アレルギー性鼻炎の診断と治療 鼻アレルギーの症状 1.主な症状 :くしゃみ、水様性鼻汁、鼻閉 2.その他の鼻症状:鼻出血、鼻掻痒感 3.眼症状 :眼掻痒感、流涙、充血 4.咽頭症状 :掻痒感、咳 肥満細胞 IgE 抗原 化学伝達物質(ヒスタミンなど) 三叉神経 軸索反射 血管 鼻閉 水様性鼻汁 交感神経反射 中枢 くしゃみ 副交感神経反射 鼻腺 鼻汁 主要抗原 方法 1)花粉補集 ダーラム型標準花粉補集器札幌医科大学(5階)屋上に 設置し、染色ゲンチアナバイレット・グリセリンゼリー法に より行った。花粉数は1.8cm×1.8cmのカバーグラス 全体をカウントし、1日の花粉数は1cm2当たりに換算した。 2)シラカバ花粉と気象との関連について 前年の各月毎の気象データーとシラカバ花粉の年間総飛散 数について最小2乗法による単回帰分析を行い評価した。 回帰分析などの統計解析は、Excel(Microsoft)上で動作する 統計解析ソフトウエアー(Statcel3)を用いた。 ダーラム型花粉自動捕集器 1995-2013年の年間平均飛散花粉数(札幌医大) (個/cm2) 600 1995−2013年 の平均値 500 400 300 200 100 0 スギ ハンノキ シラカバ イネ科 ヨモギ リンゴ モモ サクランボ シラカバ花粉のタンパクと バラ科果物のタンパクは似ている プラム 洋ナシ ビワ 口腔アレルギー症候群とは Oral allergy syndrome (OAS)の臨床症状 原因食物摂取30分以内に始まる 1.局所症状 口腔・咽頭粘膜や口唇の異常感(掻痒感、ピリピリ感など) 浮腫状腫脹 鼻炎症状 結膜炎症状 喉頭浮腫による呼吸困難感 2.全身症状 アナフィラキシーショック 喘息症状 全身皮膚の発赤・腫脹 口腔アレルギー症候群のメカニズム 鼻粘膜 口腔粘膜 花 粉 肥満細胞 食 物 ヒスタミン ロイコトリエン 鼻粘膜腫脹 鼻汁分泌 肥満細胞 ヒスタミン ロイコトリエン くしゃみ 口腔粘膜腫脹 共通部分 口腔異常感 (掻痒感など) 北海道の主な花粉抗原の飛散時期 疫 学 診 断 鼻汁中好酸球(ハンセル染色) 治 療 鼻粘膜の各細胞に対するステロイド剤の作用 細胞 上皮細胞 リンパ球 好酸球 ステロイド剤の作用 ケモカイン・サイトカイン(GM-CSF、IL-6、IL-8,RANTES)の発現 ICAM-1の発現抑制 細胞数の低下、アポトーシスの亢進 Th2サイトカイン(IL-4,IL-5)の発現低下 細胞数の低下(アポトーシスの亢進) 脱顆粒の抑制 肥満細胞 細胞数の低下(詳細な機序は不明) Th2サイトカイン(IL-4)の分泌抑制 好塩基球 細胞数の低下(詳細な機序は不明) サイトカイン(IL-4,IL-13)の産生抑制 血管 腺細胞 抗原刺激時の血管透過性亢進を抑制するが、直接作用かどう 種々の刺激による鼻汁分泌を抑制するが、直接作用かどうかは不 下鼻甲介におけるGRの発現 α β Cont 通年性鼻アレルギー 肥厚性鼻炎 局所ステロイド剤は種々の細胞に作用する 最も有効性の高い薬剤である。 減感作療法の投与スケジュール 例 1:10000 注射量 0.03ml 1:10000 0.05ml 1:10000 0.07ml 1:10000 0.10ml 1:10000 0.15ml 1:10000 0.20ml 1:10000 0.30ml 1:1000 0.03ml 減感作成功 特異的減免疫療法の機序 促進 抑制 高用量アレルゲン への自然暴露 または減感作療法 IgG4/IgA IgA IgG4 Th0 アナジー 調節性 T細胞 TGF-β 微小環境 IL-10 Th2 好酸球 肥満細胞 IgE IgE 炎症性エフェクター細胞の阻害 減感作失敗 減感作療法に関する新たなアプローチ • 経口減感作療法 • アレルゲンペプチドを用いた減感作療法 • アジュバントを用いた減感作療法 IL-12,IL-18, CpGDNA • モノクロナール抗体を用いたワクチン戦略 抗IgEmAb、抗IL-4mAb 手術療法 1.下鼻甲介切除術 2.高周波電気凝固法 3.レーザー手術 4.TCA(トリクロル酢酸)化学剤手術 5.後鼻神経切断術 各下鼻甲介手術の特徴 長所 短所 レーザー手術 外来手術 疼痛と出血が少ない 装置が高価 高周波電気凝固法 外来手術 疼痛と出血が少ない 針がシングルユースで高価 化学剤(TCA)手術 手技が簡単 コストが安い 下鼻甲介切除術 有効性はほぼ100% 後鼻神経切断術 鼻汁、くしゃみにも有効 やや疼痛を伴う 入院が必要 出血が多い 入院が必要 術後の知覚障害 下鼻甲介手術に用いられるレーザー、電気凝固装置 1)CO2レーザー:最も多く用いられる。 2)アルゴンプラズマ凝固装置:出血が少ない。 3)Nd:YAGレーザー:組織内への浸透性が高い。止血能 4)Ho:YAGレーザー:切開蒸散能が高い。 5)KTPレーザー:止血切除能が高いが機器が高価。 6)半導体レーザー:比較的小型・軽量である。 7)高周波電気凝固装置(コブレーション、セロン):針のコストが高い。 8)超音波振動メス(ハーモニックスカルぺル):煙が発生しない。 当科におけるCO2レーザー手術の治療成績 手術適応 3ヶ月以上の薬物療法でコントロールできない鼻閉症例 内訳: 調査期間:1999年4月ー2009年3月 症例数:151例(男性78例、女性73例) 手術回数:計286回 評価法:症状のアンケート、視診、術後の投薬状況 手術手技 使用機材 モチダ メディレーザー30S 麻酔 4%キシロカイン+1000倍エピネフィリン液含有ガーゼによる 表面麻酔ー10分間 レーザー照射 8-10ワット、連続照射で下鼻甲介を広範囲に焼灼ー片側約1-2分 通常は両側焼灼 術後は鼻入口部に綿球を入れて帰宅。 週1回外来にて鼻処置 術後1-2ヵ月で改善なければ、再照射 治療前 照射直後 4週間後 アレルギー性鼻炎症例(96例)の鼻閉に対する有効性 単回照射例の追跡 1ヶ月後 (96例) 3ヵ月後 (75例) 6ヵ月後より有効性が減弱する 消失 改善 不変 6ヶ月後 (49例) 1年後 (30例) 0% 20% 40% 60% 80% 100% アンケートによる集計 非アレルギー性鼻炎症例(56例)の鼻閉に対する有効性 単回照射例の追跡 1ヶ月後 (51例) 3ヵ月後 (41例) 6ヵ月後より有効性が激減する 消失 改善 不変 6ヶ月後 (31例) 1年後 (24例) 0% 20% 40% 60% 80% 100% アンケートによる集計 鼻アレルギーレーザー治療3ヵ月後の治療成績 (88例:複数回照射例を含む) 2% 35% 35% 48% 50% 16% 30% くしゃみ 22% 62% 鼻 閉 鼻汁 消失 改善 不変 レーザー治療3ヵ月後の投薬の状況 (複数回照射例を含む) 投薬継続 17% 頓用 20% 投薬継続 27% 投薬なし 63% アレルギー性鼻炎 (88例) 頓用 23% 投薬なし 50% 非アレルギー性鼻炎 (48例) 投薬状況を指標としても鼻アレルギー症例のほうが治療効果が高い 副作用、合併症について ・最終的に下鼻甲介切除術を行った例は151例中 29例(19%)であった。 ・術後出血で、来院した例は1例のみ。 ・抗凝固剤を中止しないで行った例は4例あった。 ・その他、問題となるような合併症は認めなかった。 アレルギー性鼻炎レーザー治療の問題点 ・効果減弱の中央値は約6ヵ月 ・くしゃみ、鼻汁には効果が弱い ・高度の鼻中隔彎曲例での対処 耳鼻咽喉科領域のその他のアレルギー疾患 • 好酸球性中耳炎 • 好酸球性鼻副鼻腔炎 • アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎 好酸球性中耳炎 • 気管支喘息患者における難治性中耳炎 • 中耳貯留液はニカワ状で、中耳貯留液ないし、中有 粘膜内に多数の好酸球を認める。 • 病初期は伝音性難聴であるが、好酸球由来の細胞毒 性蛋白により、高度の内耳障害を呈することもある。 • ステロイドの全身投与が著効するが、副作用が懸念され るため中耳腔内へのステロイド(トリアムシノロン)の投与 が行われることが多い。 • 乳突洞削開などの手術的加療により、逆に内耳障害が 進行した例もたびたび報告される。 • 通常の滲出性中耳炎とは異なり、耳管機能は耳管開放 症のパターンを呈するため、経耳管経由のアレルギーの 機序が推定される。 好酸球性副鼻腔炎 • 副鼻腔粘膜または鼻ポリープに著明な好酸球浸潤を伴う易再発 性の慢性副鼻腔炎の総称 • 喘息合併例ないし喘息の予備軍の方に多く認められる。 • 通常の慢性副鼻腔炎とは異なり、マクロライド少量長期療法は 著効せず、ステロイド薬と抗アレルギー薬が有効。 • 高度の鼻茸合併例や薬物療法無効例では、内視鏡手術が行わ れるが、術後も長期の薬物療法・局所療法を要する。 • アスピリン喘息の合併も比較的多い。 • 嗅覚障害を伴う場合が多いが、手術を行っても改善率は5割程度 の報告が多い。 アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎 • 真菌に対する1型・3型アレルギーにより発症する難治性 鼻副鼻腔炎 • 鼻汁は粘稠なニカワ状で、著明な好酸球が鼻汁中に存在 し、鼻副鼻腔粘膜に浸潤する • 欧米では鼻副鼻腔炎の5−10%と比較的多いが、本邦では ケースレポートされるくらいに稀 • 鼻茸をたびたび合併する。 • 抗アレルギー剤やステロイド薬で改善なければ内視鏡的 鼻副鼻腔手術が行われる。
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