4,三春ダムにおけるヤナギ類の生態調査

No.4
三春ダムにおけるヤナギ類の生態調査プロジェクト
Reseaerching Salix Subfragilis in Miharu dam
参加登録学生:
福山 朝子(Fukuyama Asako),
小田切 宗一郎(Kotagiri Soichiro),劉 顯傑(Ryu Kenketsu)
指導担当教員:
浅枝 隆(Asaeda Takashi)
学外の連携組織:
(財)ダム水源地環境整備センター(WEC)
はじめに
Introduction
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本調査では、三春ダム湖内に生息するヤナギ類のうち、優先して生息しているタチヤナギSalix
Subfragilisの調査を行っている。これらはほぼ同年齢でありながら、地点によってさまざまな植生であっ
た。またその影響要因としては冠水時の水深や2002年の洪水の影響や日当たり条件など様々な要因
が考えられた。
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Miharu dam is located in Fukushima prefecture. There is many Salix Subfragilis. And they
have differennce on their form (For example,tree density, diameter at breast height etc.). This
study shows that these differences were made by some environmental factors (For example,
flood, days of sinking, isolation situations.).
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背景、目的
これまで、ダムの冠水によって樹木が枯死し、湖内に堆積し富栄養化することを防ぐため、一般にダム湖内に生育する樹木は伐採されていた。ところが動物プラ
ンクトンのレフージとなる、生態系保全に寄与するなどの理由から、近年では樹木を残す傾向にある。 調査地の三春ダムに生育するほとんどのタチヤナギ
Salix subfragilis は、樹齢は9~10年程度であったが、地点によって様々な形態で生育していた。以上のことから、三春ダムの各前貯水池に生育するヤナギ類
の調査を行い、ヤナギ類の形態的特徴と、ヤナギ類の形態的特徴に影響を与える環境要因を明確にすることを目的とする。
<アレチウリについて>
全体(6~8m程度)を3分割し根に近い順から下部、中間部、上部とする。今回は中間部のみ
に注目し、栄養塩を分析した。また、土壌サンプルについて、含水率や土壌粒径などを測定し
たが、地点ごとに有意な差は見られなかった。
重量含水率
soil(Sicyos)
60.000
0.250
50.000
0.200
40.000
%
0.300
0.150
30.000
0.100
20.000
0.050
10.000
St.1-1
St.1-2
St.1-3
St.1-4
St.1-5
St.1-6
St.1-7
St.1-8
St.1-9
St.2-1
St.3-3
St.3-2
St.3-1
St.2-6
St.2-5
St.2-4
St.2-2
St.1-9
St.1-8
St.1-7
St.1-6
St.1-5
St.1-4
St.1-3
St.2-3
Fig.3 Moisture Content (soil)
Fig.2 TN (soil)
Sicyos N15
N/P
leaf
stem
16
14
12
10
6
4
2
St.3-5
St.3-4
St.3-3
St.3-2
St.3-1
St.2-6
St.2-5
St.2-4
St.2-3
St.2-2
St.2-1
St.1-9
St.1-7
St.1-6
St.1-5
St.1-4
St.1-3
St.1-2
St.3 Hebisawa
Ohtakine River
St.1-1
0
leaf
stem
9.000
8.000
7.000
6.000
5.000
4.000
3.000
2.000
1.000
0.000
(1.000)
St
.1St 1
.1St 2
.1St 3
.1St 4
.1St 5
.1St 6
.1St 7
.1St 9
.2St 1
.2St 2
.2St 3
.24
‰
8
Fig.1 Pre-reservoirs (Dec.)
St.2-2
St.2-3
St.2-4
St.2-5
St.2-6
St.3-1
St.3-2
St.3-3
St.3-4
St.3-5
0.000
0.000
St.1-2
調査日程
・9月1~2日(21年度第3回目)
・12月14~15日(21年度第4回目)
調査内容
・ヤナギの成長に影響を与える可能性がある植物の調査
※主にイタチハギ、アレチウリを対象とした。
<9月調査内容>
St.1で9箇所、St.2で6箇所、St.3で5箇所においてアレチウリを採取する。また、その場所の
土砂(表層、中間部、下層の3段階)を採取する。
また、St.1~3において計8箇所でイタチハギ、クズなど他の植物と土砂を採取する。
・採取したサンプルは大学に持ち帰った後、土壌含水率、粒径、全リン、全窒素、安定同位体
比などを分析する。
<12月調査内容>
・St.1~3において、それぞれ3箇所でヤナギを1~2本、イタチハギを2~3本根ごと掘り出し、
その場所でリター(30cm×30cm)、土砂を採取する。
・木サンプルは年輪から樹齢を読み取り、乾燥後地上部バイオマス、地下部バイオマスを測
定する。
・採取したサンプルは9月に採取したサンプルと同様に分析する。
・ヤナギについてはバイオマスと共に枝の長さを測定し、アロメトリー式を作成する。
これまでの結果,考察
St.1-1
タチヤナギ(樹齢10歳)
TN(%)
9月以降の現地調査について
Fig.5 N15 (Sychos)
Fig.4 N/P (Sychos)
St.3 average通過質量百分率(%)
125
St.3-1
St.3-2
St.3-3
St.3-4
St.3-5
100
75
50
25
Fig.6 particle size distribution
0
0.01
Miharu dam
St.1 Ushikubiri
0.1
St.2 Hebiishi
1
10
粒径(mm)
St.2 average通過質量百分率(%)
125
100
75
50
25
0
0.01
0.1
1
10
St.2-1
St.2-2
St.2-3
St.2-4
St.2-5
St.2-6
粒径(mm)
Sicyos angulatus
St.1 average通過質量百分率(%)
125
100
75
Salix subfragilis
Amorpha fruticosa
50
25
0
0.01
0.1
1
粒径(mm)
10
St.1-1
St.1-2
St.1-3
St.1-4
St.1-5
St.1-6
St.1-7
St.1-8
St.1-9
これからの課題
<アレチウリについて>
今回は主に全体の長さのうち中間部のみを地点ごとに比較したが、今後はまだ測定していない根の部分や先端部の分析を進め各部分とも調査地ごとに比較できるようにする。また、根から先
端部に移行するに連れて栄養塩はどのように変わっているか、窒素安定同位体比の推移、など全体的に比較できるように分析を進める。
他の植物に覆いかぶさるように成長するアレチウリがタチヤナギに影響を与えるのか、影響を与えるとしたらどの程度、どのように影響を与えるのかを検討する。
<イタチハギについて>
イタチハギはマメ科植物のため窒素固定細菌を持つが、サンプリングしたイタチハギもほぼ根粒を持っていた。今後は主に根、根粒、土壌サンプルの全窒素と安定同位体比を分析することに
よってイタチハギやタチヤナギがどのように窒素を利用しているか調べ、さらに同じ場所で生息するタチヤナギ与える影響を検討する。