国内で市販されているワイン中の 残留農薬 ○山口之彦、板野一臣 (大阪市立環境科学研究所) 目 的 ポリフェノールを多く含むことで健康との関連 性が注目を浴びているワインにおいて、食品 の安全性の観点から残留農薬濃度を明らか にする。 試 料 大阪市内で市販されている赤ワイン56本 (内訳) フランス産(14)、イタリア産(5)、スペイン産(5)、 ドイツ産(2)、ポルトガル産(2)、オーストリア産(2)、 ブルガリア産(1)、アメリカ産(6)、アルゼンチン産(3)、 チリ産(5)、南アフリカ産(2)、オーストラリア産(3)、 日本産(6) 対 象 農 薬 ぶどうに対する残留基準が設定されている もの、ワインにおける検出事例があるもの (80種類) (内訳) 殺虫剤(28)、殺菌剤(29)、除草剤(3)、殺ダニ剤(5)、 殺虫・殺ダニ剤(11)、殺ダニ・殺菌剤(1)、 殺虫・殺ダニ・殺線虫剤(1)、代謝物(2) 分 析 法 試料, 50g ヘキサン層 + 食塩 12.5g 振とう, 5min. 濃 縮 + アセトン-ヘキサン(1:1) 100ml + ヘキサン 50ml 脱 水 振とう, 20min. 濃縮・乾固 ヘキサン層 水層 + ヘキサン 50ml 振とう, 20min. + ヘキサン 1ml 溶解 + 10mg/ml内標準 10ml GC/MS GC/MS測定条件 装 置 : GC- Agilent HP6890 GC system MS- Agilent HP5973 MSD カラム : HP-1, 0.25mm×30m, 膜厚 0.25mm カラム温度 : 60℃(1分)→20℃/分→180℃→2℃/分→210℃ →5℃/分→280℃(4分) 注入口温度 : 280℃ キャリアガス : ヘリウム, 1ml/分, 定流量モード トランスファー温度 : 280℃ イオン源温度 : 230℃ 回収試験 添加量:1mg 方 法:20%エタノール-精製水およびワイン 50gに対象農薬を添加し、分析法を踏襲し 回収率を求めた 回収試験結果 精製水・ワインともに回収率が50%以下の農薬 アセフェート、ジメトモルフ、バミドチオンの3農薬 ワインのみで回収率が50%以下の農薬 イミベンコナゾール、クレソキシムメチル、ジクロルボス、ジフェ ノコナゾール、シプロコナゾール、シプロジニル、テトラコナゾー ル、テブコナゾール、トリアジメノール、トリフルミゾール、ピリ フェノックス、ピリミカーブ、フェナリモル、フルジオキソニル、フ ルシラゾール、ミクロブタニルの16農薬 H HCH O Cl O C N C H H N 殺菌剤 H H H CH O H CH H C C O CH H H N H H C C O CH H CH H O H H H CH H N Cl O イプロジオン H HC H H H HC C H H H C O H O メタラキシル N H H CH O H H N Cl O N N H N HCH H H CH H プロシミドン シプロジニル H HC O N O H C H C C O CH H H O HC H N C O CH H HC H H NH O F ジエトフェンカルブ 除草剤 Cl O C F フルジオキソニル H C N OH H HCH H クレソキシムメチル 殺虫剤 H H HC H C C H C O H N Cl シプロコナゾール O H O C N CH H H N カルバリル 赤ワイン中残留農薬濃度 農 薬 名 定量限界(S/N<3) 濃度範囲 ぶどうの残留基準 検出数 ng/g ng/g ng/g イプロジオン メタラキシル プロシミドン シプロジニル カルバリル ジエトフェトフェンカルブ シプロコナゾール フルジオキソニル クレソキシムメチル 0.062 0.059 0.052 0.014 0.019 0.031 0.048 0.034 0.10 0.093-750 25000 0.081- 25 基準なし 0.071- 24 5000 0.016- 3.2 5000 0.31 - 3.4 1000 0.039- 0.84 5000 0.048- 6.6 200 0.043- 6.3 5000 0.17 - 5.7 15000 49/56 43/56 31/56 17/56 16/56 15/56 15/56 12/56 9/56 国別赤ワイン中残留農薬濃度 1000 濃度, ng/g 100 10 1 0.1 0.01 イプロジオン メタラキシル プロシミドン シプロジニル フルジオキソニルクレソキシムメチル フランス イタリア スペイン ドイツ アメリカ チリ 南アフリ カ オーストラリ ア ポルトガル 日本 オーストリ ア ブルガリア 安全性の評価 評価方法:ADIに対する比で評価する。検出した 農薬の濃度から1日ワイン1本(720ml)摂取す ると して摂取量を求める。ADIは体重あたりで 求めるこ とから摂取量を50kgで除算しADIに 対する割合 ADI%を求める。これを検出された 農薬ごとに求め、 積算しSADI%とし評価した。 ADI%(農薬A)=摂取量(農薬A)/ADI(農薬A) ×100 SADI%=ADI%(農薬A)+ADI%(農薬B)+・・・・ 試料No.11のADI,摂取量およびADI% 農 薬 名 イプロジオン メタラキシル プロシミドン シプロジニル カルバリル ジエトフェトフェンカルブ シプロコナゾール フルジオキソニル クレソキシムメチル SADI% ADI mg/kg/day 0.12 0.03 0.1 なし 0.01 0.14 なし 0.055 なし 摂取量 mg/day 0.54 0.00037 0.0015 ND ND ND ND ND ND ADI% % 9.0 0.025 0.03 ND ND ND ND ND ND 9.1 国別赤ワイン中のSADI% 10 SADI% 8 6 4 2 0 フランス イ タ リ ア ス ペ イ ン ド イ ツ ア メ リ カ チリ ア ル ゼ ン チ ン ポ オ南 ル ーア ト スフ ガト リ ルリ カ ア オ ー ス ト ラ リ ア 日本 ブ ル ガ リ ア まとめ 1. イプロジオン、メタラキシルおよびプロシミドンの検出率は50% 以上で、最高濃度はイプロジオンの750ng/gであった。 2. 国別の残留農薬濃度では、ヨーロッパ、アメリカ大陸など地域 によって検出される農薬が異なった。これは、各国の農薬の使 用状況を反映していると考えられる。 3. 安全性の評価のため、SADI%を求めた。今回の試料において SADI%は0. 0066〜9.1であり、食品衛生上問題はなかった。
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