情報社会とガバナンス

情報社会とガバナンス
歴史的経緯から
吉田寛
ガバナンス
ガバナンス=統治、共治
– 合意形成や秩序形成の仕組み、やり方
ガバメント=政府
– 近代的国家のガバナンスの中心
Q:なぜガバナンスが問題になるのか?
A:技術と社会の変化から見てみましょう
古代帝国の専制的統治
エジプト、メソポタミア、中国の古代帝国
–
–
–
–
巨大な王権の成立
農耕技術の成立と大規模な治水の必要性
権力の象徴=ピラミッド、王宮など
神
神権政治の側面
王
神官
外国人
奴隷
貴族
国民
支
配
ポリスの直接民主制
古代ギリシャ(BC500年ごろ)
– 都市国家(アテネ)
– 小規模(数万人~数十万人)
– 生産に従事する奴隷と政治、学問、軍事を受
け持つ「市民」
– 直接民主制による統治
市民
– 衆愚制?
奴隷
共和制ローマ→ローマ帝国
 ローマの統治(BC300頃からAD1500年ごろま
で)
 市民による統治=共和制
– 元老院による統治 代議制
– ローマ市民と外国人、奴隷の区別
 シーザー→アウグストゥスによる帝政の開始
– 治安と軍事のための強力な指導力、権力
– 市民の支持のもとでの帝政
中世 キリスト教、都市、荘園
ローマ帝国の解体&キリスト教の普及
– 学問、宗教は教会による統治
• 「神」とその意思を代行する教会による統治
– 皇帝権力の弱体化と都市、荘園の自治権
• 荘園:土地所有者としての領主と労働者としての
領民の契約関係
• 都市:代表者による自治 神
皇帝
– それぞれの
教会
権力は拮抗
領主
領民
都市
絶対王政
 皇帝権力の増大→絶対的王権の確立
– 都市の自治権、荘園の自治権、教会の支配力を奪う
– 原因:国家プロジェクト(十字軍、戦争、植民地獲得と
運営、学問、経済政策などなど)の必要
– 強力な王権による統治
– 「印刷技術」の普及→知識や命令の効果
– 「国民」の成立と成長→都市と農村部を合わせた「国」
の意識
王
• →フランス革命による絶対王政の終幕
• 共和制、立憲君主制、啓蒙君主
国民(教会、貴族、市民)
近代市民国家
市民革命(イギリス、フランス、アメリカ)
– 市民による政治=民主主義
– 選挙と代議制による間接民主主義
– 市民は自由と平等を保障され、政治の主体と
なる
政府
– 「市民」の範囲はしだいに拡大
国民 市民
– ジャーナリズム
– 「政府=ガバメント」
貧乏人 奴隷
女性
子供
外国人
資本主義
市民社会の成熟
– 自由競争の結果
産業革命による生産の変化 大量生産
– 帝国主義(資本家のための国家)へ
市民の分化
企業
資本家
– 持つ者と持たざるものへ
自営業 支
配
国家、企業による情報
の管理(マスコミ)
労働者
政府
国
民
社会主義
帝国主義、資本主義の是正
– 自由競争→公共の福祉
マルクス主義 社会主義
政府
高級官僚
配慮
官僚制?
パターナリズム
国民
現代社会
 市民社会と資本主義のミックス
– 市民社会:国民、選挙、政府、市場、競争
– 資本主義:企業、独占、先進国/後進国、勝ち組/
負け組み、核兵器
– 資本主義:国家戦略としての情報技術、情報産業の
振興
– 市民運動(70年代以降) 人種、女性、消費者運動
– 情報社会の成立
情報社会とガバナンス
情報技術の発達 インターネット、PC
個人による情報の発信 マスコミ以外の
チャンネル
大量生産からワン・トゥー・ワンへ
NGO、NPOの力の増大
政府、資本家の地位の相対的な低下/
情報、技術の重要性の相対的な向上
情報社会のガバナンス
(吉田のイメージ)
多くのアクターに
よる共同統治
NGOなど
コミュニティ 市民組織
リーダー
アカデミズム
有識者?
ステークホルダー
合意による舵取り
技術者
政府
専門家
自治体
企業
ジャーナリズム
営利組織
終わりに
 「ガバナンス」を考えることは、情報社会のあり
方を考えることになる。
 「ガバメントからガバナンスへ」というが、別にガ
バメント(政府)が消えてなくなるわけでも、ガバ
ナンスが新たに現れたわけでもない
 吉田の描くような「ガバナンス」が従来のガバメ
ント主導型の統治に対して優れているとは限ら
ない。
 ただし、従来型の統治システムが、情報化に対
応して多方面で見直されていることは事実。