発表概要 H28 年度 熊本大学工学部マテリアル工学科「マテリアル工学演習」 氏名(学籍番号) 一ノ瀬 佑希(137-t2705) 論文題目 Corrosion behaviour of AZ31 magnesium alloy with different grain sizes in simulated biological fluids 著者 M. Alvarez-Lopez, Maria Dolores Pereda, J.A. del Valle, M. Fernandez-Lorenzo, M.C. Garcia-Alonso, O.A. Ruano, M.L. Escudero 論文出典 Acta Biomaterialia 6 (2010) 1763-1771 【緒言】 生体材料分野で用いられる Mg 合金は、生分解性を有する[1]、弾性率が 皮骨組織と同程度である、生体への毒性が低い[2]といった特徴がある。し かし Mg 合金は、生理的 pH 環境では腐食が急速に進行するという問題が ある。そのためフッ化物コーティング[3]や陽極酸化処理、結晶粒微細化な どを施し、耐食性を向上する試みがなされてきた。しかしながら、結晶粒 微細化が腐食特性へ及ぼす影響についての十分な知見は得られていない。 そこで本研究では、生理的 pH 環境における AZ31 合金の腐食挙動に及ぼ す結晶粒微細化の影響を調査した。 【実験方法】 AZ31 合金圧延材に 450℃で 30 分間熱処理を施したものを type I、AZ31 合 金鋳造材を押出速度 0.1 mm/s で ECAP 加工したものを type II とした。組織 Fig. 1 Nyquist plots of type I AZ31 alloy in NaCl (a) and PBS (b) and type II AZ31 alloy in NaCl (c) and PBS (d) after 2, 24 and 48 h of immersion. 評価は、WDXRF, OM, SEM, EDX, FTIR を用いて行った。腐食特性評価は、 浸漬試験及び FRA, EIS を用いた。腐食試験環境は NaCl 溶液/ リン酸緩衝 液 (PBS) 中とした。 【実験結果および考察】 線形切断法で平均結晶粒径を測定すると、type I は d = 25.7 µm、type II は d = 4.5 µm であった。Fig. 1 に各試料を NaCl および PBS に浸漬後、EIS 測定によって得られたナイキストインピーダンスプロットを示す。2 時間 浸漬後の試料で比較すると、NaCl 中に浸漬した試料のほうが半円状のプロ ットの直径が大きく、優れた耐食性を示すことがわかった。また時間経過 に伴い、PBS に浸漬した type II の試料において著しい耐食性の向上が見ら Fig. 2 Nyquist plots of type II AZ31 alloy immersed in PBS for 6 days. れた。これは腐食孔の周囲に AlMn 系化合物が析出していることに起因し ていると考えられる。Fig. 2 に type I、type II を PBS に 6 日間浸漬後の試料 を EIS 測定して得られたナイキストインピーダンスプロットを示す。Fig. 1 と比較すると、浸漬時間が長くなるにつれ、PBS に浸漬した試料のほうが NaCl に浸漬した試料よりも優れた耐食性を示すことが分かった。これは腐 食生成物で構成される複合層が腐食進行を抑制することに起因している と考えられる。この腐食生成物は Fig. 3 の 30 分間 PBS 浸漬後の type II の FTIR スペクトルが示すように、主に MgO と (PO4) 3- で構成されていた。 【参考文献】 [1] Loos A et al. : Macromol Symp. 253 (2007) 103 - 8 [2] Gu X et al. : Biomaterials 30 (2009) 484 - 98 [3] Chiu KY et al. : Surf Coat Technol 202 (2007) 590 - 8 Fig. 3 FTIR spectrum of corrosion products of type II AZ31 samples immersed in PBS for 6 days.
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