グローバル社会を創る日本語教育: アーティキュレーション(連関)を通して

日本語教育グローバルネットワーク
J-GAP
當作靖彦
(J-GAP 統括責任者)
カリフォルニア大学サンディエゴ校
• 日本語教育グローバルネットワークとは
• アーティキュレーションとは
• J-GAPとは
日本語教育グローバルネットワークと
は
日本語教育グローバルネットワーク(GN)
• 世界の日本語教育学会9つの連携(中国、韓
国、香港、台湾、日本、アメリカ、オーストラリ
ア、ヨーロッパ、カナダ)
• 日本語教育、日本語教育研究の交流と促進
を目的
• 日本語教育国際研究大会の開催
J-GAP (Global Articulation Project)
• 日本語教育グローバルネットワークの最初の
共同プロジェクト
• 日本語教育の目標、内容の連続性(アーティ
キュレショーン(連関))を達成することにより、
世界レベルで日本語教育の質を向上させよう
とするプロジェクト
アーティキュレーションとは?
様々なアーティキュレーション
• つながり、連関、関連、接続、連接、…
•
•
•
•
•
•
教育レベル間の連関
教育機関間の連関
教育と現実社会の連関
教師養成と学校教育の連関
教育政策と実践の連関
…
J-GAPでのアーティキュレーションとは
• カリキュラムの連続性
• ある目標に向かって教育がつながりを持っ
て連続的に行われること
• 学習者が外国語を理解し、それを使ってコ
ミュニケーションを行う能力の発達に焦点
を置いた、一つの、あるいは複数のプログ
ラムの中での学習内容、カリキュラム、教
育、評価の相関関係と連続性(Lange 1988)
3つの種類のアーティキュレーション
• 横のアーティキュレーション
• 縦のアーティキュレーション
• 言語教育と関連教育のアーティキュレーション
• 全て重要である
• 留学生教育では全て関係しているであろう
横のアーティキュレーション
• 同一のプログラム、あるいは異なるプログ
ラムで同じ(ような)プロフィール、目的を
持ったクラスの間で同じ(ような)
目的、内容の教育が行われること
– 例1: ある学校の一年生のクラスに複数のセクションが
あり、複数の先生が教えている時に、クラスが同じ目
的、内容で教えられている
– 例2: 同じ町の複数の高校のクラスがほぼ同じ目的、
内容で教えられている
横のアーティキュレーション
レベル X + 1
レベル X
横のアーティキュレーション
レベル X + 1
レベル X
縦のアーティキュレーション
• 一つのプログラム、あるいは複数のプログラ
ムの中で、あるレベルと次のレベルの間で、
学習目的、内容に関連性、連続性があること
– 例1: ある大学の一年生から四年生までのクラス
が目的、内容の間に関連性、連続性を持って教
えられている
– 例2: ある地域の高校で日本語のクラスと大学の
日本語のクラスの目的、内容に関連性、連続性
がある
きれいな縦のアーティキュレーション
日
本
語
能
力
小学校
中学校
高校
大学
縦のアーティキュレーションの欠如
日
本
語
能
力
小学校
中学校
高校
大学
アーティキュレーションの欠如
• 教育の世界に長く続く問題。何度も解決が試み
られたが、なかなか解決できない問題
• 外国語だけでなく、他の教科でも問題となってい
る
• 教育の質を上げるために解決が必要な重要な
問題の一つ
• 縦のアーティキュレーションと横のアーティキュ
レーションを組織的に達成する必要
• 解決のためには、教育を組織として考える必要
アーティキュレーション欠如による問題点
•
•
•
•
•
•
•
経済的、時間的な無駄
高い目標が達成できない
学習者の動機付けを下げる
教育効果が下がる
否定的なイメージ
効果的な教育プラニングができない
……
アーティキュレーションの達成
• 日本語教育の質を向上する
• 日本語学習者の増加につながる
• 日本語教育の発展につながる
• より効率的な教育計画などの策定が可能に
なる
J-GAP(GLOBAL ARTICULATION
PROJECT)とは?
J-GAPプロジェクトの背景
• 2010年台湾国際会議シンポジウム
– 世界の幼稚園から大学で日本語を教えている教
師にオンラインで調査。日本語教育の問題点、
ニーズについて尋ねる
– 中等教育と高等教育の間のアーティキュレーショ
ンの欠如をあげる教師が多かった
– パネルディスカッションAグループ「中等教育と高
等教育のアーティキュレーション」(カナダ、ヨー
ロッパ、香港、タイ、米国)
J-GAPプロジェクトの背景
• 具体的なアクションプラン
– 長期計画を立て、世界各地でアーティキュレー
ション達成の活動
– 活動の輪を拡げ、世界レベルで日本語教育の質
を上げる
– 世界レベルで日本語教育のアーティキュレーショ
ン達成とアドボカシー(推進運動)の活発化
J-GAPの誕生!
第一次参加国
• 2011年1月開始
• 初等、中等、高等教育レベル間のアーティ
キュレーション達成プロジェクト
–
–
–
–
ヨーロッパ(英国)
カナダ(トロント地域)
アメリカ(バージニア州とその周辺)
韓国(釜山地域)
• 留学生のための日本語教育のアーティキュ
レーション達成プロジェクト
– 香港(香港大学)と日本(東京外国語大学)
第二次参加国
• 2012年1月開始
• 初等・中等・高等教育レベル間のアーティ
キュレーション確立
– オーストラリア
– 台湾
• 留学生のための国の間でのアーティキュレー
ション確立
– 中国(天津外国語大学)
– 日本(武蔵野大学)
アーティキュレーションの問題
• 各国、各地域特有の問題
– それぞれの地域、国の教育制度、国情、教育文
化、社会文化、政治的背景などと密接に結びつ
いている
– 各国、各地域で解決すべき
– 各国、各地域の解決法
J-GAPプロジェクトの目的
• グローバルネットワークに参加する各地域、
各国の日本語教育内部、ならびにこれらの地
域、国と日本国内の日本語教育の間のアー
ティキュレーションを達成するためのグローバ
ルレベルの支援システムを開発し、それをも
とに、アーティキュレーション確立を支援する
• Think Globally, Act Locally (世界レベルで
考え、地域レベルで行動!)
J-GAPプロジェクトの活動
• アーティキュレーション確立のための戦略立案
• モデル地区・モデル校の選定
• モデル地区・モデル校での活動(人的リソースのリク
ルート、計画立案、計画の具体化、実施)
• アーティキュレーション確立のための具体的活動実
施
• 日本語教育のアドボカシーの活発化
• 国際交流基金から助成金
アーティキュレーション確立の第一歩
• 地域の異なる学校・レベルの教師たちの話し
合い
• それぞれの学校・レベルの教育目標、教育内
容を共有
• 同じ物差しで達成目標(能力目標)を提示
• JFスタンダード、CEFR, ナショナルスタンダーズ
などの基準
• 国際交流基金「みんなのCan-doサイト」の利
用
留学生教育における
アーティキュレーション
外国
• 日本語
教育
• 専門教
育
外国語としての
日本語教育
日本
• 日本語
教育
• 専門教
育
第二言語としての
日本語教育
外国
• 日本語
教育
• 専門教
育
外国語としての
日本語教育
留学生教育における
アーティキュレーション
• 教育制度、学校制度、教育文化、学校文化
の違いを超えて、いかにアーティキュレーショ
ンを達成するか
• 一つのプログラムに多くの異なる国の異なる
プログラムから学生が来る中で、いかにアー
ティキュレーションを達成するか
• ほかのプログラムとののアーティキュレーショ
ンだけでなく、個々のプログラム内のアーティ
キュレーションも重要
留学生教育における
アーティキュレーション
• アーティキュレーションを達成するのには時
間がかかる
• 時に、進歩が全く見えないことがある
• しかし、アーティキュレーション達成の努力を
やめてはいけない
• 最適の学習環境を与えるのは教育者の責務
である