マイコプラズマ・クラミジア・リケッチア感染症 近畿大学 呼吸器・アレルギー内科 宮良高維 2010年4月7日 非定型肺炎(異型肺炎)とは何か? それでは定型肺炎とは何か? ●定型肺炎とは肺炎球菌肺炎に代表される一般細菌肺炎. 非定型肺炎の呼称が生まれた1940年台前半の非定型肺炎の概念 ●グラム染色で病原体が認められない. ●通常の細菌培養に提出しても分離培養できない. ●胸部単純写真所見と比較して臨床症状が軽い. ●学校,軍隊内等集団生活をする若い人によく見られる. ●ペニシリン,サルファ剤が無効. 原発性異型肺炎(Primary Atypical Pneumonia)(1940年代の概念) Primary=原因がよくわからない. 非定型肺炎(異型肺炎)とは • 1938年までは市中肺炎の起炎菌は主に肺炎球菌であった. • その後グラム染色で確認出来なかった微生物や細胞内寄生微生物 が新たに見いだされてきた. ●Mycoplasma pneumoniae:マイコプラズマ・ニューモニエ(1964)(Eaton因子) ●Chlamydia pneumoniae:クラミジア・ニューモニエ (1985)(TWAR株) ●Chlamydia psittaci:クラミジア・シッタシ (1930に形態的に確認) ●Legionella pneumoniae :レジオネラ・ニューモフィラ(1977) (その他,ニューモシスティス・カリニ,ウイルス性肺炎も広い意味での 非定型肺炎に含まれることがある.) マイコプラズマ・ニューモニエ発見の経緯 PAPとEaton因子はどこでつながったか? ●Eatonが1944年にウイルス用フィルターの濾過物で齧歯類に肺炎を起こさせる 因子(Eaton因子)を発見. ● Eaton因子はふ化鶏卵で経代可能であるが,人工培地では培養できなかった. このため20年間はウイルスと考えられていた. ● Eaton因子は原発性異型肺炎 (Primary Atypical Pneumonia: PAP)から快復した 症例の血清で中和されることが見いだされた. ● PAP濾過物を接種されたボランティアよりの血清でEaton因子が中和された ● ClydeがEaton因子の組織培養に成功し,Mycoplasmaであると確定(1961年). ●Chanockが無細胞人工培地上で培養に成功(1962年). マイコプラズマ,クラミジア,細菌,ウイルスの特徴 マイコ 0.3μm 大きさ ー 細胞壁 + DNA+RNA 人工培地での増殖 + + 強い宿主特異性 抗体での増殖阻止 + クラミジア 細菌 0.3μm 1〜2μm + + + + ー + ー ー + ー ウイルス <0.5μm ー ー ー + + Mycoplasma pneumoniae マイコプラズマ・ニューモニエ マイコプラスマ・ニューモニエの疫学 感染形式: 通常は飛沫感染,直接あるいは間接の接触感染形式 (原子力潜水艦内での空気感染の事例はある.) (JAMA 1966) 潜伏期間: 2〜3週間 ( Pediatrics 1980,Scand J Infect Dis 1969, JAMA 1966) 感染年齢: 高齢になるほど少ない. 流行環境: 学校等では,仲の良い遊び友達の間ではやる, インフルエンザの様にクラス内大流行となることは稀. マイコプラスマ・ニューモニエの疫学 流 行: 社会集団内での流行の進行は緩除で, 1〜2年かけて進行する. 流行環境: 軍隊内での感染率は高い(若年者,集団生活) 41%:(米国海兵隊 Am J Epidemiol 1969) 45-57%:(米国海軍 Am J Epidemiol 1976 ) (これらの血清陽転化症例中で実際に肺炎を発症 しているのは3〜5%か?) マイコプラスマ・ニューモニエの診断(臨床症状;重 要) 症状発現は古典的な肺炎球菌による肺炎が突発するのと比較して 緩除に進行.ウイルス性上気道炎と類似する. 症状: 咳そう: 全身倦怠感: 頭痛: 悪寒: 咽頭痛: 99% 89% 66% 55% 54% Foy et al. Am.J.Epidemiol 1973 マイコプラスマ・ニューモニエの特徴 大きさ:150-200nm. 細胞壁:持たないのでペニシリン,セフェムなどは無効. 咽頭からの菌分離:発症1週間前から分離される. 発症後の1週間が最も菌分離率が高い. 病原性:P1蛋白で気道粘膜へ付着.活性酸素で気道粘膜障害を来す AIDS症例では重症化するが,浸潤影を生じない. 発症に宿主免疫反応が関与,5歳以下では軽い
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