徳島ABA 研究会 高等部2年の自閉症生徒が 提示された時刻までに 掃除を終えることができるための支援 田中敦子 1 事例の概要 • 登校後、週に3回音楽室の掃除を行っている。朝の掃除 は9時15分までに終わり、そのあと朝の会を行うことに なっている。 • しかし、本生徒は9時15分が近づいても急ぐ様子はなく、 教員が時刻を確認するよう促したり、急ぐよう言葉かけ を行ったりすることが度々あった。 • 言葉かけを行うと急ぐ様子は見られるが、言葉かけをし ないとほぼ毎回9時15分を数分過ぎていた。 • そこで、時計を見ながら掃除を行う習慣を身につけてい き、言葉かけをしなくても時間内に終えることができるよ うになってほしいと思い、本実践に取り組んだ。 2 指導目標 【長期目標】 時刻を見計らって行動をすることがで きる。 【短期目標】 決められた時刻までに与えられた作 業を終えることができる。 【標的行動】 提示された時刻までに掃除を終える ことができる。 3 現状のABC分析 褒め言葉あり (-)? 音楽室の掃除 時計あり 終了時刻を 伝えられる 終了時刻ま でに掃除を する 掃除が 終わる (↑) 次の活動 あり(-) 4 4 現状のABC分析 褒め言葉あり (-)? 音楽室の掃除 時計あり 終了時刻を 伝えられる 終了時刻ま でに掃除を する 活動内容ごとの 目標時刻の提示 あり 掃除が終わ る(↑) 次の活動あり (-) シートに○が 5 付く(↑) 5 方法 【対象児】 特別支援学校高等部2年生 男児 自閉症 軽度知的障害 WISC-Ⅲ結果(H23): 全検査IQ79 言語性IQ85 動作性IQ78 【指導場面】音楽室掃除の時間(毎週水曜日第1校時) 【般化場面】掃除以外の活動場面、就業体験 他 【教材】 「音楽室のステージの掃除」の活動を 課題分析したシート (目標時刻・実施時刻・評価を書き込めるもの) 6 手続き(1) 【ベースライン】 1.掃除開始前に「9時15までに掃除を終わってく ださい。」と説明をしておく。 2.9時15分が近づいて掃除が終わりそうにない場 合は、「時間を見てください」「急いでくださ い」と言葉かけをする。 7 手続き(2) 【指導場面1】 1.掃除開始前に課題分析した活動ごとにその活動を終 える目標時刻をシートに記入する。 (登校後着替えを済ませて掃除を始めるため、登校時 刻等によって掃除開始時刻は10分以内の差があ る。) 2.1つの活動が終わるごとに実施時刻を記入し、目標時 刻までに終了できたかどうかを○×で自己評価する。 3.最後に評価が×になった活動をフィードバックし、次 時に注意するよう言葉かけする。 4.次の掃除開始前に前時の記録を振り返って目標時刻 を記入するようにする。 8 手続き(3) 【指導場面2】 1.掃除開始前に「9時15までに掃除を終 わってください。」と説明をしておく。 9 記録方法 掃除の終了時刻を毎回記録する。 (設定された終了時刻は9時15分) 達成基準 5日以上連続して、9時15分までに終わる ことができれば、達成とする。 中止基準 指導開始後5日間で、9時15分までに終われるこ とが1度もなければ中止する。 10 開始時刻 終了時刻 2/27 2/20 2/13 2/6 指導場面1 1/30 1/23 1/16 1/9 1/2 12/26 12/19 12/12 12/5 11/28 11/21 11/14 11/7 10/31 10/24 10/17 ベースライン 10/10 10/3 9/26 9/19 9/12 9/5 8/29 8/22 8/15 8/8 8/1 7/25 7/18 7/11 7/4 6/27 6/20 6/13 6/6 5/30 結果(グラフ) 提示された時刻(9:15)までに掃除を終える 9:17 9:07 8:57 8:47 指導場面2 8:36 8:26 11 結果(1) 指導開始後、2日間は終了時刻がオーバーした が、その都度次はどのように目標時刻を設定した らいいかを考えるよう促すことで、前時の各活動 の終了時刻を参考にしてどの活動の時刻を調整す るかを考え、3日目からは掃除をしながら時計を よく見るようになり、9時15分をオーバーしなく なった。 掃除にかかる時間が全体的に短くもなってきた。 12 結果(2) 7日目に終了時刻をオーバーしたが、この日 は開始時刻が遅く、時計を見て焦る様子も見ら れ、急いでしていたが、間に合わなかった。そ の後は、開始時刻が遅い日は最初から急いで掃 除するようになり、9時15分をオーバーするこ とはなくなった。 指導場面2(17日目)からは、シートを使用 しなくても9時15分までに掃除を終わることが できている。 13 考察(1) 以前は開始時刻が遅くなるとその分終了時刻 も遅くなっていたが、掃除の前に終了目標時 刻をシートに書くことで、遅くなった日は 個々の活動時間を調整することができるよう になった。時間が少ないときは時計を確認し たり急ぐ様子が見られたりするようになった。 14 考察(2) 指導者が本生徒の他の授業に入っていないた め、他の掃除場所や他の学習場面等での般化 の確認ができなかった。 今後は他の掃除場所、他の活動等でも時間を 意識して時間内に終わることができるよう担 任等と連携を図って、指導場面を広げていき たい。 15
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