メディア社会文化論 2013/12/05 • 次は8.放送の章・・・ まず、 • 本題に入る前に(結構本題と被る)、放送を4 つの観点から、他のメディアと比較 放送と他のメディアを比較する観点 • 1)広告依存度の高さ(民放のみだが)の問題 • 2)公平性の問題 • 3)事件の発生源としての側面の問題(報道 に対する制作の比重の強さ) • 4)下請け依存度の高さ 広告収入と放送 • 全く商業性のないNHK • 広告収入だけで成り立っている民放 →非常に対照的 メディア相互の広告収入依存① • 本・・・広告・零か、あっても自社出版物のみ (8の倍数による余りのみが広告スペース) • 雑誌・・・ある程度広告収入依存(『文藝春秋』 3億円/1号) • 新聞・・・かなり依存(「2007年の日本の新聞 広告費は9462億円と、総広告費の13.5%。朝 日新聞社の広告収入はその約6分の1に相 当」)http://www.asahi.com/shimbun/honsya/j/ad.html メディア相互の広告収入依存② • ネット情報・・・それ自体が広告的なものと、そ うでないもの双方。そうでないものも広告をバ ナー等で出しているものなど様々である。 • しかし純粋に無料でかつ広告が出ていないも のでも、ネットでは「売名」「広報」という広い意 味での「広告」はなされていると思われる。 • 大学のウェブページも受験生と研究費集めと いう広告塔の意味も。 メディア相互の広告収入依存③ • 民放・・・全面的依存 • NHK・・・零依存(一応・・・) なぜ広告依存は歪むか? • スポンサーを批判(刺激)するような、記事や 番組を作れない • 直接スポンサーを批判せずとも、政府等が放 送に不満→スポンサーに圧力→テレビ局はそ の意見を飲まざるを得ない • 視聴率などの売れ行きの数字が一人歩き 本の売れ行きだって数字では? • 視聴率至上主義=本の売れ行き至上主義? • 基本は同じ、しかし・・・ • 本は売れなかったとしても、その本の出版費 用が回収できないのみ。会社の評価も下げな い。ベストセラー倒産という言葉もあり、ベスト セラーも必ずしも歓迎されない • 視聴率向上は広告単価を上げるし、低下は スポンサーの撤退に・・・次に響く。 公平性の問題 • 放送のfairness doctrine公平原則・公正原則 • 国民の共有財産としての電波・・・これを分け与 えるのが免許制 • Fairな放送をするという条件で、総務大臣が免許 を与える • Fairでなければ免許剥奪も • ←fairを基準にすべきなのに、政府の意向に反し たものを牽制する武器に使う懸念も 公平性について他のメディアとの比較 • 放送・・・厳密な公平性。ただし政府の方に多 少顔を向けざるを得ない。 • 新聞・・・自主的な公平性(不偏不当性)。ただ し社による色はあり。 • 出版・・・公平性は標榜しないし、期待もされ ない。 • ネット・・・放送と通信の境界と位置づけられる。 しかし公平性無視、基本保守的な意見が強 い。 事件(イベント)の発生源① • 新聞のところで、 • 《新聞社の事業部=事件の発生源、ニュース 枯れ対策、ある種のやらせ》と申し上げた • しかし考えてみればテレビは報道<制作 • (今は「報道番組制作」という言い方も結構あ るが) 事件(イベント)の発生源② • 制作の仕事・・・ドラマ、アニメ、バラエティ、ワ イドショー、クイズ番組、スポーツ中継を作 る・・・時代の空気を伝えるが、外の事件を伝 えるのではない • 基本的に自分たちが「事件・イベント」を制作 する。新聞社の脇役だった事業部や文芸部 (新聞小説等)の業務が、テレビでは主役に。 事件(イベント)の発生源③ • 3)新聞、書籍など他の既存メディアとの差別 化の必要性 • 4)普及の当初は一家に一台だった・・・色々 な世代、性別の家族のメンバーが共通して興 味をもてるもの・・・娯楽的内容 • →当然セグメント化している現代社会では、こ の4)の理由は弱まっても当然ではあるが・・・ 事件(イベント)の発生源④ • ・・・マクルーハンのテレビへの肯定的評価も、 このような娯楽メディアとしての現状に理解が あってのことなのか。 下請け依存度の高さと メディア比較① • テレビ局は制作部門を独立させたり、制作を 制作会社に外注する傾向に。 • Cf.出版①本づくり 「制作」に相当する「原稿書き」・・・作家先生に 外注 「印刷」「製本」・・・専門業者に外注 • 出版②雑誌づくり 「原稿書き」・・・記者と外部のフリーランス 半々か。文芸誌なら作家先生 下請け依存度の高さと メディア比較② • とはいえ、いずれの出版も編集プロダクション 依存の部分増えている。 • 新聞・・・記事はほとんど記者。印刷も内部。 ただし通信社依存等の問題も。(新聞の自己 完結・丸抱えと対比的) • ネット・・・ニュース系ブログであっても記事は ほとんど新聞社系のを引用。情報源としては 既存メディアに寄生。依拠しつつ、「マスゴミ」 と揶揄って批判する 6.放送 6.1新聞と放送 6.1.1機能面での比較 新聞の機能 • 事実の報道機能 • 言論批判機能 • それら以外事業部の仕事と・・・これはあえて いえば娯楽機能 • テレビはこの娯楽機能の比重が大きい • 新聞社事業部の展開するスポーツイベント、 展覧会・・・教養・娯楽機能として捉えうる。 • そのような教養・娯楽機能が、「事実の報道」 と「言論・批判機能」といった、ジャーナリズム 機能と同程度に(あるいはそれ以上に)重視 されるのが、テレビをはじめとする放送メディ ア 6.1.2制度面での比較・・・公平原則 • 新聞社は政府の介入を防ぐために「丸抱え」 の体制 • 放送局は制度上は政府の介入を許す(公平 原則ゆえに)・・・免許制・・・制度上は免許が 更新されない可能性を常に持ち続けている • しかしCATVにまで、放送法の適用範囲とす る・・・異論も(電波の稀少性という根拠 が・・・?) 公平原則と放送・通信の垣根 • 通信に放送が融合しつつあるのが、現代のメ ディア状況・・・例 ワンセグ • 通信は基本的に通信の秘密が守られ、それ は言論の自由よりも一層、制限されてはいけ ない領域(このあたり今年度既に説明) • 通信と放送の融合・・・今まで通信を放送の規 制の網に(ネットでの誹謗中傷)・・・今後、公 平原則をテレビに緩めるのか。 公平原則と資本持ち合い・系列① • 公平原則との絡みで、民法テレビ局は資本の 持ち合いが制限される。 • しかし現実には二つの局面で系列化 1)キー局とネット局 2)新聞社とキー局 公平原則と資本持ち合い・系列② • 在京キー局と地方ネット局との系列化(取材・ 報道網) • JNN(TBS系列)・・・全国28のネット局(1998年 及び2010年のデータ) • NNN(NTV(日テレ))・・・30 • FNN(CX(フジ))・・・28 • ANN(テレ朝)・・・26 • TXN(TX(テレビ東京))・・・6 公平原則と資本持ち合い・系列③ • 系列局への排他協定(JNNの例) • 「加盟局は「JNNニュース」(JNNのタイトルの つくニュース番組)については、必ず同時ネッ ト放送を行うこと。」 • 「加盟局はニュース素材を加盟局のみに配信 し、他系列局には一切、配信しないこと。」 公平原則と資本持ち合い・系列④ • キー局と全国紙5紙の提携関係(資本参加・取 材協力・人的交流) • 毎日新聞 TBS・・・元々はTBSの方が子会社だっ たが、毎日の経営危機等で逆に • 読売新聞 日テレ・・・かつては巨人戦のホーム ゲームの独占中継。保守の読売の系列企業の 割には、政府への批判的な論評もある。 • サンケイ フジテレビ・・・フジサンケイグループ。 ライブドアのニッポン放送株取得問題で話題に。 保守反動のサンケイの系列会社であるが、政治 より面白さを追求している。 公平原則と資本持ち合い・系列⑤ • 朝日とテレ朝(すでに申し上げた) • 日経とテレビ東京 • キー局とネット局は人的交流や資本関係でな いが、番組がほとんど同じ・・・影響は強い • キー局と新聞社の関係は、資本関係、人事 の関係に及ぶ・・・政治色には一貫性がない →資本の無方向性のなさるワザ 6.1.3収益構造面での比較① • 比較そのものは、前段の前振りで言っている のでNHKを中心に • NHK・・・受信料収入によって成り立っている • NOT国営放送 BUT公共放送(似てはいるが) • 税金が財政基盤ではない • 政府寄りではなく、かといって商品としての情 報を売るのでもない。「公共性」を重視する 収益構造面での比較② • 税金で運営されていないし、広告も流していない ことで、NHKは政府に対しても、資本家に対して も、一定の距離を保ち、中立性を保持できる・・・ 公共性の由来(cfハーバーマスの公共性) • 公であり、私的な利益と反しつつ、国家や政府で はない領域、そういったものが「社会」であり、あ るいは「市民社会」というものの目指したもので あるといえる。あるいは公共図書館の「公共」と いう意味にもそういった考え方があるように思わ れる。 収益構造面での比較③ • 受信料支払い拒否の連続・・・政府は、NHK受 信料を税金の形で納めさせたらという議論を する・・・対して、NHK側はその意見に抵抗 • 受信料収入に頼っているNHK・・・公共的な、 あるいは、いいかえると社会的な問題に関わ る事柄についての放送が多い(多かった) • 広告収入に依存している民放・・・視聴率が稼 げる娯楽的内容の放送が多い 収益構造面での比較④ • これが逆にいうと、授業レポートでNHKに反撥 する声が大きい理由にも • 広告収入に頼る民放→娯楽性高い→楽しい →なのに無料 • 受信料に頼ればよいNHK→お堅い。ヌードも どきのDJオズマ排除等々。つまらない→なの に有料(もっとも後藤はNHKの回し者ではあり ません。ワンセグにも受信料というのは行き 過ぎでは?とも) では、商品性って悪いのか?1/8 商品の肯定的側面 • 一定の水準にあるものが商品に • アマチュアに対するプロフェッショナル • お金を払って見聞きするに価するもの=商品 • 我々の論文だって紀要や学会誌は商品では ないが、本は商品で、文系は本を書いて評価 される大学も多い。 では、商品性って悪いのか?2/8 商品の否定的側面 • 利潤を増やす。資本の増大に役立つ。しかし 資本は無方向。(前々回位にやった内容) • 売れなくたって優れているもの、優れていなく ても価値のあるものがある。・・・多元的な価 値 • このような多元性を一元的な価値に変えてし まう では、商品性って悪いのか?3/8 • 真善美の価値 一致?それぞれの距離も 真実・虚偽、善・不善、美醜それぞれに固有 の論理 • あとの二つでのマトリックスを想起せよ。 {美しく不善}な人と{醜く善なる}人 前者が社会でもてる→皆が好む→商品価値 あるとされる→メディアに多く露出できる では、商品性って悪いのか?4/8 • テレビは悪役以外、基本的に美男美女で構 成される。少なくとも、ドラマの世界は現実世 界より遙かにイケメン美女揃い。 • {美しく不善}な人>>>{醜く善なる}人 という価値付けを我々は幼少より刷り込まれる • そして価値=価値あることでありかつ価格が 高いことでもある • 心理学の実験では・・・ では、商品性って悪いのか?5/8 • テレビで美しさを追求するように仕向けられる →美しいものを欲しがる→価値あるものは高 い • →お金を至上と考える価値観も埋め込まれる • お金を稼いで広告に出た「美しい」(美味しい・ 面白い)商品を買いましょうと仕向けられる • こういった循環が民放でのコミュニケーション には想定しうる。 では、商品性って悪いのか?6/8 • ルックスがよく弁が立つ政治家が人気に • 内容よりはプレゼンの善し悪しで勝負。(どこ かの大学の卒論審査?) • (もちろんマクルーハン流にはプレゼン=メ ディアでそれがメッセージ=内容であるが) • ともあれこれは中身(言葉)の力で勝負すると いう民主主義の基本理念への脅威という見 方は可能 では、商品性って悪いのか?7/8 〔別の側面から〕 • 時代を先導する偉人・・・一部の支援者・多く の周囲の無理解 • 偉人の模倣者・追随者・・・多くの人々が理解 する • 前者は商品社会だと報われず、後者のみが 良い思いをする。 では、商品性って悪いのか?8/8 • ゴッホの絵・・・現代で数億円、当人は二束三 文で売っていた絵が。 • 分かりやすさ、耳当たりの良さは大事 • だけどそれのみを重視する社会は、新たな活 力はないし、一元的で不健全 結論→商品性には一長一短ありというか一長 三短ある。 NHKの娯楽志向 • 受信料が当たり前のように支払われた時 代・・・NHKは視聴率を気にせず • 受信料を支払わない人が増えた時代(「うち、 NHK見ていないし・・・」)・・・NHKも視聴率、気 にするように • 中途半端な柔らかさ。民放で売れたタレントを 毒抜きして使う(一番みっともない) 6.1.4内容面での新聞(及びその他 のメディア)との比較 • (前振りで述べたが) • ワイドショウのような娯楽的な芸能・スポーツ 関係の「報道」の比重も強いし、さらにドラマ やバラエティ(これはワイドショウ等にも被る 概念であろうが)、音楽・歌番組などの自分た ちで作り上げる番組も多い。・・・報道ではな いが社会を映す鏡 • 民放ではニュースそのものがバラエティ化 • →自分たち自身が情報の発信源である部分 が新聞に較べて遙かに強い C.W.ライトのマス・メディアの4つの機能 1)環境監視活動 ニュース 2)社会的調整活動 編集・解説・指示 3)文化の伝承 4)娯楽機能 • 後藤将之の新聞の二つの機能のうちの 事実の報道機能は1)環境監視活動に 言論・批判機能は2)社会的調整活動に相 当 • テレビ(放送)の教養記事や番組は3)文化 の伝承であるし、標準語化とかいう意味なら 全てのコンテンツが該当 • そして4)の娯楽機能がテレビに強い ユルゲン・ハーバーマス 『公共性の構造転換』 (今年度は既に説明済み) • ハバーマスの議論 • 公共圏参与資格が「教養と財産」 • 「財産」・・・私的利潤に囚われて発言しないた めの基盤→これを敷衍すると • 経営基盤のしっかりしたメディアであるほど、 利潤に囚われた言説をしない • 広告収入依存のメディアほど、利潤に囚われ た発言をする ハーバーマス流の公共性を巡る諸メディアの比較 • NHKがもっとも公共性が高い • 本・・・大抵は自社広告が少し載るのみで、次に 公共性が高い • 新聞・・・本に次ぐ • 雑誌・・・様々で本に近いレベルまで広告の少な いものもあるが、ファッション雑誌のような広告依 存、記事そのものも広告的なものの方が多い • 民放・・・最も公共性がない • NHK、民法、二種類の放送が、公共性という 観点で諸メディア並べると、両極に。
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