7月 神戸大学附属小学校 2016_06_30 「協力」をその根源から考える 学校長 伊藤篤 附属にかかわっている私たちが,互いに大切にしている価値観のなかに「協力・協同」があると思います。なぜなら,本校の目指す 子ども像の一つに「互いを尊重し合う」という文言が含まれており,この相互尊重から導かれるものは,利他性(自分の益にならない場 合でも,他者にとって益となる行動を自らすすんでおこなおうとする態度)に基盤をおく協力・協同だからです。 協力の歴史的あるいは進化的な起源は,より報酬価の高い獲物を獲得するためのハンティングである,と推測されています。しか し,こうした複数人で獲物を追い詰め・仕留める場合に,各自が自分の役割を確実に果たす(協力する)背景には,各自がその分配を 受けるという恩恵を期待してのことなので,その基盤は「相利性」と呼んだほうが正確です。つまり,利他性から生じる協力と相利性から 生じる協力がありうるということです。 マイケル=トマセロ(マックス・ブランク進化人類学研究所長)という発達心理学者が,幼児を対象にして,この利他性(自分には何の 益もない場合の協力)について,それが発揮される領域を「援助」と「情報提供」とに分けて,とても興味深い実験的研究をおこなって いますので,それを紹介したいと思います。 ・援助すること―生後 14 か月および 18 か月の子どもの大半が,はじめて会ったばかりの血縁のない大人が,ちょっとした問題に困っ ている場面で,即座に援助をおこなうことを明らかにしました。具体的な援助は,手の届かない所にあるモノを取る,障害物をどける, 大人の間違いを正すなどです。 ・知らせること―生後 12 か月の前言語期の子どもが,大人がホチキスで紙を留める様子を見ます。この大人は別の道具も手にしてい ます。この大人が部屋を出て,別の大人が入室し,ホチキスと別の道具を別々の棚に片付けます。そこへ,最初の大人が紙の束を抱 えて入室してきます。さっきあったホチキスがないので,まごついていると,ほとんどの子どもは,ホチキスの入っている棚を指さししま した。 トマセロは,実験の条件や子どもの年齢などから判断して,「文化による変容や親によるうながし,あるいは何らかの社会化が,子ど もの示す利他性をもたらしている」と考える根拠はほとんどない,と結論づけています。こうした,利他性にもとづく協力(援助や情報提 供)が,彼の言うように生得的な傾向性なのか,あるいは生後の経験・学習によるものなのかは,現段階では判断しがたいですが,私 たちヒトの子どもはきわめて幼い時期からごく自然に「協同できている!」のです。 みなさんも,幼いころから意識することなく,どんな人とも「協力」してきたのです。でも,成長にともなって,意識的に「協力」するよう になっていきます。お互いに利益を得る「相利的」な協力はもちろん,すこしばかり自分が犠牲になったとしても,相手の利益につな がる「利他的」な協力も,人格の形成には重要だと考えます。利他性は「情けは人のためならず」ということわざに近いニュアンスです ね。 3年生の学習の取組 3 年生の子どもたちは,遊んだり学習したりする中で,額に汗する姿,よく考える姿をたくさん見せてくれています。生活・学習におけ る様々な場面で仲間と協力・共同することで,お互いを高めあうことができるような集団を目指して頑張っています。学習の中でのその ような素敵ないくつかの場面をご紹介します。 ◆しぜん・かがく 「好きな花をさかせ,お花はかせになろう」(1組) 「好きな花をさかせ,植物園をつくろう」(2組) ホウセンカ,マリーゴールド,ヒマワリの中から1種類と,自分が育てたいと思った一年草双子葉類の植物(アスター,オジギソウ,ヒャ クニチソウ,キンギョソウ,コスモスなど)から1種類,合計2種類を一人ひとりが選び,育てています。虫眼鏡を使い,それぞれの植物 の体のつくりを観察しています。自分が育てている 2 種類の植物だけではなく,友だちが育てた植物とも比較をすることで,より多くの 共通点や相違点を見つけ出そうとしています。また,植物の成長の順序についても着目し,育てているどの植物も,「種」→「子葉が出 る」→「葉が大きくなり,増える。植物の高さが高くなる」→「つぼみがふくらむ」→・・・と成長の順序が共通していることに気づくことがで きています。 今後も,栽培活動を続け,観察に取り組んでいきます。この単元の「ひらく」場として,1組はお花はかせとなり,植物についてまとめ る活動,2組は植物園をつくり,植物の紹介カードもつくる予定です。 ◆しぜん・かがく 「附小にすむ動物を育てて,動物園をつくろう」(1組) 「動物かんさつ日記をつけて,動物はかせになろう」(2組) 附小の中で動物を自由に探し回り,1人1種類の動物を育てています。虫かごの中の環境を動物にとってより住みやすいものにす るために,元々動物が住んでいた環境を観察したり,仲間と協力・共同しながら,インターネットや本を使って育てている動物につい て調べたりしています。休み時間にも,友だちと虫かごを見ながら相談をしている姿をよく見かけます。子どもたちは動物を育てること の楽しさを味わいながら,難しさも感じているようです。今後,自分が選んだ動物と教師から提示したモンシロチョウを比較観察しなが ら,体のつくりと成長の順序の共通点と相違点を見つけていきます。 ◆すう・かたち 「休日のオリジナルスケジュールしょうかいしよう」(1組) 「オリジナルスケジュールをつくって,みんなとつたえ合おう」(2組) 日常生活の中の時間を計算したり,1分間はどのくらいか目をつむって予想する 活動を行い,時間の感覚を養ったりした上で,一人ひとりがオリジナルスケジュール を考えました。子どもたちは,パンフレットやガイドブック,時刻表,インターネットを 活用しながら,友だちと一緒に施設や交通手段などについて調べたりスケジュール の相談をしたりし,仲間と試行錯誤することができました。 ↓子どもたちが書いた「みわたしカード」から ぼくは,旅行の計画のたびに想像力を使うから,この 学習で想像力を養うことができました。時計の問題が出 たときに間違いなくできると思います。 今回,行こうと思ったところだけではなく,他のところも今 回したようなかんじでプランを立てられれば行けるので,活か せると思う。学校に行く時,自分の歩く速さは何分だから何分 に家を出たらいいと,見通しをもてるので活かせると思う。 これから大人になったら,いっぱいスケジュールを書 くから,3年生のうちにいろいろなスケジュールを書い ておいたら,どうやって書くのかが分かるから活かせそ う。 この単元で学んだことは,生活の中でスケジュールを立て て,じっさいに出かけるときなどにパソコンで調べることがで きると思います。また,宿泊活動などでも自分たちでスケジュ ールを立てて,出かけられると思います。 ◆アート 「ワクワクコリントゲームをつくろう」 「コリントゲーム」を作るという目的のために,のこぎ りや金づち,くぎ抜きの使い方を練習しています。右 の写真は,半分まで切り込みを入れた状態の丸太を, 子どもたちが一生懸命に切っています。同じグループ の子どもたちは,友だちが切りやすいよう,声をかけたり 丸太をおさえたりしています。切り込みが入っていることで,のこぎりの刃が真っ直ぐになり, スムーズに切り進めることができるようになってきました。また,この後に,自分たちで切った 木に自由に釘を打ちました。子どもたちは初めての学習に大変意欲的に取り組み,用具の扱 いに慣れ,木を切ったり,釘を打ったりする感覚に浸ることができました。 ◆からだ 「ゆったりういて泳ぎを楽しもう」 梅雨に入り,雨が続く毎日ですが,6月21日(火)に3年生はプール開きを行いました。少し風が吹いている中だったため,寒そうに している様子も少し見られましたが,そんな寒さに負けず,笑顔いっぱいで水に慣れる活動を行うことができました。3年生は,リーダ ーを中心としてチームで教え合うことで,「全員『浮く』ことができる,より多くの子どもたちが12m泳ぐことができる」を目指します。 AUS訪問団 出発に向けての取組 「附属小学校の代表としてアイアンサイド校を訪問する!」という意気込みをもった 28 人の訪問団児童は,夏休み中の交流活動へ向け,5 月初めから様々な取組を行ってきま した。今回はその様子を紹介します。 《全校単元学習「オーストラリアの友だちとつながり合おう」の取組》 6 月2 日に,訪問団が全校児童に,オーストラリアやアイアンサイド校の情報,AUS 訪問 団の活動の概要を説明し,一人ひとりの意気込みを発表しました。その後各クラスに分か れて「①アイアンサイド校への手作りの贈り物のアイディア」や,「②オーストラリアで調べ てきてほしいこと」を募集しました。①では「折り紙の作品」「ビデオレター」など様々なアイディアが出されましたが,持ち運びがしやす く,各クラスで創意工夫ができるという理由から,「各クラスで作成するビデオレター(DVD)」に決まりました。現在,各クラスで「日本の 遊びの紹介」「附小のクイズ」「応援合戦」などのビデオレターを作成しています。②では,主にオーストラリアと日本のくらしの違いを 調べてほしいことが出されました。訪問団児童は現地の様子をしっかりと調べて,夏休み明けに報告する予定にしています。 《AUS 訪問団の取組》 ・アイアンサイド校で披露するパフォーマンス 今回のパフォーマンスは「ソーラン節」と,日本のことを紹介する「プレゼンテーション」の 2 つです。「ソーラン節」は,よさこいの要素 も取り入れ,鳴子を持ち,法被を纏って踊ります。「プレゼンテーション」は,空手,剣道,書道,盆踊り,地域の有名なものなどを英語 で紹介します。 ・保護者会の手厚いサポート AUS 訪問団の取り組みは,保護者会の手厚いサポートがあって成り立っています。実行委員さんを中心に,「現地への引率」「会計」 「英会話指導」「AUS 訪問団のしおり作成」「フィールドワークのしおり作成」「アイアンサイド校へのお土産購入」「活動の記録」などの 様々なサポートをしてくださっています。 訪問団の現地での活動の様子も訪問終了後 日 曜 1 金 2 土 3 日 4 月 7月の行事予定 に HP に UP する予定です。ご期待ください。 8月の主な行事予定 ~8 月 4 日(木) 前期個人懇談会(13:45 下校) 8 日(月) AUS交流活動(訪問) 諸費振替日 24 日(水) 夏休み明けの会(12時下校) 5 火 6 水 7 木 8 金 9 土 10 日 11 月 委員会④ 12 火 クラブ④ 1 日(木) 発育測定(5・6年) 13 水 2 日(金) 発育測定(3・4年) 14 木 5 日(月) 発育測定(1・2年) 15 金 6 日(火) 視力検査(5・6年),クラブ⑥, 16 土 17 日 18 月 海の日 19 火 夏休み前の会,給食終了 20 水 21 木 22 金 23 土 24 日 25 月 26 火 27 水 28 木 29 金 30 土 31 日 (5年進路相談日) 諸費振替日 25 日(木) 弁当日 26 日(金) 弁当日 29 日(月) 弁当日・教育実習開始 30 日(火) 給食開始,クラブ⑤ 9月の主な行事予定 諸費振替日 7 日(水) 視力検査(3・4年), 中等オープンスクール(5年) 12 日(月) 視力検査(2年),委員会⑤ 13 日(火) 視力検査(1年), 15 日(木) 幼小合同避難訓練 宿泊前健診(4・6年生) 23 日(金) 教育実習終了 26 日(月) 参観デー,学級懇談会③(低) 27 日(火) 参観デー,学級懇談会③(高) クラブ⑦ 28 日(水) 4年生4時間授業 29 日(木)~10 月 1 日(土) AUS交流活動(訪問) ~8月4日まで 4年生宿泊活動(あけのべ自然学校)
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