火の国情報シンポジウム2005 2005年3月7日 エージェントベースモデリング によるプロジェクト内 行動ポリシーの影響分析 黒島 善知 鵜林 尚靖 九州工業大学 情報工学部 1 発表の流れ 背景 目的 エージェントベースモデリング 事例 分析 モデリング シミュレーション結果による行動ポリシーの影響分析 まとめ 2 研究の背景① 市場ニーズの多様化に伴いマネジメントが重要視 現在はマネジメントプロセスの改善が中心 支援ツールの導入 マネジメント知識体系の学習 改善時の障害は主にヒューマンファクタ メンバーの行動ポリシー 組織文化 ※本研究における行動ポリシーとは組織内での行動規範を 意味する 3 研究の背景② ヒューマンファクタのマネジメントに関する 関連研究の内容(プロジェクトマネジメント学会) モチベーションの分析 コミュニケーション方法の提案 自己分析シートの作成 など 現状の課題 研究の内容はメンバー個人の分析が中心 組織全体との関連や影響度が不明確 4 研究の目的 目的:マネジメントプロセスとメンバーの行動ポリシー に着目した組織分析 手法:エージェントベースモデリング 理想の組織 プロセス ポリシー ギャップ 比較 実際の組織 プロセス ポリシー 5 エージェントベースモデリング① (Agent-Based Modeling:ABM) 特に社会科学分析 分野への適用はABSS (Agent-Based Social Simulation) と呼ばれている 実社会分析 エージェント コンピューティング ・マルチエージェントシステム コンピュータ シミュレーション ・経営分析 ・市場分析 ・行政制度設計 など 6 エージェントベースモデリング② マネジメントスキル 行動ポリシー X 入力 マネジメント プロセスの選択 組織モデル 出力 エージェントベース モデリング Y Z ポリシー パラメータの選択 モデル パラメータの変化 シミュレーション 結果を考慮した改善 7 事例 中堅製造会社A社の製造工程 ・製造工程は製作,組立,現場作業に分かれて いる. ・必要に応じて社外協力者を使用している. 初期分析 対象:プロジェクト作業実行データ 内容:作業者・作業工程別作業時間 分析項目:プロジェクト並行状況,作業規模,工程 比率 その他聞き取り調査・工場見学 8 プロジェクト並行状況 データ分析期間 2003/2/4~2003/7/9 プロジェクト数28 プロジェクト規模 小規模:2,3日程度 大規模:3ヶ月程度 9 プロジェクト実行作業データ例 プロジェクトX作業表(作業完了予定日5/11) 作業者名 作業者a 製作 5/5 組立 組立 現場 6.5 10 7.5 6.5 10 10 7.5 社外作業者c 製作 組立 31.5 社外作業者d 現場 7.5 5/6 製作 組立 6.5 6.5 6.5 10 7.5 合計 15 10 7.5 現場 7.5 5/10 合計 15 6.5 作業者名 合計 製作 7.5 5/10 5/5 現場 7.5 5/6 合計 作業者b 6.5 13 10 20 10 48 ※表内の数値は作業時間を表す 10 A社モデル 定期進捗報告時 作業者 プロジェクトA プロジェクトA 作業者 プロジェクトB プロジェクトB ・スケジューリング ・作業員投入量 ・進捗報告 プロジェクト マネージャー ・作業報告ポリシー ・スケジューリング ポリシー ・プロジェクトバッファ ポリシー 11 スケジューリング方法① 現在A社で行われていると考える作業員スケジューリング方法 T1 T2 T3 過去の進捗 報告データを利用 T1時の優先度 B > C プロジェクトA プロジェクトB プロジェクトC 推測割り当て 完了したプロジェクトAのリソースをT1時に 優先度の高かったプロジェクトBに割り当てる 12 スケジューリング方法② 現在A社で行われていると考える作業員スケジューリング方法 T1 T2 T3 現在の進捗 報告データを利用 T2 時の優先度 B < C プロジェクトA プロジェクトB プロジェクトC 終了時報告割り当て プロジェクト開始時、定期進捗報告時に加えて 複数プロジェクト並行時にプロジェクトの終了 時点もスケジューリングを行う 13 A社モデルの行動ポリシーによる影響 プロジェクトマネージャー ・スケジューリングポリシー ・プロジェクトバッファ 作業者 作業報告ポリシー 影響 作業時間内の報告コスト, 報告内容の誤差に影響 プロジェクト における余裕期間 プロジェクトの納期内完了 14 モデリング A社モデル エージェント構成要素 15 シミュレーションの前提条件 前提条件 値 社内作業員数 7名 社外作業員数 15名 単一プロジェクトにおける最 高作業員数 10名 製作・組立作業同時並行数 3プロジェクト 作業スペースに関する 聞き取り調査 最高同時並行プロジェクト数 6プロジェクト データ分析による1日あ たりの最高同時実行数 現場作業時の社内作業員数 1名以上 現場作業に関する聞き 取り調査 前工程未完了状態での次工程作業の不可 根拠 A社作業実行表 作業順序制約 16 シミュレーション結果による分析① プロジェクト遅れの要因 複数プロジェクトの並行状態 作業待ち状態 表1 終了時報告割り当てと 遅れ要因の相関行列 納期内 比率 納期内 比率 終了時 報告割り当て 推測割り当て 図1 プロジェクトバッファ10%結果グラフ 遅れ 日数 平均 並行数 作業待 ち状態 1 遅れ 日数 -0.94 1 平均 並行数 -0.89 0.96 1 作業待 ち状態 -0.47 0.50 0.50 1 17 行動ポリシーの影響① プロジェクトマネージャー ・推測割り当て ・終了時報告割り当て ・バッファ = 10% 作業者 作業者 報告ポリシー 報告ポリシー やや低い 中 ・作業報告コスト = 15% 11% ・報告誤差 = 8% 6% 影響 プロジェクトの納期内完了比率 = 86.4% 85.0% 82.5% 18 まとめ 事例を用いてABMによる組織分析を行った. スケジューリング方法や行動ポリシーの変更が プロジェクトの納期内完了比率にどのように影響 を及ぼすのかを分析した. ABMを用いた分析により,プロジェクト遅れ要因の特定や,そ れぞれの影響度合いを分析することが可能になった. 表2 エージェント プロジェクトマネージャー 作業者 改善のための行動ポリシーの設定 行動ポリシー 設定 スケジューリングポリシー 終了時報告割り当て プロジェクトバッファポリシー バッファ基準値約10% 作業報告ポリシー ・報告コスト約7% ・報告誤差約10% 19 終わり 20 行動ポリシーの影響分析① スケジューリング方法の影響 終了時報告割り当ては推測割り当てに比べて 1日あたりの平均複数プロジェクト並行数が約 2.5%減少 作業待ち状態の回数が約9.8%減少 プロジェクト納期内完了比率が約7%向上 21 行動ポリシーの影響分析② バッファ基準値の影響 0~10%程度 作業時間500時間以上の大規模プロジェクトに対してプロ ジェクト実行期間の短縮効果が見られた 10%~20% プロジェクトに参加出来るメンバー数の制限より,プロジェ クト納期内完了比率は殆ど変化しなかった 22 行動ポリシーの影響分析③ 作業報告ポリシーの影響 作業報告ポリシー大 作業に費やす時間の減少 複数プロジェクトの並行状態の発生 作業報告ポリシー小 実行状況と報告内容の誤差が増加 大規模プロジェクトの長期化 並行プロジェクトへの影響による全体的な遅れ 23 モデルの再構築 モデル 第N段階 モデル 第2段階 モデル 第1段階 ・新たなデータの取得 ・抽出パラメータの再検討 モデルの反証 初期分析 ・初期分析データ ・モデリングの為のデータ取得 シミュレーション モデル 分析対象 24
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