石山 亜弓

0807
適応制御に基づく
真空モータの能動騒音制御
Active noise control of vacuum motor
based on adaptive control
○石山
川﨑
小林
根本
亜弓(長岡技科大)
健史(長岡技科大)
泰秀(長岡技科大)
伸治(山本電気(株))
背景
掃除機の騒音 「吸気音」「モータ音」「排気音」
翼通過周波数騒音
ステータ:固定
ロータ:時計回りに回転
モータのブレードによっ
て排出された空気が
ステータの壁に衝突する
ことで発生
背景
翼通過周波数騒音(別名:NZ音)
N:モータ回転周波数560[Hz]
Z:ブレードの枚数8[枚]
i=1,2,3…
N×Z×i=4.5[kHz], 9[kHz],13.5[kHz],…
1次
2次
3次
3[kHz]
NZ1次音→人の耳が最も聞こえやすい
3[kHz]付近の高周波数を持つ
背景
掃除機NZ音に対する対策例(実用化済)
○サイレンサを用いる手法(シャープ技報第94号, 2006)
○ファンブレードの枚数を変更することでNZ音を使用者
が聞こえやすい周波数帯域から遠ざける手法
(http://panasonic.jp/ ,2013)
掃除機NZ音に対する能動騒音制御
はまだ実用化されていない
本研究の目的
能動騒音制御を用いて,NZ音を低減すること
①開ループ制御(モータ回転信号のみを使用)
• 吸気制限を行うとNZ音が変化すること,これより騒音をフィード
バックする閉ループ制御が必要であることを示す
②適応制御(マイク出力信号も使用)
•モータ回転周波数が10[Hz]異なると制御性能が劣化する[川崎,
2013]より,現状ではNZ音の変化には対応できない
③ダクト断面の騒音・制御音分布測定
•適応制御においてマイクの位置では騒音低減効果が得られたが,
ダクト断面で均一に低減できるかを調べるために行う
開ループ制御 実験装置
L=1000
l1=660
掃除機の
ホース
消音ダクト
D=φ150
騒音
制御音
プリ
アンプ
パワー
アンプ
コントローラ
(dsPIC)
D/A
ゲイン
スピーカ駆動信号
モータ回転信号
A/D
位相
PC2
PC1
PC1で観測されたNZ1次音が小さくなるように
ゲインと位相を可変抵抗により手動調整
開ループ制御
モータ回転周波数554[Hz](このときのモータ最高回転数)
約70%低減
Control off
Control on
NZ1次音を低減することができた
開ループ制御(吸気制限)
吸引口にプレートを乗せて吸気制限を行う
同一のゲイン・位相で騒音低減が可能か検証する
プレート
φ22.5[mm]
ホース吸引口
φ40[mm]
開ループ制御(吸気制限)
NZ1次音の3次元表示
⑥
⑤
モータ回転周波数が
落ち着くまで待つ(10分程)
①制御無し(1分)
②制御有り(1分)
②①
④
③プレートを付ける
④回転周波数調節(9分)
⑤制御有り(20秒程)
③
⑥制御無し(40秒程)
吸気制限を行った場合,モータ回転周波数を同一に保っ
ても騒音制御性能が劣化した
開ループ制御(吸気制限)
騒音制御性能が劣化した原因
NZ音が変化し,最適なゲインと位相も変化し
たことが考えられる
NZ音の変化に対応するために,騒音を
フィードバックする閉ループ制御系が必要
適応制御 実験装置
騒音
制御音
プリ
アンプ
パワー
アンプ
コントローラ
(dsPIC)
D/A
スピーカ駆動信号
モータ回転信号
A/D
PC2
PC1
騒音をフィードバックし,それが小さくなるようにモータ回転信号を用
いてスピーカ駆動信号をコントローラが自動的に生成
適応制御実験結果
モータ回転周波数562[Hz]
50%低減
NZ1・2次音を低減することができた
耳や騒音計(消音ダクト出口)で低減効果が確認できなかった原因
→マイクの位置では騒音を低減できているが,ダクト断面全体で均一
に低減できていない
ダクトを伝播する音波が平面波とみなせる条件
D ≪ / 2
≪約80/2=40 [mm]
D:ダクトの直径
λ:音の波長
ダクトの直径はφ150[mm]→平面波とみなすことができない
制御音または騒音あるいはその両方の音圧振幅が断面内
で分布を持つ可能性がある
315~5000[Hz] の周波数帯域では,ダクト直径の増加と共に制
御効果が減少する
[Jeremy M. Slagley et al., 2007]
ダクト断面の騒音・制御音の音圧分布測定
実験装置
ダクト断面のあらゆる角度
で測定可能
制御音の音圧分布
MAX
NZ1次音と同じ
4.45[kHz]の音を
スピーカから出
力
断面内の円周上
の音圧を半径方
向にプロット
MIN
ダクト断面において最大点(337.5[deg])/最小点(135[deg])
で2.6 倍の差がある
NZ1次音の音圧分布
MAX
MIN
ダクト断面において最大点(337.5[deg])/最小点(67.5[deg])
で1.6倍の差がある
結言
①開ループ制御
•吸気制限を行った際のNZ音の変化に対応するために,騒
音をフィードバックする閉ループ制御が必要であることを示し
た.
②適応制御
•マイクの位置において,NZ1・2次音を低減することができた.
③ダクト断面の騒音・制御音分布測定
•両者に1.6~2.6倍の差が生じていることが分かった.
•ダクト直径φ150[mm]では,ダクト断面内で一様な騒音低減
効果を得ることは困難であることが分かった.
今後の課題としては,ダクト断面の圧力分布を一様にするた
めに,ダクトの直径をφ40[mm]未満に絞ることが挙げられる.
付録
開ループ制御(吸気制限)
制御性能劣化の原因調査
全プレート(6枚)
回転数を同一にしてもNZ1次音のPSD値が変化
する→最初に設定したゲインと位相では制御が
困難になる
NZ1次音とモータ温度の関係を調査
プレートの穴径が小さくなるほどモータ温度が高くなる
コントローラ→Microchip dsPIC30F2012
主な仕様
データ処理単位
16ビット
最高スピード
30[MIPS]
最大プログラムメモリ
12[KB]
A/Dコンバータ
12ビット
200[ksps]×10[ch]
タイマ
3[ch]
端子数
28ピン
開発言語
C言語
本研究のサンプリング時間25[μsec]
→サンプリング周波数40[kHz]
→ナイキスト周波数20[kHz]
翼通過周波数騒音のような高
周波数帯域の騒音低減を行う
には,制御系のサンプリング周
波数を高くする必要がある.
そのため,短いサンプリング時
間内で演算を完了せねばならず,
それだけ演算速度の速いDSP
が必要になる.
翼通過周波数騒音
4.5[kHz],9[kHz],13.5[kHz]
→3 次までの翼通過周波数騒
音に対応できる
適応制御 Filtered-x LMSアルゴリズム
P
1次経路
S
2次経路
Ŝ
①騒音源信号をリファレンスマイクの出力とするのではなく,
モータの回転信号r(n)とする.
②モータの回転周波数の8倍,16倍の騒音低減を行うため
に,デューティー比25%でモータ回転周波数の8倍の周波
数を持つ信号x(n)を非線形演算部Fによって生成し,これを
適応フィルタ(FIRフィルタ)の入力とする.
③周期騒音の低減が目的のため,2次経路Sを推定したフィ
ルタ Ŝ は省略する.
2次経路推定フィルタ
F
参照信号生成部
n
時刻
r(n)
モータ回転信号
x(n)
参照信号
y(n)
スピーカ駆動信号
y’(n)
制御音
d(n)
モータの騒音
e(n)
エラーマイクの信号
M 1
y (n)   hm (n) x(n  m) m 0
hm (n  1)  hm (n)  x(n  m)e(n)
P
1次経路
S
2次経路
Ŝ
2次経路推定フィルタ
F
参照信号生成部
n
時刻
r(n)
モータ回転信号
x(n)
参照信号
y(n)
スピーカ駆動信号
y’(n)
制御音
d(n)
モータの騒音
e(n)
エラーマイクの信号
hm(x)
フィルタ係数
μ
適応係数(0.000488)
M
フィルタのタップ数(32)
(m  0,1,, M  1)
e(n)  d (n)  y(n)
適応制御実験結果
モータ回転周波数420[Hz]
制御off:70.6[dB(A)],制御on:71.4[dB(A)]
制御onが0.8[dB(A)]高い結果になった
耳や騒音計(消音ダクト出口)で低減効果が確認できなかった原因
マイクの位置では騒音を低減できているが,ダクト断面全
体で均一に低減できていない
断面内の円周上
の音圧を半径方
向にプロット
平面波として伝播する場合
音圧振幅に分布を持つ場合
マイク
音
ダクト断面
ダクト断面の騒音・制御音の音圧分布測定
NZ1次音と同じ4.45[kHz]の音をスピーカから出力
ダクト断面まわりの22.5°
ごとに9[s]ずつ測定
→9[s]で3個のデータが得
られる
→この平均を音圧分布の
図にまとめる
0°のときの制御音
制御音の音圧分布測定が22.5°,9[s]ずつなのに対し,
翼通過周波数騒音の音圧分布測定は45°,72[s]ずつ行っている
時間
翼通過周波数騒音の音圧分布測定→実験時間が40分と長時間と
なり,モータが故障した
そのため,9[s]ずつにし実験時間を10分に短縮
角度
翼通過周波数騒音の音圧分布測定→45°ずつでは粗いと思われ
るので,22.5°に変更