日本の貧困問題をどうするか ~生活保護制度を経済学で考える~

経済情報入門Ⅱ
生活保護の経済学
学習院大学経済学部教授
鈴木 亘
1
今日のお話の流れ
• 生活保護制度とは何か。
• 稼働層と言われる若い年齢層も生活保
護が受けられる現状。
• 経済学ではどのような改革を考えるの
か。
• 大阪市特別顧問として、現在、行ってい
る西成特区の取り組みの紹介
2
生活保護制度の概要
下記9ページまでは、厚生労働省資料より引用
1 生活保護制度の目的
○ 最低生活の保障
⇒ 資産、能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する者に対し、困窮の程度に応じた保護を実施
○ 自立の助長
最低生活の保障
① 資産、能力等をすべて活用することが保護の前提
・不動産、自動車、預貯金等の資産
・稼働能力の活用
・扶養義務者からの扶養
・年金、手当等の社会保障給付 等
◇保護の開始時に調査
(預貯金、扶養義務者の状況及び扶養能力、年金、手当
等の額、傷病の状況等を踏まえた就労の可否等)
◇保護適用後にも届出を義務付け
② 支給される保護費の額
・厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費から収入を差し引いた差額を保護費として支給
最
低
生
活
年金等の収入
費
収入としては、就労による収入、年金等社会保障の給付、親族に
よる援助等を認定。
預貯金、保険の払戻し金、不動産等の資産の売却収入等も認定
するため、これらを使い尽くした後に初めて保護適用となる。
支給される保護費
自立の助長
・世帯の実態に応じて、年数回の訪問調査
・就労の可能性のある者への就労指導、病院入院者の在宅への復帰促進
等
1
2 生活保護基準の内容
生活保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要
な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでな
ければならない。(生活保護法第8条第2項)
生活を営む上で生じる費用
対応する
扶助の種類
支
給
内
容
生活扶助
基準額は、
①食費等の個人的費用(年齢別に算定)と
②光熱水費等の世帯共通的費用(世帯人員別に算定)
を合算して算出。
なお、特定の世帯については加算が上乗せされる。
→ 母子加算、障害者加算等
アパート等の家賃
住宅扶助
定められた範囲内で実費を支給
義務教育を受けるために必要な学用品費
教育扶助
定められた基準額を支給
医療サービスの費用
医療扶助
費用は直接医療機関へ支払(本人負担なし)
介護サービスの費用
介護扶助
費用は直接介護事業者へ支払(本人負担なし)
出産費用
出産扶助
定められた範囲内で実費を支給
就労に必要な技能の修得等にかかる費用
生業扶助
〃
葬祭費用
葬祭扶助
〃
日常生活に必要な費用
(食費・被服費・光熱水費等)
2
3 東京都区部等の支給額の例 (平成23年度)
生活扶助
標準3人世帯(33歳、29歳、4歳)※
住宅扶助含む
175,170円
244,970円
80,820円
134,520円
高齢者夫婦世帯(68歳、65歳)
121,940円
175,640円
母子世帯(30歳、4歳、2歳)※
193,900円
263,700円
高齢者単身世帯(68歳)
※母子加算、児童養育加算含む。
4 生活保護の手続
事前の相談
・生活保護制度の説明
・生活福祉資金、障害者施策等
各種の社会保障施策活用の
可否の検討
保護の申請
・預貯金、保険、不動産等の資産調査
・扶養義務者による扶養の可否の調査
・年金等の社会保障給付、就労収入等
の調査
・就労の可能性の調査
保護費の支給
・最低生活費から収入を引いた額を支給
・世帯の実態に応じて、年数回の訪問調査
・収入・資産等の届出を義務付け、定期的に
課税台帳との照合を実施
・就労の可能性のある者への就労指導
5 保護の実施機関と費用負担
○ 都道府県(町村部)・市(市部)が実施。
○ 都道府県・市は、福祉事務所を設置し、被保護世帯に対して担当のケースワーカーを設定。
○ 保護費については、国が3/4、地方自治体が1/4を負担。
3
7 保護費支給額の算定
○ 保護費支給額
保護費支給額
=
○ 最低生活費
最低生活費
最低生活費
-
収入認定額
※ 各扶助は、世帯の実状に応じ、必要がある場合に算定
=
生活扶助
+
住宅扶助
+
教育扶助
+
医療扶助
+
介護扶助
+
出産扶助
+
生業扶助
+
葬祭扶助
=
勤労収入
+
その他収入
+
○ 収入認定額
収入認定額
・超過勤務手当、通
勤手当等含む(勤労
控除後※)
扶養義務者からの扶養
・児童扶養手当、年
金等の社会保障給
付
※ 勤労収入がある場合の収入認定額の算定方法
勤労収入
-
勤労控除額
-
実費控除額
・社会保険料や通勤費等
(勤労収入がある世帯の平均額)
65,830円
-
22,445円
-
4,863円
=
38,522円
平成16年 被保護者全国一斉調査
○ 勤労控除の趣旨
①勤労に伴う必要経費を補填
勤労収入を得るためには、勤労に伴って被服費や知識・教養の向上等のための経費が必要となることから、
勤労収入のうちの一定額を控除する。控除額は収入額により異なる(収入額8,340円までは全額控除)。
②勤労意欲の増進・自立助長
5
被保護世帯数、被保護人員、保護率の年次推移
(万)
260
2.50
2.42
250
平成24年3月(速報値)
2.40
2,108,096人
1.65 %
1,528,381世帯
2.30
240
230
2.16
220
被
保
護
世
帯
数
(
世
帯
)
・
被
保
護
人
員
(
人
)
210
2,046,646
200
1,929,408
2.20
2,108,096
2.00
平
190
180
1.80
1,763,572
景
1.63
170
6
1.22
130
1.30
岩
110
武
戸
100
景
景
90
気
気
2 9 ~ 3 2 33~35
80
699,662
70
イ
第
リ
ザ
1
50
1.50
1.21
2
次
次
石
石
油
油
被保護人員
ギ
ッ
景
危
危
気ク
気
機
機
48・49
5 4 ~ 5 8
746,997
658,277
1.20
1,274,231
ピ
643,905
1.30
1,410,049
第
ナ
37~39 4 0 ~ 4 5
1.40
1.38
1.22
ン
611,456
1.60
1.52
1,528,381
3
1.18
景オ
661,036
60
~
1,431,117
1,344,306 1,349,230
140
神
1
1,426,984 1,469,457
1,598,821
120
1.70
1.65
気
1,627,509
150
1.90
1,952,063
成
1.74
160
2.10
1.10
1,014,842
0.72
780,507
保 護 率
882,229
0.82
1.00
世
898,499
被保護世帯
0.70
789,602
界
金
融
危
機
0.90
0.80
0.70
585,972
707,514
623,755
0.60
20
601,925
0.50
昭
和
26
年
度
30
40
資料:福祉行政報告例より保護課にて作成
50
60
平
成
2
4
7
10
21 22 24
年
3
月
7
保
護
率
(
%
)
都道府県・指定都市・中核市別保護率(平成24年3月時点)
○全国平均保護率:1.65%(0.98%)
○都道府県別保護率
○指定都市別保護率
上位10都道府県
○中核市別保護率
保護率(%)
上位10市
保護率(%)
大 阪 市
5.72 ( 3.13
)
大 阪 府
3.40 ( 1.93 )
札 幌 市
3.71 ( 2.35
)
函 館 市
4.67 (
-
)
北 海 道
3.10 ( 2.07 )
京 都 市
3.19 ( 2.27
)
東大阪市
4.16 (
-
)
高 知 県
2.79 ( 1.78 )
神 戸 市
3.15 ( 2.28
)
旭 川 市
4.00 ( 2.64 )
福 岡 県
2.58 ( 1.68 )
堺
3.01 (
)
尼 崎 市
3.94 (
京 都 府
2.33 ( 1.61 )
福 岡 市
2.83 ( 1.69
)
高 知 市
3.75 ( 2.54 )
沖 縄 県
2.26 ( 1.41 )
北九州市
2.45 ( 1.27
)
長 崎 市
3.06 ( 1.61 )
青 森 県
2.22 ( 1.36 )
広 島 市
2.32 ( 1.19
)
青 森 市
2.93 (
東 京 都
2.14 ( 1.31 )
川 崎 市
2.23 ( 1.55
)
鹿児島市
2.54 ( 1.60 )
長 崎 県
2.14 ( 1.28 )
名古屋市
2.08 ( 0.96
)
松 山 市
2.38 ( 1.47 )
徳 島 県
1.92 ( 1.20 )
横 浜 市
1.85 ( 1.11
)
和歌山市
2.28 ( 1.23 )
岡 山 市
1.83 (
)
千 葉 市
1.82 ( 0.86
)
保護率(%)
相模原市
1.70 (
)
滋 賀 県
0.77 ( 0.51 )
仙 台 市
1.58 ( 0.82
)
前 橋 市
1.06 (
静 岡 県
0.76 ( 0.35 )
さ い た ま市
1.54 (
-
)
郡 山 市
0.96 ( 0.51 )
山 梨 県
0.68 ( 0.32 )
新 潟 市
1.36 (
-
)
柏
0.92 (
群 馬 県
0.67 ( 0.38 )
静 岡 市
1.15 (
-
)
金 沢 市
0.84 ( 0.50 )
山 形 県
0.62 ( 0.38 )
浜 松 市
0.92 (
-
)
高 崎 市
0.79 (
石 川 県
0.61 ( 0.38 )
長 野 市
0.76 ( 0.30 )
岐 阜 県
0.56 ( 0.26 )
豊 橋 市
0.69 ( 0.32 )
長 野 県
0.53 ( 0.27 )
豊 田 市
0.59 ( 0.29 )
福 井 県
0.46 ( 0.25 )
岡 崎 市
0.59 (
富 山 県
0.32 ( 0.20 )
富 山 市
0.41 ( 0.27 )
下位10都道府県
注:指定都市及び中核市数値は再掲
市
-
-
保護率(%)
-
-
)
)
(保護率)
:2.5%以上
:2.0%以上2.5%未満
:1.5%以上2.0%未満
:1.0%以上1.5%未満
:1.0%未満
下位10市
保護率(%)
市
-
-
)
)
)
)
8
生活保護費負担金(事業費ベース)実績額の推移
生活保護費負担金実績額(事業費ベース)は平成21年度に3兆円を突破し、さらに増加している。全
体の約半分は医療扶助が占めている。
(億円)
40,000
37,232
33,296
35,000
35,148
388
(1.2%) その他の扶
助
30,072
30,000
1.2%
25,000
20,000
20,772
0.6%
22,181
0.7%
23,881
0.7%
25,090
0.7%
25,942
0.9%
26,333
1.0%
26,175
1.0%
27,006
1.0%
15,701
(47.2%) 医療扶助
48.3%
51.8%
51.9%
51.9%
51.3%
49.9%
49.6%
659 介護扶助
(2.0%)
52.4%
15,000
10,000
54.1%
1.1%
10.8%
2.0%
1.3%
11.4%
5,000
1.5%
11.8%
1.7%
12.2%
1.8%
1.9%
2.1%
2.1%
12.6%
13.1%
13.7%
14.1%
33.3%
33.2%
19
20
33.5%
34.3%
34.3%
33.5%
32.7%
32.8%
13
14
15
16
17
18
14.7%
33.8%
4,996 住宅扶助
(15.0%)
11,552
生活扶助
(34.7%)
0
21
22
23
24
(年度)
資料:生活保護費負担金事業実績報告
※1 施設事務費を除く
※2 平成22年度までは実績額、23年度は補正後予算額(前年度精算交付分除く)、24年度は当初予算案額
※3 国と地方における負担割合については、国3/4、地方1/4
9
世帯類型別の生活保護受給世帯の前年比伸び率
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
2010年度
2011年(暦年)
総世帯数
3.3%
2.7%
3.9%
10.9%
10.7%
7.2%
うち高齢者世帯
4.8%
5.0%
5.3%
7.5%
7.2%
5.7%
うち障害者世帯・傷病者世帯
1.9%
0.9%
1.5%
7.1%
6.8%
5.4%
うち母子世帯
2.3%
0.3%
0.5%
6.6%
9.2%
5.6%
うちその他の世帯
2.4%
1.3%
9.2%
41.5%
32.2%
15.2%
注)厚生労働省大臣官房統計情報部「社会福祉行政業務報告」(福祉行政報告例)より。
10
急増の原因
• 急増の背景は、①景気の低迷(失業増加)と、
②高齢化および③2009年から厚生労働省の
政策スタンスが変わり、「稼働層」にも生活保
護受給を緩和したことが大きい。
• ただし、リーマンショックの直後には、非正規
労働者へのセーフティーネットが整備されてお
らず、緊急措置としてはやむを得なかった。問
題は、2009年以降3年半もたつのに、緊急措
置をずっと続けていること。
• 財政の圧迫も大きい。稼働層への保護拡大は
不公平感を助長し、批判が高まっている。 11
生活保護率低い、捕捉率低い?
• 昨今の批判に対して、日本の生活保護率は
まだ低い、捕捉率も低く、諸外国並みに保護
率を引上げるべきで、「今は正常化の過程だ
」という意見がある。
• しかし、例えばイギリスの生活保護の定義は
、第二のセーフティーネットを含むもの。諸外
国も就労支援付の生活保障を含み、日本の
ように狭い定義ではない。
• 低所得者を救うべきであるが、それは全体的
な政策の中で行うべきで、生活保護ですべて
12
救うというのはあまりに極論。
稼働層についての改革の方向性
• 稼働層については、基本的に第二のセーフテ
ィーネットの中で対処すべき。ただし、第二の
セーフティーネット自体は大きく充実させ、な
おかつ、中身も効率的・有効なものに変える
必要がある。
• 生活保護の中にいる稼働層に対しても、就労
するインセンティブを確保して、自ら進んで卒
業してゆく仕組みを整える。仕事や中間的就
労の場も用意する。
13
第二のセーフティーネットの課題
• 第二のセーフティーネットから生活保護に安易
に移れる制度はやめ、どちらかしか選べない仕
組みとする。
• 求職者支援制度の生活費は中途半端。生活保
護費に近い水準に引き上げ、生活保護に代わる
仕組みとする。
• 受講者にも成績に応じたインセンティブを。認定
企業の評価については、クリームスキミングが
深刻なので、訓練前のアセスメントをすべき。イ
ギリスのエージェント制度の成功報酬制度を参
14
考にしてはどうか。
• 総合支援資金貸付は、そもそも社協が行うこ
とに無理がある。貸付の基本からしてなって
いない。大阪府協では焦げ付きが深刻化。
• 求職者支援制度に一本化するのも一案。続
けるにしても、パーソナル・サポートと組み合
わせた人的サポートを中心として、貸し付け
自体はその支援の一手段とすべき。パーソナ
ルサポーターが判断を行う。
15
• 【参考】イギリスの制度
• 福祉事務所とハローワークの機能が一体となっ
た「ジョブセンタープラス」が窓口。
• 相談者はアセスメントを受け、狭義の生活保護
である「income support」か、就職活動や職業
訓練を条件として生活費が支給される「
Jobseeker’s allowance」に仕分け。稼働層は
income supportは受けられず、厳しい就労指導
・求職活動が条件となる。
• 就職活動や職業訓練はエージェントに委託。
• 就労を条件とした給付付き税額控除(Eearning
Income Tax Credit)も充実。
16
生活保護への就労インセンティブ
• 第一の仕組みは、凍結貯蓄制度(就労積立制
度)の導入。
• 勤労控除を拡大する、あるいは就労収入をき
ちんと得られるようにすべきとの議論は昔から
ある。ワーキングプアとの不公平論で暗礁に。
• そこで、凍結貯蓄を導入して、生活保護から脱
した場合に自分の収入になる制度とする。「貧
困の罠」を乗り越えるために、初期資金がある
ことも重要(自立支援センターおおよどの研究
(水内・花野(2004)))。勤労控除は継続。
17
仕事作りも重要
• もう一つの問題は、仕事が少ないこと。求人が
なければ、就労することができない。
• 一つの方法は、企業に対する人件費補助金(
スウェーデンで実施)の導入。企業は実際の時
給よりも低い時給で、実質的に人を雇えるので
、求人が増加する。多様な業種が求人を出せ
ばマッチングも進む。ただし、公費がさらに出る
ことがネック。
• 財政が厳しいのであれば、最低賃金の適用除
外(現在は減額制度)を適用する方法もある。
18
• 最低賃金の減額をしても、生活保護受給者は
生活保護費があるので、生活は問題がない。
• いつまでも減額をするわけにはいかないので、
3年ぐらいかけて元の賃金に戻す計画で、企業
にOJTを課す制度。自立支援プログラム、職業
訓練としての人件費補助という位置づけ。
• 公費がまったくでないどころか節約になる。
19
• 【参考西成特区での議論】
• 西成区、特にあいりん地域ついては、若い稼働
層ではなく、高齢単身者への対策が中心。
• パチンコ、賭博、昼から居酒屋にいる、覚せい
剤など、彼らへの風当たりは大きい。しかし、そ
の原因は孤独、生きがいのなさとみるべき。
• 彼らの多くはまったく働けない人ではないが、
就労自立は困難。半就労半支援、多少の就労
、あるいは有償ボランティア、ボランティアなど
の形で、居場所や生きがいづくりを行う。その
中で、不適切な支出を減らしてゆく。
20
• 自立支援プログラムの活用を模索。
• 仕事としては、まちの問題解決(清掃、不法投
棄見回り、通学路の見守り、孤立化する生活保
護受給者の見守り・見回り)を事業化する。
• 「第二のセーフティーネット」である特掃も、同様
にメニュー拡大を行い、まちの問題解決に活用
。年齢層を下げることも一案。
• さらに、公的な需要については、総合評価入札
の条件化も行う方向で議論。
• ソーシャルファーム、ソーシャルビジネスへの支
援を行い雇用創出する。ただし、雇用者の質や
能力を管理するための中間支援組織拡充や、
派遣会社化を検討。そこに補助金を入れる形。21
• 派遣労働会社化をする意味は、就労に伴うリ
スクを分散。就労特化型の無料低額宿泊所も
、同様な形態と解釈できる。
• そのほかでは、住宅扶助を住宅の質に応じて
評価する制度と、施設等がやっている服薬管
理や金銭管理、医療機関への付き添い等のケ
アに対する補助金制度の実施を検討。
• 住宅扶助の質に応じた減額制度は、貧困ビジ
ネスの防止に(ガイドラインによる減額)。
• また、支援ネットワークの資金援助による拡充
は、不正受給や不適切支出の管理や、犯罪に
巻き込まれないための、防止策にもなる。
22
医療扶助の問題について
• 現在、生活保護費の半分を占める医療扶助。
他国では、そもそも医療扶助は生活保護費に
入らない。異常な状況。
• 医療扶助が大きくなる理由は、そもそも病気で
医療保険から脱退した貧困者が多いこと、保
険者(特に国保)にも放置して生活保護にする
モラルハザードが起きる、自己負担がないこと
から患者のモラルハザードが起きること、医療
機関側にも過剰診療のモラルハザードが起き
ることの4点。
保護費の構図
(平成20年度予算ベース)
保護費の総額及び扶助の種別等の構成
総額:2兆6,888億円
生活扶助
8,557億円
32.6%
住宅扶助
3,700億円
14.1%
医療扶助
1兆3,063億円
49.8%
介護 そ
扶助 の
他
624 281
億 億
円 円
2.4% 1.1%
※国庫負担額は上記の3/4である。
11
• これに対して1割の自己負担を課すべき、ある
いは少額の自己負担を課すべきとの見方。
• まず、簡単な方法は国保に入れ、保険料と自
己負担を保護費で払うこと。介護扶助が同じや
り方。
• ただ、自己負担1割を課すことは実際上は難し
い。生活保護の金銭管理能力は低い。せいぜ
い、自己負担(あるいはその一部)は償還払い
にするということぐらいか。
• 一方、自己負担がない医療制度はアクセスコ
ントロールをするのが、世界的常識である。
• イギリスやカナダの医療制度はこれを実施。
• 被保護者は基本的に登録制の家庭医(ゲートキ
ーパー)に緊急時以外はかかる制度とする。家
庭医は一定の補助金をもとに、自立支援プログ
ラムを作成して患者に寄り添ってもらう。
• 緊急時や専門医療機関にかかる必要がある際
にも、セカンドオピニオンやチェック役をして、過
剰診療や過剰投薬を防ぐ役割を課す。
• 西成区では、8月から、医療機関等確認制度を
実施。また、医療機関に対する独自の指定制度
を導入した(とりあえず、新規登録から実施)。
• 行路病院、介護・医療・居住の複合施設の問題
。