高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

高齢者介護の実際と権利擁護
(身体拘束の廃止)について
2012/11/14
社会福祉法人 創志会
理事長 新保 瑠美子
高齢者虐待防止法の
施行の経緯と概要(1)
●法律の正式名称
– 『高齢者虐待の防止、高齢者の擁護者に対する支援などに関す
る法律』
●法律の成立と施行
– 2005(平成17)年11月成立
– 2006(平成18)年4月施行
2
高齢者虐待防止法の
施行の経緯と概要(2)
●法施行の背景
– 高齢者のための国連原則(1991年)
• 「高齢者は、尊厳及び保障をもって、肉体的・精神的虐待か
ら解放された生活を送ることができる」
●介護保険制度の目的
– 高齢者の尊厳を保持し、有する能力に応じて自立した生活を営
めるようにする
●家庭や介護施設などで高齢者への虐待が表面
化、社会的な問題に
3
高齢者虐待防止法の
施行の経緯と概要(3)
●法の目的(第1条)
①『高齢者の尊厳の保持』を大きな理念とする
②『尊厳の保持』を妨げる高齢者虐待の防止が極めて重要
③そのために必要な措置を定める
高齢者の権利利益を守る
4
高齢者虐待防止法の
施行の経緯と概要(4)
●法の特徴
①
高齢者虐待を初めて定義
②
高齢者虐待の早期発見・早期対応を主眼としている
③
家庭内の虐待に止まらず、施設や在宅サービス事業の従業者等による虐待
も対象としている
④
高齢者を養護する人の支援も施策の柱の一つとしている
⑤
財産被害の防止も施策の一つに取り上げている
⑥
住民に身近な市町村を虐待防止行政の主たる担い手として位置付けている
⑦
法施行後に検証を重ねることが予定されている
(厚生労働省作成資料より)
5
養介護施設従事者等による
高齢者虐待の実態(1)
●実態把握
– 都道府県が情報をまとめ、年度ごとに公表⇒厚生労働省が全国
の状況をまとめ、毎年公表(ホームページ等で公開)
平成21年度 平成20年度
平成19年度
平成18年度
市町村への通報等
423件
469件
379件
273件
都道府県への通報等
83件
83件
62件
59件
通報数の合計
452件
506件
432件
290件
虐待の事実認定件数
76件
70件
56件
54件
– 厚生労働省公表資料より
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/bukyoku/rouken.html
6
養介護施設従事者等による
高齢者虐待の実態(相談・通報者内訳)
合わせて38.5%
本人
21年度実数
20年度実数
19年度実数
18年度実数
21年度割合
20年度割合
19年度割合
18年度割合
14
14
20
11
3.1%
2.8%
4.6%
3.8%
家族・
当該施設 当該施設
親族
職員
元職員
105
123
51
156
116
56
97
99
47
67
63
29
23.2%
27.2%
11.3%
30.8%
22.9%
11.1%
22.5%
22.9%
10.9%
23.1%
21.7%
10.0%
医師
2
3
6
2
0.4%
0.6%
1.4%
0.7%
介護支援
専門員
16
16
20
10
3.5%
3.2%
4.6%
3.4%
国保連
1
4
6
8
0.2%
0.8%
1.4%
2.8%
都道府県
38
24
22
17
8.4%
4.7%
5.1%
5.9%
その他
匿名
61
56
68
45
13.5%
11.1%
15.7%
15.5%
※通報者は元職員まで含めると40%弱が施設職員!!通報する前に、正しい支援・援助が
できるような協力体制がない組織風土・職員意識なのでは?と思うと悲しい結果です。
合計
41
61
47
38
9.1%
12.1%
10.9%
13.1%
7
452
506
432
290
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
養介護施設従事者等による
高齢者虐待の実態(虐待の種類・類型)
身体的虐待は
身体拘束の可能
性が高い!!
21年度実数
20年度実数
19年度実数
18年度実数
21年度割合
20年度割合
19年度割合
18年度割合
身体的虐待 介護等放棄 心理的虐待
53
2
26
52
4
21
48
10
19
40
7
20
58.9%
2.2%
28.9%
62.7%
4.8%
25.3%
56.5%
11.8%
22.4%
51.9%
9.1%
26.0%
性的虐待
8
3
3
6
8.9%
3.6%
3.5%
7.8%
経済的虐待
1
3
5
3
1.1%
3.6%
5.9%
3.9%
種別不明
0
0
0
1
0.0%
0.0%
0.0%
1.3%
合計
90
83
85
77
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
8
養介護施設従事者等による
高齢者虐待の実態(施設・事業所内訳)
特別養護 介護老人 介護療養型
老人ホーム 保健施設 医療施設
21年度実数
20年度実数
19年度実数
18年度実数
21年度割合
20年度割合
19年度割合
18年度割合
23
21
17
19
30.3%
30.0%
27.4%
35.2%
11
11
9
10
14.5%
15.7%
14.5%
18.5%
2
0
2
0
2.6%
0.0%
3.2%
0.0%
認知症対応型
共同生活介護
17
22
19
10
22.4%
31.4%
30.6%
18.5%
有料
老人ホーム
7
0
7
7
9.2%
0.0%
11.3%
13.0%
小規模多機能
型居宅介護
2
1
0
0
2.6%
1.4%
0.0%
0.0%
軽費
養護
短期
老人ホーム 老人ホーム 入所施設
1
0
0
1
1.3%
0.0%
0.0%
1.9%
2
1
1
0
2.6%
1.4%
1.6%
0.0%
3
1
4
3
3.9%
1.4%
6.5%
5.6%
訪問介護
訪問入浴介護
3
7
1
3
3.9%
10.0%
1.6%
5.6%
老人
デイサービス
センター
2
3
2
1
2.6%
4.3%
3.2%
1.9%
特定施設
入居者
生活介護
3
3
0
0
3.9%
4.3%
0.0%
0.0%
合計
76
70
62
54
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
9
養介護施設従事者等による
高齢者虐待の実態(男女別・年齢別内訳)
男
21年実数
20年実数
19年実数
18年実数
21年割合
20年割合
19年割合
18年割合
女
34
31
21
20
24.6%
29.8%
21.0%
21.3%
合計
104
73
79
74
75.4%
70.2%
79.0%
78.7%
138
104
100
94
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
~64
21年実数
20年実数
19年実数
18年実数
21年割合
20年割合
19年割合
18年割合
0
0
4
2
0.0%
0.0%
4.0%
2.1%
65~69 70~79 80~89 90~99 100~
5
35
67
29
1
6
20
57
18
0
17
34
39
4
2
6
22
36
28
0
3.6% 25.5% 48.9% 21.2%
0.7%
5.9% 19.8% 56.4% 17.8%
0.0%
17.0% 34.0% 39.0%
4.0%
2.0%
6.4% 23.4% 38.3% 29.8%
0.0%
※それぞれ不明が、H20:3件、H21:1件
合計
137
101
100
94
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
10
養介護施設従事者等による
高齢者虐待の実態(虐待者の職種・年齢)
介護職員 看護職員
21年実数
20年実数
19年実数
18年実数
21年割合
20年割合
19年割合
18年割合
70
77
58
55
81.4%
90.6%
84.1%
85.9%
6
1
3
5
7.0%
1.2%
4.3%
7.8%
管理者 施設長 開設者 合計
3
4
3
86
5
1
1
85
6
0
2
69
2
1
1
64
3.5%
4.7%
3.5% 100.0%
5.9%
1.2%
1.2% 100.0%
8.7%
0.0%
2.9% 100.0%
3.1%
1.6%
1.6% 100.0%
※それぞれその他の職種が、H18:0件、H19:0件、H20:1件、H21:4件
21年実数
20年実数
19年実数
18年実数
21年割合
20年割合
19年割合
18年割合
~29 30~39 40~49 50~59
21
19
17
9
21
19
15
9
16
12
8
10
19
16
2
8
28.4%
25.7%
23.0%
12.2%
28.8%
26.0%
20.5%
12.3%
30.2%
22.6%
15.1%
18.9%
38.8%
32.7%
4.1%
16.3%
60~
8
9
7
4
10.8%
12.3%
13.2%
8.2%
合計
74
73
53
49
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
※それぞれ不明が、H18:15件、H19:16件、H20:13件、H21:16件
11
養介護施設従事者等による
高齢者虐待の実態(施設・事業所内訳)
自立
21年度実数
20年度実数
19年度実数
21年度割合
20年度割合
19年度割合
4
0
1
2.9%
0.0%
1.0%
要支援1 要支援2 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
1
2
16
14
21
50
28
2
2
11
18
30
28
12
0
2
2
11
24
37
23
0.7%
1.5%
11.8%
10.3%
15.4%
36.8%
20.6%
1.9%
1.9%
10.7%
17.5%
29.1%
27.2%
11.7%
0.0%
2.0%
2.0%
11.0%
24.0%
37.0%
23.0%
※それぞれ不明が、H19:1件、H20:1件、H21:2件、平成18年度は厚生労働省資料に記載なし
合計
136
103
100
100.0%
100.0%
100.0%
12
養介護施設従事者等による
高齢者虐待の実態(2)
●高齢者虐待と思われる行為を受けた利用者の特徴
– 年齢が高く後期高齢者(75歳以上が大半)
– 要介護度がやや高い
– 認知症の人の割合が高く、意思疎通の難しさ等の関連する問題があ
る
行動・心理症状(BPSD)の存在
特に攻撃的言動や介護への強い抵抗がある
●高齢者虐待と思われる行為を行った職員の特徴
- 年齢・性別・職種などに大きな特徴は考えにくい
- 個人的な特性以上に、組織的な問題に関わる職務上の背景要因が
考えられる
13
高齢者虐待の考え方(1)
●『高齢者虐待』を考えるための2つの視点
① 報道などで顕在化した高齢者虐待以外にも、気づかれ
てい
ない虐待がありうる。
意図的な虐待だが表面化していないもの(意図的虐待)


結果的に虐待を行ってしまっているもの(非意図的虐待)
『緊急やむをえない』場合以外の身体拘束
② 明確に『虐待である』と判断できる行為の周辺には、判
断に
迷う『グレーゾーン』が存在する。
『虐待である』とは言い切れないが『不適切なケア』

明確な線引はできず、『不適切なケア』を底辺として連続
14
『不適切なケア』を底辺とする
『高齢者虐待』の概略図
表面化して
いる案件
表面化して
いない案件
グレーゾーン
不適切なケア
高齢者が認識
している案件
高齢者が認識
していない案件
意
図
的
虐
待
非
意
図
的
虐
待
※三角形の面積に虐待件数が比例
高齢者虐待とは、「意図的虐待」と「非意図的虐待」の2つに大きく分類されます。すなわち、
高齢者虐待を考えるとき「意図的虐待」を行っている者に対して「どう介入するか?」・「非意
図的虐待」を行っている者を「どう支援するか?」という2つのベクトルで考えることが必要で
15
す。
高齢者虐待の考え方(2)
●不適切なケアから考える
 『養介護施設従事者等による高齢者虐待』の問題は『不適切なケア
か
 ら連続的に考える必要がある
虐待が顕著化する前には、表面化していない虐待や、その周辺の
『グ
レーゾーン』行為がある
 さらにさかのぼれば、ささいな『不適切なケア』の存在が放置される
ことで、
蓄積・エスカレートする状況がある
『不適切なケア』の段階で発見し、
『虐待の芽』を摘む取り組みが求められる
16
ここでちょっと
コンプライアンスについ
て
ある企業のサイトで『いまさら聞けない基本用語』第3位にランクインした
『コンプライアンス』、みなさんはその意味を説明できますか?
もともと『コンプライアンス』とは、『コンプライ』(~を遵守する)とい
う動詞の名詞形です。すなわち、目的語を伴わなければ意味不明な単語なので
す。(英語圏の人が聞いたら「なにを?」って聞かれてしまうかも・・・)
そんな曖昧な言葉が実際に我が国でどういった意味でよくつかわれているので
しょうか?
一般的には・・・
社会秩序を乱す行動や社会から非難される行動をしないこと
組織の中で・・・
◎法令遵守
◎組織の倫理・経営倫理に伴った行動
これだけじゃない!!!
応用的には、リスク管理の一部として『職員行動規範』として・・・
17
高齢者虐待・
不適切なケアの背
景
負担の多さ
ストレス
組織風土
理念とその共有
組織体制
運営体制
役割や仕事の範囲
職員間の連携
認知用ケア
“非”利用者本位
アセスメントと個別ケア
意識不足
ケアの質を高める教育
虐待・身体拘束に
関する意識・知識
18
身体拘束がもたらす悪循環
さらに拘束が必要に・・・
せん妄・転倒等の
2次的・3次的障害
身体拘束
体力の減衰
痴呆の進行
19
身体拘束がもたらす弊害
身体的弊害
「機能回復」とは
正反対!!
1.
2.
本人の関節の拘縮、筋力の低下といった身体機能の低下や圧迫部位のじょく創の発生などの外的弊害をもたらす。
食欲の低下、心肺機能や感染症への抵抗力の低下などの内的弊害をもたらす。
3.
車いすに拘束しているケースでは無理な立ち上がりによる転倒事故、ベッド柵のケースでは乗り越
えによる転落事故、らには抑制具による窒息等の大事故を発生
精神的弊害
1.
本人に不安や怒り、屈辱、あきらめといった大きな精神的苦痛を与え、そして人間としての尊厳を侵す。
2.
身体拘束によつて、痴呆がさらに進行し、せん妄の頻発をもたらすおそれもある。
3.
4.
本人の家族にも大きな精神的苦痛を与える。自らの親や配偶者が拘束されている姿を見たとき、混乱し、後悔し、
そして罪悪惑にさいなまされる家族は多い。
さらに、看護・介儀スタッフも、自らが行うケアに対して誇りを持てなくなり、安易な拘束が士気の低下を招く。
社会的弊害
身体拘束は、看護・介護スタッフ自身の士気の低下を招くばかりか、介護保険施設等に対する社会的な不信、偏見を引
き起こす恐れがある。そして、身体拘束による高齢者の心身機能の低下はその人のQOLを低下させるのみでなく、さら
なる医療的処置を生じさせ経済的にも少なからぬ影響をもたらす。
20
身体拘束至る原因とは・・・
根本的な原因の究明
徘徊や興奮
状態での周
囲への迷惑
行為
転倒のおそれ
のある不安定
な歩行や点滴
の抜去などの
危険な行動
現象のみにとらわれない
身体面・環境面・精神面を考慮した
ケアの徹底
5つの基本
よりよいケア
かきむしりや
体をたたき続
けるなどの自
傷行為
姿勢が崩れ、
体位保持が困
難であること
起きる
食べる 排せつする
清潔にする 活動する
「言葉による拘束」等の
身体拘束禁止規定にない
事柄にも注意!
身 体 拘 束
を大切に!!
21
身体拘束とは・・・
1.
徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
6.
車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、
具体例をだしてみよう!
Y字型抑制帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。
2.
転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
7.
3.
自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
8.
4.
脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
9.
5.
立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。
他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないように、
手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
10. 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
22
11. 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
高齢者虐待の考え方(1)
 利用者が同じことを繰り返し訴えると、無視した
り
「ちょっと待って」「さっきも言ったでしょ」などの強
い
 自力で食事接種が可能だが時間がかかる利用者
に 口調でこたえたりする。
対し、時間節約のため職員がすべて介助してしま
 一斉介護のスケジュールがあるからという理由で、
う
利
23
用者の臥床・離床・起床等を半強制的に行う
身体拘束回避のpoint①
(1)
※カッコのなかの数字は、P22とリンク
○徘徊そのものを問題と考えるのではなく、そのような行動をする原因・理由を究明し、対応策をとる。
(例)
・例えば、心の中で描いている家に帰らなくてはと思い、夕方になると出かけようとする場合は、夕方寂しい思いを
させないよう、一緒になじみの家具などの手入れをしたり、語りかけたりする。
・歩き回っている高齢者の気持ちになって、一緒に歩いたり、疲れる前にお茶に誘うなどして本人を納得させる工
夫をする。
○転倒しても骨折やけがをしないような環境を整える。
(例)
・敷物、カーペット類を固定したり、コード類などの障害物をできる限り居室や廊下などから移動させたりしておく。
・手すりなどのきめ細かな設置やトイレなどの必要箇所の常時点灯など転倒しにくい環境を整える。
・弾力のある床材やカーペットを使用する。
○スキンシップを図る、見守りを強化・工夫するなど、常に関心を寄せておく。
(例)
・目を見て話しかける、手を握るなどスキンシップを図り、情緒的な安定を図る。
・不安や転倒の危険性があるときは一緒に付き添い、ときおり声をかける。(遠いところや後方から声をかけると驚
いて転倒したり、振り向き時に転倒したりする恐れがあるので、必ずそばで声をかけるようにする。)
・目の届きやすいところにベッドを移動するなど見守りやすいように工夫する。(ただし・排せつや更衣を行うとき
は別室に移動するなど、場所によってはプライバシーの保護に十分留意することが求められる。また、場所を移動
することで不安や混乱を招かないよう、説明と安心できる環境づくりを工夫する。)
・「ユニットケア」のように一定の場所で常時見守りと生活支援が行えるスタッフを要所要所に配置する。
・夜間の観察や巡回の頻度を増やす。そのために夜間のスタッフを増やすなどの応援態勢を組む。
24
身体拘束回避のpoint②(2・
3)
※カッコのなかの数字は、P22とリンク
○自分で動くことの多い時間帯やその理由を究明し、対応策をとる。
(例)
・例えば、昼夜逆転が起こり、夜中に起き出そうとする場合は、日中はベッドから離床するよう促すなど、一日の生活
リズムを整える。
・昼夜逆転が起こらないよう、適切なケアと日中の適度な活動による刺激を増やしていく。(老年期は夜間排尿回数が
多いため、夜中に目が覚めて不眠となり、昼夜逆転が起こる場合や、向精神薬などにより睡眠時間が日中にずれ込む
場合などがある。)
○バランス感覚の向上や筋力アップのための段階的なリハビリプログラムを組んだり、また栄養
状態の改善を図ることなどにより、全体的な自立支援を図る。
○ベッドから転落しても骨折やけがをしないような環境を整える。
(例)
・ベッドの高さを調節し、低くする。
・ベッド脇に床マットを敷く。
・ベッドの高さや幅を認識できない場合、清潔さに配慮した上で、床に直接マットレスを敷き、その上で休んでもらう。
・弾力のある床材やカーペットを使用する。
○見守りを強化・工夫するなど、常に関心を寄せておく。
(例)
・ナースステーションの近くなど、日の届きやすいところにベッドを移動するなど見守りやすいように工夫す
る。(ただし、排せつや更衣を行うときは別室に移動するなど、場所によってはプライバシーの保護に十分
留意することが求められる。また、場所を移動することで不安や混乱を招かないよう、説明と安心できる環
境づくりを工夫する。)
・「ユニットケア」のように一定の場所で常時見守りと生活支援が行えるスタッフを要所要所に配置する。
・夜間の観察や巡回の頻度を増やし、そのために夜間のスタッフを増やすなどの応援態勢を組む。
25
身体拘束回避のpoint③(4・
5)
※カッコのなかの数字は、P22とリンク
○点滴、経管栄養等に頼らず、口から食べられないか十分に検討する。
(例)
・嚥下訓練を行いながら、1回に少しずつ口からの摂取を行い、徐々に回数を増やしていく。(誤嚥しやすい場合は食
後咳払いをさせたり、食べ物を吐かないように注意して吸引を行う。)
・食事にとろみをつける、柔らかく煮るなど・飲み込みやすい工夫をする。
・生活リズムを整えたり、食堂に連れ出したりすることで、本人の「食べたい」という意欲を引き出す。
○点滴、経管栄養等を行う場合、時間や場所、環境を選び適切な設定をする。
(例)
・点滴や経管栄養を・スタッフの日の届く場所で行う。
・処置中は会話やゲームなどをして患者の気をまぎらわす。
・点滴を入眠時間に行う。
・点滴台を利用し、いっしょに手をつないで歩くなど、利用者の動きに付き添う
○管やルートが利用者に見えないようにする。
(例)
・ルートを襟から袖の中に通してとる。
・刺入部を下肢よりとり、ルートをズボンの中に通す。
・経管栄養のチューブが視野に入らないようにするため、鼻柱にそって額にテープで固定する、又は横から出して耳に
かける。
○皮膚をかきむしらないよう、常に清潔にし、かゆみや不快感を取り除く。
(例)
・内服薬、塗り薬の使用などによりかゆみを取り除く。
・入浴の際は、皮胎を不必要に落とさないよう、石けんをつけすぎたり、皮膚をこすりすぎたりしないように注意する。
・入浴後は保湿クリームを用いる。
・かゆみを忘れるような活動(アクティビティ)で気分転換を図る。
26
身体拘束回避のpoint④(6・
7)
※カッコのなかの数字は、P22とリンク
○車いすに長時間座らせたままにしないよう、アクティビティを工夫する。
○バランス感覚の向上や筋力アップのための段階的なリハビリプログラムを組んだり、
また栄養状態の改善を図ることなどにより、全体的な自立支援を図る。
○立ち上がる原因や目的を究明し、それを除くようにする。
(例)
・不安、不快症状を解消するため、排せつパターンを把握するなど、様々な観点から評価し、原因を発見
する。(車いすに長時間同じ姿勢で座っているため、臀部が圧迫されている場合、車いすの座り心地が
悪い場合、おむつが濡れたままになり不快なため何とかしようとする場合など)
・昼夜逆転が起こらないよう、適切なケアと日中の適度な活動による刺激を増やしていく。(老年期は夜
間排尿回数が多いため、夜中に目が覚めて不眠となり、昼夜逆転が起こる場合や、向精神薬などにより
睡眠時間が日中にずれ込む場合などがある。)
○体にあった車いすやいすを使用する。
(例)
・床に足がしっかりつくよう、体にあった高さに調整する。
・安定のよい車いすを使用する。
・ずり落ちないように、すべりにくいメッシュマットを使用する。
・適当なクッションを使用したり、クッションのあて方を工夫したりする。
○職員が見守りやすい場所で過ごしてもらう。
(例)
・日中は極力ホールや食堂で過ごしてもらうなど見守りやすいように工夫する。
・「ユニットケア」のように一定の場所で常時見守りと生活支援が行えるスタッフを要所要所に配置する。
27
身体拘束回避のpoint⑤(8)
※カッコのなかの数字は、P22とリンク
○おむつに頼らない排せつを目指す。
(例)
・尿意のサインの有無、排尿回数、梯尿間隔、失禁の状態などをチェックし、排せつパターンを把握した上で、適時のトイ
レ誘導を行う。
・おむつをはずし、尿取りパットのみにするなど、個人にあった排せつ方法を検討する。
・失禁があった場合は、簡単なシャワー浴などで清潔を保つ。
○脱衣やおむつはずしの原因や目的を究明し、それを除くようにする。
(例)
・肌着はごわごわしていないか、おむつの素材に問題はないか、併せつ物による不快感はないかなど原因を究明する。
・失禁の状態などから判断しておむつからの離脱が困難な場合、排せつパターンにあわせた適時のおむつ交換を行う。
○かゆみや不快感を取り除く。
(例)
・内服薬、塗り薬の使用などによりかゆみを取り除く。
・入浴の際は、皮脂を不必要に落とさないよう、石けんをつけすぎたり、皮膚をこすりすぎたりしないように注意する。
・入浴後は保湿クリームを用いる。
・かゆみを忘れるような活動(アクティビティ)で気分転換を図る。
○見守りを強化するとともに、他に関心を向けるようにする。
(例)
・看護・介護職員室の近くなど、日の届きやすいところにベッドを移動するなど見守りやすいように工夫する。(ただし、脱
衣がはじまったときや、排せつや更衣を行うときは別室に移動するなど、場所によってはプライバシーの保護に十分留意す
ることが求められる。また、場所を移動することで不安や混乱を招かないよう、説明と安心できる環境づくりを工夫する)
・「ユニットケア」のように一定の場所で常時見守りと生活支援が行えるスタッフを要所要所に配置する。
・夜間の観察や巡回の頻度を増やす。
・会話や散歩などの活動により、他に関心を向ける。
28
身体拘束回避のpoint⑥
(9・10・11)
※カッコのなかの数字は、P22とリンク
○迷惑行為や徘徊そのものを問題と考えるのではなく、原因や目的を究明し、
それを取り除くようにする。
(例)
・本人の状況や生活のリズムを把握する。
・迷惑行為や排掴につながるストレスはなかったか(スタッフの関わり方、態度や言葉づかいなど)を検証し、
不安、
不快症状を解消する。
・落ち着ける環境を整える。
○見守りを強化・工夫するとともに、他に関心を向けるようにする。
(例)
・看護・介護職員室の近くなど、日の届きやすいところにベッドを移動するなど見守りやすいように工夫する。
(ただし、排せつや更衣を行うときは別室に移動するなど、場所によってはプライバシーの保護に十分留意することが求
められる。また、場所を移動することで不安や混乱を招かないよう、説明と安心できる環境づくりを工夫する。)
・「ユニットケア」のように-定の場所で常時見守りと生活支援が行えるスタッフを要所要所に配置する。
・夜間の観察や巡回の頻度を増やす。
・話や敢歩などの活動により、他に関心を向ける。
29
どうする?①
利用者のAさんが、利用者のBさんに手を上げようとしている所を、職員のCさ
んが発見しました。Cさんの行動は素早く、実際にBさんに危害が加わる前に仲裁
に入ることができ、実際にBさんには身体的には危害が加えられることはありませ
んでした。
その後CさんがAさんに話を聞いたところ、過去の記憶からBさんだけでなくほ
かの何名かの利用者に対し、漠然とした不快感があり今日はいらだちが抑えきれな
かったとのことでした。
今日の私はよくやった!あ
とで報告しておこう・・・
Aさんとっても、Bさんとっ
ても良い方法をAさんの様子
を見ながら考えよう!
契約書にも「他人に迷惑をかけ
たら退所」とあるし、あとは自
己責任!
だれでもよいから人をつかま
えて、Aさんの様子を見てい
てもらい、直に報告!
30
どうする?②
職員のCさんは利用者Aさんの話を聞き、再発する危険を感じました。以前先輩
職員のDさんから、「暴力をふるう利用者さんを、短い期間だけど外側から鍵の掛
けられる部屋に移したことがある」と聞いたことを思い出しました。
先輩に相談はしたいけれども、相談したい先輩は今外出中だし、相談している間
にAさんが他の利用者さんに手をあげてしまうかもしれない。Aさんが完全に落ち
着いているとも言えないし、長期的に考えても不安という状況です。
Dさんは話しやすいけど、施設
長は恐いから、話しに聞いた通
りにして、Dさんが帰ってきて
から相談しよう!
Aさんとっても、Bさんとっ
ても良い方法をAさんの様子
を見ながら考えよう!
契約書にも「他人に迷惑をかけ
たら退所」とあるし、あとは自
己責任!
だれでもよいから人をつかま
えて、Aさんの様子を見てい
てもらい、他のセクションで
も責任者に相談!
31
リスクマネジメントってな
に?
とりあえず簡単に・・・(事例も簡単に・・・)
リスク-マネジメント [risk management]
予測できる危険(事故)に対して行う、予防・事後処理の管理体制
器具の点検などの管理体制
危機管理
クライシス-マネージメント
[crisis management]
予測できない危機が起きたときに行う、事後処理の管理体制
緊急連絡網などの管理体制
外来語って難しいです。普段あたりまえに使っている言葉の意味を知らなかったり
します。たとえば・・・コンプライアンス(倫理法令遵守)とか、CS(Customer Satisfaction
=顧客満足)とか。職場で使われる言葉の意味を知ることは、仕事を知ることに繋がり
能力の向上につながることです。自分だけが分かるのではなく、他者に教えられるぐら
いの知識持っているとよいですね。
32
リスクマネジメントの基本①
(リスクの把握)
まずは、下準備!!
設備・用具の把握
施設設備・施設用具・利用者の持ち物などにどのようなものがあるのか、把握!
介護の基本方針の徹底
たとえば、勤続20年の職員と入職したばかりの職員の、職務に対する基本「あたり
まえ」の内容は大きく違うはず。施設としての「あたりまえ」を統一!
利用者個々の状態の把握
利用者一人ひとりウィークポイントは異なり、それによって潜んでいるリスクもことなり
ます。アセスメントの手法・用紙・家族からのヒアリングなどを手法を駆使して、より個別
に潜んでいるリスクを正確に把握!
※利用者もしくは家族にシートを記入してもらうよりも、ほしい情報をヒアリングにて確認
するほうが、実用的。但しヒアリングを行う際の言葉遣いなどで施設そのものを評価され
でしまうこともあるので、ヒアリングスキルを磨こう!!
33
リスクマネジメントの基本②
(分析・評価)
100%はありえない!暫定版のつもりで作成
設備・用具の把握
・実際に利用者の立場にたってのロールプレイ等をして分析・評価
・定期点検の間隔を決定
介護の基本方針の徹底
・施設全体および各部署で、「日常業務の基本」をマニュアル化
・定期的な勉強会などで、繰り返しマニュアルに沿った介護の徹底
利用者個々の状態の把握
収集データを分析し、対応策を策定。個人情報保護の観点を踏まえた上で、
利用者の取り違えのないように、かつ分かりやすい場所へ対応策を格納。
34
リスクマネジメントの基本③
(対応・実践)⇒(再評価・再発防止)
再評価を繰り返すことは必ず必要!!
ヒヤリハット事例の収集
どんなに熟練の職員でも、利用者の変化、施設・設備の老朽化、などによって
「ヒヤリ」としたり、「ハット」したりすることもあるはず、職員の「たぶん
大丈夫」という意識をすて、可能な限り多くの事例を集められる体制を整備!
現行制度の見直し
マニュアル・システム等は定期的に見直しが必要!すばらしいものが出来上
がったとしても、時間の経過・法制度の改正によって必ず見直しが必要になり
ます。定期的(年1・2回)と臨時(制度の改正)に見直しを図りましょう!
利用者個々の状態の把握
ライフイベントの発生時には必ず対応策の再評価・見直しが必要。また、定
期的な見直しを設定も必須!
35
まとめ(思考枠組)
WHY(なぜ・理由)
WHAT(何に、何で、何を・客体、媒体、対象)
WHEN(いつ・時間)⇒業務等の優先順位・期間
HOW TO(どのようにして・方法)
WHERE(どこで・空間)
WHO(誰が・主体)
HOW MUCH
(いくらで・価格・どれくらい)
WHOM(誰に・客体)
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