建設CALS/EC実証フィールド実験を支援するウェブ技術について

平成11年度 修士論文
建設CALS/EC実証フィールド実験を支援するウェブ技術について
STUDY OF WEB-TECNOLOGY SUPPORTED BY
PILOT TRAIALS FOR CONSTRUCTION CALS/EC
施設設計工学研究室
関 宏一郎
背景
建設省を中心とした建設CALS/ECの推進
(建設業界の情報化)
建設CALS/ECとは?
→ 「公共事業支援統合情報システム」
これまで「紙」でやり取りされていた公共事業に関する情報を「標準」に基づ
いて「電子化」し、情報機器をネットワークに接続することにより、特定の機器、
システムに縛られることなく、組織を超えて情報の伝達、共有、処理、加工、検
索、連携を可能とする環境の総称
図-1 建設CALS/ECのイメージ
1995年5月 「公共事業支援統合情報システム研究会」 設置
1996年4月 「建設CALS/EC整備基本構想」 策定
1997年6月 「建設CALS/ECアクションプログラム」 策定
表-1 建設省直轄事業における建設CALS/ECアクションプログラム(要約)
フェーズ1
フェーズ2
フェーズ3
1996~1998年度
1999~2001年度
2002~2004年度
建設省全機関において電子データの受発信 一定規模の工事等に電子調達システムを導 建設省直轄事業の調査・計画、設計施工、管
整備目標 体制の構築
入
理に至る全てのプロセスにおいて電子データ
の交換、共有、連携を実現
事業に関連する情報の伝達・交換を電子メー 電子調達システムの導入
全ての事業に電子調達を活用
ル化
電子媒体又は電子メールによる申請・届出
事業に関する情報の伝達・交換の電子メー EDIによる契約事務の執行
ル化(認証あり)
調達関連情報のホームページ掲載
電子媒体又は電子メールによる申請・届出 全ての公共事業執行に係る申請・届出のオ
実現内容
(認証あり)
ンライン化
調達情報に関するクリアリングハウスの構築 資格審査申請のオンライン化
事業に関する情報の統合データベース化
ネットワーク型自動積算システムの導入
GISを利用した情報の連携・統合
電子データ成果の再利用・加工・統合による STEPの活用による施設のライフサイクルサ
データの有効活用
ポート
インターネットの利用環境の整備
国際標準等に基づく電子データの基準化
既存情報システムとの連携
電子認証システムの導入
STEPの一部国際標準化
実現のため 実証フィールド実験の推進
電子調達に必要な技術の開発
電子データによる成果納品の実施
電子データによる契約事務の標準化
に不可欠な
措置・技術 電子データ標準化に関する研究
情報インフラの整備(光ファイバー網等、空間データ基盤)
実証フィールド実験
実際の公共事業へ建設CALS/ECを適用することによる効果と問題点を把握することを
目的とし、併せて現場への建設CALS/ECの普及・教育のため
表-2 実証フィールド実験の実施数
事務所数(全数252)
250
?
200
176
150
119
100
50
35
0
1996
1997
1998
年度
1999
問題点
サーバー管理による情報の信頼性
(共有サーバーの在り方)
図-2 発注者側
図-3 受注者側
両者が対等な立場ではない
不正行為の可能性
「改竄」「なりすまし」「しらばくれ」など
提案
第三者認証機関にサーバー管理を委託
(外部共有サーバーの導入)
図-4 第三者認証機関
両者が対等な立場である
情報管理の相互信頼を維持
問題点
各種電子データの「標準化」
これまで建設各社は、それぞれ独自にOA化・情報化を進め、多くの情報を
電子化し、業務を効率的なものにしようと努力してきた
建設各社それぞれ使用するコンピュータの機種やソ
フトウェアの種類は異なってくる
このことが組織や会社の枠を超えたオープンな電子データの
交換・共有を目指す建設CALS/ECの実現において互換性・
汎用性といった点で大きな障害になっている
コンピュータの機種やソフトウェアの種類に依存している
提案
既存のウェブ技術によるシステムの構築
サーバー側のパソコンにおいて、既存のウェブ技術の機
能を利用してウェブ・アプリケーションを開発し、システムを
構築する
クライアント側のパソコンには基本的に無償で配布されている
Internet ExplorerやNetscape Communicatorに代表される一般的な
ブラウザ・ソフトのみでネットワークに参加可能
コンピュータの機種やソフトウェアの種類に依存しない
構成ウェブ技術
ASP(Active Server Pages)
Windows NT Server 4.0のService Packに標準搭載されたインターネットサー
バーであるInternet Information Server 3.0以降で動作可能なアドオンモ
ジュールのことで、WWWサーバー上でVBScriptやJScriptなどのスクリプトプ
ログラムを稼動させるための仕組み
クライアント側のパソコンのブラウザ画面で入力したテキストや選択した項目
などを、サーバー側のパソコンに送信することが可能となる
追加コンポーネント(Posting Acceptorなど)
クライアント側のパソコンのローカルディスクにあるファイルをサー
バー側のパソコンに送信することも可能となる
適用事例
大戸川ダム建設事業
黄ノ瀬管理用地概略設計業務
岐阜県
場所:滋賀県大津市
福井県
期間:平成11年1月~平成11年3月
ダム本体および付替県道等で発生する
残土処理と、100年間の貯砂ダムでの堆
砂処理を考慮して、黄ノ瀬管理用地での
残土処理計画の概略検討を行い、地元
に対するプレゼンテーション資料を作成
するものである
滋賀県
大津市
大戸川ダム
■
京都府
三重県
図-5 建設位置
発注者:建設省 近畿地方建設局 大戸川ダム工事事務所
受注者:鳳コンサルタント株式会社
第三者機関:熊本大学 施設設計工学研究室
近畿地方建設局
様式乙31 「打合せ記録簿」
設計段階において受・発注者間で
頻繁に交換される
図-6 「打合せ記録簿」
図-7 ブラウザ画面
受・発注者はそれぞれウェブ・ページにアクセスし、ブラウザ画
面を通じて必要な情報の入・出力および参照を行う
URL:http://gdp1.erec.kumamoto-u.ac.jp/daidogawa/kinose/
作業手順
「打合せ記録簿」新規作成
① 発議者
② 発議年月日
③ 発議事項
④ 業務名
⑤ 内容
⑥ 添付図書
⑦ 削除用パスワード
⑧ 送信および取消ボタン
まず、受・発注者のどちらかが上記
の項目を全て入力し、文書データを
サーバーに送信する
図-8 新規作成画面
作業手順
「添付図書」ファイル送信
(添付図書の項目にゼロ以外の数値を入力した場合のみ)
⑨ ファイル選択
⑩ 送信および取消ボタン
ここでは、添付図書として送信した
いファイルを選択して、送信ボタン
をクリックする
※ 添付図書は同時に5部まで
図-9 ファイル送信画面
作業手順
「打合せ記録簿」処理・回答
⑪ 追記内容
⑫ 添付図書
⑬ 処理・回答事項
⑭ 処理・回答年月日
⑮ 送信および取消ボタン
受・発注者のどちらかが、送信内容
を確認し、それに対して更に上記の
項目を入力し、サーバーに送信す
る
以上の作業手順を踏むことで、一
枚の「打合せ記録簿」が完成し、打
合せ業務が成立したこととなる
図-10 処理・回答画面
適用事例
佐敷大橋(仮称)建設工事
場所:熊本県芦北郡芦北町
長崎県
期間:平成10年3月~平成12年11月
熊本県最南部の水俣市および芦北町他
2町からなる芦北地域の、流通と輸送の
改善による地域農業の発展と経営の安
定を目的とした広域農道整備事業の一
環であり、九州では初のエクストラドーズ
ド橋である
熊本県
田浦町
■
佐敷大橋(仮称)
芦北町
津奈木町
水俣市
図-11 建設位置
発注者:熊本県 芦北事務所
受注者:佐敷JV(鴻池組・オリエンタル建設・佐藤工業)
第三者機関:熊本大学 施設設計工学研究室
宮崎県
工事写真管理アルバム
(OpenPix ImageIgniterとASP)
図-12 工事写真
図-13 ブラウザ画面
JV職員によってデジタルカメラで撮影された工事写真を、現場事務所
のパソコンからウェブページにアクセスし、ブラウザ画面を通じてサー
バーにファイル送信することで、施主および施工会社の本社や支店な
どのパソコンから工事関係者が自由に表示・閲覧することができる仕
組みである
URL:http://gdp.erec.kumamoto-u.ac.jp/sashiki-bridge/
作業手順
「工事写真」ファイル送信
① 送信者氏名
② 撮影年月日
③ ファイル選択
④ ファイル説明
⑤ 送信および取消ボタン
JV職員が上記の項目を全て入力し、
工事写真とその属性情報をサー
バーに送信する
図-14 ファイル送信画面
考察
システムの有効性・問題点
(1)文書データ
• 選択式や自動入力の項目を増加
→ 記入ミス・記入漏れの防止、操作性の向上
• 検査時には文書への押印行為が必要不可欠
→ ブラウザ画面を印刷することで対応可能
(2)写真データ
• 選択式や自動入力の項目を増加
→ 記入ミス・記入漏れの防止、操作性の向上
• 工事写真をサムネイル形式で一覧表示
→ 属性情報を必要最小限に削減可能
構築したシステムは十分に実用化段階であることを確認
※ 従来型との混在による二度手間
→ 具体的な評価が困難
今後の展開
その他の文書様式への応用
「工事打合簿」「段階確認書」「材料検査願」など
設計および工事段階で扱われる全ての文書様式への対応
実証フィールド実験の事例蓄積
システムの再構築