Ceramide Stimulates ABCA12 Expression via Peroxisome Proliferator-activated Receptor δ in Human Keratinocytes (2009)J.Biol.Chem.84,18942-18952 ヒトケラチノサイトにおいて、セラミドがPPAR δ を介してABCA12の遺伝子発現を促進する 2015/06/22 M1 羅霄霖 表皮バリア機能について 皮膚バリア機能は皮膚からの水分の蒸散と外界からの異物の侵入を制限している。 表皮におけるセラミドを中心としたスフィンゴ脂質代謝 ABCA12について ABCA12は層板顆粒に局在し、層板 顆粒へ脂質の輸送に働き、角質細胞 間脂質層の形成に寄与する。 ABCA12の機能障害は脂質輸送の障 害を起こし、皮膚脂質バリア機能の 低形成を来たす。 ↓ 道化師様魚鱗癬 http://confettiskin.com/wp/2012/11/13/harlequin-intro/ PPARδについて 先行論文 (2008)J.Invest.Dermatol.128,104–109 ヒトケラチノサイトにおいて、 PPARδの活性化によるABCA12の遺伝 子発現を促進することを確認できた 。 【背景と目的】 ABCA12 はケラチノサイトにおける表皮細胞の層板顆粒へグルコシルセラミドを輸送する 役割を持つことが知られている。この過程は皮膚バリア形成において最も重要な役割を果 たす。(1) 顆粒細胞がラメラボディより細胞外に放出されたグリコシルセラミドがセラミドへと変換 され、角層細胞間脂質成分となる。(2) ABCA12の欠損は角層細胞間脂質層の形成が阻害され、バリア機能障害を来し、魚鱗癬の 病因となる。(3) さらに、筆者らの以前の研究により、 PPARδの活性化によってABCA12の遺伝子発現を促 進することが確認された。(4) そこで本実験は、ヒトケラチノサイトにおいて、セラミド がPPARδを介してABCA12の遺伝子発現を促進することの 確認を目的として行った。 (1) (2) (3) (4) (2006)Arch.Dermatol.142,914–918 (2007)J.Lipid Res.48,2531–2546 (2008)J.Biol.Chem.283,36624–36635 (2008)J.Invest.Dermatol.128,104–109 セラミドがABCA12の遺伝子発現 に与える影響 外因性スフィンゴ脂質はABCA12のmRNA発現に与える影響 1.未分化条件でケラチノサイトを培養 2.C6、GlcC、Sph、Sphinga、C1Pを16h添加 3.細胞を回収し、リアルタイムPCR セラミドの代謝物ではなく、C6-セラミドがABCA12のmRNA発現量を増加 させた。 C6-CerがABCA12の遺伝子発現に与える影響 1.未分化条件でケラチノサイ トを培養 2.A C6(5μM)を0-48h添加 B C6(0-10μM)を16h添加 C C6(5μM)を16h添加 3.細胞を回収し、リアルタイ ムPCR 及びウェスタンブロット C6-Cerは時間依存的に及び用量依存的にABCA12の mRNA発現量を増加させ、 タンパク質を増加させた。 ↓ C6-CerがABCA12の遺伝子発現を促進することが確認で きた。 C6-CerがABCA12の遺伝子発現に与える影響 1.未分化条件でケラチノサイトを培養 2.C6(5μM)を16h添加 3.細胞を回収し、リアルタイムPCR DNA ↓ ↓ mRNA ↓ タンパク質 hABCA-L hABCA-S 二つスプライシン グ PPARδの活性化によるABCA12-L,Sの発現を促進する。(1) ↓ C6-CerがPPARδの活性剤のようにABCA12-L,Sの発現を促進することを確認できた 。 (1) (2008)J.Invest.Dermatol.128,104–109 セラミドがABCA12の発現を促進する メカニズムの解明 セラミド代謝経路はC6-CerのABCA12発現促進作用中の役割 <C6-Cer? → GlcCer経路> D-PPMP 1.未分化条件でケラチノサイトを培養 2.A D-PPMP (10μM)を6,24h添加 B,C D-PPMP (5μM), C6(5μM), D-PPMP+C6 (5μMずつ)を16h添加 3.細胞を回収し、HPTLC(A,B)及びリアルタイムPCR(C) ¥ グルコシルセラミドシンターゼの阻害剤(D-PPMP)によって、細胞内セラミドの量及び ABCA12のmRNA発現量が増加した。 D-PPMP+ C6-Cerの添加で、 ABCA12のmRNA発現量がより多い。 ↓ セラミドのABCA12発現促進作用にセラミド→グルコシルセラミド代謝経路が関与しない 。 セラミド代謝経路がC6-CerのABCA12発現促進作用中の役割 <C6-Cer? → SM経路> D609 1.未分化条件でケラチノサイトを培養 2.A D609 (25μM)を6,24h添加 B D609 (25μM), C6(5μM), D609+C6 (25μM+ 5μM)を16h添加 3.細胞を回収し、HPTLC(A)及びリアルタイムPCR (B) スフィンゴミエリン合成酵素の阻害剤( D609 )によって、細胞内セラミドの量及び ABCA12のmRNA発現量が増加した。 D609+C6-Cerの添加で、 ABCA12のmRNA発現量がより多い。 ↓ セラミドのABCA12発現促進作用にセラミド→スフィンゴミエリン代謝経路が関与しない 。 セラミド代謝経路がC6-CerのABCA12発現促進作用中の役割 <C6-Cer?→ Sph経路> D-MAPP B13 1.未分化条件でケラチノサイトを培養 2.A D-MAPP (10μM)を6,24h添加 B D-MAPP(10μM), C6(5μM), D-MAPP+C6 (10μM+5μM)を16h添加 D B13 (5μM), C6(5μM), B13+C6 (5μM+5μM)を16h添加 E B13 (2.5μM), D-MAPP(2.5μM), B13+D-MAPP (2.5μM+2.5μM)を16h添加 3.細胞を回収し、HPTLC(A)及びリアルタイムPCR (B- E) アルカリ性と酸性セラミダーゼの阻害剤( D-MAPPとB13 )によって、細胞内セラミ ドの量及びABCA12のmRNA発現量が増加した。 D-MAPP +C6-Cer 及びB13+C6-Cerの添加で、 ABCA12のmRNA発現量がより多い。 ↓ セラミドのABCA12発現促進作用にセラミド→スフィンゴミエリン代謝経路が関与しな い。 C6-Cerがセラミド分解経路を介してABCA12の発現を促進するか? Cer → Sph アルカリ性及び酸性セラミダーゼ活性の阻 害剤による細胞内セラミド量およびABCA12 の発現量が増加する。 Cer分解経路 1.未分化条件でケラチノサイトを培養 2.A D-MAPP (10μM)を6,24h添加 B D-MAPP(10μM), C6(5μM), D-MAPP+C6 (10μM+5μM)を16h添加 C 細胞播種後、siRNAをトランスフェクションして、アルカリ性 セラミダーゼ-1をノックダウン D B13 (5μM), C6(5μM), B13+C6 (5μM+5μM)を16h添加 E B13 (2.5μM), D-MAPP(2.5μM), B13+D-MAPP (2.5μM+2.5μM)を16h 添加 3.細胞を回収し、HPTLC(A)及びリアルタイムPCR (B- E) C6-CerがPPARδの発現に与える影響 1.未分化条件でケラチノサイトを培養 2.A C6(5μM)を16h添加 B C6(0-8μM)を24h添加 C C6(5μM)を24,48h添加 3.細胞を回収し、リアルタイムPCR (A,B)及びウェ スタンブロット(C) C6-CerがPPARδ の発現(mRNA及びタンパク質レベルで)を誘導 した。 細胞内セラミドがPPARδのmRNA発現量に与える影響 1.未分化条件でケラチノサイトを培養 2.A D-PPMP (5μM), C6(5μM), D-PPMP+C6 (5μMずつ)を16h添加 B P4 (10μM), C6(5μM), P4+C6 (10μM+5μM)を16h添加 C D-MAPP(10μM), C6(5μM), D-MAPP+C6 (10μM+5μM)を16h添加 3.細胞を回収し、リアルタイムPCR 細胞内セラミドがPPARδのmRNA発現量を増加させた。 C6-CerがPPAR δを介してABCA12の遺伝子発現を促進する 1.未分化条件でケラチノサイトを培養 2.C6(5μMを24h添加 A 細胞播種後、siRNAをトランスフェクションし て、 PPAR δをノックダウン 3.細胞を回収し、リアルタイムPCR C6-CerがPPAR δを介してABCA12の遺伝子発現を特異に促 進する。(インボルクリンの遺伝子発現量に影響を与えな かった) まとめ: Inhibitors Cer GlcCer Cer SM EndogenousCer↑ Cer Sph Exogenous C6-Cer PPARδ↑ ABCA12↑ 細胞内セラミド及び外因性セラミドともABCA12の遺伝子発現を増加させた。 セラミドが少なくともPPARδを介してABCA12の遺伝子発現を増加させた。
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