転送データサイズの違いによる TCPコネクション間の 不公平性に関する一検討 大阪大学大学院基礎工学研究科 博士前期課程1年 徳田航一 E-mail : [email protected] 1 発表内容 • • • • • • 研究の背景 転送データサイズの違いによる不公平性 hash-RED方式の提案 TCPスループット解析 シミュレーションによる提案方式の評価 まとめと今後の課題 2 研究の背景(1) • TCP (Transmission Control Protocol) – インターネットトラヒックの大部分を占める – ACKパケットを用いた輻輳制御を行う • さまざまな原因によってスループットの不 公平が生じる 3 研究の背景(2) • 転送データサイズの違いによるスループッ トの不公平 – 帯域や遅延などのネットワーク環境が同じで も発生 • long-livedコネクション – 転送データサイズの大きなコネクション • short-livedコネクション – 転送データサイズの小さなコネクション 4 研究の目的 • エンドホストの変更を行うことなく転送デー タサイズの違いによる不公平を改善 – long-livedコネクションとshort-livedコネクショ ンの判別をどのように行うのか – short-livedコネクションの優先処理をどのよう に行うのか 5 シミュレーションによる 不公平の確認 • ルータのバッファサイズ – TCPのスループットを抑えないように大きく設 定する • パケット廃棄 – 送信側ホストとルータ間に一定のリンクロスp によって生じる Sender host 500 [Mbps] 50 [msec] リンクロス率:p Receiver host 500 [Mbps] 50 [msec] 6 転送パケット数とスループット の関係 Throughput [Kbps] 2500 2000 p=0.005 p=0.01 p=0.05 1500 1000 500 0 1 10 100 Data Size [packets] 1000 10000 7 不公平が生じる原因 • long-livedコネクション – 転送中にウィンドウサイズが大きくなる – fast retransmit アルゴリズムによりタイムアウ トを回避することができる • short-livedコネクション – ウィンドウサイズが大きくなる前に転送終了 – fast retransmit アルゴリズムが機能しにくい ため、タイムアウトになりやすい 8 hash-RED方式の提案 • パケット判別処理 – hashテーブルを用いる • パケット優先処理 – RED (Random Early Detection) をベースに した方式を用いる • 二つの処理の組み合わせによって公平性 を改善する 9 パケット判別処理 • コネクションIDを基にハッシュ関数を計算 • 関数値によりテーブルのエントリの決定 • 閾値K以上であるとlong-livedコネクション と判断 time stamp counter パケット ハッシュ関数 time stamp counter 10 パケット優先処理 • パケット廃棄率に差をつける – short-livedコネクションからのパケット • バッファ溢れが起きない限り廃棄しない – long-livedコネクションからのパケット • 高い確率で廃棄 • 全体の廃棄率が通常のREDによる廃棄率pと同じ になるように設定 long-livedコネクションとshortlivedコネクションの閾値Kは? 11 閾値Kの決定方法 • Fairness index F(K)の定義 F ( K ) lim L L 2 P ( i ) ( ( i ) ( L )) i 1 • P(i) : 転送パケット数が i パケットである確率 – Webトラヒック分布を示した文献[9]より求める。 [9] Paul Barford and Mark E. Crovella, “Generating Representative Web Workloads for Network and Server,“in Proceedings of Performance ’98/ACM SIGMETRICS, June 1998. • ρ(i) : i パケット転送したときのスループット – 次に述べる解析により求める 12 TCPスループット解析(1) • 文献 [5] – パケット廃棄率一定 – 定常状態におけるTCPのスループット • 文献 [6] – 文献 [5]の解析にコネクション確立直後のス ロースタートフェーズも含める。 [5] J. Padye, V. Firoiu, D. Towsley, and J. Kurose, “Modeling TCP Throughput: A Simple Model and its Empirical Validation, “in Proceedings of ACM SIGCOMM’98, Sept. 1998. [6] N. Cardwell, S. Savage, and T. Anderson, “Modeling TCP Latency,” in Proceedings of IEEE INFOCOM’00, pp. 249-271, Mar. 2000 13 TCPスループット解析(2) • hash-RED方式 – パケット廃棄率を転送中に変化させる • 文献[5]と[6]を拡張 – パケット廃棄率がパケットごとに変化する場合 を想定 – コネクション確立直後のスロースタート及び輻 輳回避フェーズのより正確なモデル化 14 解析の数値例 700 Simulation 1200 Analysis of [6] 1000 Our analysis Throughput [Kbps] Throughput [Kbps] 1400 800 600 400 200 0 1 10 100 1000 10000 600 500 Simulation Our analysis 400 300 200 100 0 1 10 100 1000 10000 Data Size [packets] Data Size [packets] 廃棄率p=0.01の場合 0-20パケット目まで廃棄率0 21パケット目以降は廃棄率0.03 15 閾値Kの決定方法 • Fairness index F(K)の定義 F ( K ) lim L L 2 P ( i ) ( ( i ) ( L )) i 1 • P(i) : 転送パケット数が i パケットである確率 – Webトラヒック分布を示した文献[1]より求める。 [1] Paul Barford and Mark E. Crovella, “Generating Representative Web Workloads for Network and Server,“in Proceedings of Performance ’98/ACM SIGMETRICS, June 1998. • ρ(i) : i パケット転送したときのスループット – 次に述べる解析により求める 16 KとF(K)の関係 F(K) • F(K)が最小になるように閾値Kを決定する 2.6e+009 2.4e+009 2.2e+009 2e+009 1.8e+009 1.6e+009 1.4e+009 1.2e+009 1e+009 8e+008 0 p=0.01 p=0.02 p=0.03 p=0.04 p=0.05 20 40 60 K [packets] 80 100 17 シミュレーションモデル • 提案方式の評価は、以下のモデルを用い る • ルータAに提案方式を適用する R1 S1 100 [Mbps] 5 [msec] S100 BW [Mbps] 30 [msec] Router A 300 [packets] Router B 300 [packets] 100 [Mbps] 5 [msec] R100 パケット判別処理の評価 転送データサイズ分布 long-lived connection short-lived connection Data size Pareto Avg=1000[KB] Shape=1.13 Pareto Avg=10[KB ] Shape=1.13 Think Time Pareto Avg=20[s] Shape=1.5 Pareto Avg=2[s] Shape=1.85 Estimated ratio of long-lived connections • long-livedコネクションのホスト数とルータ でlong-livedコネクションと判定される割合 の関係 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 Actual ratio of long-lived connections 公平性の評価 • 転送ドキュメントサイズがWebドキュメント 分布に従った環境でのシミュレーション ボトルネックリンクの利用率 Tail-drop 0.954 hash-RED 0.952 Throughput [Kbps] 40 35 30 Taildrop hash-RED 25 20 15 10 5 1 10 100 Data Size [packets] 1000 まとめと今後の課題 • まとめ – hash-RED方式の提案 – エンドホストの変更をすることなく、short-lived コネクションの不公平性を改善 • 今後の課題 – 詳細な評価 – 提案方式の実装 21
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