東京武蔵野ライオンズクラブ 8月第2例会

東京武蔵野ライオンズクラブ
『裁判員制度』
L小笠原耕司
©小笠原国際総合法律事務所
Ⅰ基礎知識編
©小笠原国際総合法律事務所
裁判員制度について
• 『裁判員の参加する刑事裁判に関する法律』(略称:裁判員
法)に基づいた制度。
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平成19年5月22日成立
平成19年5月30日公布
平成21年5月21日施行(スタート)
※実際に裁判員裁判の公判が開かれるのは来年7月下旬~8月上
旬
• 詳細な内容については、規則に定められている。
• 『裁判員の参加する刑事裁判に関する規則』
– 平成19年6月13日成立
– 平成19年7月 5日公布
– 裁判員法施行時に施行予定
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裁判員制度の目的:(第1条)
国民が刑事裁判に参加することにより
① 司法に対する国民の理解の増進
② 司法に対する国民の信頼の向上
につながることを狙いとしている
☆裁判員制度とは:(第2条)
職業裁判官3人での審議
↓裁判員制度の導入
職業裁判官3人+裁判員6人、計9人で刑事裁判が行われる
(原則)。(2条2項)
例外的に職業裁判官1人+裁判員4人も可能(2条3項)。
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★豆知識1
①アメリカ(陪審制)
対象:法定刑6月以上の重大犯罪
構成:裁判官1名、陪審員12名
評議:全員一致
②フランス(参審制)
対象:法定刑が無期又は下限10年以上の事件
構成:裁判官3名、参審員9名
評議:被告人に不利益な判断をするためには、
裁判官と参審員を合わせた3分の2以上の特別多数決が必要
③他、ドイツ、イタリアも参審員制をとっている。
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裁判員の仕事:(第6条1項1号)
①事実の認定
②法令の適用
③刑の量定
• これを裁判官及び裁判員の合議により行う。
①法令の解釈に係る判断
②訴訟手続きに関する判断
③その他裁判員の差関与する判断以外の判断
の3つは、職業裁判官が行う。
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•
対象事件:(第2条)
① 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮にあたる罪に係る事件
(1項第1号)
②裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪
行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(1項第2号)
※裁判所法26条第2項第2号
死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮にあ
たる罪(刑法第二百三十六条 、第二百三十八条又は第二百
三十九条の罪及びその未遂罪、暴力行為等処罰に関する法
律(大正十五年法律第六十号)第一条ノ二第一項若しくは第二
項又は第一条ノ三の罪並びに盗犯等の防止及び処分に関す
る法律(昭和五年法律第九号)第二条又は第三条の罪を除
く。)に係る事件
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日本経済新聞081126夕刊
★豆知識2
平成18年の全国の地方裁判所における刑事
通常事件(第1審)の事件数
106,016件(司法統計より)
↓
そのうち、裁判員制度の対象となる事件の数は、
3,111件(全体の2.9%のみ)
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罪名
件数
強盗致傷
939
殺人
642
現住建造物等放火
331
強盗致死傷
240
傷害致死
181
強制わいせつ致死傷
161
強盗強姦
153
覚醒剤取締役法違反
125
強盗致死(強盗殺人)
72
危険運転致死
56
偽造通貨行使
40
銃砲刀剣類所持等取締役法違反
40
通貨偽造
30
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反
18
集団強姦致死傷
16
保護責任者遺棄致死
14
麻薬特例法(略称)違反
14
麻薬及び向精神薬取締法違反
13
逮捕監禁致死
11
その他
15
合計
3111件
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選任のされ方
(2)事件ごとにくじで裁判員候補者の選任(裁
判の6~8週間前まで)
(1)裁判員候補者名簿の作成・調査
(毎年12月頃まで)
・翌年の裁判員候補者となる人を
毎年 くじで選ぶ。
・裁判所ごとに、裁判員候補者名
簿を作成
裁判所に行く日時の通知
審理に参加することについての
支障の有無の確認
※ここで嘘をつくと、50万円以下の罰金。
(3)裁判員の選任(裁判当日の午前中):選ばれ
ると日当1万円以内+旅費
選ばれないと8000円以内+旅費
→名簿に記載された者には、その旨
※明確な辞退理由、就職禁止事由が調査票で判明しない
の通知+上記禁止事由等の有無の調
限り裁判所に行く必要あり。
査表も送付
※正確な理由もなく裁判所に行かないときは10万円以下
この調査票には、参加が困難な辞退
の過料。
事由、特に参加が困難な特定月等に
裁判員候補者(※通常事件で50名、重大事件で100名く
ついても 記載できる。
らいが呼ばれる)の中から選任
※この調査票にうそを書くと、30万以
事件との利害関係
下の過料。
辞退理由の確認
→最終的にくじにより決定。
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★豆知識3
• 候補者として裁判所に行く確率:
300~600人に1人
(0.18%~0.35%)
• 実際に裁判員又は補充際場人として刑事裁
判に参加する確率:
3,500人に1人(0.03%)
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なれる人なれない人
• なれる人→衆議院議員の選挙権を有する者
(13条)
• なれない人(欠格事由:14条)
• 義務教育を終了しないもの
• 禁錮以上の刑に処せられたもの 等
• 就職が禁止されている人(15条)
• 国会議員、国務大臣、司法関係者、司法警
察職員等
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辞退理由(16条)
一 年齢七十年以上の者
二 地方公共団体の議会の議員(会期中の者に限る。)
三 学校教育法第一条、第百二十四条又は第百三十四条の学校の学生又は生徒(常時通学を要する課程
に在学する者に限る。)
四 過去五年以内に裁判員又は補充裁判員の職にあった者
五 過去三年以内に選任予定裁判員であった者
六 過去一年以内に裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭し
たことがある者(第三十四条第七項(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含
む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。第二十六条第三項に
おいて同じ。)の規定による不選任の決定があった者を除く。)
七 過去五年以内に検察審査会法(昭和二十三年法律第百四十七号)の規定による検察審査員又は補充
員の職にあった者
八 次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候
補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者
イ 重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。
ロ 介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必
要があること。
ハ その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が
生じるおそれがあるものがあること。
ニ 父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものが
あること。
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選任されたら
原則、居住地域の管轄地方裁判所本庁にて職務を遂行。
交通費、日当1万円以内+宿泊が必要な場合には宿泊費(7
800円or8700円)
審理にかかる日数は、
2日以内:20%
3日以内:50%
5日以内:20%
5日超 :10%
が想定される。家には帰ることができる。
審理後の行動は自由。
※正当な理由がないのに出頭しないと、10万円以下の過料
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職 務
(1)公判に立ち会う
証人や被告人に対する質問(裁判員からもできる)
証拠として提出された物や書類の取り調べ
(2)評議・評決を行う
有罪、無罪、有罪だとしたらどんな刑にするべきかを裁判官と一緒に議論
(評議)
決定(評決)
多数決(過半数+職業裁判官、裁判員それぞれ1名以上)
(3)判決宣告に立ち会い
判決宣告に立ち会う
★その他
裁判員となったことを公にしてはいけない(上司等に報告するのはOK)
評議の秘密及び職務上知り得た秘密の守秘
•
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企業として
事前準備:就業規則の改訂
裁判員制度のための休暇制度構築義務はない。
従業員に対して、裁判員手続に参加したことの証明書を裁判所が申請があ
れば発行する制度を検討中。
就業規則への記載例:別紙参照
(出典:全労基連(経済産業省所管、独立行政法人)
従業員の選任のされ方
上記のとおり。
従業員が選任されたら
会社に報告は裁判所からはない。
従業員から期日の呼出状の開示を受けるべき。上司は報告を受けても、本
人が裁判員に選任されたことを公にしてはならない。
裁判員の仕事に必要な休みをとることは法律で定められている(第7条)
裁判員として仕事を休んだことを理由に解雇などの不利益な扱いをすること
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は法律が禁止(100条)
辞退して欲しい場合の対応の仕方
• 事業上の重要な用務を自分で処理しないと著しい損害が生じるおそれ
(16条8項ハ)に該当するかが問題となる。
• これについて裁判所は、
•
個々のケースごとに、裁判所が、事業所規模等も考慮し、その用務の
重要性、自らおこなうことの必要性、著しい損害が生じる可能性等を考慮
して、裁判員の仕事を行うことが困難で有るかどうかを検討し、裁判員を
辞退することを認めるかどうかを判断することになります。
• 自営業者である、あるいは、農繁期であるということだけで直ちに辞退が
認められるわけではありませんが、裁判員の仕事を行うことが困難かど
うかを判断する中で、自営業者であることや農繁期であることも考慮要素
となると考えられます。
•
とコメントしている。
• 審査においては、資料提出が個別的に求められる。
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なってしまったら・・・編
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刑事裁判の原則
☆第一の原則
無罪推定の原則
(被告人は無罪から出発)
☆第二の原則
合理的な疑問を残さない程度の証明の原則
(常識に照らして合理的な疑問が残らない程度にまで有罪を
証明できないと無罪推定をくつがえすことはできない。)
☆第三の原則
当事者主義(⇔職権主義)
(裁判所は第三者として判断する)
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刑事裁判手続きの流れ
冒頭手続
証拠調べ
論告・求刑・弁論
評議
判決宣告
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自白の信用性の判断の基準
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判断の前提
客観的証拠との整合性
自白をなすに至った経緯・動機等
自白内容の変遷
自白内容の合理性
秘密の暴露の有無
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殺意の認定のポイント
①創傷の部位、程度
※枢要部(四肢以外の身体の全部分)の場合殺意が認定されやすい。
※致命傷となるような深い傷があったり、多数の傷がある場合、殺意が認定されやすい。
②凶器の種類、用法
※拳銃は性質上の凶器、紐はそれを用いて首をしめるという加害行為があってはじめて凶器と
なる(用法上の凶器)なので、殺意が低くなる。
③動機の有無
※深刻な怨恨、憤まんの年があったかどうかにより殺意の認定がされやすくなる。
※瞬間的に未必的な故意を抱く場合もある。
④犯行前後の言動
※「殺してやる」と叫んでいたとか、犯行後救護措置をしないとかは、殺意の認定がさ
れやすくなる。
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