第一回のテーマ: 1.「介護トラブル」予防のポイントと なる、契約書の説明の仕方を研 究する。 1 契約書の締結や記録等の作成に 関する正しい方法(作法)を学ぶ。 質問1.契約書の割り印? デイサービス利用契約書をご利用者側と交わす 場合、契約書の綴じ目の部分に割り印をする必 要はあるのでしょうか? 必要あるとして、 (1)利用者と代理人の印は違った方がいいか (2)押印する際、上から順番は決まっているか を教えてください。 そもそも、「割り印」は 何のために押す? 契約書の 同一性 保持のため。 法律の世界の「常識」 「契約」は、口頭でも成立する。 (諾成契約) ※ 契約書は、後から言ったいわないにならな い様契約内容を確認・立証するための道具に 過ぎない。 そうなると…? 回答 • 契約書、重説等にいちいち割り印をする必要 は、必ずしも無い。 • もっとも、複数のページが万が一バラバラに なってしまい、同一性が確認できなくなる事態 を避けるためには、無駄ではない。 • 割り印をする場合には、(1)代理人がいる場 合には代理人の印だけでよい。(2)押印の順 番は全く気にしなくてよい(気にするのは役所 や大企業等「序列重視」の世界)。 質問2.契約の「主体」? • 手を動かせず自力でサインできないご 利用者の場合、事業所が代わりにサイ ンしてあげても良いか。 • 身元保証人と身元引受人、連帯保証人 の違いを教えてください。 • 家族が身元保証人となった場合、家族 の代筆のみで契約は成立するか。 シンプルに考えると… 「契約」は、当事者双方の「合意」を 表す証拠となる書面。 ということは 事業所が利用者役も兼ねてサインしてし まっては、「合意」を証することにならな い! よって無効となる。 「身元保証人」とは 従業員の故意または過失によって雇い主 が損害を受けた場合に、従業員に代わり 雇い主に賠償する者のこと(身元保証ニ 関スル法律)。 転じて 介護の世界では 「利用者の緊急時、非常事態等に責任を もって連絡先等となる立場の人」 というニュアンス(「身元引受人」も同様)。 「連帯保証人」とは 「主債務者と連帯して債務を負うとする特約を 付した保証人」のこと。 催告の抗弁権と検索の抗弁権がなく(民法 454条)、事実上債務者と全く同じ義務を負う。 主債務者がどのような状況であっても、債権者 は連帯保証人にいきなり返済を求めることが可 能。 つまり、 「身元引受人・身元保証人」 ≠ 「連帯保証人」 「身元引受人は連帯保証人となる」との 条項が特別に必要! 「身元保証人」は「代理人」か? 答えはNO。 子は親の法定代理人ではないので、 (1)利用者が認知症の場合 子であっても成年後見人でなければ代理で の契約は不可能。 (2)利用者が健常の場合 子であっても、ない場合でも代理権を授与 されていれば代理人として契約可。飽くまで 代理人としてサインすることが必要。 質問3.代理人の変更 • 契約書に署名押印してもらった代理人 が、他界若しくは認知症等で代理人とし て機能できなくなった場合、別の代理人 を立て新たに契約する必要があるか? 回答: • 本契約の期限が切れるまではそのまま でも有効。 • 再契約が必要になった場合は、新たな 代理人を立てる必要がある。 • 立てられない場合にはケースワーカー や包括に相談。 質問4.契約の日付について • 契約書に記入してもらう日付は、実際の契約締 結日にすべきでしょうか。 • 緊急時など、居宅支援契約よりも介護サービス が先行する場合もあり、そのようなときはサービ ス利用の日に遡り日付を記入して頂くのが良い でしょうか? (Ex.) 6月1日 緊急でショートステイ利用 3日 家族立会いの下、居宅契約締結 この場合契約日は1日?3日? 質問4-2.契約の日付について(2) • 有効期限が5月31日までの居宅支援契 約につき、更新契約書にサインしてもら うのが諸事情により遅れ6月3日になっ てしまった。この場合、6月1日付けの日 付にしてしまってよいか? 回答:基本的考え方 契約の成立時は、 合意が成立 した時点である。 そして、民法上「契約」は 口頭で合意した時点で成立する (保証契約等例外を除く)。 ということは、本件でも 家族が電話口でケアマネジメント利用を 承諾した時点で、契約は正式に成立して いるといえる! そうであるならば • バックデート(日付を遡る)で記載するこ とは可能。 • 万全を期すために、 (1)記載時に、利用者側に確認を取る。 (2)支援経過記録に遡らなければならな かった理由を記載。 質問5:代理人の本人名義での サイン? うちの契約書には「代理人」としての署 名欄がなく、家族が本人の名前を本人欄 にサインし押印している。 これで法的に問題無いか。 20 民法99条(代理人の顕名) 代理人がその権限内において本人のた めにすることを示してした意思表示は、本 人に対して直接にその効力を生ずる。 2 前項の規定は、第三者が代理人に対 してした意思表示について準用する。 21 もっとも わが国の取引慣行では、多くの取引が直接本人 名義で行われている。 また、本人名義であれば、相手方には効果帰 属主体が明らかであるから、顕名の趣旨を充当 する。 よって、本人名義であっても、代理人が代理意 思を有し、その表示と認められる限り顕名の手段 とみて妨げないものと解される(判例より)。 本人名義のサインも、一応有効。 22 ただし 後から「自分はサインしていない」などと言わ れると揉める可能性もゼロではない。その意味 で「事実を立証する書面」としては不完全といえ る(補完が必要)。 考え方として サインする人の「立場」は明確に! 23
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