2010.7.7病診連携の会 肩関節疾患 -当科での治療内容について- 福島県立医科大学整形外科 大歳憲一,宍戸裕章 本日の内容 当院での肩関節手術件数 当院での肩関節疾患に対する治療方針 各疾患の治療内容,手術適応,手術法, および術後後療法 当科における肩関節手術内容と件数 2007 2008 2009 鏡視下肩峰下除圧術 8 4 8 鏡視下腱板修復術 2 1 6 小切開腱板修復術 1 2 2 鏡視下デブリードマン 3 1 2 広背筋移行術 1 2 0 人工骨頭挿入術 0 0 2 鏡視下授動術 6 6 5 バンカート修復術 12 11 2 その他 1 5 5 33 32 32 代表的な肩関節疾患の当科における 治療方針と内容 肩関節拘縮(五十肩) 腱板断裂 肩関節脱臼 変形性肩関節症(リウマチ性肩関節炎) 当科での治療方針 -肩関節拘縮(いわゆる五十肩)- 保存療法 薬物療法 ブロック療法(SABブロック,関節内ブロック) 可動域訓練 手術適応(鏡視下授動術) 屈曲130°以下,外転120°以下,外旋30°以 下 疼痛・可動域制限によるADL障害が高度 3ヶ月以上の保存療法が無効 肩関節拘縮に対する鏡視下授動術 手術方法 関節鏡視下に関節包を全周性に切開 (肩峰下の症状も並存している場合は, 肩峰下除圧術も併用) 術後後療法 翌日~:自他動ROM訓練開始 術後1ヶ月:軽作業許可 鏡視下授動術の治療成績 当科で鏡視下授動術を行った21例24肩での検討 * (cm) * ** ** * (°) 10 ** 180 9 160 8 140 7 120 6 100 5 * p<0.001 4 * * p<0.05 3 * p<0.001 80 * * p<0.01 60 2 40 1 20 0 0 術前 術後1ヵ月 術後3ヵ月 術後6ヵ月 VAS(動作時) 術後1年 術後2年 術前 術後1ヵ月 術後3ヵ月 術後6ヵ月 術後1年 術後2年 ROM(外転) 疼痛は術後速やかに改善.可動域は,屈曲・外転は術後3ヶ月 まで,外旋・内旋は術後6ヶ月で術中可動域とほぼ同等まで改善 宍戸・他 肩関節2003 臨整外2010 当科での治療方針 -肩腱板断裂- 保存療法 薬物療法 ブロック療法(SABブロック) 理学療法 手術適応 疼痛・脱力によるADL障害が高度 3ヶ月以上の保存療法が無効 腱板断裂時のMRIの撮像条件 T1,T2,肩甲骨面のSagittal, Coronal (Axialは可能であれば) Coronal Sagittal 肩腱板断裂に対する手術と適応 -当科で行っている手術- 鏡視下肩峰下除圧術(ASD) 鏡視下腱板修復術(ARCR) 広背筋移行術(LDT) 鏡視下大結節形成術(デブリードマン) 肩腱板断裂 不全~大断裂 温存 障害 腱板機能 広範囲断裂 可能 ASD 不可能 ARCR する LDT Debridement 一次修復 挙上機能再建 しない 鏡視下肩峰下除圧術と後療法 (鏡視下デブリードマンも含む) 手術内容 滑膜切除・骨棘切徐・肩峰形成 烏口肩峰靱帯の切離 ※ 拘縮を合併する場合は授動術も併用 術後後療法 手術翌日~ :自他動ROM訓練開始 術後1ヶ月~:軽作業許可(術後の固定の必要が なく,痛みに応じて早期より動作可能) 鏡視下肩峰下除圧術の除痛効果 当科でASDを施行した54例55肩での検討 * * 10 10 8 8 6 6 VAS VAS * 4 4 2 2 0 0 術前 1M 3M 6M VAS(動作時) 1Y 2Y *P<0.05 術前 1M 3M 6M 1Y 2Y VAS(夜間) ASD術後,疼痛は速やかに改善 宍戸・他 臨整外2008 大歳・他 肩関節学会2010 ASD術後の問題点 ー断裂拡大と臨床成績ー 当科でASDを施行した症例26例27肩での検討 長軸方向 7/27(27%) 単軸方向 6/27(23%) 拡大量 7mm (2-15mm) ※ 疼痛・可動域は拡大群と非拡大群で有意差なし ※ 機能は単軸拡大群で有意に低下 腱板断裂に対するASDは限界があるが,早期復帰が可 能な点や,疼痛が主訴で,腱板機能の回復を必要としな いような症例を選べば,有効な治療法であるといえる. 宍戸・他.臨整外2007 鏡視下腱板修復術と後療法 手術内容 腱板をフットプリントへ 圧着固定 (Suture bridge法) 術後後療法 ~術後5週: 肩関節外転装具着用 ~術後3週: 他動ROM訓練開始 術後4週~: 自動ROM訓練開始 術後3ヶ月: 軽作業許可 術後6ヶ月: 重労働許可 フットプリントの接触面積と接触圧 はDual row法に比べて有意に高い 肩関節外転位保持装具 広背筋移行術と後療法 手術内容 広背筋を上腕骨付着部で切離 広背筋腱を前方は肩甲下筋腱へ,内側は残存した 腱板へ,外側は大結節にアンカーで固定 術後後療法 ~術後5週:肩関節外転装具着用,他動ROM訓練 術後6週~:自動ROM訓練開始 術後3ヶ月~:軽作業許可 術後6ヶ月~:重労働許可 前方を肩甲下筋 内側を棘上筋腱 外側を大結節に 縫合固定 広背筋腱を上腕骨付着部か ら切離し肩峰下を通して肩前 方に誘導 広背筋移行術の成績 術後2年以上経過観察可能であった6例での検討 術前 術後2年時 ROM 屈曲 80±38° 137±27° P<0.05 外転 69±31° 119±43° P<0.05 外旋 10±16° 23±23° P<0.1 ※ JOAスコア・疼痛も術前に比べ有意に改善 一次修復が困難な腱板広範囲断裂に対し広背筋 移行術は有効な術式である 大歳・他 臨整外2008 当科での治療方針 ー肩関節脱臼ー 初回脱臼時 外旋位固定3週間 3週~:可動域訓練開始 3ヶ月~:スポーツ復帰 ※入浴時以外は装着を励行 アルケア社製 ショルダーブレースER 反復性脱臼 脱臼時:内旋位固定 手術法:鏡視下バンカート修復術 Bankart-Bristow法:関節窩骨欠損大 (25%以上) 初回脱臼後の外旋位固定法 198例の無作為化比較試験 再脱臼率:外旋位固定群26%(85肩中22肩) 内旋位固定群42%(74肩中31肩) 相対危険度減少率:38.2%(30歳以下46.1%) 内旋位 外旋位 若年者(30歳以下)の初回脱臼例に適応 Itoi E et al, JBJS 2007 鏡視下バンカート修復術と後療法 手術内容 ~2007年:Caspari法 2007年~:Suture anchor法 後療法 ~術後3週:体幹固定 術後3週~:前方挙上訓練開始 術後6週~:外旋ROM訓練開始 術後3ヶ月~:軽作業許可 術後6ヶ月~:重労働許可 Suture anchor法 当科での治療成績 -Caspari法- 当科でバンカート修復(Caspari法)を行っ た54名54肩での検討 再脱臼率(関節窩骨欠損25%未満):4% ※全国平均5%以下 ROM健患側差:挙上:平均6.3° 外旋:平均5.8° 宍戸・他 肩関節2004 当科での治療方針 -変形性肩関節症・リウマチ性肩関節炎- 保存療法 NSAIDS投与 関節内ブロック 手術適応 高度の疼痛と可動域制限 症例に応じ,手術法を選択 鏡視下デブリードマン 人工骨頭置換術 人工肩関節全置換術 人工骨頭置換術と後療法 手術内容 Deltopectoral approach 関節窩の骨棘切徐,関節包のリリース 人工骨頭の挿入 Cuff tear arthropathyの場合はCTA headを使用 関節窩の偏心性の摩耗があり,bone stockが十分 ある場合は関節窩置換も考慮 術後後療法 手術翌日~:他動ROM訓練 術後6週~:腱板強化訓練開始 CTA head 御清聴ありがとうございました
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