理想的な金融市場 ◆企業と家計のポートフォリオの一致 ◆情報の非対称性の緩和 完全市場 完全情報 コストが低く一定 より効率的に直接金融を発展させるための 前提条件 →効率的市場仮説 効率的な証券市場 効率的市場仮説 情報の効率性(ファンダメンタルでの取引) →証券価格はランダムウォーク コストの効率性(コストがゼロ) 情報の効率性テスト (ウィークフォームテスト) 日経平均株価をもとに、 乱数による株価シュミレーション ※ウィークフォームテストとは、 過去の株価のみを情報とした効率性のテスト 株価シュミレーション 45,000.00 40,000.00 35,000.00 実際値 test1(ave.=20.44853) test2(ave.=0) 30,000.00 25,000.00 20,000.00 15,000.00 10,000.00 5,000.00 -5,000.00 -10,000.00 1970 1971 1972 1974 1975 1977 1978 1979 1981 1982 1984 1985 1987 1988 1989 1991 1992 1994 1995 1996 1998 1999 2001 2002 2004 0.00 単位根検定 ランダムウォーク Yt=ρYt-1+ε ρ=1=単位根=非定常性 平均株価→単位根あり 株価の階差→単位根なし ρはトレンドを持つ(非定常である)が、 εは定常であるということ。 しかし、εは平均約20で、正規分布でもない。 ランダムウォークの可能性はうすい ⇒情報効率的でない? 企業 企業側の資金調達行動 金融と企業 間接金融の機能が低下した背景には、金融機関における不良債権の問題 と、企業における過剰債務の問題があったと考えられる。 一方では、バブル崩壊に伴って、金融機関に多額の不良債権が発生した。 また、経済が不振を続けるなか、新たな不良債権が毎年発生した。このよう な不良債権の存在は、自己資本の毀損を通じて、金融機関の経営の健全 性を大きく脅かすことになった。このため、金融機関はリスク許容力を大きく 低下させることになり、設備投資等への貸出に対して慎重な姿勢をとるよう になった。メインバンクとしての機能も、金融機関がこのような困難を抱える なかで変質を遂げた。 他方で、金融機関にとっての不良債権の発生は、企業が過剰債務を抱えて いることを意味する。過剰債務の存在は、企業の経営を圧迫してきた。この ことは、金融機関からみれば信用リスクの高まりを意味するので、金融機関 からの資金調達も困難になった。このため、企業は、バランスシートの調整 を迫られることになり、設備投資等の新たな資金需要を抑制するとともに、 債務の返済を優先するようになった。その結果、借入金の減少、株式発行 の増加に結びついたと考えられる。 このように間接金融の機能低下の背景には、金融機関側の事情と企業側の 事情の両方があったと考えられる。 MM理論とは? F・モジリアニーとM・H・ミラーによる理論 完全な資本市場と完全競争市場を仮定 完全な資本市場 ・・・取引コストや法人税などが存在しない ・・・証券価格や企業に関する情報が市場参加者 に平等に知らされること 完全競争市場 ・・・価格支配力を持つ独占的な市場参加者が存 在しない 完全な資本市場で完全競争市 場になると? 企業も投資家もまったく同一の利子率で貸借可 能 将来の営業利益が同一である企業の価値は資 本構成の相違に関わらず同じになる MM理論の「無関連命題」 合理的な投資家は市場で起こり得る確実な利益 機会を見逃すことは決してない。 裁定取引がとり尽された後で、同じ営業利益を 生む企業は同一の評価を受ける 一物一価の法則 資本市場の不完全性 法人税の存在・・・負債の支払利子を費用 として差し引いた後の営業利益に課税され る 負債で資金調達することによって節税効果 節約分だけ企業価値は高まる ただし負債比率を高めると倒産の可能性 も高まる=債務超過 情報の非対称性 プリンシパル(依頼人=株主)・エージェンシー(代理人= 経営者)との間の利害不一致(利益相反) 株主が経営者の行動を何の追加的なコストなしで監視す ることは不可能 経営者のモラルハザードの存在 エクイティーファイナンスで得た資金(株式発行)株主の 目的に沿った効率的な経営にではなく傾斜の効用最大 化に使われる。 モラルハザードの発生 株主は結果的により高い収益率(資本コスト)を要求 企業価値の低下 株式発行のエージェンシー・コスト ペッキング・オーダー理論 資本市場の不完全性→MM理論の不成立 資金調達方法によって異なるコストの存在 最もコストが低いのは内部資金 機動的に利用でき契約に関わる事務経費もかか らない 次に低いのは銀行借入 エージェンシーコストは銀行のモニタリングを受 けることで低く抑えられる そして株式・社債が最も高い 現実の企業の資金調達行動 投資の推移以上に借入金は減少 株式による資金調達の増加 資金調達方法 100000000 80000000 60000000 実物投資 株式 借入金 社債 40000000 20000000 0 -20000000 19 75 年 19 78 年 19 81 年 19 84 年 19 87 年 19 90 年 19 93 年 19 96 年 19 99 年 20 02 年 -40000000 100万円 出所:財務省 法人企業統計 借入金の内訳 50000000 40000000 20000000 10000000 長期借入金 短期借入金 0 -10000000 75 19 年 78 19 年 81 19 年 84 19 年 87 19 年 90 19 年 93 19 年 96 19 年 99 20 年 02 年 -20000000 19 100万円 30000000 出所:財務省 法人企業統計 シグナルの必要性 情報の非対称性の存在 シグナル=情報を間接的に提供する指標 配当政策理論 企業の必要投資資金量の多寡に関わらず、 一定の基準で配当を支払うことを資本市 場にアナウンスする政策。 配当政策理論 一定の配当を行うの安定配当政策を行うことに よって企業の安定性をアピール 安定した企業のみ可能で、他の企業と差別化、 資金調達のコストダウンが図れる。 近年の借入による資金調達は、過去のメインバ ンク制のような恩恵は受けず、むしろ市場の信任 さえ得られれば、低コストでの資金調達が可能と なる。 また配当政策は、優良企業のみが行える手段を とれば、それ以外の企業を排除することは可 2003年 2001年 1999年 1997年 1995年 1993年 1991年 1989年 1987年 1985年 1983年 1981年 1979年 1977年 1975年 100万円 利益処分の内容 15000000 10000000 5000000 0 役員賞与 配当金計 社内留保 -5000000 -10000000 出所:財務省 法人企業統計 -50 -100 -150 1995年 1997年 1999年 2001年 2003年 1985年 1987年 1989年 1991年 1993年 1975年 1977年 1979年 1981年 1983年 250 10 200 9 8 150 7 100 6 50 5 0 1 0 配当性向 内部留保率 借入金利子率 4 3 2 出所:財務省 法人企業統計 企業の規模別 短期借入金推移 8000000 6000000 4000000 0 200万 円未満 -2000000 -4000000 5000万 ~1億円 -6000000 10億円 以上 2003年 2001年 1999年 1997年 1995年 1993年 1991年 1989年 1987年 1985年 1983年 1981年 1979年 1977年 -8000000 1975年 100万円 2000000 出所:財務省 法人企業統計 まとめ 理想はMMの理論が成り立つ状態 現状の市場に合わせるとペッキング・オーダーが成り立 つはず しかし、現状の市場ではペッキング・オーダーは崩れつつ ある 借入より株式による資金調達の増加 一方で中小企業は借入金による依存 借入金と株式がバランスよくなる状態に近づく可能性が ある 大企業は配当政策によって安価な資金調達を図ろうとす る 情報の非対称性の解消によりコストを削減できる MMの理論が成り立つ市場に近づきつつある 家計の効率的 フロー 資金超過部門から資金不足部門へ ストック (リスク回避的)リスク最小・収益最大 総じて 国債保有・株式保有の必要 フロー ・貯蓄投資差額 [98SNA] (2002年) 貯蓄超過=資金過剰 ・金融取引 [資金循環勘定フロー] (2003年) 負債超過=資金不足 →2003年98SNA 資金不足 になる可能性 大 ストック ・金融資産 1425兆円 (2003年) 貯蓄率の減少について 原因:所得の減少 (金利低下・株価低下) 貯蓄投資差額(98SNA) 貯蓄投資差額(98SNAベース) 60,000.0 40,000.0 非金融法人企業 0.0 一般政府 -20,000.0 19 80 19 83 19 86 19 89 19 92 19 95 19 98 20 01 億円 20,000.0 -40,000.0 家計(個人企業を含 む) -60,000.0 -80,000.0 年 国民経済計算確報 家計:貯蓄超過 60,000.0 40,000.0 企業:貯蓄超過 政府:投資超過 20,000.0 0.0 -20,000.0 貯蓄減少 理由 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 平 成 元 平 年 成 3年 平 成 5年 平 成 7年 平 成 平 9年 成 1 平 1年 成 13 平 年 成 15 年 0.0 収入の減少 土地・住宅購入支 出 耐久消費財(自動 車、家具、家電等) 購入費用の支出 こどもの教育費 用、結婚費用の支 出 旅行、レジャー費 用の支出 株式、債券価格の 低下 家計の貯蓄減少の原因 ・所得の低下 金融広報中央委員会「金融資 産に対する家計調査」 金融取引(資金循環勘定) 金融取引(フロー) 1000000 800000 600000 家計 民間非金融法人企業 政府 200000 Y 20 02 F Y 20 00 F Y 19 98 F Y 19 96 F Y 19 94 F -400000 19 92 F 19 90 F -200000 Y 0 Y 億円 400000 -600000 -800000 年 家計:資金不足 政府:資金不足 企業:資金過剰 日本銀行「資金循環」 今後 家計の貯蓄減少の原因 ・所得の低下 2003年 金融取引ベース 資金不足 2003年 SNAベース 資金不足(?) 2004年 雇用環境改善により、 貯蓄が戻る可能性 =資金不足 解消 金融資産(ストック)について その他 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 保険 株式 投資信託 信託 2000FY 2001FY 2002FY 2003FY 1996FY 1997FY 1998FY 1999FY 1994FY 1995FY 1989FY 1990FY 1991FY 1992FY 1993FY 国債 有価証券-(国債+株式)(投資信託+信託) 預金 現金通貨 日本銀行「資金循環」 ・預金割合増加・株式低下・保険増加 金融商品の選択基準 金融商品の選択基準 100% 80% その他 60% 商品内容が理解しやす いから 流動性 40% 20% 収益性 昭 和 昭 52年 和 昭 55年 和 5 昭 8年 和 平 61年 成 元 平 年 成 平 4年 成 平 7年 成 1 平 0年 成 13 年 0% 安全性 ・収益性:利回り+将来の値上がり ・安全性:元本保証+取扱金融機関への信用 ・流動性:現金+少額でも預け入れや引き出しが自由 理論 効率的ポートフォリオとは 証券の特徴 一資産 二資産 有効ポートフォリオ 安全資産 資産選択の分離定理 三資産 分散投資によるポートフォリオ ↓ 単一銘柄に投資するより市場リスクが 減少 株式の二つの特徴 期待収益率(縦軸) 期 待 収 益 率 A B 標準偏差=市場リス ク(横軸) O 標準偏差 A株とB株の2銘柄に投資する場合 ↓ A株とB株を組み合わせた ポートフォリオ ポートフォリオはA株とB株の関 係(相関)によって変わる 分散化の効果 ① 完全相関→リスクが減少しない ② 完全逆相関→リスクが減少、リスクがゼロ になる組み合わせが存在する ③ ① と ② の 中 間 → 現 実 的 な 相 関 <二資産のポートフォリオ> A株に100%投資する ↓ B株の投資割合を増やしていく ↓ B株に100%投資する A株とB株が完全相関する場合 期 待 収 益 率 A B O 標準偏差 A株とB株が完全逆相関する場合 期 待 収 益 率 A B O 標準偏差 完全相関と完全逆相関の中間 の場合 期 待 収 益 率 A B O 標準偏差 投資家の行動 1. 2. 3. リスク中立的な投資家→期待収益率が 最大になる証券に集中投資 リスク愛好的な投資家→最も高い収益率 が起きる証券に集中投資 リスク回避的な投資家→リスクを減少さ せるために分散投資 最適な2資産のポートフォリオ→Y 期 待 収 益 率 A Y B O 標準偏差 <三資産のポートフォリオ> 期 待 収 益 率 A D B E C O 標準偏差 効率的ポートフォリオ 期 待 収 益 率 効率的ポートフォリオ A B C O 標準偏差 トービンの発見 安全資産の存在 投資家がリスク回避的な性質を持つ ↓ 効率的フロンティアで最適な点一点が求まる リスク回避的な投資家が選択する組 み合わせ ↓ 安全資産から伸びた直線が危険資産 のみの効率的ポートフォリオ群と接す る点 <安全資産が存在するケース> 期 待 収 益 率 L H M H→安全資産とM L→借り入れ資金を もMに投資 安全資産 O 標準偏差 <資産選択の分離定理> 資産選択においてリスク・ポートフォリオの 内容は投資家の危険回避度と無関係に決 定される 問題は危険資産であるポート フォリオMのウェイト リスク回避度(高)→ポートフォリオM(低) リスク回避度(低)→ポートフォリオM(高) 理論について簡単なまとめ • 相関がある場合、分散投資 • 安全資産がある場合、安全資産へ • リスク回避度(高)→ポートフォリオM(低) 総じて 理論 :危険資産(Market portfolio)は少ない 安全資産にウエイト 現実:危険資産(株式)は少ない 安全資産にウ エイト(債券保有少ない) 資金循環:家計黒字(?) 企業黒字 政府赤字 →国債保有ウエイト を増やす必要 理由:金利の上昇→財政悪化 →クラウディングアウト 株式に関して 企業の動向 と 家計の需要 不一致 なぜなら、株式にはリスクがある。 リスクは効率的市場仮説になろうが、減らない。 しかし、売買損益を無視すれば、配当によって、収 益性と安定性は得られる→長い期間保有すれば、 一層。 家計のまとめ 効率的ポートフォリオ:家計は安全資産を好む → 国債・預金 ↑ 資金循環:政府 資金不足 <分離定理> 危険資産は分散化することによって、リスク低下 家計が長期保有として株を買い、企業が配当を増やすことで、 家計と企業のミスマッチを解消。 望まれる金融市場 企業側・・・資金調達の面からMMの定 理の状態が望ましい 家計・・・リスク、収益を把握でき、リスク に対する選考にあった資産選択でき、ど の資産選択を行ってもコストが変わらな い状態 よって完全市場が望ましい まとめ 金融市場全体として資金が、過剰主体か ら足主体へ無駄なく流れる状態であること が必要である、そのためには、家計と企業 の行動にあった金融市場であることが重 要である。 そのためには、完全市場であることが必 要である。 望まれる金融市場 企業側・・・資金調達の面からMMの定 理の状態が望ましい 家計・・・リスク、収益を把握でき、リスク に対する選好にあった資産選択でき、ど の資産選択を行ってもコストが変わらな い状態 よって完全市場が望ましい まとめ 家計と企業のポートフォリオを一致を実現 できる市場が重要であり、家計と企業の行 動にあった金融市場であることが重要であ る。 そのためには完全市場であることが必要 である。
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