情報化社会と 学習情報提供システム

著作権を学ぼう
三重大学教育学部
附属教育実践総合センター
須曽野 仁志
私 と 著作権 との出会い
 1980年頃、全日本吹奏楽コン
クール
ある高等学校が編曲・演奏が難し
い作曲家の楽曲を演奏し、全国大
会出場を辞退
身近にある著作権問題
 学校での子供用学習プリント・テ
スト
 PTA新聞での引用
 インターネットでのホームページづ
くり
知的所有権

工業所有権
– 特許権、実用新案権、意匠権、商標権と
いった発明やアイデアなどを対象とする。

著作権
– 文化的な創作物を保護の対象とする
知的所有権 権利の発生

工業所有権
– 登録しなければ権利が発生しない

著作権
– 著作物を創作した時点で自動的に権利
が発生。権利を得るための手続きは不
必要。
著作権とは何か

文化的な創作物を保護の対象
– 文化的な創作物-----人間の思想、感情
を創作的に表現したもの
– 表現したものを「著作物」といい、それを
創作した人が「著作者」という)
– 文芸、学術、美術、音楽など

著作権法という法律で保護
著作物の種類(1)

言語
小説、脚本、論文、講演、短歌、俳句など

音楽
楽曲、楽曲を伴う歌詞

舞踊、無言劇
舞踊、バレエ、ダンスなどの舞踊、振り付け

美術
絵画、版画、彫刻、漫画、書など (美術工芸品
を含む)

建築
建造物自体
著作物の種類(2)

地図、図形
地図と学術的な図面、図表、模型など (建築設
計図は図形の著作物)

映画
劇場用映画、テレビ映画、ビデオソフトなど
(映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚
的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物
に固定されている著作物を含む)

写真
– 写真、グラビアなど

プログラム
– コンピュータプログラム
著作者の権利

著作者人格権
– 人格的な権利

財産権
– 財産的な権利
著作者人格権とは
著作者だけが持っている権利で、譲渡したり、相
続したりすることはできない(一身専属権)。
この権利は著作者の死亡によって消滅するが、
著作者の死後においても、著作者人格権の侵
害となるような行為(例えば、内容やタイトルの
改変など)をしてはならない。
著作者人格権

公表権
– 著作物を公衆に提供・提示

氏名表示権
– 実名若しくは変名を著作者名として表示
– または、著作者名を表示しない

同一性保持権
– 著作物及びその題号の同一性を保持す
る
その他の著作物

二次的著作物
– 著作物(原著作物)を翻訳し、編曲し、若しくは
変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案す
ることにより創作した著作物

編集著作物
– 編集物でその素材の選択又は配列によつて創
作性を有するもの。例えば、百科事典、辞書、
新聞、雑誌、詩集などの編集物。

データベースの著作物
– 論文、数値、図形その他の情報の集合物で
あって、それらの情報を電子計算機を用いて検
索することができるように体系的に構成したも
の
外国の著作物の使用
外国の著作物を使用する場合には、
わが国の著作物に与えられている
保護と同様の保護を与えるのが原
則である。ただし、保護期間などに
関しては例外がある。
著作(財産)権とは
財産的な著作権は、その一部又は全部を譲渡
したり相続することができる。その場合の著作権
者は著作者ではなく、著作権を譲り受けたり、相
続したりした人ということになる。
著作(財産)権









複製権
上演権・演奏権
公衆送信権
口述権
展示権
上映権・頒布権
貸与権
翻訳権・翻案権
二次的著作物の利用権
法律上、著作権がない
とされるもの

憲法 その他の法令(地方公共団体の条例
を含む)


国又は地方公共団体の機関が発する告示、
訓令、通達その他これらに類するもの
裁判所の判決、決定、命令及び審判並び
に行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続
により行なわれるもの

上記の翻訳物及び編集物で、国又は地方
公共団体の機関が作成するもの
著作物の保護期間
著作権の原則的保護期間は、著作者が著作
物を創作した時点から著作者の死後50年ま
で




実名・ペンネームでの著作物 死後50年
無名・変名での著作物 公表後50年
団体名義の著作物 公表後50年
映画の著作物 公表後70年
著作権保護期間の例
手塚 治虫(1989年2月9日死去)作品の著作権
死去した翌年の1990(平成2)年1月1日から起算し
て2039(平成51)年12月末日までが、著作権の保護
期間となる。
太宰 治(1948年6月死去)作品の著作権
死去した翌年の1949(昭和24)年1月1日から起算
して1998(平成10)年12月末日までが、著作権の保
護期間であった。
外国の著作物の使用
外国の著作物を使用する場合には、わが国の
著作物に与えられている保護と同様の保護を
与えるのが原則である。ただし、保護期間など
に関しては例外がある。
保護期間の相互主義
 保護期間の戦時加算

第102問
滝廉太郎作曲「お正月」を
歌って録音したものをWebで
公開してもよい。
○ 問題なし
× 問題あり
著作物が自由に使える場合(1)







私的使用のための複製
図書館などでの複製
引用
教科書への掲載
学校教育番組の放送
学校における複製
試験問題としての複製
著作物が自由に使える場合(2)







点字による複製など
営利を目的としない上演など
時事問題の論説の転載など
政治上の演説などの利用
時事事件の報道のための利用
裁判手続などにおける複製
翻訳、翻案等による利用
著作物が自由に使える場合(3)





放送などのための一時的固定
美術の著作物などの所有者による展示
公開の美術の著作物などの利用
美術の著作物などの展示に伴う複製
プログラムの著作物の複製物の所有者に
よる複製など
著作隣接権とは何か
著作物の伝達に重要な役割を果たしている実演家
(俳優、舞踊家、歌手、演奏家、指揮者、演出家など実
演を行う者)、レコード製作者(レコードに固定され
ている音を最初に固定した者)、放送事業者(放送
を業として行う者。NHK、民間放送各社、放送大学学
園など)、有線放送事業者(有線放送を業として
行う者。CATV、音楽有線放送事業者など)に認められ
た権利
著作隣接権の保護期間は50年
実演家の権利
自分の実演を録音・録画する権利
 自分の実演を放送・有線放送する権
利
 実演を送信可能化する権利
 商業用レコードが放送で使用された
場合の使用料(二次使用料)を、放送
事業者から受け取る権利
 商業用レコードを貸与する権利

レコード製作者の権利
 レコードを複製する権利
 商業用レコードが放送で使用され
た場合の使用料(二次使用料)を、
放送事業者から受け取る権利
 商業用レコードを貸与する権利
放送事業者・有線放送事業者
の権利
 放送を録音・録画し、複製する権
利
 放送を再放送・有線放送する権利
 テレビジョン放送の伝達権
著作物の正しい使い方
著作物を利用する場合、
「自由に著作物を使用できる」
場合を除いて、原則として著
作権者の許諾を得る必要があ
る。
権利の侵害
著作権のある著作物を著作権者の許
諾を得ないで無断で利用すれば、著
作権の侵害となる。
また、著作者に無断で、著作物の内
容やタイトルを改変したり、著作物に
勝手に本名(著作者が変名や匿名を
希望している場合)をつけて発行したり
すれば、著作者人格権の侵害となる。
権利の侵害(続き)
さらに、違法に複製された著作物を頒布
(販売・貸与など)したり、頒布の目的で
所持する行為なども権利侵害となる。
著作権侵害は犯罪となり、侵害者を処
罰してもらうことができるが、被害者が告
訴しなければ処罰されない(親告罪)。罰
則は、著作権侵害、著作者人格権侵害と
もに5年以下の懲役又は500万円以下
の罰金と規定されている(H17.1.1よ
り)。
おわりに
 著作権は文化のバロメーター