プロジェクトマネジメント(コミュニケーション会話編)(2010年1月29日)

プロジェクトマネジメント(コミュニケーション会話編)
~会話におけるコミュニケーション~
2010年1月 PMFactory
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1
インデックス
●序文 p3
●「いい人への過剰適応」と「空気読み」 p4
●「空気を読む」ってどんなこと?
p5
●「空気の支配」は恐ろしい p6~p7
●「コミュニケーション」って何だ?
p8
●コミュニケーションと信頼関係について p9
●オープンなコミュニケーションの制度と風土 p10
●現状のコミュニケーション①(不信関係を増大するコミュニケーションの例) p11~p12
●現状のコミュニケーション②(信頼関係を醸成するコミュニケーションの例) p13~p14
●コミュニケーション(意思疎通)が阻害された組織に何がおきるか p15
●コミュニケーション改善のポイント p16
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序文
●ある叔父と甥の会話
叔父「会議でみんな発言したがらないけど何故だろうか?」
甥「そりゃ当り前ですよ」
叔父「当り前ってどういうこと?」
甥「へたに発言したら損ですよね。後で同僚からは自分だけ良い子にしてと
中傷されるかも知れないし、上からはなまいきだと思われるかも知れないし、
下からはあんなこと言ってバカじゃないのとか陰口をたたかれ、結局仲間外
しにあって自分の居場所がなくなるかも知れないから。そんな危険をおかし
てまでやる意味がないと思います。」
叔父「でも皆に言っておかなければいけないことだったらどうするの?」
甥「自分が言わなくても誰かが言うかも知れないし、何とかなるのじゃないか
と思いますよ。」
あなたはどう思いますか?
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「いい人への過剰適応」と「空気読み」
今の若者にはおしなべて「いい人への過剰適応」が見られる。 まず会話に
「間」がない。相手の言葉をそしゃくする前にすぐ同調の言葉を発する。周りの
雰囲気を壊さないよう、グループからはじき出されないように注意深く会話し、
いい子を演じることが身についている。
だが、「いい人への過剰適応」は、若い人固有の世界ではなく、大人世界の問
題でもある。タレントの人気が「好感度」によって査定されるという、あの不可思
議な評価基準。いまやタレントのみならず一般人、企業やマスメディア、政治ま
でもが、その好感度という尺度で査定される。
その目に見えない風圧にさらされ、いい人を演じて波風の立たない気持ちの
良い人間関係を作ることに個々人が腐心する。そこには、相手の言葉や行為を
正面から受け止め、たとえあつれきが生じても自らの思い、考えを投げ返すと
いう、本当の意味のコミュニケーションが希薄だ。
こういった、波風立てずの空気読みの風景は、2001年の9・11同時多発テロ事
件以降の一般的傾向のように思う。
参考;『コミュニケーションと社会』藤原新也、朝日新聞2010年1月3日)
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「空気を読む」ってどんなこと?
●「空気を読む」と「相手を思いやる」とは似て非なるもので、正反対
のものでしょう。
●「空気を読む」とは多少読むだけなら「仲間との調和」あるいは「つ
きあいの潤滑油」として役立つでしょう。
しかしながら過度の「空気を読む」行為は「付和雷同」、「大勢順
応」、「長いものには巻かれろ」と同じで、自分のみならず仲間・組
織全体の自滅への一里塚であることを心しておく必要があるでしょ
う。
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「空気の支配」は恐ろしい
●「空気を読む」とは、「人情」という名の人間関係重視、組織内融和の優
先によってもたらされます。 このような人間関係や組織内融和の重視
は、本来組織の硬直化を防ぎ、組織の効率性を補完する役割を果たす
はずですが、過度の重視はかえって組織の合理性・効率性を歪める結
果となります。
●エピソード 戦艦「大和」の特攻出撃
『連合艦隊司令部は戦艦「大和」が海上特攻隊として沖縄西方海面に突入
して、敵艦隊を攻撃するという作戦を立案した。軍令部はこの作戦には容易
に同意しなかった。敵の完全な制空権下で進撃しても、沖縄まで到達するこ
とは絶対に不可能であったからである。これは壮大な自滅作戦であった。し
かしこの作戦は実行された。
軍令部次長の小沢中将は、このときのことを述懐して、「全般の空気よりし
て、当時も今日も大和の特攻出撃は当然と思う」と発言している』
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6
「空気の支配」は恐ろしい
この「空気」は日本軍の主要な作戦の策定、準備、実施の各段階で随所に
顔を出している。空気が支配する場所では、あらゆる議論は最後には空気
によって決定される。もっとも、科学的な数字や情報、合理的な論理に基づ
く議論がまったくなされないというわけではない。そうした議論を進める中で
ある種の「空気」が発生するのである。
「空気」は主に、主観と独善からくる希望的観測によって構成され、コミュニ
ケーション(意思疎通)を遮断し、それは現実と合理的論理によって漸次破
壊され組織およびその構成員である個人に壊滅的な敗北をもたらすことに
なった。
それはわずか65年前に300万人以上の犠牲者を出し日本全土を焦土にし
た原因の一つでした。
(参考;『失敗の本質』ダイヤモンド社、1984年、山本七平『空気の研究』文芸春秋社、1977年)
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「コミュニケーション」って何だ?
コミュニケーションとは「意思疎通」のことではありませんか。
人と人の間で行なわれるお互いの考えの素直な通い合いのことです。
双方向性でないものは意思疎通ではありません。
一方的なものは命令、威圧、独り言等です。
参考;
・コミュニケーションとは、言語・文字その他視覚・聴覚に訴える各種のものを媒介として、思想・
情報などうを伝えること。伝達。
・会話とは、話をかわすこと。対話。
・意思疎通とは、考えがとどこうりなく通ずること。(新潮国語辞典)
・ミュニケーション・ギャップとは意思疎通ができていない状態のこと。
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コミュニケーションと信頼関係について
人間関係における信頼関係は意思疎通(コミュニケーション)によってしか醸成さ
れません。先に信頼関係があってコミュニケーションが成立するということではな
く、誠実なコミュニケーションの継続の過程において信頼関係が醸成されます。
信頼関係を作りあげるためには絶えずコミュニケーションを行なうしか方法はあり
ません。
エピソード;『日本軍における作戦目的とその準備、実施に係わる関係諸階層間
の意思疎通の不徹底さは、ミッドウエー海戦で勇猛ぶりをうたわれたスプルーア
ンス少将が、空母「エンタープライズ」の甲板上で、いつも参謀と散歩をしながら、
長時間にわたって議論を重ね、相互の信頼関係を高め、作戦計画についての検
討を進めると同時に、価値観の統一を図ったというエピソードと比べるといっそう
きわだったものに見える』(参考;『失敗の本質』ダイヤモンド社)
●信頼関係の特徴; 活性的、積極的、受容的、建設的である。
●不信関係の特徴; 防衛的、消極的、批判的、攻撃的である。
人間同士は信頼関係の中で生かされる。 その上で、会社は信用の中で生かされる。
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オープンなコミュニケーションの制度と風土
オープンなコミュニケーションの制度と風土を持たない組織においては「空気
読み」の悪弊が蔓延し、近い将来は自分のみならず組織全体が自滅への道
を歩むことになるでしょう。 何をいっても安心・安全なコミュニケーションの場
を保障するのはマネジャーの役割です。
『 問題解決・状況変化適応のためには組織のなかに論理的な議論ができ
る制度と風土が必要である。オープンな議論の場がないことは人から「言葉
を奪う」ことに等しい。組織の末端の情報、問題提起、アイデアが中枢につな
がることを促進する「青年の議論」「自由討議」を行なう場が必要である。』
(参考;『失敗の本質』ダイヤモンド社、1984年)
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現状のコミュニケーション①
<不信関係を増大するコミュニケーションの例>
①ほとんど会話・会議がない
*メンバーが朝,黙って机につき,パソコンに一日中しがみつき,ほとんど誰とも会話す
ることもなく、夜静かに帰宅している状況は異常であると思った方がいい。
②一方通行の命令ばかり
「言われた通りにやればいいんだ」、「君の意見は聞いていない」
*独善型マネジャー/リーダが陥りやすく、他者とのコミュニケーションが機能せず、
いったん誤った方向に進み出したら最悪の状態に至るまで止められない。
③責任追及的
「君の責任だ」、「俺は知らないからね」
*あなたは本当に私の上司でしょうか?仲間でしょうか?こんな上司にはなりたくない。
④否定的
「そんなことやってもダメだ」、「そんなことできません」、「それはうちの担当じゃない」
*できないモードにはまって相互不信を増大させる。
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現状のコミュニケーション①
<不信関係を増大するコミュニケーションの例>
⑤高圧的
「一体何を考えているんだ」、「何回も言わせないで」
*聞く耳をもたない人とは一緒に仕事はできません。
⑤発言者つぶし
「言わなきゃ良かった」「ひどい目にあわされた」等を発言者に感じさせるよ
うなこと。
*結局、犠牲者は私なのですか。空気を読むなといわれても読みたくなり
ます。
不信関係を増大するような会話が行なわれている組織においては、誰も意見
をいわなくなり、結局「空気読み」の「指示待ち」の人間ばかりになってしまいま
す。
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現状のコミュニケーション②
<信頼関係を醸成するコミュニケーションの例>
①日例・週例・月例会議等、業務の日々のけじめに始まって主要イベントの都度計画的
なコミュニケーションを実施する。
②双方向性の会話に心がける。
お互いに相手の発言に傾聴すること。言いっ放し、聞きっ放しにしない。
③責任の追及より真因の追究を
仲間同士あるいは関係者間の責任転嫁の議論からは何も生まれない。
真因追究及びすばやい対策の実施を。
④否定的発言から始めないこと。
まず相手の発言を肯定的に受け止めることからはじめる。
相手の不備・不足は理に従って冷静に話をする。
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現状のコミュニケーション②
<信頼関係を醸成するコミュニケーションの例>
⑤高圧的ではなく友好的に
高圧的・攻撃的発言は相手の言葉を奪ってしまう。 聞く耳をもたない人とは一緒に
仕事はできません。
上司・部下間におけるコミュニケーションの重要なポイントは「わかりやすい指示と
随時の激励」(上司)と「的確な報告と相談」(部下)です。 特に上司は感情的な発
言は慎もう。上司の感情的な発言は長い将来にわたって部下の信頼を失うもので
す。 人間だれしも自然にわいてくる感情を抑えることはできませんが、それを口に
出したり行動に移したりするか否かは自分の力で選択できるはずです。 感情の暴
発は自分の弱さの現れと心得るべきです。
⑥発言者の勇気に援護射撃を
勇気をもって発言した者に対し、不足分を補ってやるなどの援護射撃をしよう。
信頼関係を醸成するコミュニケーションが行なわれている組織においては、メンバーの
考え方・行動が活性的・積極的・受容的・建設的であり、その信頼関係をベースに人間
力の強化を通じて組織力が遺憾なく発揮され、一歩一歩着実にその目標を達成してい
くでしょう。
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コミュニケーション(意思疎通)が阻害された組織に何がおきるか
・空気読みが蔓延する。
・指示待ち(言われたことしかやらない、自分で考えない、言われたことも半
端にしかできない、挑戦しない、責任回避する、保険をかける、一歩後退、
自己中心的、人の意見を聞かない、他人に興味をもたない)人間の増加。
・チーム内の信頼関係の崩壊。
・チームがチームでなくなり、単なる烏合の衆となってしまう。
・当り前のことが当り前に実行できなくなる。
・組織力の低下。ばらばらになった隙間から品質がどんどんこぼれ落ちる。
・業務執行品質の低下
・製品品質の低下
・客先信用の失墜。
・最終的には組織の崩壊。
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コミュニケーション改善のポイント
●オープンに友好的に話せる場を確保すること
自由な議論が行なえるようにしよう。
●好奇心をもって対話すること
聞くだけ無駄と思わずに人の話に興味を持とう。
●自分の感情を少し抑えて発言者への気配りをすること
すべてのコミュニケーションにいえることですが、「私」という言葉を捨て、「あ
なたに」置き換えてみて下さい。
相手の視線に立った見方をすることが、自己中心的で感情的なふるまいを抑
えるのに役立ちます。その結果として、相手の行動を促し、成果を挙げること
につながるのです。(参考;プレジデント2007.6.4 P.62 渋井真帆)
●対話に集中しよう。
出席した時間がもったいないなどと考えず、この場の議論に集中しよう。
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ご静聴ありがとうございました。
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