中国の第10期全国人民代表大会(全人代)

平成19年3月9日作成
全国商工会議所中国ビジネス研究会
中国の第10期全国人民代表大会(全人代)第5回会議について
3月5日から16日にかけ、第10期全国人民代表大会(全人代)第5回会議(日本の国会に相当)が開催され
ている。開幕初日には、温家宝首相による政府活動報告(国会の施政方針演説に相当)が行われた。
<主な会議日程>
3月5日 開幕、政府活動報告(案)公表・審議、2006年予算執行・2007年予算計画(案)等を公表
6日 以下の会期中に政府活動報告(案)、予算(案)等を審議、李肇星・外交部長記者会見
7日 馬凱・国家改革発展委員会主任記者会見
8日 企業所得税法案、物権法案審議
9日 金人慶・財政部長記者会見
12日 周小川・中国人民銀行総裁、薄熙来・商務部長記者会見
13日 最高人民法院活動報告(汚職摘発の状況を説明)、田成平・労働社会保障部長記者会見
16日 閉幕、政府活動計画や予算計画、企業所得税などを採決、温家宝首相記者会見
<政府活動報告について(三部構成)>
1.「第十一次五ヵ年規格(計画)」の初年の成果(経済指標)について
GDP総額:20兆9407億元、経済成長率:10.7%、消費者物価上昇率:1.5%、都市部雇用創出:
1184万人、都市部、農村部住民一人当たりの可処分所得:1万1759元、3587元(3倍以上の格差)等
2.2006年の活動の回顧について
昨年の成果を列挙するとともに、「経済・社会の発展には、依然として多くの矛盾と問題が存在。都
市・農村、地域間の発展は不均衡で、投資・消費の調和が取れていない。国内総生産(GDP)単位当
たりのエネルギー消費を4%前後に低下させる目標も達成できなかった。」と問題点も認めた。
3.2007年の活動計画について (詳細については次ページをご参照)
【目標】GDP成長率:8%前後、都市部雇用創出:900万人以上、失業率:4.6%以内、CPI:3%以内
○発展至上主義が生んだ貧富の格差拡大、社会矛盾の是正などに力点を置いた内容。低所得層の医療、
教育、社会保障、義務教育等を充実させ、9億人の農民が居住する農村への優遇政策を強調した。しかし、
社会的な弱者への機会の平等を謳っているものの、その実現のために不可欠な要素である「民主主義」
については、「中国の特色ある」と限定し、共産党独裁の枠内で、民衆の権利を保障する考えを示唆した。
○外交面では、国内政治のキーワードであった「和諧(調和)」を用い、「和諧世界」構築を目指すと表明。
各国と互恵関係を深める方針を打ち出した。国防予算増大や去る1月の人工衛星破壊実験などで高
まる「中国脅威論」の払拭に努めるとともに、深刻化する環境汚染とエネルギー不足に対応するために、
先進諸国から最新の省エネ技術や環境技術の導入を促進する思惑が垣間見られる。
<2007年予算計画(案)について>
2007年の重点予算は以下の通り。
三農(農村、農民、農業)問題:3917億元、医療衛生:312億元、社会保障・雇用:2019億元、
科学技術:881億元、教育:858億元、文化振興:173億元
<当研究会事務局コメント>
今次全人代から明らかなように、日中関係については、環境問題がますます重要なテーマとなり、最近で
は、日本の環境技術移転を目的とした「省エネ技術協力センター」設立などが中国側から要請された。また、
今年も「調和のある社会建設」が強調されているが、今秋に、胡錦涛政権後の指導層を見据えた人事が発
表される「党大会」が控えているため、例年以上に国内情勢の安定維持が最優先される。