセンス 相対交渉の結果作成される利用許諾書(ライセン ス) →当事者双方の事情、力関係が反映されている。 …毎回条件交渉するのはお互い大変 法的有効性を確保するために、弁護士を雇うことも。 (= コスト) …そもそも権利者が誰か、連絡先がどこか、わから ないものもある(= コスト) 議論編(1)ライセンスの設計をめぐる ジレンマ 作業1A(7分 個人作業) 「一定の範囲内なら誰でも使っていい」ものとして提供されることがあ る具体的な作品を1つ想像(実在のものでも可)してください。 ※できるだけ、すごく著名な作品・作者のものか、すごく大量の作品 について考えてください。 以下の点についてメモを作成 1.作品の種類(オペラ、ソーシャルゲーム、映画、ブログ、写真、何 でも)、 2.作者の種類(博物館、地方政府、非営利の研究所、アマチュアの クリエイター、など) 3.その作品の特徴と、主な受け手(視聴者、読者等) 4.作品の制作にかかる時間と費用、制作の動機を考えてみて下さ い ※簡単だったら、2つ作成してください。 作業1B(7分 個人作業) 多くのクリエイターが、CCのようなライセンスに求め る内容について、考えてみて下さい。 ・クレジット付与やリンクバック? 要事後報告? ・料金は? 無料/定額/従量制? ・映画化やテレビ化、ゲーム化もOK? ・非営利限定? ・改変してもOK? アダルト利用は? ・投稿サイトへのアップロードは? ・時限つき? ・一部の利用は事前に要個別承諾? 議論1(15分) グループ内で、各人が作成した作品例とライセンス案の例を共有して、 互いに似ていないものを2点づつ選択した上で、議論をします。 選択作品は、選択ライセンスで提供される可能性があるでしょうか? 可能性がなければ、何故ないのかを、検討してください。 この際、1Aの作品例について、作者のエージェントになったつもりで、 ライセンスについての要望を考えてみて下さい。「こんなライセンス にしてくれると、自分の作品にも適用したい」とか ・少し改変しただけで、自分がゼロから作ったもののように見せる人 が出て来る心配は? ・元の作品がある程度自由に使えるのを伝えずに、転売したり、課金 する人は? ・作品で大いにお金を儲けて原作者に還元しないのはOK? 議論2(10分) 作品1Aでメモ書きされた全ての作品に採用され るライセンスがありうるかどうか、考えてくださ い。 だめなら、最低何種類必要か、グループ内で考 えてください。 本資料のライセンスについて この資料を 2 種類のライセンスで提供し、利用者が選べるようにするために、利用許 諾に関する注意書きを以下に記し ます。 ・ この資料は、 CC-BY 2.1 JP (http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/ ) でライ センスされています。 ・ この資料は、 CC-BY-SA 2.1 JP (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.1/jp/ ) でライセンスされています。 なお参考までに、本作品のタイトルは「ライセンスI コモンズ形成の力学?」で、原著 作者と許諾者は渡辺智暁です。本作 品に係る著作権表示はなく、免責に関する 注意書きもなく、許諾者が本作品に添付するよう 指定した URI もありません。 そこで、例えば、CC-BYライセンスで要求されるクレジット等の表示の義務を満たすに は、次のような類の表示をすればよいということになります: 「ライセンスI コモンズ形成の力学?」 by 渡辺智暁 この資料は、 CC-BY 2.1 JP (http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/ ) でライセ ンスされています。
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