第1章 第1節 ドイツの路面電車 ドイツ路面電車の歴史

第1章 第1節
ドイツの路面電車
ドイツ路面電車の歴史
1881年 ベルリン郊外で初運行
→アメリカで改良、世界的に普及
1920年~ モータリゼーションの煽りを受け、次々と廃止
旧西ドイツ:撤廃した都市
+自動車と共存を図った都市
旧東ドイツ:自動車導入の遅れ
→路面電車の撤廃は行われなかった
1960年~ モータリゼーションの問題点顕著化
渋滞による大気汚染・騒音・振動
市街地のスプロール化・空洞化
1965年 ドイツで報告書の発表
報告書内容:
「中心市街地の衰退に歯止めをかけ、活性化に向か
わせると同時に、都市環境を改善させていくために
は、自動車交通の増加に対応した自動車関連施設
の整備・充実ではなく、公共交通システムの改善に
重点を置いた交通政策を実施していくべきである」
環境・市街地の活性化のために意識的に
路面電車を活用するという発想が生まれる
1970年~ 環境被減害の続出により環境への意識の上昇
→排気ガスを出さない路面電車に注目
1980年~ 超低床電車の開発
→バリアフリー実現可能な乗り物として路面電車に注目
ドイツの路面電車のシステム
1. 信用乗車制度
2. 環境定期券
3. パークアンドライド(P&R)
1.信用乗車制度
信用乗車制度とは…
・改札口なし
・車両のどのドアからも乗り降り自由
メリット
・人件費削減
・運行スピードの向上
・無賃乗車の可能性
デ メ リ ッ ト 対策:抜き打ち検察の実施
(運賃の50~100倍のペナルティ)
チケットキャンセラー
↑車内の様子
2.環境定期券
環境定期券とは…
・格安な価格設定
・無記名式で貸し借り可能
・休日は家族での利用が可能
・一枚で一定地域のほぼすべての公共交通機関が
乗り放題
公共交通機関利用者数増加
→自動車依存からの脱却
地域環境の保護
3.パークアンドライド(P&R)
パークアンドライド(P&R)とは…
郊外にある公共交通機関の駅までは自家用車で行き、
そこに併設された駐車場に駐車(Park)し、そこから
公共交通機関を利用(Ride)するシステム
↑乗降所のすぐそばに広い駐車場
フライブルクのP&R看板→
自動車と路面電車車両が合体!!
LRT導入都市ごとの特徴
1. フライブルク
2. カールスルーエ
3. ツヴィッカウ
4. オーバーハウゼン
1.フライブルク
*概要*
・ドイツ南西部 人口:21万6,000人
3万人を学生が占める→ドイツ有数の大学都市
・1992年環境首都コンテストにて
最高得点取得
『環境首都』
交通、廃棄物、河川、農林業、自然エネルギーなどの
分野で、環境保護への積極的な取り組みが認定される。
フライブルクは特に交通政策で
高評価を得る
1.フライブルク
*LRTの特徴*
・中心市街地への自動車乗り入れ制限
・1970年代 全長14km → 現在 4系統30.5km
・パークアンドライド
広い駐車場の設置、中心市街地に近いほど高料金設定、
時間制限の厳重化
・電車優先信号の導入
・環境保護定期の導入
現在はレギオカルテ(地域定期)の名で使用
←市内運行中のLRT
↓環境定期券
1.フライブルク
*LRTの成果*
・利用人員
1984年 ×2.4
2005年 年間約6,940万人
・自動車の輸送分担率
(利用人数×走行キロ数の比率)
1976年 60% 20年後
1996年 43%
自動車依存からの脱却を達成
2.カールスルーエ
*概要*
・ドイツ南西部 人口:28万5,000人
工業都市
市内を走るLRT→
2.カールスルーエ
*LRTの特徴*
・トラムトレイン
トラムトレイン:鉄道と路面電車が起動を共有するシステム
別名『カールスルーエモデル』
現在ドイツ鉄道全11系統中、10系統で直通運転の実施
利点
・郊外と中心部を移動する際の乗り換え不要
→乗り換えの際の階段の乗降、待ち時間の省略
・既存の軌道を利用可能
→低コストでの運行範囲拡大が可能
↓鉄道駅に乗り入れるLRT
2.カールスルーエ
*LRTの成果*
・各ドイツ鉄道路線の利用人員
トラムトレインの導入
30~50%増
・カールスルーエ・ブレッテン間の鉄道利用人員
乗り入れ前と比較し…
平日
約500%増
休日
約3,700%増
衰退気味の鉄道の利便性
の向上・機能再生を達成
3.ツヴィッカウ
*概要*
・ドイツ南西東部 人口:9万8,000人
工業都市
東西ドイツ統一前から自動車の街として栄える
現在、フォルクスワーゲン社の生産拠点となっている
3.ツヴィッカウ
*LRTの特徴*
・3線軌条
:標準軌道の鉄道と狭軌道の路面電車の相互乗り入れが可
能となるように、乗り入れ区間の狭軌道に1本鉄路を追加し、
標準軌道と合致するようにしたシステム
『ツヴィッカウモデル』とも言う
現在ドイツ鉄道全11系統中、10系統で直通運転の実施
3線軌条↓
4.オーバーハウゼン
*概要*
・ドイツ西部 人口:21万9,000人
中規模都市
・1968年にモータリゼーションの煽りを受け
路面電車は完全廃止される
30年の時を経て…
1996年 新しい路面電車の登場
街の活性化・環境対策が目的
その背景・対策内容・成果は…?
4.オーバーハウゼン
*LRT導入の背景*
・戦前~戦後復興期
ルール工業地帯に位置し、石炭・製鉄産業が盛ん
・1960年代
西ドイツで完全雇用の到達
→労働力コストの上昇
→西ドイツ企業の国際競争力の低下
→西ドイツは長期不況へ
→ルール地方の衰退
オーバーハウゼンへの影響大
失業問題の深刻化
4.オーバーハウゼン
*対策としてのLRT導入*
不況を強いられたオーバーハウゼン活性のために…
Q 工場跡地の有効利用法はないか?
A 巨大ショッピングセンター『ツェントロ(CentrO)』建設
*交通条件としては近くにアウトバーンが複数あることから◎
→市は環境対策に力を入れていたため、自動車利用が
習慣化することを懸念した
街の活性化と環境保全を両立できる
輸送手段としての路面電車導入
←高架橋(トラッセ)
ツェントロ→
4.オーバーハウゼン
*LRT導入の成果*
オープンから10年以上を経た現在…
→1日に7万人の集客
市街地の活性化成功
→集客の1/3がバスor LRTを利用
公共交通分担率上昇
ドイツの路面電車に対する評価
Q 実際のドイツでの路面電車経営状況は?
A ……赤字です。
Q 路面電車は街の活性化に貢献しているか?
A 35都市中33都市が大いにor やや貢献と回答
Q 路線延長の計画はあるか?
A 35都市中33都市で計画ありor 検討中
採算性のマイナス評価
≠路面電車のマイナス評価