ch2.5-7

計算量理論
(11月10日)
情報学研究科
社会情報学専攻 M1
満永 拓邦
復習
• ナッシュフロー
– 各ユニットが自由に行動する時に均衡となるフロー
• 最適フロー
– 全体としての総コストが最小になるフロー
• 無秩序の代償
– ナッシュフローと最適フローの比
具体例
C(x) =1 (広い道)
S
図2.2
T
C(x) =X (狭い道・裏道)
S町からT町に至る2つの道がある
・上の道は交通量によらず一定の広い道
・下の道は交通量に比例して時間がかかる狭い道
S町からT町まで一定の数の車が移動するとき(上記例では
1の量の車)、それぞれの車はどちらの道を選ぶか。
ナッシュフロー
• 各車が自分の時間を最小になるように行動
(全ての道のコストが等しくなるフロー)
前回の[Proposition 2.2.2]
– この場合は全て車が下の道を選ぶ
• その時の道のコストは1になる。
– よってその時の総コストは
1
×
1
(下のパスを通る量)
(パスのコスト)
=
1 となる
(総コスト)
最適フロー
• 交通規制され、全体の総コスト最も少なくする時
のフロー
– 限界コスト関数によって求める C* = {x・C(x)} / dx
– 上下それぞれの道に半分ずつ
• 上の道のコスト1 下の道のコスト 1/2
– 総コスト
•
•
1
1/2
(下のパスを通る量)
• 計
3/4
×
×
1/2 =
1/2 =
(パスのコスト)
1/2 (上のパス)
1/4 (下のパス)
(各道のコスト)
ナッシュフローと最適フロー
●ナッシュフローでは各
車の最適のみを考えるので
道のコストを基準に考える
●最適フローでは全体の
最適を考えるので
道のコスト×交通量(面積)
を基準に考える
無秩序の代償
• ナッシュフロー・・各々が自らの最適を目指した場合
総コスト
• 最適フロー
1
・・全体にとって最適を目指した場合
総コスト
3/4
• 無秩序の代償
•
ナッシュフロー/最適フロー = 4/3 ≒ 1.33
Breass’s Paradox
x
上下のパスともコストは
1+X なので
半分ずつのフローが流れる
v
s
1
t
0
1
w
x
コストは、上下それぞれ
1/2 × (1 + 1/2) = 3/4
(フロー)
(コスト)
より、総コストは 3/2
⇒新たなパスを作ると
全てのフローが
s - v - w - t の順で流れて
1
×
2
=
2
より、総コストは 2となる
パレート支配
C(x) =1
C(x) =1
S
T
C(x) =X
ナッシュフロー 2
最適フロー
1.5
C(x) =X
今までの例では、各ユニットごとに考えると、最適フローの時のコストは
常に最悪でもナッシュ均衡と同じか低くなる。
これを経済学の用語で、「ナッシュフローは最適フローにパレート支配される」
と表現する。
⇒ただし、これは常に成立するわけではない。
パレート支配的でない例
●ナッシュフロー
全てが下の道に1流れる
各ユニットのコストは1、総コストは1
C(x) =2-ε
ε /2
S
T
1-ε /2
●最適フロー
2-ε = 2X より
上の道に ε/2
下の道に1- ε /2流れる
C(x) =X
(具体例)
上に流れたε/2のフローの
コストは、2-εとなり上昇する
総コストは、1-ε^2/4
C(x) =1.9
0.05
S
T
0.95
C(x) =X
具体的には、ε = 0.1の時は、
上の道に0.05のフローが流れ
1.9のコストがかかる
ナッシュフロー
v
s1
t1
w
z
t2
s2
x
①赤と黒のフローを別々に足すと、それぞれの全体のフローになる
②重なる部分(緑色)の部分のフローは赤と黒の和となる
③フローは非負
ナッシュフロー
定義から、heの導関数Ceは連続、非減少よりheは凸関数
⇒(CP)は解を持つconvex programであり、解がナッシュフロー
また、前回Proposition2.2.2より、各パスのコストが最適(最小)
の時に、ナッシュフローとなり最適なものなので一意的に解をもつ
古典的なネットワークでの定義
古典的なネットワークでの定義
(sから出るフロー)
s
(sに入るフロー)
v
t
非ループのフロー
w
s
v
w
Proposition 2.7.3 ある実現可能なフローfe が存在するとき、
全てのeに対して、f ‘e ≦ fe となる、非ループのフローが存在する。
t
f-monotone
• ナッシュフローf に対して、d(v)を、コストの点でs-t間の
最少のパスとする
• Gのエッジの並び順は、次の3つを満たすとき
f-monotoneである
– P1) sの順序が1番目
– P2) すべてのフローが、順番に流れる
– P3) エッジ間のdの値は、非減少である
Breass’s Paradox
x
v
s
1
t
0
1
w
x
ナッシュフローにおいて
d(s) = 0
d(v) = 1
d(w) = 1
d(t) = 2
であり、このグラフは
f-monotoneを満たす。
P1) sの順序が1番目
P2) すべてのフローが、順番に流れる
P3) エッジ間のdの値は、非減少である
非ループのフロー
C(x) = 0.6
s
w
v
C(x) = 0.6
w
C(x) = 1
d(w) - d(v)
≦ Ce(fe) [v - w 間のコスト] が成立
等号が成立するのは、 v -w間で、最小のコストのパスを選んだ時
t
ナッシュフローの定義2
• 同様に、すべてのエッジw ,v に対して、
d(w) - d (v) = Ce(fe) for e = (w,v)
が成立すれば、feはナッシュフローである。
この定義は、5.2において活用する。