「でたらめさ」をキーワードに 自然を探るセミナー 基礎(前期)&応用(後期) 輪湖 博 1 まずは、履修上の注意 本セミナーでは、数学という言葉を通して自然を捉え るとはどういうことか、を学びます。 文系学生を対象とし、高校で習った数I、数II、数A、 数B程度の数学を使います。とはいえ、興味はある が数学は苦手、という学生もたくさんいるので、数学 の使用は最小限に抑えながら進めます。しかし、数 学に拒否反応のある人には向かないでしょう。理系 学生も参加可能ですが、こうした趣旨で行うことを了 解の上で履修してください。 前期、後期通年で履修することを強く希望します。 2 何が問題か! 3 自然は数学の言語で書かれている ガリレオ 自然はしばしば、単純で、美しい形の数式で 記述されます。それは自然科学の一つの魅 力です。 しかし、自然の本質は数学的に単純で、美し いものであるはずだ、でなければならないと いう思い込みの中で捉えようとしている側面 はないのでしょうか。 4 神はサイコロを振らない アインシュタイン 未来を予測することは、科学に課せられた使命の一つで しょう。しかし実際には確率的にしか予測できない事が たくさんあります。それは単純に、科学がまだ未熟だから なのでしょうか。 本質的に確率的に扱うしかない、あるいは本質的に予 測不可能な出来事はないのでしょうか? 予測が可能であるためには、事が起こるための法則を 知る必要があります。それでは、法則を知りさえすれば、 われわれは予測が可能であり、物事を理解できるでしょ うか? 5 (物事を理解するためには)検討しようとするもろもろ の難問の一つひとつを、できるだけ、またそれらをより よく解決するために必要なだけ、多数の小部分に分割 することが必要である デカルト さらにデカルトは続けます。「もっとも単純でもっとも 認識しやすいものから始めて少しずつ、いわば段 階を追うてもっとも複雑なものの認識に至る」と。 でも、部分と全体の関係はそう単純ではありませ ん。 「全体は部分の総和以上である」ともいいます。 部分が理解できても、必ずしも全体が理解できな い出来事にはどんな特徴があるのでしょうか? 6 普遍性と多様性 見た目多様な現象を一つの法則で普遍的に説明 する、これもまた自然科学の魅力の一つでしょう。 ニュートンの運動の法則はその典型といえます。 地球上のすべての生物がDNAを遺伝情報物質と してもつ、したがって、DNAを通して生命を理解す る、というのもまた生命の普遍的な描像を得るため のアプローチの仕方です。 しかし、多様な生物種が存在し、同じ種の中にも多 様な個体がいる、ということに意味はないのでしょ うか? 7 いろいろと難しそうな問題を提起してきました。 でも、実際には、具体的で、やさしい問題をとりあ げ、それを履修者の皆さんに調べてもらい、報告 してもらいながら、勉強していきます。できるだけ 幅広い話題を取り上げたいと思います。一つひと つの話題は、それなりに興味をもっていただけると 思います。しかし、決して、単に新たな知識を習得 することだけが目的ではありません。その根底に はこうした自然をいかに捉えるかという問題意識 があることを常に意識しながら、セミナーを進めて いきたいと思っています。 8 以下には、取り扱う予定の話題からいく つか、タイトルと関連した図を示します。 いったい何だろう、と興味をもったら、ぜ ひこのセミナーを受講してください。 9 ニュートンは、虹が7色であることと、音 階がド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シの7音から なることとは関連があると考えました。 ケプラーは、(当時知られていた)惑星が、 水星、金星、地球、火星、木星、土星の6 個であることと、正多面体が5種類しかな いことと関係があると考えました。 なぜでしょうか? 10 黄金比 この北斎の絵には、黄金比と呼ばれる比をもった 長方形と正方形が組み合わされています。それが この絵の美しさの秘密だというのですが、、、 11 フラクタル とても奇妙な図ですね。でも、とても 単純な式を使って描くことができます 12 1/fゆらぎ 等間隔 1/fゆらぎの間隔 壁紙にするなら、どちらがいいですか? 13 エントロピー 物理学に、エントロピーという言葉が出てきます。 ランダムさの程度を表す量だと教科書には書いて あり、そのエントロピーは日々増大する(エントロ ピー増大則)とあります。しかも、何者もこの法則か らは逃れられないそうです。 私たちの身体も自然の一部です。だから、日々、ラ ンダムさが増しているのでしょうか。それとも、生命 は物理学では説明しえない別物なのでしょうか? 14 進化 生物の進化というと、単純な生物から、ヒトのような 高等な生物が誕生してきた歴史と思っている人が 多いかと思います。ダーウィンの自然淘汰説によれ ば survival of the fittest、すなわち最適者が生き 残った結果そうなったというわけですが、木村資生 さんは、1960年代終わりに、survival of the luckiest、運のいいやつが生き残ったという側面も あることを理論的に示し、最近のゲノム研究もそれ を裏付けています。 進化における必然と偶然とは。そして、そもそも進 化とは何なのか? 15
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