Geant4

天体硬X線偏光検出器PoGOの
開発試験(II)
水野恒史、釜江常好、Johnny Ng、Viktor Andersson (SLAC)、
片岡淳、河合誠之、有元誠 (東工大)、
郡司修一、山下祐一郎 (山形大)、
斎藤芳隆、高橋忠幸 (JAXA)、深沢泰司 (広島大)、
John W. Mitchell、Robert Streitmatter (NASA GSFC)、
Richard C. Fernholz、Edward Groth(プリンストン大学)
•PoGOの概要
•PoGOプロトタイプのビーム試験
•実験データ vs. シミュレーション I
•Geant4のプロセスの修正
•実験データ vs. シミュレーション II
•PoGOの諸元
•まとめ
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硬X線偏光検出器PoGO
•偏光はシンクロトロン放射やコンプトン散乱で生じ、磁場や散乱体の構造
を反映する。
パルサーの放射機構や、ブラックホール周りの降着円
盤のジオメトリを決める新しいプローブ。
•我々は、2007年頃に気球による偏光観測をめざし、国際協力(日本、米国、
スゥエーデン、フランス)のもとPoGO (Polarized Gamma-ray Observer)の開
発を進めている。最初のターゲットはかにパルサー。
passive/active
•~200本のプラスチックシンチレーター(有効
面積~230cm2 for 40-50keV)を並べ、コンプト
ン散乱の散乱角の異方性から偏光を計る。
•Welcome気球実験やASTRO-Eおよび
ASTRO-E II HXDで培われた井戸型フォス
ウィッチのデザインを採用し、徹底した低バッ
クグラウンドを実現。
collimator
side BGO
PMT
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bottom BGO
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プロトタイプのビーム試験
•さまざまな議論がシミュレーションに依存
•実験室での偏光観測やビーム試験を通し、装置の性能を確認しシミュ
レーターを評価する必要がある
PoGO: 約200ユニットのfast/slow プラスチックシンチレーターと
bottom BGO、およびside BGOからなる
プロトタイプ: fastプラスチックシンチレーター7本 (主検出部)
beam direction
•2003年11月、米国アルゴンヌ国立
研究所にて実験
•水平方向に偏光した、60 keV, 73
keV, 83keVの3つのエネルギーの
シンクロトロンビームを中心のシン
チレーターに照射。装置を15度刻
みで回転。
•同年7月のSpring-8での実験が、
本実験の成功に不可欠であった。
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実験データ vs. シミュレーション(1)
•中心でコンプトン散乱し、周りのシンチレー
ターの一つで光電吸収した事象を選択
得られた方位角の異方性と、Geant4
によるシミュレーションの比較
Geant4 (BG included)
全エネルギー (keV)
2 scintillators detected a hit
ch1/8
ch2/6
ch3/5
中心のシンチレーターでのエネルギー (keV)
•プロトタイプで偏光を測定できることを確認。
•Geant4によるシミュレーションと比較すると、
ビームの偏光度が100%を大きく超える>Geant4の物理プロセスに問題。理論およ
びEGS4との比較に基づき修正
•Rayleigh 散乱の修正(New)
•Compton散乱の修正(Updated)
Modulation Factor:
42+-1%(data) vs. >>~35%(simulation)
装置の回転角 (度)
Geant4 ver 5.1のG4LowEnergyPolarizedComptonクラス、
G4LowEnergyRayleighクラスを使用。
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PoGO fix of Geant4 (1):Rayleigh Scattering
(a)100%偏光した単色(100keV)
のγ線を入射
Rayleigh散乱後の偏光ベクト
ルと運動量ベクトルのなす角
-- Geant4
(original)
-- Geant4
(with PoGO-fix)
(b)217ユニットのプラスチックシンチレータ
(full size PoGO)に、100%偏光したCrabの
スペクトル(25-200keV)を入射
初回のコンプトン散乱の際の、方位角の異方性
cos(theta)
•G4のRayleigh散乱には偏
光のプロセスがなく、結果と
して偏光の情報が失われる
->修正
-- Geant4 (original) : MF=46.5%
-- Geant4 (with fix) : MF=49.4%
-- EGS4
: MF=49.4%
散乱の方位角(度)
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PoGO fix of Geant4 (2): Compton Scattering
(a)100%偏光した単色(100keV)
のγ線を入射
前方Compton散乱後の偏光ベ
クトルの向き(Thomson極限)
-- Geant4
(original)
-- Geant4
(with PoGO-fix)
217ユニットのプラスチックシンチレータ
(full size PoGO)に、100%偏光したCrabの
スペクトル(25-200keV)を入射
2回めのコンプトン散乱の際の、方位角の異方性
方位角(度)
•G4でCompton散乱の際、偏光
ベクトルの向きがばらばらにさ
れ、次の散乱での異方性がなま
される->修正
•Rayleigh散乱、コンプトン散乱の
プロセス修正後のG4は、PoGO
のエネルギー範囲でEGS4と数%
で一致
-- Geant4 (original) : MF=16.7%
-- Geant4 (with fix) : MF=32.5%
-- EGS4
: MF=32.5%
散乱の方位角(度)
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実験データ vs. シミュレーション(2)
•中心でコンプトン散乱し、周りのシンチレー
ターの一つで光電吸収した事象を選択
全エネルギー (keV)
2 scintillators detected a hit
得られた方位角の異方性と、Geant4
によるシミュレーションの比較
Geant4 (BG included)
ch1/7
ch2/6
ch3/5
中心のシンチレーターでのエネルギー (keV)
Modulation Factor:
42+-1%(data) vs. ~47%(simulation)
装置の回転角 (度)
•Geant4の修正により、実データを10%程度で説明可能。
•残りの差:シミュレーションの不定性(2-3%)、実験の不定性(装置のアライメント、etc.)
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PoGOの諸元
エネルギーバンド
30-80keV
幾何学面積/有効面積(40-50keV)
930/230cm2
スレッショルド(fast/slow scintillator)
3/30-50 keV
バックグラウンド(for 40-50keV)
<=10mCrab
100mCrab(100%偏光)に対するModulation Factor
22%
100mCrabに対する検出可能な偏光度 (3 sigma)
10%
Flux(c/s/cm2/keV)
上向き大気γ線によるバックグラウンド
(Sn collimator of 100um)
100mCrab(100%偏光)によるモジュレーションカーブ
100mCrab (incident)
100mCrab (detected)
MF=26.3+-0.8%
大気γによるバックグラウンド
Eth=10keV, 30keV, 100keV, 300keV and 1MeV
20
100
エネルギー(keV)
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MF=21.9+-0.7%
(including BG)
散乱の方位角(ラジアン)
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Summary
•硬X線による偏光観測は、パルサーの放射機構や降着円盤のジオメトリなどを調べる新し
いプローブとなる。
•気球による偏光観測を目指し、日本を含む国際協力でPoGO (Polarized Gamma-ray
Observer)の開発を進めている。
•装置の性能確認と、シミュレーションプログラムの評価のため、昨年11月に米国アルゴン
ヌ国立研究所で、ビーム試験を行った。
•プロトタイプで偏光が観測できることを示すとともに、Geant4によるシミュレーションでデー
タを10%で再現することに成功。この際、理論およびEGS4との比較に基づき、Geant4の偏
光プロセスを修正。Geant4チームへのレポート、論文投稿(NIMA)を行った。
•実験室における光電子増倍管、シンチレーターの試験などを通し、想定している性能を発
揮できることを確認しつつある。
•今年・来年に、エネルギー帯を広げる、ユニットを増やす、slow scintillator、bottom/side
BGOを取り付けるなどの拡張を施したプロトタイプでのビーム試験(KEK/アルゴンヌ)、実験
室での偏光測定試験を行う。
•2007-8年の気球観測を目指し、各機関で協力、分担して開発中である。
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Appendix A:偏光プロセスの修正
コンプトン散乱の全断面積:
r0 k 2
d

d
4 k0 2
2
 k0

k
2




2

4
cos

 k

k
0


(a)
元の光子の偏光ベクトルと散乱後の運動量ベクトルのなす面上の成分:
d ||
2
r0 k 2

d
4 k0 2
 k0

k
2
2




2

4
(
1

sin

cos

)
 k

k
0


(a1)
(a1)に垂直な成分:
r0 k 2
d 

d
4 k0 2
2
 k0

k




2
 k

k
0


(a2)
a1,a2より決まる、散乱後の光子の偏光度:
2(1  sin 2  cos 2  )
P
k0
k

 2 sin 2  cos 2 
k
k0
(b)
オリジナルのG4が、(a)の関数形(~cos2(theta))で偏光ベクトル
をばらばらにしていたのを、(b)に従い偏光度を計算し偏光ベ
クトルを分布させるように修正。Thomson散乱(in Rayleigh散
乱)はコンプトン散乱の極限としてコーディング
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Appendix B: Geant4 vs. EGS4
•プラスチックシンチレーターでできた箱に100%偏光したCrabのスペクトルを入射し、
EGS4とGeant4とでModulation Factorを比較。EGS4はNamito et al. (1993)によ
るコンプトン散乱、Rayleigh散乱(偏光)の拡張がなされたものを、Geant4はver5.1
with low energy extensionを使用。
•Geant4が~40%低いMFを返した。Rayleigh散乱、コンプトン散乱に問題を見つけ修
正。修正後のG4はEGS4と2%程度で一致。
-- Geant4 (original) : MF=12.4%
-- Geant4 (with fix) : MF=22.2%
-- EGS4
: MF=21.8%
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