誰でもわかる CT画像の評価

第9回マルチスライスCTセミナー 2005.10.15
誰でもわかるCT画像の評価
名古屋大学医学部保健学科
放射線技術科学専攻
市川勝弘
CTの性能(画質)評価に関する勧告,報告
報告
X線コンピュータ断層撮影装置の性能評価に関する基準(第二次勧告)
班名
医学放射線学会 CT性能評価委員会
掲載
日本医師会雑誌, 88(8), 759‐771(1989)
報告
X線CT装置性能評価に関する基準(案)
班名
日本放射線技術学会 X線CT装置性能評価検討班
掲載
日放技学誌,47(1),56-63 (1991)
報告
ラセンCTの物理的な画像特性の評価と測定法に関する報告
班名
日本放射線技術学会 ラセンCT性能評価班
掲載
日放技学誌,53(11),1714-1732 (1997)
American Association of Physicists in Medicine. Report no. 1
Phantoms for performance evaluation and quality assurance of CT scanners (1977)
CTの性能評価項目
・コントラストスケール
・空間分解能
*スライス面の空間分解能
*体軸方向の空間分解能(スライス厚)
・コントラスト分解能
*高コントラスト分解能
*低コントラスト分解能
・ノイズ
・均一性
etc
となっているが,整理すると.....
CTの性能評価項目
・コントラストスケール
・空間分解能
*高コントラスト分解能
*スライス面の空間分解能(MTF)
・ノイズ
*SD(標準偏差)の測定
*低コントラスト分解能
*ウィナースペクトル
体軸方向の空間分解能
*スライス感度分布
・均一性
etc
とした方が,わかりやすいのではないか。
コントラストスケール
水
水
200mm
空気
μ水-μ空気(0)
μ水=0.195
CS=
CT水ー CT空気
CT値単位あたりの吸収係数を求める。
しかし,最近のCTは,水0,空気-1000にほぼなっている。
ので差がない。
空間分解能(スライス面)
高コントラスト分解能
高コントラストな物体に対する分解能
よって
ノイズの影響がない場合の分解能=解像度
用途
・装置の限界の解像度を見る。
このCTは,どこまで小さいものが見えるのか。
・再構成関数の特性を見る。
この関数は,どの程度見えるものか。
高コントラスト分解能測定ファントム
アクリル円筒
エアーホール
0.3mm~2mm
アクリルCT値=約150
空気CT値=-1000
CT値差:1150
非常に高コントラストな孔が
が何ミリまですべて独立して
見えるか。
ノイズの影響がない場合の分解能=解像度
そんな状態があるの?実現できるの?
高コントラストならそういう状態なの?
シミュレーションプログラムで確認しましょう。
腹部標準関数
高分解能関数
ウィンドウ幅を最小(1or2)にしてウィンドウレベルを変化させ,
すべての孔が独立して見えた最小の径を分解能とする。
実際に表示して,評価してみる
もう一つのスライス面空間分解能測定法
ワイヤー法によるMTF測定
空間分解能(スライス面)
ワイヤーファントム
ワイヤーからPSF(point spread function)
を得て,それから
MTF(modulation transfer function)
仮想スリット
を測定する。計算が複雑。
PSF
金属ワイヤ
0.1mmφ
プロファイル
Z方向
周波数スケールの(簡易的)見方
MTFのグラフ
0.5mm
1 cycles/mm
Modulation transfer factor
1.2
Standard
1.0
1mm
0.8
Bone
MTF値は,0.5mmのものの見え方
0.6
0.4
1mm
0.2
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0.5 cycles/mm
Spatial frequency (cycles/mm)
横軸は空間周波数
縦軸はレスポンス
2mm
MTF値は,1mmのものの見え方
ワイヤーファントムによるMTF測定
ワイヤーファントム
正確なMTF測定が可能
しかし、計算が複雑
金属ワイヤ
0.1mmφ
Z方向
ワイヤーは空気中に固定する場合,機種によっては測定不可
シリンジワイヤーファントム
水
直径50mm程度の
樹脂製シリンジ
活栓
0.1mmφ銅ワイヤ(0.1~0.2mmぐらいでよい)
画像は必ずFOV50mm
程度に拡大再構成する
ワイヤー画像からのMTF測定
の実演
プログラムは,やっと更新された「ctpsf」
http://www.owari.ne.jp/~kitikawa/
まず,DICOM画像を取得する。
*装置から直接 *DICOMビュアーから
*3次元WSから(エクスポート機能)
DicomまたはDicom2メニューから
画像を読み込んだら
ワイヤー中心をクリック
DicomまたはDicom2メニュー
のprofileをクリック
Directionは,MTFを求める方向。
VANはデフォルトでOK
プロファイルが表示されたらPreparation
をクリック
画面をクリックするとクリックした
高さに赤いベースラインが移動する。
裾野のレベルと思われると位置に
したら,MTFメニューのSet-Base
MTFメニューのLpos-setをクリックして
左側の裾野の強制ゼロ化位置をクリック。
そこより左が強制ゼロ化される。
MTFメニューのRpos-setで右も同様に。
MTFメニューのMTFcalc.で,計算。
FOV,グラフのX軸のfull scaleを入力
Save-MTFで,保存。
Compare-MTFで,複数の比較が可。
MTFメニューのSave to Clipbdで,
結果がクリップボードに入るので,
Excelに貼り付けられる。
ワイヤー法での注意点
・FOVは50mm程度に拡大する
->その画像における解像ではなく,ローデータ
と再構成関数による解像度をみるため.
・極力コントラストを高くして,精度を確保
->オーバーフローに注意.
・完全な中心にはしない -> 20~30mm offsetする
・エリアシング誤差は基本的にない.
->回転しながらのデータ収集のため,検出器
にいろんなアライメントで投影される.
(ディジタル画像だが,ディジタルを意識せずに評価可能)
MTFと高コンファントム画像の関係
0.5mm
1.0
0
0.5mm
1.0
1.0
0
0.5mm
1.0
1.0
0
高コンファントムは,MTFが10%となるところがわかる。
1.0
シミュレーションで確認します
MTF測定への影響因子
・ノイズはほとんど関係しない。
(ファントムサイズに見合った線量(電流))
・電圧は,ほぼ関係しない。
・ビュー数も,ほとんど影響しない。
・再構成関数は大きく影響する。
・焦点サイズも影響する。
・周辺部では,回転速度が影響する。
・QQオフセットやフライングフォーカスも影響する。
SOMATOM VZの測定結果
AB20
AB30
AB35
AB40
番号順になっているとは限らなかった。
よってMTF測定が有用であった。
AB30
AB35
Q:どちらが高解像度でしょうか?
A. 10%ラインを引いて,交点の周波数が高い方が高解像度
中心と周辺の解像度の比較
Center
90mm off-center
解像度の位置依存性
悪い
悪い
悪い
悪い
良い
悪い
悪い
悪い
悪い
周辺部は幾何学的条件などが厳しく解像度が低下する
回転速度による周辺部のMTFの変化
Modulation transfer factor
1.0
0.8
0.75sec
0.6
0.4
0.5sec
0.2
0.0 0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
Spatial frequency (cycles/mm)
1.0
1.2
ノイズの評価
低コントラスト分解能
低コントラストな物体に対する分解能
よって
ノイズの影響を見る=ノイズが多いか少ないかを見る
用途
・装置のノイズ特性(感度)を見る。
・再構成関数の影響を見る。
低コントラスト分解能測定ファントム
円柱
2~20mmφ
周囲とのCT値差10
Z方向
CT値差10の低コントラストな物体が直径何ミリまで見えるか。
腹部CT画像
(スライス厚=5mm)
一般的には....
SD(CT値の標準偏差)
=7~10
検出する対象のCT値差
=10以上
ファントム(シミュレーション)による比較
CT値差
5
10
20
径 2
3
5
SD=5
7
SD=3
SD=8
SD=10
実用レベルのノイズでは,5mm以下の検出は難しい
CT値差10以下の検出も難しい
線量増加によるノイズ低減効果
200mA
300mA
500mA
SD=8
SD=6.5
あまり効果なし
SD=4.5
やや効果あり
2~3倍の線量の増加でやや改善される
ノイズ評価のもう一つの方法
ウィナースペクトル測定
ノイズの評価法(ウィナースペクトルにる評価)
ノイズプロファイルを得る
フーリエ変換
ウィナースペクトル
複数測定後、平均処理
Winer Spectrum の測定
200mmφ水ファントム
仮想スリット(ピクセル値平均)
走査
中心の256X256内を
複数測定後、平均
ノイズは、約1cycles/mmまでに分布
∴0.5mm以下のピクセルサイズが必要。0.5mmX512=256mm
であるので、FOVは256mm以下にするのが望ましい。
ウィナースペクトルにる評価
空間周波数とノイズ成分の関係がわかる
CTWSの使い方
DicomまたはDicom2メニューから
画像を読み込んだら
FOVなどを入力。
VANは仮想スリットのピクセル数
Clip for excelでエクセルにクリップ
ボード経由でデータを渡せる。
複数計算させたら,再描画をクリックして
何番まで表示するか決めて複数比較
表示可。
わからない所はデフォルトのままで
OK
心臓再構成のWS測定結果
心臓用
腹部
心電同期により限られたデータしか使わないために
ノイズ特性は,悪い。
SD値によるノイズの測定
矩形ROI(region of interest)
15x15ピクセル程度
水ファントム(200mmφ)
水ファントムの画像
円柱状の水ファントムをスキャンして,中心および
周辺4箇所のCT値のばらつき(標準偏差S.D.)を
測定する。
スライス厚(スライス感度分布)の測定
アルミ傾斜板によるスライス厚測定
60°
Z方向
アルミ板
横から見ると
アルミ板
スライス厚
ヘリカルCT以降はほとんど使われない。
Z方向
プロファイル
この半値幅を測る
W
スライス厚T
T=W/√3
ビーズ法によるスライス厚の測定
5cm
鉛ビーズファントム
アクリル円柱
鉛ビーズ(又は、それ以上の吸収値の物質)
直径0.1mm~0.5mm
直径はビーム幅の1/20~1/10が望ましい。
1/10の場合で、5%程度の誤差となる。
ビーズ法によるスライス厚(スライス感度)測定ファントム
支持台は、コンベンショナルのSSP測定用に
微動機構付(0.05mm間隔で微動可能)
(製作協力:旭計測)
鉛ビーズファントム
をスキャン
Z方向
画像再構成
再構成間隔:ビーム幅の1/10~1/20
FOV:30~50mm
相対値
1.0
0.5
0.0
ビーズの像の周りにROIを設定し、
ROI内平均CT値を測定
0
5
10
15
20
体軸方向位置 (mm)
横軸に寝台位置、縦軸にCT値の相対値をプロット
SSP解析プログラム「SSPANA」
(http://www.owari.ne.jp/~kitikawa)
メモ帳などのテキストエディタに画像のZ位置間隔に続いて
ビーズのCT値を入力する。データ部分を選択してクリップ
ボードにコピー。SSPANAのファイルメニューのGet-clipで
データを取得します。
ファイルメニューのCorrectでSSPの乱れを修正可。
各節点の付近をクリックするとその位置にその節点が修正さ
れる。ファイルメニューのSet-baseで,ベースラインが確定さ
れる。
・テーブルをクリック。Moveの値の入力はそのままOKする。
Z-step for clipは,そのままOK。
・FFTをクリックして,Full freq.は,周波数のフルスケール。
5mmなら0.5程度,1mmなら,1.5程度を,指定する。
Colorは,カーブの番号となるので,比較したいときは
順次増やしていく。Recon int.は無視でよい。
・再描画で,複数計算させたものを同時に表示化です。
・BANDwiは,バンド幅(band width)という値を計算させます。
代表値を計算して,数値での比較ができます。
ファイルメニュー
SaveSSPは,修正したSSPを
保存。
LoadSSPは,その呼び出し
CompareSSPは,複数呼び出して
比較。
SaveMTFは,計算させたMTFの
保存。
LoadMTFはその呼び出し。
他は,無視しておいてください。
画質評価をする上での注意点
・実験は,プロスペクティブに(計画的に)
計画性のない(レトロスペクティブな)実験
は労多くして,結果少ない。
・データどりは,気合をいれて正確に!
良いデータは,良い結果を生む。
・画質を数値などで表して,そこで終わってはいけない。
必ずその結果が実際の画像の見た目と合って
いるかをチェックすること。これはホント大事です!
ご清聴ありがとうございました。