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セ ッ シ ョン1「 遊 び の 時代 の創 業戦 略 」
教養学科健康科学講座
助教授
関 隆晴
「遊 び の 時 代 の創 業戦 略 」 とい うタイ トル で樋 口 さん に今 回 の講 演 を依 頼 し
た とき 、快 諾 の返 事 を も らって 私 は少 し驚 き ま した。
私 の 学 生 時 代 の ク ラ ブ の 先輩 で あ る樋 口 さん は 、 滋 賀 県 甲賀 郡 水 口町 とい う
人 口3万
人 余 の小 さい町 で3,200人
の会 員 を集 め 、 日本 中か ら注 目 され て い る
スイ ミ ン グ ク ラブ を経 営 し、更 に乗 馬 ク ラ ブ も立 ち上 げ て軌 道 に乗 せ て い ます 。
2度 の訪 問 に よ り、そ の会 社 経 営 の 中 で学 生 時 代 の夢 を実 現 しよ うと して い る姿
に感 心 し、今 回 の創 業 支 援 セ ミナ ー
「時 代 を拓 くベ ンチ ャー マ イ ン ド」 で は 是
非 講 師 と して 呼び た い と思 って い ま した 。 そ こで 平 成6年
書
に 出版 され た彼 の 著
「遊 び の時 代 の マ ネ ー ジ メ ン ト」 か ら上 記 の タイ トル で 講 演 依 頼 を した の で
す が 、 こ の不 況 の 時 代 で もま だ 「遊 び の 時 代 」 で い い の か と少 し不 安 が あ っ た
ので した 。 しか し、 そ の不 安 は講 演 が 始 ま る と間 も な く解 消 され ま した。
大 阪での生協活動 で
「
営 業 成 績 が 上 が らな い た め 首 に な り」 故 郷 の水 口町 に
帰 っ て い た 樋 口 さん に、 スイ ミン グ ク ラブ 経 営 を任 せ る話 が 舞 い 込 ん だ と こ ろ
か ら話 は 始 ま ります 。 ス イ ミ ン グ ク ラブ 経 営 に 関す る本 は ほ とん どな い こ とか
ら、 まず 日本 各 地 の ス イ ミン グス クー ル の 見 学 調 査 を行 な って 出 した 彼 の結 論
は
「
詐 欺 で あ る 」 で した 。 そ れ は 、 人 は教 え な くて も泳 げ る の に お金 を取 っ て
泳 ぎ方 を教 え て い る とい う点 。1時 間 分 の 会 費 を と って お き なが ら、水 に入 る時
間 よ りも順 番 を待 つ 時 間 の方 が 永 い とい う点 、 そ して選 手 育 成 を 目標 に して お
金 を取 りな が ら、 成 績 が上 が らな くて も責任 を とって い な い とい う点 で した 。
ど うす れ ばプ ログ ラ ム の力 で 会 員 に喜 ん で も らえ るの か。8億 円 の初 期 投 資 で
作 られ たす ば ら しい設 備 の温 水 プ ール で 泳 ぐ会 員 さん た ち を見 な が ら、彼 の気
づ い た こ とは
「
水 は 人 々 を優 し く させ る」 とい うこ とで した 。 水 をか け られ て
も、 水 に放 り込 まれ て も、 プー ル で は子 供 も大 人 も喜 び ます 。 陸 上 で は で き な
い 暴 力 が水 の 中 で は で き る の です 。 ス トレス を発 散 す る こ とで 相 手 を喜 ばせ る
こ とが で き る の です 。 人 に喜 び を 与 え る こ と は 自分 に と って の快 感 。 そ こで 、
この 水 の優 し さを どの よ うに仕 事 と して 表 現 す るか とい う発 想 か ら、 レジ メ に
もある 「
遊 び な が ら楽 し く泳 ぎを 覚 え よ う」→
「
遊 ぶ た め に泳 ぎ を覚 え よ う」
とい う、 メイ ンテ ー マ と して の 「
遊 び 」 が浮 か び 上 が っ て きた ので した 。
一 方 、 日本 の 時代 背 景 は 高 度 消 費 資 本 主 義 。 「
遊 ぶ た め に働 き、働 くた め に食
う」 とい う生 活 様 式 、つ ま り 「
遊 び の 時 代 」は 、 バ ブ ル 崩 壊 後 の現 在 も変 わ っ
て い な い とい う彼 の時 代 認 識 が示 され ま す 。 肯 定 的 な 表 現 と して の 「
平和 ボケ
日本 」 の持 つ 基盤 技 術 力 は 、 潜 在 的 に ま だ 世 界 を リー ドす る力 を も っ て い るの
です 。 今 の 時 代 は不 況 で は な く、 お金 が 回 っ て い な い デ フ レの 時 代 、 それ も冷
戦 崩 壊 後 、 ア メ リカ の 一 国 支 配 下 に あ る国 際 的 な、 構・
造 的デ フ レです 。 そ の 中
で 、 お 金 の 流 れ を よ くす る こ とが期 待 され る 業 種 は 、 従 来 の保 護 経 済 業種 で は
な く、 高 度 専 門 知 識 と高 度 専 門技 術 に よ る オ リジナ リテ ィー の あ る商 品 を作 り
出す 業 種 、IT産
業 、 そ して 心 の領 域 を扱 う業 種 とい うこ とです 。
こ うい っ た 市 場 分析 と時 代認 識 の 中 か ら、
「そ こで 問 わ れ るマ ネ ー ジ メ ン トとは」 とい う本 題 に入 りま した。
レジ メ の項 目で は 、4)目
され ます 。 目標 → 課 題(戦
標 志 向 のマ ネ ー ジ メ ン ト、 にお い て 基 本 方 針 が示
略)→
方 法(戦
術)→
分 担(組
織)→
援 助 、 とい う
ス キー ム は 、 ま さに今 、 独 立 行 政 法 人 化 を控 えた 国 立 大学 が 現 在 取 り組 ん で い
る課 題 と重 な って 見 え ま した 。
そ して5)約
束 事 は守 るべ き人 間 が決 め る とい う組 織 原 則 、
は樋 口 さん の マ ネ ー ジ メ ン トの核 心 部 分 です が 、 当 日配布 され た資 料 と彼 の
著 書 「遊 び の時 代 のマ ネ ー ジ メ ン ト」 を参 照 して も ら うこ と と して 、
6)顧
客 参加 のマ ネ ー ジ メ ン ト、 で この レポー トを閉 め た い と思 い ま す 。
約 束事は守 るべ き人 間が決 める とい う組織原則 に則 り、当初1回
の社員研修
だ けで従 業員(正 社員 とパー ト)の 自由意志 の総 体 として組織 運営 を行 な うと
い う難 問題 に、 さ りげな く取 り組 んでい るよ うに見 える樋 口 さん の視線 は、お
客 さん に喜 んで も ら うだ けで な く、顧 客 と共 に作 り上 げ るマ ネー ジメ ン トに向
け られ て いま した。 「
相 手 を喜 ばせ るこ とが商売 の秘訣 で あ る とい うこ とに気
付 くのは普 通の商売人 で あるが 、社会 を喜 ばせ るこ とを 目指す のが近江 商人で
あ る」 とい う趣 旨の言葉 を、昨年 の就 業支援セ ミナー の講師 で ある加登豊 氏か
ら聞いた ことを思い 出 しま した。
「リス ク を恐 れ ず 新 しい領 域 に挑 戦 す る心」 つ ま りベ ンチ ャー マ イ ン ドを持
っ て 自分 の 目標 を実 現 す るた め の 出発 点 を、 スイ ミン グ ク ラ ブ創 設 の 背 景 に 見
ま した が 、 そ の 先 に は よ りよい 社 会 の 実 現 とい う夢 の あ る こ とが示 され た樋 口
さん の講 演 で した。
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