見るからに

高级日语Ⅰ
第8课
蘭
竹西 寛子
1
作者について
竹西 寛子
2
竹西 寛子(1929年4月11日 - )は、日本の小説家、
1994年芸術院会員。2012年文化功労者。
広島市に生まれる。第二次世界大戦中の1942年、県
立広島女子専門学校に入学、戦争末期には学徒動員
により軍需工場などでの勤労奉仕に従事した。1945年8
月6日の原爆投下の際は、たまたま体調を崩して爆心地
から2.5kmの自宅に在宅していたために大きな被害を免
れることができたが、多くの級友が被爆死し、この体験
が後の文学活動の根本になっている。1952年早稲田大
学国文科を卒業した後、1957年に筑摩書房に入社し、
文学全集等の編集に携わった。その傍らで評論を書き
続け、1962年に退社し、執筆活動に専念。
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文化功労者〔賞〕
文化の発展に優れた功績をあげた個人に贈
られる称号。1951年に制定された文化功労
者には終身年金が贈られる。文化勲章よりも
多くの者が選ばれ、文化勲章に次ぐ栄誉とな
っている。勲章受章者は功労者の中から選
ばれる。
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主な代表作に評論『往還の記 - 日本の古典
に思う』、自身の被爆体験をテーマとする小説『
管絃祭』、小説『贈答のうた』などがあり、主要著
作をまとめた『竹西寛子著作集』(全5巻)や『竹
西寛子随想集』(全3巻)がある。王朝文学の評
論や被爆体験に根ざした小説を手がけてきた。
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受賞歴
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1964年に『往還の記 - 日本の古典に思う』で田村俊子賞
1964年に『儀式』で女流文学賞候補
1973年に『式子内親王・永福門院』で平林たい子賞
1976年に『鶴』で芸術選奨新人賞
1978年に『管絃祭』で女流文学賞
1981年に「兵隊宿」で川端康成文学賞
1986年に『山川登美子』で毎日芸術賞
1994年に日本芸術院賞
2003年に『贈答のうた』で野間文芸賞
2012年に文化功労者
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列車の中は、国民服やモンペ姿の人達で混
み合っていた。立ったままで座席に寄りかかって
いる者がある。通路に荷物を置いてそれに腰を
下している者もいる。
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~かかる
1、指向を表す「~かかる」。対象に向かって何らかの動作・
作用を及ぼす。
葉が頭に散りかかる。
人が壁によりかかる。
犬が人に吠えかかる。
2、始動を表す。
「今にも…しそうになる。」また、「ちょうど…する。」「…しは
じめる。」などを意味する。
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一年ばかり重病に倒れ、あやうくきゃつの前に手
をあげかかったが、どうやら切り抜けた。
一時鎮まりかかった火勢が再び強くなった。
秘密連絡メモも発見されかかったが、同氏がメモ
を飲み込んで事なきを得た。
近くの山に登りかかったところで、突然大粒の雨
がポツポツと降り出し、あわてて引き返してきた。
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「~始める」「~出す」との使い分けは?
最も大きな違いは「~始める」と「~出す」が始動態のみを
表し、将現態を持たぬことである。すなわち、これらの語は
継続動詞と結合して「開始」の段階を示すのである。瞬間
動詞と結合した場合は、複数の主体の動作・作用を表す
場合に限られている。
町のネオンが次々と消え始める。
人々が三々五々帰りだす。
さて、同じ始動を表すといっても、「~始める」と「~出す」
は、その動作・作用が続行し、終了に至ることを予想するこ
とができる。これに対して、「~かかる」は中断や中止が前
提とされることが多い。
二人掛けの座席はいたるところで三人掛けになり、
窮屈そうに身を寄せ合った乗客が、晴れない顔付き
で扇子や団扇を使っている。網棚の荷物をしきりに
気にしている老婆は耳が遠いらしく、隣の男に、この
次はどこの駅かと大きな声でたずねていた。
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きゅうくつ【窮屈】
(1)せまかったり、小さかったりして、動きのとれないようす
。(2)[予算などに]ゆとりのないようす。(3)かたくるしくて、
のびのびできないようす。気づまり
[1] 窮屈な(服、下着、靴、箱、場所、部屋、ベッド、座席、車
内、状態、姿勢、横幅)
[2]窮屈な(生活、暮らし、資金繰り、予算)
[3]窮屈な(空気、雰囲気、スケジュール、思い、考え方、規
則、伝統、職場、場、家庭、世の中、生き方)
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太ってズボンが窮屈になる。
親類の家に預けられ窮屈な少年時代を過ごす。
窮屈なことは嫌いだから略式にしよう。
資金繰りが窮屈な理由を知りたい。
上司の見舞いは部下に窮屈な思いをさせる。
姑との同居を窮屈に感じる。
敬語を使うのは窮屈で仕方ない
相手に窮屈だと感じさせない程度に面倒を見る。
会話が途絶えて窮屈な気分になる。
裁判では勝ったが、原告はまだ気分が晴れないらしい。
1、半日かかってやっと霧が晴れて飛行機が飛べるよう
になった。
2、3年間も疑いをかけられたが、おかげさまでやっと晴
れたのだ。
3、雲がだんだん東の方に移動して、西の空が明るく晴
れたのだ。
4、問題を起こしたものを首にする約束で、やっとみんな
の気持ちが晴れた。
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窓際の席で父親と向かい合っているひさし少
年は、頑丈そうでもないからだを腰板に押しつけ
られながら、さっきから歯の痛みをじっと、堪えて
いるのだが、こんな時は、遠くの席の赤ん坊の
泣き声まで耳に立った。
少年はなぜ遠くの席の赤ん坊の泣き声まで耳
に立つのか。
暑くて混雑した列車の中にいて、歯が痛くて耐え
られないので少年はいらいらしているのだ。
小学校も最後の夏休みに、父親の出席する
葬儀について行ったのはいいけれど、帰り列車
に乗ると聞もなく、思いがけない歯痛になった。
いつ父親に言い出したものかと周囲の乗客に
も気兼ねして、すっかり固くなっている。
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「疑問詞+動詞過去形+もの(だろう)か」は「~し
たものか」や「~たらいいものか/~ばいいものか」
の形で、主に方法がわからず「どうしたらいいだろう
か」と自問する表現を作る。が、疑問の「~のだろう
か」と同じ意味を表すこともあるが、どちらの意味か
は文脈から理解するしかないだろう。この「~もの
か」の話し言葉として、男は「~もんか」、女は「~も
のかしら」などが使われます。
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彼はどうしたものか、最近学校に来ないねえ。<自問>
卒業後どうしたものか、悩んでいるんです。 <疑問>
夫の誕生日に何を贈ったものかしら、う~ん、困ったなあ。
癌だということをどう父に話したものか、決め兼ねていま
す。
(癌だということを父に話していいものか、決め兼ねていま
す。)
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きがね【気兼ね】
人に対して、気をつかうこと。
[類]遠慮・気づかい
気兼ねのいらない人
気兼ねなく話す
相手に気兼ねがして,親しみがもてないのだ。
一般庶民が卵を気兼ねなく口にできるようにな
るのは、高度経済成長期以降である。
父親は、扇子を片手に握りしめたまま、反対の手で、時
々、胸のポケットからハンカチーフを取り出して額の汗を押
えていた。家にいる限り、暑さを訴えることも、寒さを訴える
ことも滅多にない父親であるが、その父親がこの車内の暑
さを耐え難く思っているのはほかでもない。平素着馴れな
い国民服というものを着用しているのと、列車の窓に鎧戸
が下されているためだった。
「その父親が~」とはあるが、「この父親が」に置き換えら
れるか。なぜか。
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訴える
(1) 「裁判に訴える」
法による裁きを願う。
(2) 「悲しみを訴える」「不平を訴える」
苦情や苦痛などを人に告げる。
(3) 「武力に訴える」「腕力に訴える」
(目的をとげるために)ある(激しい)手段・方法を用いる。
(4) 「聴衆に訴える」「感情に訴える」
相手の心や感覚に強く働きかける。
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名誉毀損で政治家から訴えられる。
先生に友人のいじめを訴える。
彼は口で負けるとすぐ腕力に訴える。
話してだめなら最後の手段に訴えるつもりだ。
この文章は人の心に訴える力がない。
日本料理は目に訴える美しさも大切にする。
候補者は聴衆の理性よりも感情に訴える演説をした。
親は子の情に訴え、必死で説得を試みた。
視覚に訴える本が多くなった。
その講演は聴衆の理性に強く訴えた。
1、これは腕力に訴えるゲームである。
2、あれは明らかになにかを訴えている目つきであ
る。
3、あれは視覚に訴える芸術で、勘の鈍い人にとっ
ては非常に難しいものである。
4、最近外国人を訴える民事訴訟が増えているよ
うだ。
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しかし、この鉄道の沿線にはずっと軍需工場が
続いているので、乗客はその地域を通る間中、ど
んなに暑くても当局の命令通り窓に鎧戸を下さな
ければならなかった。
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見るからに暑苦しい力一キ色の服の襟元を
詰めて、わざと風通しを悪くした部屋でゆるい目
隠しをされているような時間が、さすがの父親
にも耐え難しく思われた。
「さずがの父親」とはあるが、どう理解すべき
か。
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見るからに~
「見るからに~」は「一見して、すぐ~と感じる」という意味を表
し、「~そうだ」を伴うのが多い。この文型は視覚による判断
を表すが、同じ意味を「一目で~とわかる」などを使ってもよ
かろう。
 見るからにおいしそうな料理だなあ。よだれがでちゃうよ。
 見るからに一雨ありそうな雲行きになってきた。
 彼は2ヶ月入院していたそうで、昨日キャンパスであったが、
見るからに病気上がりのたよりない様子だった。
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戦争をする相手の国が増えて、質素と倹約の
生活を政府がすすめるのと見合うように、近郊
へ買い出しに出掛ける人の数も次第に増えてい
る。現にこの車の網棚の荷物も半ばは大きなリ
ュックサックで占められていた。通路も塞がって
いるので、互に気軽に洗面所へ立つことも出来
ない。
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ひさしには、座席にいて見渡せる乗客のどの顔
も、ー様に不機嫌そうに見えた。自分の痛みが高
じると、人々の不機嫌も高じるように思われた。
「ひさしには、座席にいて見渡せる乗客のどの顔
も、ー様に不機嫌そうに見えた。」とはなぜか。
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車内風通しが悪くて、耐え難い暑さだった。買
出しの乗客が多くいたので通路もふさがってい
た。その上、ひさしは歯の痛さに苦しんでいたの
で、乗客のどの顔も、不機嫌そうに見えた。
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文章の中の言葉をあげて、列車中の様子を簡
単に説明してみなさい。
「混み合って」「窮屈」「晴れない顔つき」「大きな
声」「泣き声」「暑苦しい」「風通しが悪い」「塞が
っている」……
 ひさし少年はあんな列車にいて、どんな気分で
あるか。
不機嫌でいらいらしている

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父親は、工場を休んでの葬儀への出席だった。
離れた土地にまでわざわざ一人息子を伴う気にな
ったのは、長い間、親戚以上の懇意で頼り合った
同業の故人に、ひさしが格別可愛がられていたの
も理由の一つだが、この時勢では、息子を連れて
旅する機会も、これからはなくなるだろうという見通
しもあってのことだった。しかしそれだけは、ひさし
にも、母親にも言わなかった。
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~てのこと
「~てのこと」は「~をして(~があって)、はじめて可能」と
いう意味を表す。前の条件がなければ、後ろの結果も成
立しないという前提条件を強調する表現。
この職を勧めるのは君の将来を考えてのことで、別に君
の将来を悪くしようという目的ではない。
彼女が会社を辞めたのは、きっと何かわけがあってのこ
とだろう。
私が仕事に専念できるのも、全て妻の内助があってのこ
とです。
また、「~てのこと」中の「こと」は文脈によって、
他の言葉に置き換えられる。
 そりゃあ、お金も欲しいけど、「命あっての物種」
って言うじゃないか。
 お客あっての商いだということを忘れてはいけな
い。
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何年か前までは、家族で避暑地に滞在する生活
もあった。けれども父親の見る限り、再びそうした生
活に戻れるあてはなく、工場での働き手も、一人、
また一人と兵役に抜き取られて、次々に戦場に送ら
れていた。工場の規模でさえ、否応なしに縮小を迫
られる日のそう遠くはないことも、この父親にはすで
に充分予感されていた。
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否応なしに
「否応」とは「いや」という返事と「よろしい」という
返事。「否応なしに」是非を言わせないこと。承知
と不承知を言わせないこと。
否応なしに寄付をさせられた。
彼を取り巻く環境が否応なしに彼にその道を選
択させたのだ.
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戦争が激しくなればなるほど、軍需工場の規模
は大きくなるはずだ。なのに、「工場の規模でさ
え、否応なしに縮小を迫られる日のそう遠くはな
い」とは、どういうことであるか。
工場での働き手も少なくなったし、敗戦の日が
遠くはないから。
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父親は、ひさしを伴うのに、葬儀という名目があってむし
ろよかったと思った。それで、葬儀が終わると、予め頼んで
おいた店に寄って、ひさしに好物の水炊きを食べさせた。
店と言っても、表に看板も掲げていない仕舞屋ふうの造
りである。ここの女将と亡くなった人が普通の親しさではな
かったところから、父親はそれまでにも幾度かこの店に案
内されていたが、水炊きのよかった記憶がひさしに繋がっ
て、無理を承知で頼んでみた。
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無理を承知で
無理を承知でお願いしている。
無理を承知でやっていただけませんか。
もっと丁寧な言い方「ご無理は承知しておりますが 」が
あるが、何か日本語として違和感があるような気がする
から、慎重に使いなさい。
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ひとしきり思い出話に涙を拭い続けた女将は
、こんな時ですから、材料も大っぴらには手に入
りませんし、板前も兵隊さんに取られてしまって
、いつまで営業出来ますやらと言いながら、それ
でも贅沢な食卓をととのえてくれた。父親はちょ
っと箸をつけただけで専ら酒をふくみ、ひさしの
食欲を満足そうにながめていた。
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ひさしは、初めて会った女将の物言いや仕種を
見て、他人の死をこんなにまでかなしむのは、きっ
と優しいひとに違いないと思ったが、そのうちに、
そのかなしみのー通りでない様子から、自分を可
愛がってくれた人の今まで知らなかったー面を、そ
れとなく知らされもした。
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一通り
(1)はじめから終わりまでざっと。ひとわたり。ひとあたり。
あらまし。大体。副詞的にも用いる。
「一通り説明しておく」「一通り目を通す」「一通りのことは
知っている」
(2)普通であること。世間並み。
「一通りの教育はうけさせたつもりだ」「その苦心は一通
りでなかった」
(3)一つの方法。
「やり方は一通りだけではない」
あの小父さんは、自分はさきにさような
らしたからいいようなものの、この女のひと
はこれからどうやって生きていくのだろう。
今日という日に、大事な人のお葬式にも出
られないで、同じ土地にひっそり働いてい
る女のひとを知ったことが、ひさしに、漠然
とながら人生の奥行きのようなものを感じ
させた。
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……からいいようなものの/からよかったものの
「いいような(よかった)ものの」は「~それほど
大きな問題にならずにすんだ」「~まだいいだが
」などの意味で、最悪な状態は避けられて幸い
だという気持ちが含まれる。
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事故が起きた日は日曜日だったからよかったものの、
ウィークデーだったら、死傷者がもっと多く出てくるかも
しれませんよ。
家族が少ないからよいようなものの、私のような大家族
では食事代だけもたいへんだよ。
彼女が自分でやめると言い出したからいいようなもの
の、さもなければ、どう言って彼女をやめさせるのだろ
うか。
今日という日に、大事な
人のお葬式にも出られな
いで、同じ土地にひっそ
り働いている女のひとを
知ったことが、ひさしに、
漠然とながら人生の奥行
きのようなものを感じさせ
た。
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在今天这样的日子里,
这个女人不能出席重要的
人的葬礼,而只能在同一
个城市里默默地工作。知
道这个后,小久隐隐约约
感到人生如此难以琢磨。
町中の掘割を、静かな音を立てて水の流れている
町だった。あの世へ旅立ったばかりの人が、今にも
後から追って来そうなその掘割のそばを、父親はもう
二度と通ることもないだろうと思いながら、ー歩ー歩
を踏みしめるように、黙って駅に向かっていた。
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何とか我慢しよう、とひさしは思った。父親に
訴えたところで、父親も困るだろう。楊枝もなけ
れば痛み止めの薬があるわけでもない。ところ
で、改めてあたりを見廻してみて、目覚めている
のがどうやら自分一人と分かると、痛みは耐え
難くつのってきた。窓の外の景色に気を紛らせ
るというわけにもいかないし、嗽に立つことも出
来ない。
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募る
[一](自五)
マイナスの心理的傾向や徐徐に強まって行った何かの勢
いが、ついには抑えきれないほどにまで高まる。
「不安が募る」
[二](他五)
何かの目的をしとげるために必要な金員・人員や物資な
どを、広い階層にわたって集める(運動を推し進める)。
「寄付(会員)を募る」
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[1](嵐、風、雨風、寒さ、騒がしさ、興奮、危険、不機嫌、
思い、恋しさ、かわいさ、悲しさ、寂しさ、後ろめたさ、心細さ
、ホームシック、鬱陶しさ、哀れさ、憎しみ、怒り、不安、不
平、欲求不満、いらだち、苦痛、不信感、無力感、不快感、
絶望感、恐怖、恐ろしさ)が募る
[2](希望、賛同者、参加者、加入者、会員、同志、希望退
職者、援助、寄付、基金、標語)を募る
[3](一層、ますます、いよいよ、だんだん、激しく、日増し
に、限りなく)募る
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すると父親は、手にしていた扇子を開きかけ、いきなり縦
に引き裂いた。そして、その薄い骨の一本を折り取ると、呆
気にとられているひさしの前で、更に縦に細く裂き、
「少し大きいが、これを楊枝の代わりにして。」
と言って差し出した。
ひさしは、頭から冷水を浴びせられたようだった。その扇子
は、亡くなった祖父譲りのもので、父親がいつも持ち歩いて
いるのを知つていたし、扇面には、薄墨で蘭が描かれてい
た。その蘭を、いいと思わないかと言ってわざわざ父親に見
せられたこともある。
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ひさしは、自分の意気地
なさを後悔した。
父親が惜し気もなく扇子を
裂いてくれただけに、責めら
れ方も強かった。
うれしさも、ありがたさも通
り越して、何となく情けなくな
っていた。
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小久为自己的不争气
感到后悔。
正是因为父亲忍痛割
爱,毫不吝惜地撕掉了扇
子,所以受到的谴责也越
发强烈。高兴也罢,庆幸
也罢,都过去了,除了遗
憾,什么都没有。
しかし、ひさしはその一方で、
ずっと大切にしてきた物を父親
に裂かせたのは、自分だけでは
ないかもしれないとも思い出して
いた。はっきりとは言葉に出来な
いのだが、決して望むようにで
はなく、やむを得ない場所で否
応なしの勤めをさせられている
ように見えるこの頃の父親を、ひ
さしは気の毒にも健気にも思い
始めていた。
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可是,另一方面小久也回
想起来,父亲撕毁了他最为
珍贵的扇子,也许并不能只
怪自己。虽然不能用语言清
楚地表达出来,但是小久开
始觉得,父亲真是又可怜,
又坚强。在这段时间里,父
亲在不是自己希望去但又不
得不去的地方,干着自己不
得已而为之的工作。
静かな音を立てて水の流れる掘割のそばを、ぎ
ごちない足どりで駅に向っていた父親の背が、向か
いの席で目を閉じている父親に重なった。今頃あの
女のひとはどうしているだろう。列車の振動に身を
まかせて、ひさしもやがてゆっくりと目を閉じた。
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全体的に、窓を締め切られた車内のような息苦しさ
を感じる小説。
短いけれど奥行きがある。
「女性」のもつ瑞々しさ、暖かさ、穏やかさ、細やか
さが作品に出てしまう。
……
作者の作風について自由にディスカッシ
ョンしましょう。
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1. 年轻的母亲已经烦恼一个月了,想着该什么时候
把孩子的父亲外出打工并死在那里的事告诉年幼的孩
子们。(疑問詞~たものか;外出打工并死在那里→出
稼ぎ先で亡くなる)
出稼ぎ先で亡くなった父親のことを幼い子供にいつ告
げたものかと若い母親はもう一ヶ月も悩んでいる。
2. 一看就知道社长今天心情不好。这种日子哪怕只要
出一点差错,也会倒霉的。(見るからに)
社長は見るからに不機嫌そうで、こんな日にちょっとで
もミスしようものなら、ひどい目にあうよ。
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3.你能不能停止那书桌下脚呷阿呷阿的声音啊,非常
刺耳,使我无法集中精力学习。(耳に立つ;脚呷阿呷
阿的声音→カタカタと足を鳴らす)
君、その机の下でカタカタと足を鳴らすのをやめてくれな
いか。耳に立って勉強に集中できないよ。
4.过了5月中旬,校园里杜鹃花盛开时,那粉红色的颜
色也会略微红一点。(心持ち;杜鹃花→つつじの花)
五月の中旬を過ぎると、キャンパスに咲いているつつじ
の花もピンクの赤さが心持増していた。
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5.在国外生活,不管愿不愿意都应该学习该国语言,了解该国的
文化,融入该国社会,才能得到最大的留学效果。(いやおうなし
に;融入该社会→その社会にとけこむ)
外国生活ではいやおうなしにその国の言葉を覚え、その国の文化
を理解し、その社会に溶け込むべきである。それができてはじめて
最大の留学効果が得られる。
6.的确,你还这么年轻就已经获得如此大的成功。可是,不要忘
记你是因为有了公司的支持才能走到这一步的。(~てのこと;走
到这一步→ここまで来られた)
確かに、君はまだ若いのに大成功を収めた。しかし、君がここまで
来られたのは親の援助があってのことだということを忘れえてはい
けない。
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7.幸好讨厌的上司这次退休了,要不然我就只好辞掉这
份工作了。真是太幸运了。(~からいいようなものの)
嫌な上司が今度定年退職になったからいいようなものの、
さもなければ、私の方がこの会社を辞めるしかなかった。本
当に運が良かった。
8.那里是一片草丛,透过树梢之间可以看到已经开始腐
烂的房顶,一片荒凉,根本无人居住。(~かかる;一片
草丛→一面の薮)
あそこは一面の藪で、木々の梢の間から朽ちかかった家の
屋根など見え、荒れ果てて誰一人住んでいない。
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9.临出门时我去叫佐藤,他好像不太想去,还在那里
依依不舍地摆弄着他刚买来的吉他。(~がけ;依依
不舍→未練がましく)
出がけに佐藤を誘うと、あまり行く気のない彼は買った
ばかりのギターを未練がましくいじっていた。
10.像她这种情况与其说是她工作能力强,或许倒不如
说是因为她紧跟时代潮流,才带来今天的成功的。(
身を任せる;时代潮流→時代の流れ)
彼女の場合は能力というよりも、時代の流れに身を任せ
た結果がいまの成功に結びついている、と言えるかもし
れないね。