Ⅰ 今後の特別支援教育のあり方 1 特殊教育と特別支援教育の違い 従来の特殊教育 障害の程度に応じ特別の場で指導する特殊教育体制であった 07年度から本格実施になった特別支援教育の在りかたは 障害のある児童生徒の教育的ニーズを的確に把握し、柔軟に教 育的支援を実施する特別支援体制へと転換を図る必要性が求 められている。特別支援教育体制の中で、LD、ADHD、高機能 自閉症への対応は「緊急かつ重要な課題」であると述べられて いる。⇒03年3月「今後の特別支援教育の在りかた」(最終報告) 通常の小・中 学校の現場の 実情 特殊教育が名前がかわって、特別支援教 育となっただけだと受け止めている教師が 少なくない。特殊学級⇒特別支援学級 この辺の事情について補足していこう 2 関連事項の定義(03年3月の最終報告) 1)特別支援教育 従来の特殊教育の対象の障害だけでなく、LD、ADHD、高機 能自閉症を含めて障害のある児童生徒の自立や社会参加に 向けて、その一人ひとりの教育的ニーズを把握し、その持てる 力を高め、生活や学習上の困難を改善又は、克服するために 適切な教育や指導を通じて必要な支援を行なうものである。 2)LD(学習障害) 基本的には、全般的な知的発達に遅れは、 無いが、聞く、話す、読む、書く、計算する推 論する、能力のうち特定のものの習得と使 用に著しい困難を示す様々な状態を指す。 以下、次のスライドから 3)ADHD(注意欠陥/他動性障害) 4)高機能自閉症 3)ADHDとは ①年齢あるいは発達に不釣合いな注意力、及び/又は衝 動性、多動性を特徴とする行動の障害で社会的な活動や 学業の機能に支障をきたすものである。 ②7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何ら かの要因による機能不全があると推定される。 4)高機能自閉症 3歳くらいまでに現れる ①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の 遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特 徴とする自閉症のうち、知的発達に遅れを伴わないものを いう。また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全が 有ると推定される。 3 全国実態調査から 1)学習面や行動面で著しい困難(6.3%) 学習面で著しい問題(4.5%) 行動面で著しい困難(2.9%) 学習面の及び行動面の双方で著しい困難(1.2%) 文科省(2003)今後の特別支援教育の 在り方について(最終報告)より 2)集団内の子供の指導法 偏りが大きい、 遅れがある(子)⇒ 指導方法・課題の吟味 スペシャルデザイン ユニバーサル デザイン 偏りのある子 →課題は同じで 偏りに合せた多 様な指導の方 法 授業のユニバーサルデザイン化――学習支援のポイント―― (出典) 髙橋あつ子著 月間学校教育相談08・3月号ほんの森出版 4 多様な子ども達 1)子ども主体の学びを実現するキーワード 教師と子どもの双方向の関係と、子ども同士の相互作用が どれだけ豊かであるか。 2)集団内の子ども一人ひとりの学習の保障 教師が子ども集団を どうとらえているかが 鍵になる。 前図の上部三角の部分の子に対しては「個別に指 示を出す」「繰り返し、ゆっくり学ばせる」できれば、 「別の課題を出す」などの対応をする =特別支援教育とみる教師もいる 前図の下部の両脇の三角の部分の子どもは、同じ目標を達成できる能力を 持っているが、偏りがあるため、同じ指導法では学習が成立しにくい。 これらの多様な子どもたちに対して、教科指導で蓄積された 指導法と特別支援教育で開発される特性に応じた指導法と を有機的に活用して授業を工夫・創造していくことが、「みん なに分かる授業」作りにつながっていくものと思われる。 5 ユニバーサルデザイン(著者文引用) 先に示した図は、集団内の子どもを便宜上三層に分 類したものです。現実は、もっと多様な子供がいる事 を念頭に、多様なアプローチを用意し、学習困難を最 小限にして、多様な学び方を保障する・・・この様な取 り組みをユニバーサルデザイン化といいます。 6 オプションから標準装備へ(著者文引用) 1~2名の子供への対応だと思っている教師は、オプションで いいと思っています。でもこの取り組は、周囲の多くの子ども にとっても意味があるということを学んだ教師は、これを標準 装備にしていきます。一人のためとばかり思っていたことが、 全体にプラスになることを体験しているのです。EX カーナビ 皆さんの実習授業の標準装備は (1) 集中を促す環境を ・黒板周辺はすっきりしているか ・座席の位置が学びのスタイルにあっているか ・個々の学びを尊重するルールを明示しているか (2) 授業の構造化が「図られているか ・授業の流れを予告しているか (3) 学習スタイルに応じた学習方法の保障 (4) つけたい力の中核を目指したツールの活用 おまけ (3) 学習スタイルに応じた学習の保障 学習スタイルに応じた授業A 一つの学習課題に対して 聴覚系 学習スタイルに応じた授業B 運動感覚系 一つの学習課題に対して 木の上に立って見るのが =親 フラッシュカードを見て 親の字を覚える 身体表現で親の字の空書 糸状の粘土で字を作る 視覚系 聴覚系 説明を耳で聞く 視覚系 運動感覚系
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