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パワーポイント版
第2部
今日からできる禁煙医療
神奈川県内科医学会
禁煙指導ツール作成委員会 編
平成19年5月
神奈川県内科医学会編
『禁煙医療のための基礎知識』
中和印刷株式会社発行
http://www.chuwa-p.co.jp/kinen1.htm
2,000円(税込)
【1】禁煙医療の心構え
森川起代巳作画
禁煙指導の誤解

禁煙指導は禁煙を無理強いすることだ
そうではなく・・・



禁煙指導はニコチンパッチを渡すことだ
そうではなく・・・



ニコチンパッチは禁煙補助薬(自転車の補助輪)
生活指導や意欲を引き出す励ましが中心
禁煙指導は収入につながらないから無駄
そうではなく・・・



正確な知識と禁煙の必要性を伝え、可能と思われることを提案して、
応援する
達成できたことに対して賞賛し、意欲と自信を引き出す
金額に換算できない信頼を得られる
達成すれば受診者や家族に心から喜ばれる
禁煙指導は難しいテクニックが必要だ
そうではなく・・・

カウンセリング、心理療法などの技術も有効だが、基本は子供に「勉
強は必要だ」と教え、方法を教え、できればほめるのと同じ
高橋裕子『禁煙指導の本』を改変
対象は禁煙希望者だけではない

9学会禁煙ガイドライン(2005年12月)


「喫煙は“喫煙病(依存症+喫煙関連疾患)”という全身
疾患であり、喫煙者は“積極的治療を必要とする患
者”」
禁煙医療の対象はすべての喫煙者である。


禁煙意欲が上がらないのはニコチン依存症の症状。
やめるつもりがないように見える喫煙者の、心の片隅
の「やめられるものならやめたい」という気持ちを育てる
のも禁煙治療の範疇。
喫煙者の多様性を認識する


なかなか禁煙できない受診者は、「だらしない」の
ではなく「依存が強い」。
喫煙者には依存の多様性があり、すべてをカバー
できる万能の禁煙法はない。


禁煙法の適用や変更・併用は、症例ごとに柔軟に対応
する必要がある。
個人の経験に基づいて、特定の禁煙法に固執す
ると、経験が仇になる

例:自身が簡単に禁煙できた医師が「禁煙に必要なの
は意志だけ」と思いこむ
抵抗と付き合う


受診者の言葉を頭から否定しない
誤った認識には質問を返し、受診者自身に矛
盾を気づかせる
 「それはどうしてですか?」「そう感じること
についてどう思いますか?」「それは~とい
う意味ですね?」 (「質問」は重要なアイテム)
禁煙できないことを
受診者の資質のせいにしない



意志が弱いのではなく依存が強い
「禁煙は不可能」「禁煙は不必要」と感じる
のは病気の症状
意欲がないように見えても、多くの喫煙者が
「やめられるものならやめたい」と考える(現
在または将来)
禁煙医療 その他の心構え

ほめることを探す



まず始めることが大事




成果・意欲・努力など
責めても問題解決能力は上がらない
簡単な指導だけで禁煙できる軽症者が放置されているの
が問題
「指導による禁煙成功率」よりも「指導による禁煙成功数」
が重要
知識に乏しいが故にタバコに寛容な非喫煙者も禁
煙医療の対象
あらゆる機会が禁煙医療の実践の場

→次スライド
一般診療以外の禁煙医療
長谷章編集委員(藤沢市医師会)の実践







禁煙タクシー配車の依頼をしたところ、
会社:もう、禁煙車は車庫に入ってしまいました。申し訳ありません
長谷:医師会が怒ってます。いつも乗りたい時に禁煙車がないですね!!
しょうがないので、非喫煙の乗務員のタクシーをお願いします
乗務員:先生、おひさしぶりです。昨年の5月から禁煙してます
長谷:えっ、なんでですか?
乗務員:先生を3月にお乗せした時にタバコの講義をしていただき、俺っ
て、なんで体を壊すようなものに毎日お金を使っているのかと思ったら、
馬鹿らしくなって5月からずっと禁煙してます。ありがとうございます。先
生のおかげです
長谷:タクシーに乗るたびにタバコの話をするのですが、実際にやめたの
はあなたで2人めですよ!
【2】日常診療での禁煙医療
森川起代巳作画
日常診療での禁煙指導の重要性



禁煙指導を含む禁煙医療は一部の専門外来だけ
ではなく、かかりつけ医の禁煙のアドバイスが非常
に大切である。
医師が日常診療において短時間の禁煙のアドバイ
スをするだけで、しない場合に比べ禁煙する喫煙者
の割合が2~3%増加する。
日本のすべてのプライマリケア医が日常診療で出
会う患者のすべてに禁煙を勧め、そのうち数%が医
師の勧めをきっかけに禁煙すれば、社会的インパク
トは専門外来よりも大きい。
日常診療での禁煙指導のインパクト
大
難
専門外来などでの個別指導
1000人×100人×50%=5万人
効
果
禁煙教室などでの集団指導
ア
ク
セ
ス
一般外来などでの短時間の指導
小
10万人×100人×5%=50万人
易
米国医療研究品質局(AHRQ)
プライマリケアのための禁煙治療ガイドライン(5A)
Step1
Ask(尋ねる)
すべての患者に喫煙の有無を聞く
Step2
Advise(助言する)
すべての喫煙者に対して、「強く」「はっきり
と」禁煙を促す
Step3
Assess(評価する)
Step4
Assist(支援する)
禁煙の意欲や依存度を調べ、意欲が低け
れば高める
Step5
Arrange(調整する)
具体的な禁煙の方法を伝授し、教材や薬
剤を提供する
生じた問題点を検討して、対策を立てる
禁煙における行動変容のステージ分類
禁煙に対する意識
禁煙に関心がない
6ヶ月以内に禁煙するつもりはない
Prochaska
前熟考期
中村
無関心期
関心期
6ヶ月以内に禁煙するつもりだが、
1ヶ月以内に禁煙するつもりはない
熟考期
1ヶ月以内に禁煙するつもり
準備期
準備期
禁煙して6ヶ月以内
実行期
実行期
禁煙して6ヶ月以上
維持期
維持期
受診者のステージに合わせたアプローチが必要
神奈川県内科医学会『禁煙医療のための基礎知識』
行動変容の重要度-自信度モデル
行動変容
(禁煙)
大
重要だと思うが、 重要だと思うし、
自信がない
自信もある
重
要
度
重要と思えず、
自信もない
重要と思えない
が、自信はある
小
小
自信度
大
受診者の状態に合わせたアプローチが必要
松下, 治療87:1941-1946,2005.
米国医療研究品質局(AHRQ)
禁煙の動機強化のための5つのR
Relevance
(関連)
Risks
(疾患リスク)
Rewards
(報酬)
Roadblocks
(障壁)
Repetition
(反復)
個人的な問題と関連づける
疾患・家族・趣味・結婚・妊娠・出産‥
疾患リスクをはっきり示す
種類・大きさ・予後‥
禁煙のメリットに気づかせる
健康・お金・時間・運動能力‥
禁煙への障壁を確認させる
離脱症状・タバコの効用‥
機会を捉えて動機づけをくり返す
回数・人数・場所‥
【3】禁煙外来開設の手引き
森川起代巳作画
開設準備

予約外来



あったほうがいい物品




初診時にまとまった指導時間(30~60分)が必要
生活指導、服薬指導、心理療法は医師以外のスタッフでも可(看護師、
薬剤師、臨床心理士など)
ニコチンパッチ
呼気CO測定器(保険診療では必須)
予約簿、問診票、生活指導用パンフ
広報


待合室用掲示、案内チラシ(受付、一般外来)
「禁煙指導」の広告可能(2001/4・厚生労働省告示第19号)


「予防接種」「乳幼児検診」などと同様に「禁煙指導」を医業広告に含める
ことができる(「禁煙外来」は不可)
簡単に登録できる禁煙外来リスト


ノバルティス社 http://www.e-kinen.jp/
禁煙マラソン http://kinen-marathon.jp/
9学会合同禁煙ガイドライン
2005年12月発表




タバコを吸うのは、ニコチン依存症と関連疾患からなる「喫煙
病」
喫煙者は積極的禁煙治療を必要とする「患者」
医師・歯科医師は、タバコを吸わない社会習慣の定着を目
指して指導性を発揮すべき
医療従事者が行うべき禁煙治療


日常診療での禁煙治療
集中的禁煙治療





薬物療法
行動療法
禁煙政策への積極的関与
禁煙環境の整備
Circulation Journal 69, Supple IV, 1005-1103.
喫煙防止教育
http://www.twmu.ac.jp/DNH/byouki/index.html
日本循環器学会、日本呼吸器学会、日本小児科学会、日本産婦人科学会、日本口腔外
科学会、日本公衆衛生学会、日本心臓病学会、日本肺癌学会、日本口腔衛生学会
中央社会保険医療協議会での議論

保険適用に賛成する意見





保険適用に反対する意見


ニコチン依存症はICD-10、DSM-IV-TRで疾患と認定されている
米英加などですでに保険診療が実施されている
アルコール依存症、肥満症に保険診療が行われている
将来の喫煙関連疾患を抑制する
禁煙治療の効果を疑問視 ← JTの間接的な圧力?
結論


限定的な実施
 2006年4月より薬剤費除外でスタート → 6月より薬価収載
 施設:敷地内禁煙(賛成派と反対派の利害一致?)
 対象:依存症スクリーニングテスト、積算喫煙量で制限あり
 回数:スケジュール固定の計5回
毎年7月に治療の結果報告を義務づけ、2年後に再評価
 呼気一酸化炭素濃度検査にて判定
厚生労働省健康局長通知
「診療報酬の算定方法を定める件」等の改正等について
2006年3月6日・保発第0306012号

ニコチン依存症管理料の新設




対象患者(以下の条件をすべて満たす者)




TDS(タバコ依存スクリーニング)で依存を診断 (全喫煙者の54%が陽性)
ブリンクマン指数(1日本数×年数)200以上(若年者は困難)
標準手引書での治療に文書で同意(日程通り5回の通院を確約)
施設基準





初回(1週目)
230点
2、3、4回目(2、4、8週目) 184点
5回目(最終回)(12週目) 180点
経験医師(非常勤でも可、経験の程度は記載なし)
専任の看護職員(看護師又は准看護師、専従でなくても可)
呼気一酸化炭素測定器(薬事法承認番号のある機種)
医療機関の敷地内禁煙(屋外喫煙所不可)
算定要件


禁煙成功率を地方社会保険事務局長へ報告(毎年7月)
初回算定日から1年を超えないと再算定不可
TDS(タバコ依存スクリーニング)
「はい」5項目以上でICD-10定義のニコチン依存症
(感度95%、特異度81%とされているが・・・)
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
自分が吸うつもりより、ずっと多くのタバコを吸ってしまうことがありますか?
禁煙や節煙(本数を減らす)を試みてできなかったことがありますか?
禁煙や節煙でタバコが欲しくてたまらなくなることがありましたか?
禁煙や節煙で次のどれかがありましたか? (イライラ、神経質、落ち着かな
い、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手の震
え、食欲増進、体重増加)
上の症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか?
重い病気にかかって、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありま
したか?
タバコのために健康問題が起きていると分かっていても吸うことがありました
か?
タバコのために精神的問題が起きていると分かっていても吸うことがありま
したか?
自分はタバコに依存していると感じることがありますか?
タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何回かありました
か?
禁煙や節煙を試みた経験のない者や、ニコチン依存症の病識のない者は拾えない
呼気一酸化炭素測定器
マイクロスモー
カーライザー
piCOスモーカーラ
イザー
マイクロCOモニ
ター
原田産業
03-3213-8271
原田産業
03-3213-8271
セティ
03-3403-7343
165,000円
145,000円
148,000円
広く使用されてい
る
USBケーブルでPC
へデータ転送
オプションでPCへ
データ転送

禁煙の動機づけや禁煙時の身体変化自覚に有効


一般外来でも有用
受動喫煙、呼気水素ガス、機器誤動作による偽性数値上昇もある

禁煙継続の評価は総合的に行う
実施開始時提出書類

(別添2)特掲診察料の施設基準に係
る届出書


(様式8の1)ニコチン依存症管理料に
係る届出書添付書類




担当医氏名
選任看護職員氏名
呼気一酸化炭素測定器の機種名
(様式4)[禁煙治療]に勤務する従事
者の名簿


[ニコチン依存症管理料]と記入
職種、氏名、常勤非常勤の別、専従非専
従の別、勤務時間
以上を正副2通提出
別添2
用紙は日本禁煙学会HPからダウンロード可
http://www.nosmoke55.jp
実施開始時提出書類

(別添2)特掲診察料の施設基準に係
る届出書


(様式8の1)ニコチン依存症管理料に
係る届出書添付書類




担当医氏名
選任看護職員氏名
呼気一酸化炭素測定器の機種名
(様式4)[禁煙治療]に勤務する従事
者の名簿


[ニコチン依存症管理料]と記入
職種、氏名、常勤非常勤の別、専従非専
従の別、勤務時間
以上を正副2通提出
様式8の1
用紙は日本禁煙学会HPからダウンロード可
http://www.nosmoke55.jp
実施開始時提出書類

(別添2)特掲診察料の施設基準に係
る届出書


(様式8の1)ニコチン依存症管理料に
係る届出書添付書類




担当医氏名
選任看護職員氏名
呼気一酸化炭素測定器の機種名
(様式4)[禁煙治療]に勤務する従事
者の名簿


[ニコチン依存症管理料]と記入
職種、氏名、常勤非常勤の別、専従非専
従の別、勤務時間
以上を正副2通提出
様式4
用紙は日本禁煙学会HPからダウンロード可
http://www.nosmoke55.jp
毎年7月提出書類

(別紙8の2)ニコチン依存症管理
料に係る報告書



管理料の初回点数を算定した患者数
12週計5回の指導を終了した患者数
うち禁煙に成功した患者数




5回終了時点で4週間以上の禁煙を継続
呼気一酸化炭素濃度測定によって禁煙
を確認
うち禁煙に成功しなかった患者数
成功率(成功者数/初回点数算定者数)
別紙8の2
用紙は日本禁煙学会HPからダウンロード可
http://www.nosmoke55.jp
禁煙治療のための標準手順書



2006年3月発表
2007年1月改訂
下記HPからダウンロード可能(同じ
もの)
日本循環器学会
http://www.j-circ.or.jp/
 日本肺癌学会
http://www.haigan.gr.jp/
 日本癌学会
http://www.jca.gr.jp/

標準手順書の内容



初診の手順
2~5回目の診療の手順
帳票

禁煙治療の概要説明資料


禁煙治療に関する問診票







スケジュール・料金等の説明用
喫煙の有無
喫煙量と喫煙年数
禁煙への関心
TDS
同意署名
禁煙治療問答集
ニコチン製剤の使い方
診療のスケジュール
診察
初診
禁煙開始
↓2週間
2回目
検査
ニコチネル処方(標準)
呼気CO検査
TTS30×14枚+α
← できれば禁煙開始1週間目の臨時再診
呼気CO検査
TTS30×14枚+α
呼気CO検査
TTS20×14枚+ TTS10×14枚
↓2週間
3回目
↓4週間
4回目
呼気CO検査
↓4週間
5回目
【呼気CO検査】
禁煙開始困難者には1~3日おきの臨時再診が非常に有効
標準手順書記載の診療手順

初診
保険診療の適用判定
 呼気一酸化炭素測定
 禁煙開始日の決定
 問題点の把握とアドバイス(問答集)
 ニコチン製剤の適用判定と使用説明
 次回受診日の決定
再診
 喫煙状況等の問診 評価
 呼気一酸化炭素測定
 問題点の把握と検討(問答集)
 ニコチン製剤の使用状況確認と継続の相談
 次回受診日の決定


算定方法(1)

初診




初診料:270点
ニコチン依存症管理料1回目(230点)
薬剤費:ニコチネルTTS(355.8~401.8点)×(日数+α)
処方料+調剤料+調剤技術基本料(月1回)+薬剤情報
提供料(月1回)


院外処方では処方せん料
再診




再診料(+外来管理加算)
ニコチン依存症管理料2~4回目(184点)、5回目(180点)
薬剤費:ニコチネルTTS(355.8~401.8点)×(日数+α)
処方料+調剤料+調剤技術基本料(月1回)+薬剤情報
提供料(月1回)

院外処方では処方せん料
算定方法(2)

臨時再診(5回の管理料算定日の間)

以下のいずれかで算定

ニコチン依存症の保険診療
管理料なしで再診料のみ(+外来管理加算)
 患者の都合による(レセプトにコメントが必要かも知れない)
→ニコチネルTTS処方(おそらく)可能


他疾患の保険診療
再診料(+外来管理加算)のみ
 例:気管支炎 皮膚炎 糖尿病
→ニコチネルTTS処方不可



電話再診でも算定可
5回の保険診療終了後の診療

以下のいずれかで算定

ニコチン依存症の自由診療
初回管理料算定日から1年間は保険の禁煙治療不可
→ニコチネルTTS処方可能


他疾患の保険診療
保険診療後1~2回のフォローアップが必要なときなど
→ニコチネルTTS処方不可


電話再診でも算定可
患者負担(標準的薬剤使用・3割負担)
 1回目:初診料等+薬剤費2週分=約3,500円
↓ 2W ← 臨時再診(他疾患再診料=330円)
 2回目:再診料等+薬剤費2週分=約3,000円
↓ 2W
 3回目:再診料等+薬剤費4週分=約4,500円
↓ 4W
 4回目:再診料等=約900円
↓ 4W
 5回目:再診料等=約900円
合計 約13,000円
処方の注意点

ニコチネルTTS(ニコチンパッチ)の処方

新規薬価収載薬品であっても1回処方量制限なし


10週を超えて連続投与不可



能書に記載あり
能書上の禁忌例には使用不可


自由診療での実績があるため
妊婦、授乳婦、不安定狭心症、急性期の心筋梗塞や脳梗塞など
院外処方せんには「ニコチン依存症管理料算定に伴う」
と記載
ニコレット(ニコチンガム)を使用する場合

OTCなので、使用法、使用個数などを説明した上で、受
診者に町の薬局で購入するよう指示する
その他保険診療の注意点


病名は「ニコチン依存症」
途中で治療中断 → その回まで請求可、ただし、7月提出の
報告書では「不成功例」として扱う



電話等で禁煙継続が分かっていても、受診して呼気測定で禁煙継
続を確認しない限り「不成功例」になる
レセプト適用欄に初回管理料算定日を記載
すでに禁煙を開始してから初診を受診した者でも、医師の
判断で「ニコチン依存症」と判定できれば保険診療可



2006年12月日本禁煙科学会学術集会における厚生労働省保険局
医療課主査の公式発言として
DSM-IV-TRの定義でも、物質依存から寛解したと見なすには1ヶ月
以上の離脱状態が必要
標準手順書添付の初診時問診票では、前喫煙者の禁煙期間は1ヶ
月単位で記入するようになっていて、1ヶ月未満は喫煙者と見なされ
る
保険適用の社会的意義

ニコチン依存症という保険病名の誕生





社会一般および医療関係者の意識変化
禁煙支援者の増加
禁煙治療の標準化
医療機関敷地内禁煙化の促進
報道などによる話題性

禁煙のきっかけ
自由診療


保険の施設基準を満たした医療機関でも必要
絶対的適用




医療機関が施設基準を満たさない
受診者が適用要件を満たさない
保険診療の期間を超える診療
相対的適用

保険の日程に従わないきめ細かい診療が好ましいと判断
されるとき



自信の十分でない方
精神疾患を治療中の方
妊婦、授乳婦など使用禁忌である症例にインフォームド
チョイスとしてニコチンパッチを使用する場合
→ メリット・デメリットを説明し、自由意志で選択していただく
自由診療のメリット・デメリット
(受診者から見て)

メリット




きめ細かい日程調整が可能
期限を気にせず治療計画が立てられる
自費での支払いが禁煙動機を強化する場合もある
デメリット

禁煙の障害を過大評価する受診者には敷居が高い


タバコ代を払い続けるより安上がりなのに高いと感じるのは、禁
煙できない理由を探してしまう依存症の「認知の歪み」
出費の比較を図示して認知を修正するのも治療の一環


医療機関の儲け主義と誤解する人がいる


次スライド
自由診療の方が医療機関の収益が少ないことを説明する
他疾患の保険診療と同日に行うと混合診療になる可能性
がある

パッチかぶれに対処する外用薬などは保険で処方できない
自由診療の費用
1日1箱
1日2箱
自由診療
\90,000
\60,000
\30,000
月
4ヶ
月
3ヶ
月
2ヶ
目
6週
目
4週
1週
2週 目
目
\-
初診料3000円、再診料1000円×6回、パッチ430;400;380円として
入院患者への禁煙治療

療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いに
ついて





(2005/9/1・保医発第0901002号)
ニコチンパッチの処方は、予防接種、診断書作成などと
同等で、「治療と直接関係ないサービス」とすることができ
る
妥当な値段であり、十分な説明を行って、内容の区別で
きるの領収書を発行すれば、保険診療と同時に処方を
行っても混合診療とは見なさない
薬剤費のみ請求でき、指導料は請求できない
訂正


(2006/9/27・保医発第0927001号)
スクリーニングテストを実施してニコチン依存症と判定さ
れなかった場合に限る
【4】禁煙外来における初回面談の手順
森川起代巳作画
初回面談の手順(1)
受診者の緊張を解く

笑顔で迎える
自己紹介
 アイスブレイキング


緊張を解くための前置きの会話;天気、交通、待ち時
間など(非常に重要)
これまでの禁煙経験を共感的に評価
 禁煙方法を指導する外来であって、禁煙を強制
する外来ではないことを伝える

初回面談の手順(2)
状況の把握
(問診票を使うと取りこぼしがなく時間の節約になる)

保険適用条件


喫煙状況


喫煙量、初回喫煙年齢、過去の禁煙経験、呼気CO
今回の禁煙


TDS、ブリンクマン指数、即座の禁煙意思、日程
受診の動機、自信
関連因子



身体的依存度(FTND)、心理的依存度(KTSND)
家族の喫煙
既往歴、治療中の疾患、服用中の薬
ファガストローム式ニコチン依存度テスト(FTND)
間1 起床から最初の喫煙までの時間は?
5分以内……3点
6~30分……2点
30~60分……1点
1時間以上…0点
間2 禁煙場所でたばこを我慢することがつら はい…………1点
いいえ………0点
いですか?
間3 一日の中で一番やめたくない一服は?
朝一番の一服…………1点
その他の時間の一服…0点
間4 一日に吸う本数は?
31本以上……3点
21~30本……2点
11~20本……1点
10本以下……0点
間5 起床後、1時間に吸う本数が残りの1日
の本数よりも多いですか?
はい…………1点
いいえ………0点
間6 病床にいても、たばこを吸わずにいられ
ませんか?
はい…………1点
いいえ………0点
0~3点:軽度
4~6点:中等度
7~10点:重度
加濃式社会的ニコチン依存度テスト KTSND(Ver.2.1)
30点満点(10点以上は心理的依存あり)
質問
回答 得点
1
タバコを吸うこと自体が病気である
そう思う(0) ややそう思う(1) あまりそう
思わない(2) そう思わない(3)
2
喫煙には文化がある
そう思う(3) ややそう思う(2) あまりそう
思わない(1) そう思わない(0)
3
タバコは嗜好品(しこうひん:味や刺激を楽しむ品)であ
る
同上
4
喫煙する生活様式も尊重されてよい
同上
5
喫煙によって人生が豊かになる人もいる
同上
6
タバコには効用(からだや精神に良い作用)がある
同上
7
タバコにはストレスを解消する作用がある
同上
8
タバコは喫煙者の頭の働きを高める
同上
9
医者はタバコの害を騒ぎすぎる
同上
10
灰皿が置かれている場所は、喫煙できる場所である
同上
神奈川県内科医学会『禁煙医療のための基礎知識』
初回面談の手順(3)
状況の評価

他疾患の治療要否



禁煙の促進要因



喫煙関連疾患、受動喫煙関連疾患(本人、家族)
結婚、妊娠、出産、家族の禁煙、家族の応援、職場の禁
煙化
禁煙の阻害要因



検査や専門科相談
不安定な疾患の治療先行を検討
各種精神疾患
家族の喫煙、喫煙を容認する職場
心理的依存の病態査定



タバコの効用に関する認知
禁煙の障害に対する認知(欲求不満耐性)
認知の絶対論性(非合理的信念)
初回面談の手順(4)
必要な治療の見極め

禁煙に適した時期



至近の宴会の有無、仕事の繁忙期か否か
受診継続の可否
禁煙法・禁煙指導法の選択


ニコチンパッチの適用と禁忌の確認
保険診療と自由診療の選択


受診間隔や期間
適した心理的アプローチ

励まし、受容や共感、認知の再構成、医学知識の啓発など
初回面談の手順(5)
知識の共有

知識の解説




依存のメカニズム
ニコチン置換療法の意義
節煙や軽いタバコの害
質問により受診者自らに気付かせる




喫煙は嗜好でも習慣でもない
タバコにストレス解消作用はない
禁煙のメリット
禁煙の最大の障害は「禁煙の障害を過大評価する心理」
リセット禁煙法は、上記を構造化面接シナリオにまとめた
治療パッケージ
初回面談の手順(6)
目標の設定と実行方法の相談

スタート日設定




ニコチンパッチの使用法


禁煙グッズ、喫煙具処分、生活パターン見直し
禁煙中のアドバイス


パンフレット「今日から始める禁煙生活ガイド」参照
準備指示


受診日の翌日が一般的
仕事中の喫煙量多ければ週末開始
仕事の都合や宴会などによって調整
パンフレット「今日から始める禁煙生活ガイド」参照
禁煙促進因子の利用

パンフレット「あなたの禁煙を望んでいるご家族にお見せ下さい」参照
初回面談の手順(7)
次回予約、処方

次回の予約





ニコチンパッチ処方



ニコチネルTTS30を次回処方予定日まで分+α
身体的依存度や体重によってTTS20も考慮
紹介状、紹介状の返信


予約によって禁煙と次回受診の意欲が高まる
初回は1週間かそれ以内
経過の如何を問わず受診するよう促す
ピンチのときは予約日以外でも連絡して受診するよう指
示
経過報告、情報提供依頼、禁煙の応援依頼、薬物投与
量調整依頼
励まして笑顔で見送る
【5】禁煙外来における2回目以降の
面談の手順
森川起代巳作画
再診時面談の手順(1)
緊張を解きつつ状況を把握






アイスブレイキング
禁煙の開始や継続の状況確認
呼気CO測定
禁煙に伴うつらさやその要因
ニコチンパッチの副作用や他の身体状況
心理的依存の変化(KTSND)
再診時面談の手順(2)
賞賛と励まし

禁煙が継続している場合


成果を賞賛
禁煙によるメリットを質問で気付かせる


数本までの喫煙があった場合



身体機能回復、家族の歓迎など
思いとどまったことを賞賛
次は思いとどまれるとは限らないことを伝える
喫煙生活に戻ってしまった場合でも



受診に来たことを賞賛
再喫煙したことではなく、それまで禁煙できたことに注目さ
せる
何度でもやり直せることを伝える
再診時面談の手順(3)
障害への対処(1)

すべての障害に対して


受診者と共に克服する方法を検討
以前の指導に対する誤解や軽視をチェック


指導したことの半分も理解していないことも多い
障害を過大評価する認知の絶対化があれば、根拠のな
い決めつけであることに気づかせるための援助を行う(論
理療法→【11】禁煙指導の心理療法的側面)
 「 “耐えられない” とは実際にどんな最悪のことが起こるのです
か?」

受診者のつらい気持ちを受容的・共感的に理解して、支
持的な気持ちを素直に伝えることで、受診者自身の障害
を克服する潜在的成長能力を引き出す(来談者中心療
法)
再診時面談の手順(4)
障害への対処(2)

強い離脱症状や喫煙欲求に対して



パッチの使用法を確認
頻度の減少に気付かせる
離脱症状に対する認知を変化させる(認知療法→【11】禁煙
指導の心理療法的側面)
 「風邪が治って解熱するときの発汗と同じで、病気が治るときの
好ましい反応では?」
 「 眠っていて、タバコが吸いたくなって目が覚めてしまうことってあ
りましたか? 腹痛とか骨折の痛みとかと同じような、本当の苦
痛だったら、眠っていられないはずですよね」

禁煙に踏み切れない、本数が減っただけ


再診日までを短くする(3日、1日)
挫折への恐怖があるなら、挫折しても元に戻るだけで何
の損失もないことを理解させる

挫折をくり返すことによって禁煙が上達していく
再診時面談の手順(5)
障害への対処(3)

数本までの喫煙


喫煙生活に逆戻り


同じ状況で吸わないようにするための方法を考えさせる
前回禁煙と同じ期間(実現可能であることが証明された
期間)を当面の目標にして仕切り直す
ニコチンパッチの副作用



ニコチン過量症状 → 減量
不眠や悪夢 → 1.貼り替えている時間のチェック、2.寝
る前にはがす方法を検討、3.「今度はどんな悪夢か楽し
みにして下さい」
かぶれ → 1.抗ヒ剤、ステロイド軟膏処方、2.寝る前に
はがす方法を検討、3.ニコチンガム使用を検討

体重増加

食欲の生理学的コントロール




一口30回噛む
食事前に大量の生野菜
低カロリーの禁煙グッズに変更
認知行動療法




再診時面談の手順(6)
障害への対処(4)
1日1~4回の体重測定とグラフ化日記
空腹感に対する肯定的な認知形成:「お腹が空いているときに脂
肪が燃焼している」
食事と過食を区別:「お腹が空いていれば食べてもいい、いっぱ
いになったら食べるのをやめる、空いていなければ食べない」
数kg以内の体重増加なら、禁煙に専念



体重コントロールは禁煙が落ち着いてからでも遅くはない
2つの課題を同時にこなすのは負荷が大きい
喫煙欲求をコントロールする練習を十分につんでおけば、体重コ
ントロールにも応用できる
再診時面談の手順(7)
障害への対処(5)

急性期を越えた時点での喫煙欲求

「今日は吸いたいかな」と喫煙欲求に注意を集中
することによる喫煙欲求の遷延化→喫煙欲求へ
の注意集中を中止するよう指導(森田療法→【11】禁
煙指導の心理療法的側面)

便秘


野菜摂取、ミネラルウォーター、緩下剤
咳・痰

線毛運動の回復による場合もあるが、他の原因
が疑われるときは精査
再診時面談の手順(7)
ニコチンパッチ継続の評価

標準的にはニコチネルTTS30を4週→TTS20
を2週→TTS10を2週


離脱症状の強さによって期間や用量の調整
はやくパッチを減量・終了しようと焦る必要は
ないことを伝える
体重増加を抑制または遅延する効果
 パッチを貼っている間は、吸わない人生の練習期
間

再診時面談の手順(8)
指導の継続・終了


自由診療なら1~2週ごとフォーローアップ
自由診療なら以下の条件が揃ったときに終了





処方の終了
自力での禁煙に自信
喫煙に関する認知の歪みが消失または非喫煙者と同程
度に低下
周囲に禁煙を勧めることを提案
6ヶ月後、1年後などに連絡して、再喫煙していれば
再受診を勧める
ニコチン依存症以外の
精神疾患を持つ受診者への対応(1)

精神科主治医との連携



病態水準が高ければ高いほど面接のルール(時間枠、場所、
料金)堅持が重要



初診時に精神科主治医からの紹介状を持参してもらう
紹介状やその返事によるA-Tスプリット(管理医-治療者分業)
受診者と治療者双方を守る
ルールを堅持することによって描出される逸脱行為(行動化)が、受
診者理解の重要な手がかりとなる
より厳格な守秘意識を持つ


精神科主治医や家族への連絡、症例発表等において、十分な説明
を行い、納得の上での同意を得る
自傷他害の恐れがある場合でも、緊急時以外は原則として「守秘義
務より安全確保が優先するので連絡する」と受診者に伝えてから連
絡を行う
ニコチン依存症以外の
精神疾患を持つ受診者への対応(2)

面接中のポイント



侵襲的でない控えめな態度で接する
受診者の人格の中にある病に巻き込まれていない健全な部分に注
目して語りかける
分からないことは分からないと言い、敬意を払いつつ教えてもらう


妄想を肯定・否定せずに、妄想による苦痛や恐怖に狙いを絞って受
容的に聞き取る




支離滅裂に見えることでも案外一貫性がある
肯定すると妄想を強化し、否定すると議論になる
「○○というのはちょっと理解できませんが、それによってひどく辛い思い
をされているのは理解できます」
うつ病には励ましが原則禁忌
受診者の病態について知識が足りなければ再診までに十分
に学習する
ニコチン依存症以外の
精神疾患を持つ受診者への対応(3)

フォローアップ

密な再診日程



注意を払うポイント



初期1~3日おき
保険診療の日程では困難
精神症状再燃・増悪の徴候、自殺念慮
禁煙による向精神薬等の薬効変化
状態変化があった場合には


受診者の了解を得た上で精神科主治医と密な連絡
禁煙を先延ばしすることも考慮


「ふさわしい状況になったら必ず禁煙できる」と伝えて将来の再チャ
レンジにつなげる
「禁煙は不可能」「禁煙の必要はない」「減らすだけでいい」は禁句
ニコチン依存症以外の
精神疾患を持つ受診者への対応(4)

自殺念慮への対応

緊急性の評価





緊急対応



具体性(時間・場所・方法)について質問
方法のエスカレートがないか
抑うつ尺度(ベック抑うつ尺度など)の合計点や自殺項目点数
身動きのとれない状態悪化時よりも回復時が危険
受診者の許可を得た上で精神科主治医、家族等への連絡
管理体制の整った医療機関への紹介
面接上の対応



死のうと思う気持ちを受容して共感的に理解するが、自殺そのも
のは誤った解決法であることをはっきりと伝える
自殺念慮が病気の症状であって治療によって軽減できることを説
得
自殺をしないという約束(うつ病で特に有効)
【6】禁煙中のアドバイス
森川起代巳作画
断煙する

本数を減らしながら禁煙に到達するのは非常
に困難。
1本1本が貴重なものに感じられ、喫煙行動を強
化してしまう。
 減煙は、禁煙とは正反対の行動
 開始日からきっぱり禁煙することが大事


節煙では害は軽減しない。
喫煙は一定量のニコチンを摂取する行為。
 本数を減らしても、代償性喫煙によって摂取する
ニコチンやタールの1日総量は同等(一酸化炭素
はむしろ増加)

本数を減らすと
1本で2本分の
ニコチンを吸入
喫煙
60~90分
ニコチン摂取量は
長さと吸い方で決まる
根もと近くの葉にはニコチンが蓄積する
山岡雅顕『禁煙ドクターが教えるタバコのやめ方』を改変
深くゆっくり吸うと吸収量は20~30倍
環境の改善(1)

容易に喫煙できない環境を作る。
生活環境からタバコを排除する。
 吸い殻も含めすべて水に漬けて捨てる。
 もう一生使わないと決めて喫煙具を処分する。


喫煙とセットになった生活習慣を変える。
食後の一服→食後に食卓から離れる。
 コーヒーの後の一服→紅茶やお茶に変更。
 自動車を運転中に一服→電車通勤に切り替えて
みる。
 パチンコ・麻雀→ジョギングやスポーツジムで汗を
流す。

環境の改善(2)

再喫煙が多いので、3ヶ月間は酒席を避ける

悪条件が重なる


その酒席に出ないことによる損失を客観的に評価する



アルコールによって理性的判断困難/以前喫煙していた状況/周
囲が喫煙/同席者が喫煙を勧める
禁煙というチャレンジよりも重大なことか?
欠席することにとって社会的デメリットがあったとしても、これから
の人生にとって許容できないほど大きな損害か?
どうしても出席しなければならないときは、可能な限りの対
策を講じる

両隣を非喫煙者/思いつく限りの禁煙グッズ/パッチ卒業後でも
パッチを用意/アルコールを飲まない(「医師に止められている」、
車で行く)/早退/会場を禁煙にする
吸いたくなったときの対処法




禁煙開始後の最初の7日間はニコチンの離脱
症状が現れやすい(3日がピーク)。
喫煙衝動は多くの場合1~3分で軽減するので、
その間だけ代わりの行動をとって喫煙衝動を受
け流せばよい。
ニコチンパッチ使用の場合や、禁煙の維持期に
も、心理的依存による喫煙衝動が起こる
禁煙グッズとして使用してはいけないもの

ネオシーダー(火をつけて吸う鎮咳去痰薬として販
売)はニコチンを含有しており依存を引き起こすこと
が報告されている
ニコチンの離脱症状(禁断症状)
落ち着かない
眠くて困る
61.2% めまい
59.2% 吐き気
0.9%
0.8%
無気力
頭痛
肩こり
便秘
34.6%
17.4%
14.3%
10.5%
0.6%
0.5%
0.5%
0.4%
ふるえ
視力障害
むなしさ
痰が増える
唾液が多くなる
口が渇く
動悸
7.8% 胸が締め付けられる
3.3% 思考力低下
3.2% 口の中が熱い
0.3%
0.3%
0.3%
頭がボーっとする
不眠
1.0% もうろうとする
1.0% 腹痛
0.3%
0.3%
林高春『たった5日でできる禁煙の本』を改変
禁煙グッズ(代償行動)
有効性
安全性
使いやすさ
熱い茶
◎
◎
◎
歯ブラシ
◎
◎
△
氷
◎
○
○
細切り昆布
○
◎
○
野菜スティック
○
◎
○
ガム等
○
△(カロリー)
◎
その他:ミネラルウォーター、深呼吸、ストレッチ、散歩、
歌を歌う、音楽を聴く、「今は吸わない」と声に出して言う、
電話、顔を洗う、シャワー、入浴、寝てしまう
高橋裕子『禁煙指導の本』を改変
中・長期の指導

1本だけなら・・・の誘惑に注意
依存性薬物に「試し」はない
 1本で依存症は再発する


「まだ吸いたいかどうか」を毎日自分に問いかけ
るのをやめる
離脱症状消失後の喫煙欲求は、喫煙欲求の有無を
確認しようとする注意集中から発生する
 「吸いたくなっても、吸いたくなくても、どちらでもいい。
どちらにしても吸う必要などないのだから、吸いたい
かどうかを確認する必要などない」と考えると、吸い
たい気持ちが消えていく

【7】ニコチン置換療法の理論と実際
森川起代巳作画
9学会合同禁煙ガイドライン
2005年12月発表




タバコを吸うのは、ニコチン依存症と関連疾患からなる「喫煙
病」
喫煙者は積極的禁煙治療を必要とする「患者」
医師・歯科医師は、タバコを吸わない社会習慣の定着を目
指して指導性を発揮すべき
医療従事者が行うべき禁煙治療


日常診療での禁煙治療
集中的禁煙治療





薬物療法
行動療法
禁煙政策への積極的関与
禁煙環境の整備
喫煙防止教育
日本循環器学会、日本呼吸器学会、日本小児科学会、日本産婦人科学会、日本口腔外
科学会、日本公衆衛生学会、日本心臓病学会、日本肺癌学会、日本口腔衛生学会
禁煙補助薬
ノバルティス社HP
ニコチンパッチ(ニコチネルTTS)
医療機関で処方してもらう。
使用方法が易しく、指導とセットに
なっているため成功率が高い。
ファイザー社HP
ニコチンガム(ニコレット)
町の薬局で購入できる。
説明書をよく読まないと
使用方法を間違えやすい。
禁煙率のオッズ比(メタ分析) (Lancaster,2003)
1.75(1.57-1.94)
1.63(1.49-1.79)
なぜ、依存症の治療に
ニコチン製剤が使えるのか?

緩徐な薬物摂取では依存が起こりにくい

依存症の脳内病態であるシナプス機能不全は、ニコチン
血中濃度の急激な上昇インパクトによって発生する




麻薬性鎮痛薬の貼付剤が依存を起こしにくかったり、超短時間型
のベンゾジアセピン系薬が依存を起こしやすかったりするのも同
じ理屈
緩徐な薬物摂取によってまったく薬物を摂取しないのと同
じように、シナプスの異常が回復していく
なおかつ、低濃度の持続摂取によって離脱症状を緩和で
きる
ニコチンパッチやガムは、単に「徐々に摂取量を減
らしていく」「煙を吸う行動だけを変える」という原理
ではない
神奈川県内科医学会『禁煙医療のための基礎知識』
ニコチンパッチの規格
規格
有効面積
ニコチン
含有量
(放出量)
ニコチネル
TTS 30
30cm2
ニコチネル
TTS 20
20cm2
ニコチネル
TTS 10
10cm2
52.5mg
(21mg)
35mg
(14mg)
17.5mg
(7mg)
標準使
用期間
メーカー
推奨価
格
保険
4週間
430円
401.8円
2週間
400円
374.3円
2週間
380円
355.8円
数字はニコチン含有量でないことに注意
薬価
ニコチン置換療法の適用と限界

使用禁忌


禁忌でない限り使用を推奨




非喫煙者、妊婦、授乳婦、不安定狭心症、急性期の心筋
梗塞(発症3ヶ月以内)、重篤な不整脈、経皮的冠動脈形
成術後、冠動脈バイパス術直後、脳血管障害回復期、本
剤成分に対する過敏症など
体重増加の抑制・遅延効果
高度身体的依存に著効
軽度身体的依存でも、心理的依存が離脱症状への耐性
を低下させている場合には有効
心理的依存を解消する直接的効果はない


認知行動療法など心理的アプローチとの併用が原則
しかしニコチン置換療法自体もひとつの行動療法となる
ニコチンパッチ使用の実際

24時間貼り、起床時に貼り替える

日中に比較的高い血中濃度を維持





腹・胸・肩など
場所を毎日変える
はがれやすい下半身、体毛の濃いところ、吸収の悪い手先などは避
ける
皮膚症状(紅斑、丘疹、水疱)



不眠や悪夢が現れたり、かぶれが強いようなら、夜寝る前にはがして、
朝、新しいのを貼る
貼る場所ははがれにくく、かぶれにくいところ


入浴時に貼り替えるのは好ましくない
軽度ならはがしたあとステロイド外用
重度なら中止やニコチンガムへの転換
ニコチン過量症状(悪心・動悸など)

粘着面中央にテープを貼って有効面積を自己調節可
次世代禁煙補助薬
名称
剤
型
機序
会社
ブプロピオン
(商品名ザイバン)
内
服
抗うつ薬と類似
グラクソ・
スミスクライン
バレニクリン
(商品名チャンティックス)
内
服
α4β2nAChR作用薬
(弱アゴニスト兼強アンタ
ゴニスト)
ファイザー
リモナバン
(商品名アコンプリア)
内
服
カンナビノイド受容体拮
抗薬(抗肥満作用あり)
サノフィ・
アベンティス
名称未定
(開発名ADX10061)
内
服
ドーパミンD1受容体
拮抗薬
アデックス・
ファーマシュー
ティカルズ
http://www.cimanet.jp/
http://www.addexpharma.com/news_addex_pharmaceuticals_smokingcessation.html
【8】OTC(一般医薬品)を利用した禁煙指導
森川起代巳作画
ニコレットの種類
改良品



やわらかいガムベース
コーティング
味の改良
ファイザー社HPより
ニコレットの使用法
1. ゆっくりかむ

ピリッとした味を感じるまで、ゆっくりとかむ(5~
10回程度)。
2. ほほと歯ぐきの間に置く



ほほと歯ぐきの間にしばらく置く(味がしなくなる
まで約1分間以上)。
1~2を約30~60分間繰り返す。
唾液は飲み込まずにティッシュで吸い取る
→その理由は・・・
ニコチンガムの薬物動態
ファイザー社HP


飲み込まれたニコチンは肝臓で代謝されるので、効果がほと
んどない
ニコチンは刺激性が強く、飲み込むと吐き気など胃腸の刺激
症状を引き起こす
【9】体重増加への対処法
森川起代巳作画
喫煙と体重

禁煙が一時的な体重増加を起こすのは事実


しかし、喫煙そのものに体重抑制作用があるとは言
えない





離脱症状としての体重増加、味覚の改善など
喫煙者のBMIは非喫煙者よりも大きい
ニコチンによる交感神経系持続亢進はインスリン抵抗性
を増大させ、内臓型肥満をもたらす
喫煙という自己破壊的な行為が生活習慣全般をより不健
康な方向へ強化する
喫煙による味覚の鈍麻が砂糖などの過剰摂取をもたらす
だから、体重を抑制するために喫煙を開始するとい
うのはナンセンス
禁煙時の体重増加の程度と意義

禁煙した人の約80%に禁煙後1~6年で2~4kgの体重増
加がおこる。



数%に5kg以上の体重増加がおこる。
禁煙が落ち着くと増加は停止し、ほとんどの人で減少に転じ
る
体重増加を考慮に入れても、禁煙する方がメリットが大きい


喫煙することよる総死亡リスクは、BMI換算で35~40の肥満に相当す
る
禁煙によって内臓脂肪蓄積が抑制され、たとえ体重が増加したとして
もウェスト/ヒップ比は減少する
森川起代巳作画
体重増加への対処方法

食欲の生理学的コントロール




認知行動療法




一口30回噛む
食事前に大量の生野菜
低カロリーの禁煙グッズに変更
1日1~4回の体重測定とグラフ化日記
空腹感に対する肯定的な認知形成:「お腹が空いているときに脂肪が
燃焼している」
食事と過食を区別:「お腹が空いていれば食べてもいい、いっぱいに
なったら食べるのをやめる、空いていなければ食べない」
数kg以内の体重増加なら、禁煙に専念



体重コントロールは禁煙が落ち着いてからでも遅くはない
2つの課題を同時にこなすのは負荷が大きい
喫煙欲求をコントロールする練習を十分につんでおけば、体重コント
ロールにも応用できる
【10】禁煙指導に利用可能な
コーチングの知識
森川起代巳作画
コーチングとは?


定義:問題解決につながる新たな洞察を相手が発
見するよう援助すること
歴史





スポーツのコーチが使用する指導術が基本
心理学や接遇学などを加えて1950~60年代に体系化
ビジネスや教育の場で発展
近年医療分野にも応用
内容:傾聴、質問、承認、伝達などに大別されたコ
ミュニケーション術
コーチング各論
傾聴

もっと話を聞きたいというメッセージ
相づち、うなずき
 オウム返し(キーワードや語尾をくり返す)
 受容と共感 → 次スライド

「それはおつらいですね」
 「大変でしたね」


言い換えや要約
「それは~ということですね」
 「つまり~というわけですね」

面接の基本スキル(1)
受容

受容は同意と似ているが混同すると治療を破綻させる!
受容
同意
同意も否定もせず、中立的な 受診者の思考や行動を肯定す
立場で受診者の悩みや感情 る
を受けとめる
好ましい思考に
対して
「禁煙した方がいいと思われ
るんですね」
「禁煙した方がいいですね」
好ましくない思
考に対して
「禁煙しない方がいいと思わ
れるんですね」
「禁煙しない方がいいですね」
好ましくない行
動に対して
「吸ってしまうほど辛かったん 「辛かったら吸ってしまいますよ
ですね」
ね」
受容は無条件で治療促進的だが、同意は場合によっては治療阻害的
面接の基本スキル(2)
共感

共感とは?
受診者の抱える問題について、受診者と同じ立
場に立てるほどまで受診者を理解する
 その理解に基づいて、受診者がどう感じるかをイ
メージする


以下と混同すると面接が破綻する!

同情(理解なく「気の毒」「かわいそう」と言う)


同情の言葉によって治療者の心理的苦痛は軽減され
るが、受診者の惨めさは増強される
巻き込まれ(一緒に治療者の気持ちが揺れ動く)

冷静さを失った治療者はもはや援助能力を持たない
コーチング各論
質問(1)

抵抗に付き合う
禁煙指導の目的は受診者を屈服させることでは
ない
 誤った認識に対して質問で対応する

「それはどうしてですか?」
 「そう思われる理由が何かありますか?」
 ソクラテスの質問法




相手に新しい視点を与えたり、考えを整理させたりするため
の質問と割り切る
情報を得るための質問ではない
受診者自らが矛盾に気付くように仕向ける
その場で決着がつかなくてもよい
 議論には負ける形を取ってもよい

コーチングにおける質問と指示
質問する
示唆する
説明する
助言する
指示する
任せる
← 立場関係 →
管理する
強まる
← 意欲 →
弱まる
多い
← 支援者の手間 →
少ない
← 使う場面 →
失敗が許さ
れない内容/
単純な内容
将来につな
がる内容
状況や目的にあわせて質問や指示を使い分ける技術が必要
ランズバーグ『アレックス コーチングに燃える』
コーチング各論
質問(2)

質問の方向性に注意する

過去型質問ではなく未来型質問



否定型質問ではなく肯定型質問



否定型質問:失敗しないためにはどうしたらいいですか?
肯定型質問:成功させるにはどうしたらいいですか?
「なぜ」ではなく「何」で聞く



過去型質問:成功させるにはどうしたらよかったのですか?
未来型質問:成功させるにはどうしたらいいですか?
なぜ吸ってしまったのですか?(責任追及)
吸ってしまった原因は何でしょう?(原因究明)
クローズ型質問とオープン型質問を使い分ける

クローズ型質問(「はい」「いいえ」で答える)


確認事項、会話の停滞時
オープン型質問(自分の言葉で答える)

微妙な心理を探る
コーチング各論
承認

成果、意欲、努力など、ポジティブな要素を見つけて
ほめる




禁煙挫折 → 一定期間継続したことを評価
全然禁煙できない → 来院したことをほめる
本数が減った → 努力をほめる(しかし方向転換を促す)
「あなたは」の賞賛と「私は」の賞賛を使い分ける

「あなたは」:「すごいですね」「よくがんばりましたね」


決めつけられていると感じさせることがある
「私は」:「~はとても嬉しいです」「ほっとしました」


相手は否定のしようがない
乱用すると不自然 → ここいちばんで使う
コーチング各論
伝達

相手の利益を考えた指示や提案であっても、要望
の形で伝える



選択権を奪われる感じが減る
受け入れられる可能性が増える
3ステップ法
1.
2.
3.
これから提案を行うことを前置きする
具体的な提案を要望の形で伝える
提案を受け入れるかどうかを選択できることを伝える

例:ひとつ提案なんですが、まず1日だけ禁煙していただけま
せんか? どうですか、やれそうですか?
【11】禁煙指導の心理療法的側面
行動療法・認知療法・論理療法・森田療法
森川起代巳作画
各種用語のニュアンスの違い
援助活動
‥‥‥‥
治療行為
来談者
(クライアント)
受診者
患者
禁煙支援
禁煙指導
禁煙治療
カウンセリング
心理療法
精神療法
事例性を強調するのが
好ましいと判断される
とき
疾病性を強調するのが
好ましいと判断される
とき
特定の用語に固執せず
状況や目的にあわせて適切な用語を使い分ければよい
9学会合同禁煙ガイドライン
2005年12月発表




タバコを吸うのは、ニコチン依存症と関連疾患からなる「喫煙
病」
喫煙者は積極的禁煙治療を必要とする「患者」
医師・歯科医師は、タバコを吸わない社会習慣の定着を目
指して指導性を発揮すべき
医療従事者が行うべき禁煙治療


日常診療での禁煙治療
集中的禁煙治療





薬物療法
行動療法 → 現在は諸理論を吸収して認知行動療法に発展している
禁煙政策への積極的関与
禁煙環境の整備
喫煙防止教育
日本循環器学会、日本呼吸器学会、日本小児科学会、日本産婦人科学会、日本口腔外
科学会、日本公衆衛生学会、日本心臓病学会、日本肺癌学会、日本口腔衛生学会
認知行動療法の歴史

【1950年代】旧来の心理療法(精神分析など)に疑問をなげ
かける形で行動療法が生まれる

【 1960年代】認知療法(ベック)、論理療法(エリス)等の認知
的アプローチが生まれる

【 1970年代】これらが自然な形で融合、認知行動療法として
主要な心理療法理論になっていく

【 1980年代】各種コンポーネントを組み合わせ、さまざまな治
療パッケージが開発される

【 1990年代】科学的な評価によって疾患別の適用基準が提
唱される
認知行動療法の分類
認知の絶対論性(例:イライラしたら吸
わないわけにいかない)を修正すること
によって、悪循環を生む認知と行動の
つながりを断ち切る
一時的・限定的な行動変容(例:短期間
の禁煙)を起こすことにより、認知の変
容(禁煙への自信)と、恒常的・全面的
な行動変容を励起させる
論理療法
認知
誤った認知(例:タバコはストレスの解消にな
認知療法 る)を修正することで行動変容を起こす
行動療法
行動
行動療法1
行動療法とは?


定義:実験に基礎づけられた学習理論にした
がって人間の行動と情動を修正する技法群
の総称
分類
古典的条件付け(アイゼンク、ウォルピなど)
 オペラント条件付け(スキナー)
 社会学習理論(バンデュラ)

行動療法2
行動療法理論(1)
古典的条件付け理論

条件付けの原理(パブロフの犬)



禁煙指導での応用




条件刺激(ベル)+無条件刺激(餌) → 無条件反応(唾液)
↓
条件刺激(ベル)のみ → 条件反応(唾液)
条件刺激(タバコ)+無条件刺激(黒い肺の写真) → 無条件反応(嫌悪感)
↓
条件刺激(タバコ)のみ → 条件反応(嫌悪感)
反応=生理的反応や情動
防衛機制の強い喫煙者には限界があるが、禁煙開始後の再喫
煙防止や防煙教育には有効
行動療法3
行動療法理論(2)
オペラント条件付け理論

条件付けの原理


自発的反応+強化子(報酬or罰) → 反応生起頻度の増減
禁煙指導での応用

強化子を利用して禁煙意欲を向上させる




自己強化子:禁煙時の達成感、身体機能変化
社会的強化子:賞賛、家族の歓迎
スモールステップ(禁煙が困難な場合には、最終的な禁煙生活と類似の行動
を目標とする):短期間の禁煙、禁煙補助薬
反応=随意反応や行動
行動療法4
スモールステップが功を奏した1例

54歳男性。TDS7点。FTND7点。呼気CO28ppm。糖尿病。

初診(N依存症管理料1回目) 。標準手順書+リセット禁煙。

1週後再診(糖尿病)。1日10本の喫煙を続けていた。パッチの使用を中
止、朝2時間の禁煙チャレンジ。論理療法開始。

1週後再診(N依存症管理料2回目)。3日間だけ朝2時間の禁煙ができた。

2週後再診(N依存症管理料3回目)。朝2時間の禁煙が継続できるように
なった。パッチ再開して3日後を予約日とする。

3日後再診(糖尿病)。1日間だけ禁煙できたがその後1日数本の喫煙が
あって来院。励まして再度3日後を予約日とする。パッチ再開。

3日後再診(糖尿病)。前日より禁煙を継続して来院。5日後を予約日とす
る。

5日後再診(糖尿病)。前回受診以来禁煙継続。2週間後の予約をする。

2週後再診(N依存症管理料4回目)。禁煙継続。パッチ中/小に切り替え。

4週後再診(N依存症管理料5回目)。禁煙継続。保険診療を終了。
行動療法5
行動療法理論(3)
社会学習理論



オペラント条件付け理論の応用
観察学習による間接強化
自己効力感(self-efficacy)を高めることを目指す



自己効力期待:行動をうまく遂行することができると感じる確信
結果期待:行動によって期待通りの結果が得られると感じる確信
禁煙指導での応用


モデリング:禁煙成功者の体験談
スキル訓練:行動パターン変更、環境改善、代償行動提案


単なる禁煙方法教授ではなく、自己効力期待を高めるのが目的!
バイオフィードバック:呼気CO測定

単なるウソ発見器ではなく、結果期待を高めるのが目的!
行動療法6
禁煙に有効な行動療法
9学会合同禁煙ガイドライン 表13

行動パターン変更法
洗顔,歯磨き,朝食など,朝一番の行動順序を変える/いつもと違う場所で昼食
をとる/食後早めに席を立つ/コーヒーやアルコールをひかえる/食べ過ぎない
/過労をさける/夜更かしをしない/電話をかける時にタバコを持つ側の手で受
話器を持つ など

環境改善法
タバコ,ライター,灰皿などの身近な喫煙具をすべて処分する/タバコが吸いたく
なる場所をさける(喫茶店,パチンコ店,居酒屋など) /喫煙者に近づかない/タ
バコを吸わない人の横にすわる/タバコが購入できる場所に近づかない/自分
が禁煙していることを周囲の人に告げる/ 「禁煙中」と書いたバッジや張り紙を
する/周囲の喫煙者にタバコをすすめないように頼んだり,自分の近くで吸わな
いようにお願いする

代償行動法
イライラ,落ちつかないとき(深呼吸をする 水やお茶を飲む) /体がだるい,眠
い時(散歩や体操などの軽い運動をする シャワーを浴びる) /口寂しいとき(糖
分の少ないガムや清涼菓子,干し昆布を噛む 歯をみがく) /手持ちぶさたのと
き(机の引き出しなどの整理をする プラモデルの制作など細かい作業をする 庭
仕事や部屋の掃除をする) /その他(音楽を聴く/吸いたい衝動がおさまるまで
秒数を数える/タバコ以外のストレス対処法を見つける) など
病態解釈と治療理論


病態解釈に基づいて治療理論、治療
技法が構築される
精神疾患では、解明が遅れていて病
態を確定できない




多数の病態解釈と治療理論が並立する
対象や状況ごとに治療理論を選択・併
用・応用していく必要
治療理論は教義ではない
理論を把握しない技法の使用は柔軟
性と応用力を欠く

ガイドラインでさまざまな行動療法技法
が示されているが、これらを適切に実践
するには、理論背景を理解する必要が
ある
治療技法
治療理論
病態解釈
認知療法1
認知療法とは?

偏った不適応的な認知(認知の歪み)を同定し、現
実検討を加え、修正する治療理論


喫煙者は各種の自動思考によって【害の過小評価】【効
用の過大評価】【禁煙の困難さの過大評価】を起こし、喫
煙を続けている
禁煙指導に有効な認知修正技法

自動思考を打破するような比喩的説話やソクラテス式問
答法


損得比較表


例:認知療法3~5のスライド
禁煙のメリットとデメリットを列記して比較検討し、メリット優位や
デメリットの許容可能性を確認させる
認知再構成法

認知を同定して受診者との共同作業で現実検討を加える
認知療法2
喫煙者の自動思考

感情的決めつけ(~と感じるから~に決まってい
る)
タバコなしの生活なら死んだ方がましだ
 自分だけは肺がんにならない
 医者が言うタバコの害はおおげさだ


過度の一般化(どうせ~に決まっている)
友人はパッチを使って禁煙できなかったから、パッチなど
意味がない
 何度も禁煙に失敗しているから、どうせ今度も失敗する


レッテル貼り(・・・は~というものなのだ)

私はタバコがやめられない人間なんだ
認知療法3
認知療法理論に基づいた禁煙指導例(1)
離脱症状に対する過剰な恐怖に対して
風邪を引いて高熱を出したとします。それが2~3日して治って、熱が
下がったとすると、熱が下がるときにすごく汗が出ますよね。この汗は、も
ちろん不都合ですよね。ベトベトするし、着替えなくちゃいけないし、放っ
ておいたらまた風邪を引いてしまうかも知れない。じゃあ、この汗って、薬
か何かで出ないようにした方がいいですか?
そんなことありませんよね。汗が出て、熱が下がるわけじゃないです
か。汗が出るのは、不都合かも知れないけど、病気が治る好ましい反応
ですよね。止めてしまう必要なんかありませんよね。
禁煙したときの禁断症状って、この汗と同じだと思いません? ニコチ
ンが体から抜けていくときの、正常な反応ですよね。禁断症状が起こるの
は、ニコチン依存症がうまく治っていってる証拠じゃないですか。
もちろん、イライラするし、しばらく仕事の能率も落ちるだろうし、禁断
症状は不都合かも知れませんよ。でも、避けなければならないって考え
る必要があるんでしょうか?
実際の指導例
約2分(クリック)
認知療法4
認知療法理論に基づいた禁煙指導例(2)
挫折に際しての過剰な落胆に対して
ひょっとして、禁煙を綱渡りのイメージでやってませんか? 綱渡りだと、途
中で落ちたら初めからやり直しだったり、ビルとビルの間の綱渡りだったら、落
ちたら終わりになっちゃいますよね。
ところがね、自転車の練習だと、ちょっと違います。例えば、自転車の練習を
して、10メートルくらい走れたんだけど、転んでしまったとします。練習を始めた
ときと、10メートル走れて転んじゃったときって、乗る技術は同じですか?
そんなことありませんよね。10メートル走れるくらい上達しているわけじゃな
いですか。じゃあ、禁煙って、綱渡りと自転車の練習と、どちらに近いですか?
そう、自転車の練習ですよね。○○日禁煙できて、吸ってしまったとしても、
禁煙を始める前に戻ってしまったわけではないんです。禁煙は、吸わないでい
る期間を延ばして、ゴールに行き着くのが目的ではありません。ここまで禁煙し
たらゴールだなんてのはないんですから。
そうではなく、自転車にすいすい乗れるように、いろいろなストレスとか誘惑
とかに遭っても吸わないでいられるように上達すればいいだけじゃないですか。
だから、何回転んでも、最後にうまく乗れるようになればいいんですよ。
認知療法5
認知療法理論に基づいた禁煙指導例(3)
自分は禁煙できない人間だという
レッテル貼りに対して
禁煙は自転車の練習と似ているんですけど、ひとつだけ違うところがあるん
ですよ。
子どもが自転車の練習をしているとします。生まれて初めて、補助輪なしの
自転車に乗ってみるわけです。何回も転んで、今日乗れるようになるかも知れ
ないし、何日かかかるかも知れません。いいですか、生まれて初めてですよ。
さて、話を戻しますけど、禁煙って、タバコを吸わない生活を送ることですよ
ね。それって、前にやってませんでした? やってましたよね、ずーっと○○年
間も。
いいですか、極端なことを言うとね、一生懸命練習しても、自転車に乗れな
い子どもさんって、残念ながらいるかも知れませんよね。やったことのないこと
ですからね。でもね、禁煙できない人って、いるはずがないんですよ。だって、前
に皆やっていたんですから。
認知療法6
損得比較表
禁煙のデメリット
禁煙のメリット
短期(数日~数ヶ月)
短期(数日~数ヶ月)
いらいらする
タバコ代がうく
口さみしく、食べてしまう
部屋の壁が汚れない
タバコの臭いがつかない
長期(1年~生涯)
太る

長期(1年~生涯)
食事がおいしいいと感じる
タバコを吸ってる人がわかる
タバコの臭いが嫌だと感じる
喫煙場所を捜さなくてよい
肌つやがよくなる
部屋の壁が汚れない
待合室や自宅で受診者に記入させたあと、「何か気付きは
ありましたか?」と問いかける

一般外来でも実施可能
認知療法6

偏った不適応的な認知を同定する


パターンを学習し、現在の認知に当てはまるかどうかを見る
その認知に対して現実検討を加える



認知再構成法
根拠を問う
行動を変化させた場合に生じる利益と損失を列記して比較検討する
認知を修正する

それまでの確信に変わる考えを提示して比較検討する
×
○
考え方の「植え付け」
ではなく
「気付き」のヒント
指示・教育
ではなく
質問・提案
楽観性
ではなく
柔軟性
自己暗示
ではなく
客観視
考え方の正しさ追及
ではなく
考え方を変えることによ
る感情の変化
論理療法1
論理療法(合理情動行動療法)とは?

人間が有害な情動反応を発現させるメカニズムとしてABC
シェーマを仮定





感情や行動の原因は、出来事ではなく信念
不適応的な感情や行動の原因となっている非合理的信念を
探す




出来事(Activating Event)
信念(Belief)
感情や行動(Consequence)
合理的な根拠がない
絶対的で妥協の余地がない
問題解決のためにかえって有害
非合理的信念の絶対論性を修正することによって、合理的
信念に変更し、感情や行動のコントロールを行う
論理療法2

合理的な根拠がなく、客観的事実に反する




感情的決めつけ(~と感じるから~に決まっている)
過度の一般化(どうせ~に決まっている)
レッテル貼り(・・・は~というものなのだ)
絶対的で妥協の余地がない




非合理的信念
絶対的な規則(~べき、~ねばならない)
絶対的な予測(絶対~に違いない)
絶対的な不満や恐れ(~なんて耐えられない、この世の終わりだ)
問題の解決に役立たないばかりか、かえって問題解決を難しくする
Dispute(論駁)
• 絶対的な規則 → そんなこと誰が決めたのか!
• 絶対的な予測 → どんなときでも絶対にそうであるという根拠は何か!
• 絶対的な不満や恐れ → もし仮にそうであったとしても、どんな最悪のこ
とが起こるのか!
認知の絶対論性(下線部)を打ち砕くことにより・・・
論理療法3
合理的信念


多くの人が認める、合理的な根拠がある
相対的で妥協の余地がある




柔軟な規則(~方がいい)
客観的な予測(~かも知れない)
冷静な状況の評価(~であってもこの世の終わりではない)
問題の解決に役立つか、少なくとも問題解決の障害にならな
い
Effective New Philosophy
(効果的な新しい人生哲学)
論理療法4
喫煙者の非合理的信念(1)
Activating event
Belief
Consequence
出来事
信念・ビリーフ
感情・行動
そうでない場合は絶対にないのか!?
イライラしたとき
トラブルでイラ
には、吸わない
吸ってしまう
イラする
わけにはいかな
い
非合理的信念
イライラしたときに
も吸わないでいる
ことができる
合理的信念
吸わない
論理療法5
喫煙者の非合理的信念(2)
Activating event
Belief
Consequence
出来事
信念・ビリーフ
感情・行動
そんなこと誰が決めたのか!?
タバコを吸うと
ホッとする感じ
がある
タバコによるホッ
とする感じは人
生に必要だ
禁煙は不可能
非合理的信念
タバコによるホッと
する感じがあった
方がいいかも知れ
ないが、なくても大
丈夫だ 合理的信念
禁煙は可能
論理療法6
喫煙者の非合理的信念(3)
Activating event
Belief
Consequence
出来事
信念・ビリーフ
感情・行動
そんな根拠があるのか!?
何回も禁煙に
失敗
何回も失敗した
ことは成功しない
禁煙は不可能
非合理的信念
何回も失敗したこ
とでも成功するか
も知れない
合理的信念
禁煙は可能
論理療法7
治療者側が陥りやすい非合理的信念
Activating event
Belief
Consequence
出来事
信条・ビリーフ
感情・行動
絶対にそうだと決まっているのか!?
受診者も一生懸
一生懸命指導
命でなければな
怒り、指導意欲
しているのに、
らない
低下
受診者の禁煙
非合理的信条
意欲が乏しい
一生懸命の方が
冷静な対応、
好ましいが、そうで
指導技術研鑽
なくても仕方がな
の意欲
い
合理的信条
論理療法8








論理療法による禁煙指導の実際
十分なラポールの形成
禁煙のためには認知修正の自己トレーニング
が必要という観点で、治療目標を共有する
ABCモデルの説明
受診者固有の問題をABCモデルに基づいて
解釈
宿題:論理療法のテキストを貸して読んできて
もらう(読書療法)
宿題:日記形式のノートで、生活上起こった心
理的問題をABCモデルにまとめてもらう
毎回日記を添削しながら、非合理的信念を同
定して論駁するスキルを徐々に身につけさせ
る(日記療法)
心理的問題に直面してもその場で非合理的
信念を自分で論駁して混乱を軽減できること
を目指す(中間目標として禁煙を設定)
アルバート・エリス
『どんなことがあっても
自分をみじめにしないためには』
川島書店
エデルシュタイン&スティール
『論理療法による3分間セラピー』
誠信書房
認知行動療法の禁煙治療パッケージ(1)
リセット禁煙
書籍
磯村毅
CD
磯村毅
禁煙支援者用マニュアル
磯村毅
リセット!
タバコ無用のパラダイス
CD版
リセット禁煙のすすめ
リセット禁煙
プラクティスマニュアル
(幻冬舎)1260円
(東京六法出版)2100円
(東京六法出版)4200円

体系化された質問群で、喫煙行動に関連する誤った思い込みと対決する



思考の枠組みを変化させる「気付きの連鎖」を重視
シナリオに沿った面接で実施可(5つのステージ;約40~60分)



≒論理療法的論駁
禁煙支援者用マニュアルに実施上の要点が記載
時間が取れない場合には、書籍やCDを受診者に貸与したり購入してもらったり
して、感想文を書いてきてもらうだけでもそれなりの効果
ニコチン置換療法とも併用可能
リセット禁煙の成績(NRTなし)
1ヶ月後
2ヶ月後
6ヶ月後
100%
87.5%
80%
80.0%
75.0%
66.7%
60%
62.5%
53.3%
40%
20%
0%
無関心期/関心期
準備期/実行期
磯村 治療87:1947-1951,2005
森田療法
(日本独自の認知行動療法理論)

1900年代初めに提唱



神経症の治療法として海外でも評価されている
精神交互作用


アメリカの認知行動療法誕生より40~50年前
病感に注意集中すればするほど症状が強くなる
「あるがまま」を受け入れる


症状を恐れずむしろ進んで体験しようとする
症状の有無にこだわらずに目的本意の生活を実践す
る
精神交互作用(とらわれ)
森田療法の中核概念
悪循環
病感への注意集中
回避行動
身体症状
恐怖反応
予期不安

現在の自分をあるがままに受け入れる
病感への注意集中を中止(症状のあるなしにこだ
わらずに目的本位の生活を送る)
恐怖突入(不安や恐怖を回避しようとせず、むしろ
進んで体験するようにする)

森田療法理論に基づいた禁煙指導(1)
「いつになったら吸いたくなくなりますか?」
「今日は吸いたいかな? まだ吸いたいか
な?」って毎日自分に問いかけていませんか?
 そう問いかけると、吸いたい気持ちは高まってき
ませんか?
 これからは、吸いたいかどうかを確かめようとす
るのをやめてみませんか?

(病感への注意集中を中止)
森田療法理論に基づいた禁煙指導(2)
「イライラするのは何とかなりませんか?」



禁断症状で何がつらいかと言えば、「禁断症状があっ
ても、普段通りにしていなければならない」と思うから
つらいんです。
「何とかイライラしないようにしよう」と思えばイライラは
増え、「イライラしてもいいか」と思えばイライラも減って
いきます。
今度イライラしてきたら、逆に「今日はイライラしよう」と
思って下さい。
(恐怖突入による症状克服)
実際の指導例
約2分
(クリック)
認知行動療法の禁煙治療パッケージ(2)
禁煙セラピー

アレン・カー『禁煙セラピー』シリーズ(KKロングセラーズ)




世界15ヶ国でベストセラー
喫煙欲求の発現を依存からの脱却過程と見なすことで、禁
煙の過程を楽しめるようになる(≒認知療法)
計算された分かりにくさ(≒コーチング)
喫煙欲求から逃れようとする行動が喫煙欲求を増幅する(≒
森田療法) → ニコチン置換療法を否定
2006年11月29日
アレン・カー氏、肺がんで死去

原因は受動喫煙




アレン・カー氏の対面式心理療法は、正常な思考能力が
保てるように、タバコを吸わせながら行うスタイル
4~5人の受診者への集団面接で、丸半日続く
氏は20年前に禁煙したが、その後も濃厚な受動喫煙環境
の中で過ごしてきたことになる
肺がんだと分かったときの声明


「控えめにみても、私は少なくとも1000万人の喫煙者を治
療したということだ。それなら、たとえ私がそのために肺が
んになったとしても納得ができる」
「私が最後にタバコを吸ったのは23年前のことだが、それ
以来私はずっと世界一幸福な男であったし、今でも同じよ
うに感じている」
【12】タバコと薬の相互作用
森川起代巳作画
喫煙によって薬効減弱する薬

ニコチンによる血管収縮


多環芳香族炭化水素によるCYP1A2誘導





キサンチン系気管支拡張薬(テオフィリン、アミノフィリン、カフェイン)
抗精神病薬
抗うつ薬(三環系、SSRI)
Ib群抗不整脈薬(リドカイン、メキシレチン)
多環芳香族炭化水素によるグルクロン酸トランスフェラーゼ誘導
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インスリン
ベンゾジアゼピン系抗不安薬/睡眠薬
非ステロイド系消炎鎮痛薬
オピオイド/麻薬系鎮痛薬
ピリン系鎮痛薬(アンチピリン)
エストロゲン
β遮断薬(プロプラノロール)
その他/機序不明
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Ic群抗不整脈薬(フレカイニド)
抗血栓薬(ヘパリン、ワーファリン)
狭心症治療薬(イソソルビド、ニコランジル)
抗潰瘍薬(シメチジン)
ビタミンC
禁煙時の薬効変化

禁煙時には血中濃度測定や身体所見モニタリング
が必要
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
酵素誘導が解消される期間には個人差


安全域が狭い薬
CYP1A2やグルクロン酸トランスフェラーゼが代謝に大きく
関わる薬
1週間~2年
ニコチン製剤には多環芳香族炭化水素が含まれな
い

ニコチン置換療法中から酵素誘導が解消され薬効が回
復する
【13】受動喫煙被害者支援のための
診断書作成
森川起代巳作画
診断書作成の留意点
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病名:受動喫煙関連疾患=気管支喘息・慢性気管支炎・急性気管支炎・
喘息様気管支炎・中耳炎・肺がん・虚血性心疾患・鼻炎・結膜炎・頭痛・
咽喉頭炎など
患者さんが非喫煙者であることの証明: 自己申告で充分。禁煙者であれ
ば、過去の喫煙歴を併記する。呼気中CO濃度があればベスト。
患者さんが受動喫煙者であることの証明:
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疾患が受動喫煙に起因すると判断した根拠:
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
受動喫煙場所(職場・家庭・公共施設)
期間
程度(部屋の面積、喫煙者数、換気設備の有無など、なるべく具体的に記述
する)
職業上あるいは居住地でタバコ煙以外の有害物質にされされているかどう
か
受動喫煙がなくなると症状が改善・消失したことがあるかどうか(週始めや長
期休暇後など)
疾患により通院・入院・休業したあるいは今後要すると思われる日数(身
体的被害の大きさの指標となる。患者さんは医療費の領収書を保存して
おくこと)
受動喫煙が続いた場合の疾患増悪や合併症の可能性を記載し、疾患の
治療のために受動喫煙曝露の完全な停止が必要かどうかの意見を述べ
る
松崎道幸 禁煙医師連盟通信14(2),2005
受動喫煙被害者支援の診断書(例)
病名:気管支炎、咽頭炎、結膜炎
上記は、事務所内の受動喫煙曝露後に発症し、休日
など曝露休止によって症状が改善することから、受動喫
煙によって発症・増悪したと考えられる。
このままタバコ煙の曝露を続ければ、生命に危険の及
ぶ病態に至る可能性もある。
緊急に、厚生労働省「職場における喫煙対策のための
ガイドライン」に基づいた事務所内の喫煙対策が必要で
ある。
空気清浄機や室内開放空間の喫煙コーナーは無意味
で、十分な風量で屋外に排気する喫煙室の設置か、館内
全面禁煙のみが有効な対策と見なせる。

添付: http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/05/h0509-2.html
受動喫煙症
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受動喫煙曝露およびそれによる健康被害を包括した疾患概念
病態レベル
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レベル0:正常
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レベル1:無症候性急性受動喫煙症
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

タバコ煙に曝露
目・鼻・喉・気管の障害、頭痛、咳、喘息、狭心症、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、
脳梗塞、発疹、アレルギー性皮膚炎、化学物質過敏症
レベル4:慢性受動喫煙症

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慢性受動喫煙があるが無症候
レベル3:急性受動喫煙症
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
急性受動喫煙があるが無症候
レベル2:無症候性慢性受動喫煙症


非喫煙者で受動喫煙の機会がない
繰り返しタバコ煙に曝露
化学物質過敏症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、
COPD、小児の肺炎、中耳炎、気管支炎、副鼻腔炎、身体的発達障害 など
レベル5:重症受動喫煙症


繰り返しタバコ煙に曝露
悪性腫瘍(とくに肺がんなど)、乳幼児突然死症候群、COPD、脳梗塞、心筋梗塞
(致死性の場合)
禁煙医師連盟受動喫煙症診断基準委員会 禁煙医師連盟通信14(2),2005
喫煙対策の3本柱
防煙
(未成年喫煙防止)
喫煙開始機会
の減少
重度依存患者
の減少
重度依存患者
の減少
親・教師の
依存脱却
喫煙場所の減少
禁煙の動機づけ
場の禁煙化
(受動喫煙防止)
禁煙支援
喫煙対策の容易性増大 (禁煙希望者サポート)
社会の意識変革
終
森川起代巳作画